大沼山(2007/02/10)

山スキーって楽しいな


 今週末も土曜日が晴れのち雪、日曜日が雪の予報になっている。
 我が家の場合、頂上からのロケーションを楽しみにして冬山に登るので、晴れている時でなければ山スキーに出かける気にはならない。今年はなかなか天気に恵まれないけれど、週末の半日程度は晴れてくれるので、今のところ毎週山スキーを楽しむことができている。
 今週は、定山渓の豊羽鉱山まで行って、そこから何処かの山に登ろうと考えていた。北海道雪山ガイドを読むと、この豊羽鉱山からは無意根山手前の千尺高地、大沼山、美比内山へ登るルートがあり、何れも初心者でも登れるような山みたいだ。
豊羽鉱山は既に廃鉱となり、現在は閉山処理のためにそこまでの道がまだ除雪されているが、この先はどうなるか分からないとのことである。車を停める場所があるかどうかも分からないので、どの山に登るかは現地に行ってから決めることにする。
 豊羽鉱山は定山渓の温泉街から13km程山の中に入ったところにあり、私もそこまで行くのは初めてだった。
 今年は定山渓付近の積雪も例年よりはかなり少なめだが、さすがにここまでくるとかなり雪深くなってくる。
 雪に埋もれた塀の中からモクモクと白い煙が立ち上っているのが見える。温泉の湯気なのか、それとも坑口から出てくる煙なのか、何だか凄いところにやってきたような雰囲気だ。
道路際の駐車スペース 大沼山は豊羽小学校の横から登るようになっていて、ちょうど道路沿いに幅広く除雪されたスペースがあって、既にそこには車が1台停まっていた。
 他の場所の様子も見てこようとさらに奥まで進んだが、直ぐのその先がゲートで塞がれていて関係者以外立ち入り禁止の看板が立てられていた。美比内山の登山口はそのゲートからもう少し先になるので、登るのは無理そうである。
 先ほどの駐車スペースまで戻って、今日はそこから大沼山へ登ることにした。

 道路際の2m程の雪の壁をよじ登って、そこでスキーを装着する。先行者のトレースがあるので今日は楽ができそうだ。
 そのトレースは、急な崖を一気に登って小学校の体育館の横に出るように続いていた。
 最近は自分で登れる斜度と言うものが大体分かってきたので、そのトレースを一目見たときから、これはちょっと苦労しそうだなと感じていた。
 かみさんはトレースに沿ってそのまま登れたけれど、案の定、私は途中でスリップしてしまう。已む無くトレースから外れて、急な斜面を転げ落ちそうになりながらも何とか上まで登りきることができた。
 帰り際に改めてその付近を見てみると、沢沿いにそのまま進めば無理しないで尾根に取り付ける場所があったみたいだ。
 そこからは尾根沿いの上りが続く。体の準備が整う前にいきなり登りになってしまったものだから、息切れはするし、心臓はバクバクするしで、最初からこれではとてもじゃないが山頂まではたどり着けそうに無い。
 途中で立ち止まって後ろを振り返ると、小学校の校舎は既にはるか下に見えていた。4階建ての立派な建物で、昔はそんな大きな校舎が必要になるくらい、ここには大勢の人々が住んでいたのだろう。
 雪に埋もれた山間の風景からは、とてもそんな過去の賑わいの様子を想像することができない。
 その背後には、人間の栄枯盛衰など全く気にもかけないように、定山渓天狗岳の険しい山容が静かに鎮座していた。

学校尾根への急な登り 定山渓天狗岳と小学校校舎

 樹木もまばらで登りやすい尾根である。
 前を歩いているのは3人パーティーみたいだ。雪面には他のトレースは見当たらない。雪も結構深いので、先行パーティーがいなかったらラッセルにかなり苦労していたかもしれない。
 息切れも次第に治まってきたので、周りの風景を楽しみながら、そのトレースの中をマイペースで登り続ける。
 後ろを振り返るたびに天狗岳の姿が遠ざかっているような気がする。右手に見えている山は白井岳だろうか。遠くには余市岳の姿も見える。
 花や樹木、鳥などもそうだけれど、その名前を覚えることで、より興味や親しみを持ってその対象を見ることができるようになる。
 山スキーを始めたことにより山の名前も覚えてきたので、これまで何も感じなかったような風景でも、「あっ、あれは何々山だ!」と言った風に、新しい楽しみ方ができるようになった気がする。
 周りの樹木もトドマツやダケカンバなどが主体となって、美しい雪山の風景を織り成している。こんな風景の中を歩いていると、疲れも吹き飛んでしまう。
 独特の鳴き声を発しながらクマゲラが木から木へと飛び移っていくのが見える。

尾根からの眺めを楽しむ 最初の急な斜面を登りきるとその先に緩いピークが現れる。雪山ガイドでは殆ど平らなのでそのまま登っても良いと書いてあったが、先行パーティーのトレースはそこを西側から巻いていたのでそれに従って進んだ。
 その緩いピークを回り込むとその先にもっと高いピークが見えてきた。地形図では875mと表示されているピークである。
 二つのピークは細い尾根で繋がっている。トレースから外れて、その尾根の上にまでちょっと登ってみた。尾根の東側は急な崖になっていて雪庇が張り出している。その雪庇を踏み抜かないように注意しながら端まで近づいて、そこからの眺めを楽しむ。
 875mのピークもお先ほどと同じく西側から巻いて通過する。
 先行パーティーのトレースは、そこからやや下降していた。
 「せっかく登ってきたのに何でここで下ってしまうのだろう?」と疑問に感じて、私達は迂回する間に少しでも高度を稼ごうと考え、やや登り気味に進むことにした。
 そのピークを回り込めば、そのうちに同じような高さの尾根に出るはずと思って歩いていたが、尾根どころか次第に谷が深くなっていく感じである。
 何か変だな〜?と思ってGPSを確認すると、あらかじめ登録してあったルートからいつの間にか外れていて、そのまま進み続ければこのピークを一回りして、元の場所まで戻ってしまうところだった。
 地形図をもっと良く見ていれば、ピークの反対側は標高が少し低くなっていることを読み取れるはずなのに、まだまだ未熟である。
 そこから戻るように斜めに滑り降りて、再び先行パーティーのトレースに合流した。
 これまでも自分の判断を信じてトレースから外れることがあったが、結果的に間違えているのは決まって私の方なのである。山スキーを始めてまだ数回しか山に登っていないと言うのに、先行者のトレースを疑ってルートを変えるなんて全くおこがましい話しである。

トドマツの巨木の間を登る 白い壁のような急斜面

 目の前に真っ白な雪の斜面が現れた。そこに向かって真直ぐに伸びていたトレースが急に向きを変えて、その斜面の横をジグザグに登っている。
 帰りにその真っ白な斜面に自分達のシュプールを描こうと考え、わざわざ端のほうを登っているのだろう。私のレベルでも滑られそうな斜面なので、帰りがちょっと楽しみになる。
 さらに登っていくと、殆ど巨大な雪の壁に見えるような急斜面が現れた
 そこの端の方を斜めに登るが、さすがにここの斜面は急すぎて帰りも同じルートで斜滑降で滑り降りることになりそうだ。
 耳障りな音が聞こえてきた。スノーモービルのエンジン音である。湖の静けさを台無しにするジェットスキーのエンジン音と全く同じだ。スノーモービルで山を登ることを否定するつもりは無いけれど、もう少し静かなエンジンを開発できないのだろうかと思ってしまう。
 GPSを確認するとあと少しで山頂に到着である。予想していたよりも速いペースで登ってきているようだ。これも先行者のトレースのおかげである。
 最後の急斜面を登っていると、ちょうどその3人パーティーが滑り降りてきた。
 「楽させてもらいました」と挨拶する。

大沼山の頂上が見えた 最後の坂を上りきると、ついに大沼山の山頂が目の前に現れた。
 そこから山頂までは殆ど樹木も無く、真っ白なスロープが延びているだけだ。
 途中から雲が広がってきていた空も、ここに来て青空が顔を覗かせ、雲間から射し込む日の光が大沼山の山頂を照らし出している。
 後は一気に山頂を目指すだけ。そう考えると、私の目の前を登っているかみさんを追い越したくなってきた。
 競争するような体力も無いので「じゃんけんで先に登る順番を決めようか?」と提案してみる。かみさんは「突然、何を言い出すの!」と言った表情で、その提案を受け入れる様子は全く無い。
 しょうがなく私はその場に留まり、かみさんの最後の山頂アタックの様子をカメラに収める役に甘んじることになってしまった。
 雪庇の間を通って山頂に達したかみさん。逆光の中でストックを振り上げポーズをとった後は、直ぐに姿を消してしまった。きっと山頂からの展望を1人で楽しんでいるのだろう。
 登り始めてからほぼ2時間、標準のタイムは2時間半となっていたので、トレースの有り無しで登頂時間は随分変わるものである。
 雪山ガイドには「山頂からは羊蹄山の素晴らしい眺めに喚声を上げるだろう」と書かれている。
 カメラを首からぶら下げたまま、私もかみさんの後を追って山頂にたどり着いた。吹き付けてくる冷たい風に震え上がって、慌ててそれまで脱いでいたジャケットを着込む。
 「あれれ〜、羊蹄山は何処に・・・。」
 先ほどの日の光は、ちょっとした気まぐれだったみたいで、空の殆どは既に雲に覆われてしまっていた。晴れのち雪の天気予報はほぼ正確なようである。
 羊蹄山の裾野だけが雲の下に覗いていた。
 相変わらず天気に恵まれない私達だけれど、それでも今年登った中では一番見通しが利く方である。頂上からの360度の山の展望を楽しむことができた。

山頂で手を振るかみさん 山頂は風が強い
頂上からの眺め この先に羊蹄山が見えるはず・・・

 風の当たらない場所まで滑り降りてシールを外す。
 今日は下りの滑りも楽しめそうなのでワクワクしてくるが、まずは昼飯の休憩をするため眺めの良さそうな場所を探しながらゆっくりと滑り降りる。
昼食タイム 定山渓天狗岳が真正面に見えるちょうど良い場所を見つけ、そこの雪をスコップで削ってイスの形に整えた。
 なかなか快適だけれど、長く座っているとお尻が冷えてきてしまう。次回からは何か敷物も準備した方が良さそうだ。
 うどんを煮ているガスストーブの火を止めると、突然の静寂が訪れた。自分達が音さえたてなければ、野鳥のさえずりが時折聞こえてくる以外、森の中は真の静けさに包まれている。
 かみさんが「テントを張れそうな場所が沢山あるわよね」と言うが、さすがにキャンプ道具を背負ってまで登ってくる気にはなれない。
 昼食を終えていよいよ滑降開始である。
 気持ちの良さそうな斜面が2箇所ほどあった。衝突しそうな樹木も殆んど無く、斜度も20℃程度、そしてフワフワのパウダースノー。
 急斜面を前にすると怖がって後傾姿勢になるから上手に滑れない、と自分の欠点は分かってはいるものの、どうしてもその恐怖を払拭できないのである。
 これくらいならば、怖がらないで滑ることができる。思い切って斜面に飛び出すと、まるで宙に浮いているような浮遊感を感じられる。思わずキャッホーと歓声を上げてしまった。
 ようやく山スキーで滑る楽しさを実感できたような気がする。こうなると、これまでとは雪の斜面の見方が違ってくるのだろう。
 875mピークの部分は若干登り返しになってしまった。シールを貼るほどでも無いので、横向きに登って何とかそこを登りきる。
 その後は登り口まで、疎林の中を苦労することなく滑り降りることができた。
 そして車に戻って口をついて出た言葉が「あ〜あ、楽しかった。」
 ようやく山スキーの楽しさを実感することができた今回の大沼山だった。

美しい定山渓天狗岳の姿 ようやく怖がらずに深雪を滑れるようになってきた


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