シャクナゲ岳(2006/04/14)

初めての春山スキー


 我が家にとって3回目の山スキーチャレンジはニセコのシャクナゲ岳である。1月に登ったチセヌプリの隣の山、標高もチセヌプリより低いので我が家のレベルでも何とかなりそうだ。
 この日は全道的に快晴に恵まれ絶好の春スキー日和となった。
 装備を整えてチセヌプリースキー場のリフトに乗り込む。今時期にこのスキー場を利用する人は、ほとんどがバックカントリーが目的で、ゲレンデだけを滑る人はほとんどいない感じだ。リフトの1回券だけが沢山売れると言うのは、北海道の中でもここのスキー場くらいだろう。
リフト降り場から見たシャクナゲ岳 リフトを降りると、ダケカンバの樹林越しにシャクナゲ岳の真っ白な姿を望むことができる。
 今回はハンディGPSにあらかじめルートを登録して持参していたが、これならばGPSに頼らなくても山頂まで適切なルートで登ることができそうだ。
 リフト終点からは少しだけ下りになっていて、そこを下りたところで装備を整える。風も無く暖かなので、ジャケットはザックにくくりつけた。
 チセヌプリを右に見ながら、しばらくは緩やかな上りが続く。そこから見上げるチセヌプリの斜面には上のほうに亀裂が入っていた。
 そこで私たちを追い抜いていった男性の話によると、そこに亀裂が入っているのを見たのは初めてとのこと。
 春になれば雪崩の危険性も少なくなるだろうと思っていたが、やっぱり油断はできない。
 やがて美しいシャクナゲ岳の姿が前方に大きく見えてきた。その背景に真っ青な空が広がっていれば最高なのに、今日は天気は良いものの空全体に霞がかかってしまって、その風景もちょっと冴えないものになっている。
 シャクナゲ岳の右手に緩やかな丘が見えるが、それがネットでシャクナゲ岳を検索しているときによく出てきた名前の「ビーナスの丘」だろう。
 そのときは、「なんだか変わった名前が付いているなー」とそれほど気にもしていなかったけれど、こうしてビーナスの丘を目の前にしてみると、その名の由来が何となく分かったような気がした。
 裾野から緩やかな曲線を描きながらこんもりと盛り上がった丘、そしてその頂上には小さな岩場がポコッと突き出して見える。何ともエロティックな眺めだ。
 もっともこれは私が受けた印象だけの話であって、本当は全然違う意味なのかもしれない。
 その美しいビーナスの丘はシミでちょっと汚れていた。さすがに今時期では真冬のような純白の雪景色は望めない。これもきっと黄砂の影響なのだろう。
シャクナゲ岳とビーナスの丘 緩やかな丘を登りきると、いよいよ真っ白な大斜面が目前に迫ってきた。先行している登山者の姿が、その中でゴマ粒のように見えている。
 やや急な上り坂になってきた。まだ直登できるような斜度である。一歩一歩確実に歩みを進める。
 冬山にあまり慣れていないので、この様な場所での距離感と言うものがはっきりとつかめない。果てしなく遠くに感じる山の姿だが、ゆっくりと歩いていても意外と簡単にそこまで近づいていける気がする。
 ふと目を上げると、ビーナスの丘が直ぐ目の前に見えていた。
 風当たりも強くなってきたので、そこで脱いでいたジャケットを着込む。
 ビーナスの丘から一人の女性が美しいシュプールを描きながら滑り降りてきた。上手なテレマークターンだ。
 感心して見とれていると、私の直ぐ近くまで滑ってきたところでバランスを崩して転倒してしまった。
 「こんにちは。」と挨拶を交わしたが、お互いに何となく気まずいタイミングである。
 ビーナスの丘を通り過ぎ、シャクナゲ岳の下までやってきた。そこから一気に斜度がきつくなる。上に行くほど斜面が狭まり、まるでピラミッドを下から見上げているような感覚だ。
 そのピラミッドの急斜面をジグザグに登り始めた。表面の雪が解けてきているので、斜面を削って平らな部分を作るようにゆっくりとスキーを進めていく。
 ところがスノーシューのかみさんはそうもいかない。直ぐにあきらめて、スノーシューを脱いでつぼ足で登り始めた。雪は締まっているので埋もれることも無く、そのほうが楽に登れるみたいだ。
 私のほうは、スキーを履いたままの方向転換に一苦労である。傾斜がきついので滑り落ちないようにストックで体を支えながら必死になって向きを変える。
 頂上に近づくとさらに斜度がきつくなり、登っているだけで恐怖感を覚えてしまう。まして、方向転換する時などはほとんど命がけである。
これで表面が凍っていたり、硬く締まった雪面だったりしたら、私の技術では登るのは無理かもしれない。
 それでもチセヌプリの時のような体力的な限界は感じなかった。高度差が少ないのは勿論だが、スキーを履いて山を登るのに慣れてきたこともあるのだろう。

目国内岳、岩内岳 チセヌプリ、ニトヌプリ、羊蹄山
 そうして頂上へ到着。リフト終点からは1時間半の行程だった。写真を撮したりしながらのんびりと登ってきたので、ベテランなら1時間ほどで登れるのだろう。
 頂上は南からの強烈な風が吹き付けていた。身体が飛ばされそうに感じるくらいの強風だ。
 登頂の感動を味わうような余裕も無く、直ぐに風下側の山陰に逃げ込みやっと一息つくことができた。
 眼下には目国内岳、岩内岳へと連なる白い山並みが広がっている。その右手には岩内の町並みと日本海、それに続く積丹半島の姿も霞に包まれてぼんやりと見えいている。
 その場所でのんびりとくつろぎたかったが、そこでも風が吹き付けてくるので早々に下山することにした。
 チセヌプリとニトヌプリ、そして遠くの羊蹄山が重なり合うように並んで見えている。その風景を眺めながら眼下の大斜面を颯爽と滑り降りよう。
 と思ってスタートしたものの、雪の重たさに驚いて一ターンで切り上げてしまう。表面がクラストしている雪よりはまだましだが、斜度もきついので思うようにターンがつなげない。
私とかみさんのシュプール もう一度滑り始めたが、やっぱりそれも一ターンで止まってしまう。
 せっかく苦労して登ったのに、こんな滑り方で降りていてはもったいなさ過ぎる。その後は覚悟を決めて、不恰好ながらも何とか弧を描きながらビーナスの丘に向かって一気に滑り降りた。
 かみさんの方は、マイペースで小さくターンしながらゆっくりと滑り降りてくる。
 二人の残したシュプールを比較すると、かみさんの方が上手く見えてしまうのが何とも腹立たしかった。
 毎回感じることだけれど、せっかく苦労して登ったのに、滑り降りるときはあっという間だ。大方の山スキーヤーはこの1本の滑降の快感を味わうためなら登りの苦労など気にもならないのだろう。
 我が家はなかなかその域に達することができない。スキーを履いていれば、歩いて降りるよりは楽だなーと言ったレベルである
 登ってくるときにすれ違った女性スキーヤーは、その後何度もビーナスの丘に登りなおしては滑降を楽しんでいるみたいだ。
 山スキーを思いっきり楽しむためには、スキーそのものをもっと上達しなければならないのだろう。

シャクナゲ岳を眺めながら昼食タイム そこからもう一滑りして、風を避けられそうな場所でお弁当を食べることにする。
 帰り道はどうしても、楽に滑られる方向に進んでしまいがちだ。途中で止まってGPSのデータと地形図を確認してみると、そのまま滑り降りていくとスキー場とは離れた沢に入り込んでしまいそうなことに気が付く。
 晴れて見通しの良い時でさえこれなのだから、視界が悪いときは本当に注意しなければならない。
 休むのにはちょうどよさそうな場所を見つけて、そこでスキーを脱ぐ。そのまま雪の上に大の字に寝ころがった。
 心地よい疲労感である。
 ダケカンバの枝越しに見えるシャクナゲ岳の姿が美しい。ついさっきまであの山の頂上に立っていたのだと思うと、不思議な気持ちになった。
 チセヌプリの姿も直ぐ近くに見える。
 ここでキャンプをしたら最高だろうな〜。直ぐにそんな考えが浮かんできてしまう。
 そう言えば、某カヌークラブの人たちがこの付近でキャンプをした話がネットで公開されていた。寝袋やテントを抱えてスキー場のリフトに乗り込む姿と言うのもなかなか笑えそうだ。
 昼食を済ませて、後はスキー場のゲレンデを滑り降りる。そうして、雪秩父の露天風呂に入って体の疲れを癒す。
 これが今年最後のスキーになるのだろうか。
 かみさんは「次はニトヌプリね!」とか言っているが、まだまだ行ってみたいフィールドは沢山残っているのである。

シャクナゲ岳GPSトラック



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