小喜茂別岳(2007/02/22)

今シーズン初めての快晴


 6週連続で天気に見放されてしまうと、こちらから天気に合わせるしかない。以前からそんなことは考えていたのだけれど、なかなか休みを取れそうな日と天気の良い日が重なってくれない。そもそも空気の澄んだ快晴の日というのが、札幌付近では殆ど無かったような気がする。
 そしてようやく、空気が澄んでいるかどうかは別にして、天気の良い日に休みを取ることができた。
 今回の目的地は小喜茂別岳、雪山ガイドの難易度では45点が付けられている初心者向きの山である。国道230号線の中山峠を喜茂別側に少し下ったところにその登り口がある。そこからは喜茂別岳へ登るルートもあり、こちらは雪山ガイドでは60点の中級者向けの山となっている。
 登る時間も30分程度しか違わないので、そろそろ中級レベルの山にも登ってみたい気もしたが、「ダメダメ、今シーズンは50点以下の初級者向けの山にしか登らないのよ」とかみさんに止められてしまった。
 確かに、初級者向けの山でも毎回四苦八苦して登っているのだから、今シーズンはじっくりと山スキーの経験を重ねるのと体力づくりに専念していた方が良いのは確かである。

 通勤ラッシュで混雑する札幌市内を抜けて現地に到着したのが9時、国道沿いに広めに除雪されたスペースがあり、そこに車を停める。ドアを開けて外に出ると、春を感じさせるような陽射しのせいか、全然寒さを感じない。
 今日は最初からジャケットを脱いで登ることにした。
送電線下のデコボコ斜面 昨日の日中、札幌市内では10cmほどの雪が新たに降り積もり、山の中ならば樹木が雪に覆われて真っ白な風景に変わっているだろうと期待していたのに、この付近ではそんな雪が降ったような形跡は全く無かった。
 5日前の土曜日に小喜茂別岳を登った話しをネットで見たとかみさんが言っていたけれど、そのようなトレースは何処にも見当たらない。
 昨日では無さそうだけれど、最近になって雪が積もったことは確かである。
 ラッセルしなければならないのは辛いけれど、初めての山で自分でルートを考えながら登ると言う行為は結構楽しい。
 雪山ガイドには大岩の横の小さな沢から登り始めると書いてあった。
 駐車場から50mほど先の道路際にそれらしい岩が見えていたのでまずはそこまで行ってみる。
 そこからは、送電線の下で樹木が刈り払われた斜面が広がっていた。
 確かに小さな沢が流れていたけれど、かなり深さがあって水面も覗いている。かろうじて雪に覆われ渡れそうなところがあったので、そこから斜面に取り付いた。
 その真っ白な斜面は、雪の下に何が隠れているのか知らないが、やたらに起伏が多い。
この沢を登ることにした そのまま一気に鉄塔の立っている斜面の上まで登ってしまうか、それとも右側の沢のようになっているところを進むか。
 ちょっと迷ったけれど、ずっと先までルートを見通せる沢地形の方を登ることにした。
 ラッセルの深さは20cm程だろうか。まだサラサラの粉雪だけれど、日中は気温も5℃くらいまで上るとの予報なので、帰りは重たい雪に変わってしまいそうだ。
 上に行くにしたがって傾斜もきつくなってくる。
 自分で一番楽に登れる角度でジグザグに進む。
 変に急なトレースが付いているより、ラッセルしてでも自分の無理の無い斜度で登った方が体力の消耗が少ない。
 それでも、太陽の陽射しに照らされて体がじっとりと汗ばんできた。Tシャツ1枚で登りたくなるような陽気である。
 そこを登りきるとなだらかな尾根が続き、そしてその先に小喜茂別岳の山頂が姿が見えてきた。かみさんと先頭を交代する。
 林間の風景を楽しみながらのんびりと歩く。スノーシューで歩いた方が面白そうな林だ。
 木に絡みついたツルアジサイが冬枯れの花をまだ付けていた。樹肌がやたらに白くて滑々した、肌美人のシラカバも目を楽しませてくれる。
 その尾根の右側が深い沢になっていて、帰りはそこを滑り降りるのが良いとのことである。地形図を見ながら、本当にこんなところが滑れるのだろうかと思っていたが、尾根の端まで行ってその沢を見下ろすと、樹木が殆ど無く最高に気持ちの良さそうな斜面が広がっていた。

小喜茂別岳山頂が見えてきた 帰りはこの沢を滑るのだ

 しばらくそのまま林の中を進む。GPSで確認しながら後ろから声をかけてかみさんの進む方向を調整する。
 なかなか思った方向に進んでくれなくて、面倒なのでまた自分が先に進むことにした。
喜茂別岳の山頂が近づいてくる 途中から林の樹木が突然シラカバに変わっていた。そしてそのシラカバ林を抜けると急に樹木が少なくなり、前方の小喜茂別岳が更に大きく見えてきた。
 山の左側が急な崖になっていて右の方はなだらかな斜面が続いている。
 目の前に広がるアカエゾマツの点在する緩やかな斜面が、そのままそこに繋がっている感じで、これならば楽に登れそうである。
 ただ、この付近では斜度が緩すぎるので、下山時も直滑降で滑るしか無さそうだ。
 おまけに風の影響で積雪の表面が少し固まる、いわゆるクラスト状態になっていた。こんな雪質では滑り降りる時にターンをするのも大変である。
 そしてラッセルも大変だった。雪が深いところでは、そのクラスとした雪を突き破ってスキー板を持ち上げなければならない。
 ここで雪山ガイドに載っていたラッセル時のテクニックが役にたった。
 後ろのスキーを前に出す時、前に踏み出したスキー板の上を通過させながら前に持っていくのだ。こうしたら、前に進む時にスキー板で雪を持ち上げなくても済むのである。
 それは良かったのだけれど、今日は気温が高いせいか、私のスキー板の上部に雪がくっついてしまうのには参った。
 くっついた雪の分だけスキーが重たくなって足に負担がかかってしまう。スキーの滑走面だけで無く、表面にもワックスを塗らなければダメなんだろうか。
大きなダケカンバの間を登る 南風が強くなってきた。
 汗をかいた体には気持ちが良いが、今回もまた風を避けてお昼を食べられる場所を探す必要がありそうだ。
 後ろを振り返ると羊蹄山の姿が見える。
 空は晴れているものの、その姿は霞んでしまって山頂付近がぼんやりと見える程度だ。
 左側には喜茂別だけへと続く尾根が見えている。
 こちらの方は、真っ青な空を背景にその白い稜線がくっきりと浮かび上がっていた。
 周りにダケカンバの巨木が多くなってきた。そろそろ山頂に近づいてきている雰囲気である。
 登り始めてから2時間近く経っている。
 何時のこの辺りで突然エネルギー切れを起こす私なので、今日はあらかじめウイダーinゼリー エネルギーインを飲んでエネルギー補給をしておく。
 10秒チャージで体力がみなぎってくる気がして、再び元気良く登り始める。
 登ってくる途中で見上げた時の印象よりは結構急な傾斜の気がするが、滑り降りるのにはちょうど良さそうな斜度だ。
 ただ、この付近でもやっぱりクラスト気味な雪質なのが残念だ。
山頂に到着 頂上が目前に迫り、かみさんにカメラを渡して私が先に登ることにした。
 今日は私が殆どラッセルしたのだから、それくらいの特権は与えてもらって良いだろう。
 それに今日の私は、頂上直前でもまだ体力が残っていたのだ。
 頂上に近づくにしたがって、その向こうに真っ白な山の姿が浮かび上がってきた。
 そして頂上について、下でカメラを構えるかみさんに向かってストックを振り上げた。
 真っ白な山は最初は無意根山だと思ったけれど、良く考えればそれが喜茂別岳である。
 無意根山はその隣で山頂付近が小さく見えていた。
 風が強いらしく、その半分が雪煙で霞んでいる。一方こちらの山頂は何故か無風だった。
 登ってくる途中でさらに風が強まっていたので覚悟はしていたが、なだらかな山頂なのでちょうど 風が遮られるているらしい。
 空も快晴で最高に気持ちが良い。
 山頂を歩き回って周囲の風景を眺める。
 「あの山は何山だろう?」
 「さあ〜、何かしら?」
 「こっちの山は何山かしら?」
 「う〜ん、何だろう?」
 何時もこんな調子の私達夫婦の会話である。まだまだ山の名前や見える方向を全然覚えていないのである。
 そのまま山頂でお昼を食べることにする。山へ登って、山頂からの景色を楽しみながらの昼食、そんなささやかな希望をようやくかなえられる時が訪れたのである。
 頭上を見上げると、真っ青な空の中に曲がりくねったダケカンバの枝が伸びていた。そのまま雪の上に寝転がってしまいたくなる。

山頂の風景 山頂で昼食

 山頂での幸せな時間を満喫した後、男性が一人登ってきたのを潮時に下山を開始することにした。
 ダケカンバの疎林の中を気持ちよく大滑降といきたいところだったが、やっぱりクラスト気味の雪では上手く曲がれない。
 ショートターンなら何とかなるけれど、ロングターンがなかなか上手くできない。
 所々吹き溜まりで雪質が変わっている場所が見分けられず、そんなところでは足を取られて転倒しそうになる。そうなると尚更ビビッてしまって、スピードも出せなくなる。
 ある程度スピードがでなければロングターンも難しい。
 悪循環が重なって、せっかくの気持ち良さそうな斜面を、何もできないままで下りてきてしまった。
 途中の林の中をのんびりと歩いた後、いよいよ登ってくる時に見ていた沢に下りる大斜面である。かみさんを先に滑らせて、下からカメラで写してもらうことにする。
 颯爽と滑り降りるつもりが、解けて重たくなった雪に足を取られ、情け無く尻餅をついてしまった。嬉しそうにシャッターを切るかみさん。
 天気が良ければ滑りを楽しめない。全てを満足できるような条件は、そう簡単には揃わないものである。
 後はそのまま沢沿いに下って行けば車を停めた場所に出ることができる。
 最後の林間を滑る時、気温が上ったのと風が強まった影響で、木の上に乗っていた雪の塊が時々ドサッと言う音とともに落下してきた。積もったばかりの雪ならば問題ないけれど、長い間に半分氷になったような大きな雪の塊が10m以上も上から落下してくるのである。
 そんなものの直撃を受けたら、大怪我をする恐れだってある。雪崩以外にも自然のフィールドには危険が一杯だ。

クラスト気味の斜面を滑り降りる 一気に滑り降りる
撮すな! 雪が重くてスキーを曲げられない

 帰り道、中山峠に向かって車を走らせていると真っ白な山の姿が目に入った。
 「あれ?あの山って?」
 中山峠を喜茂別側に下る時、なだらかな山容の山が目に入る。私は今までそれが無意根山だとずーっと信じていたのだけれど、実はそれが喜茂別岳だったことをこの時初めて知ったのである。



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