朝里岳(2006/02/21)

完璧な快晴に感動


 週末に天気が良くなることのない今年の冬、美しい雪山の風景を楽しむためには天気の良い日に合わせて休みを取るしかない。
 大雪の天人峡から戻ってきた日曜日、それまでの寒さが一変して急に気温が高くなった。その後火曜日まで天気が良く、気温も高めの予報になっている。
 この週で仕事が休めそうなのは唯一火曜日だけ。月曜日は朝から文句なしの快晴で、仕事から帰ってくるとかみさんが「テレビのニュースで旭岳が映っていたけど、素晴らしい青空だったわよ」と報告してくれた。
 本当は月曜日に休んで日月で天人峡へ行く計画も有ったのだが、つまらない会議を月曜日に入れられてしまったので、やむなく雪の週末に温泉旅行を決行したのである。
 何とか火曜日の休みは確保できたものの、今年は天気予報に裏切られることが多かっただけに、当日の朝になるまで心配でしょうがない。目覚めて直ぐに寝室のカーテンを開けたところ、手稲山の山頂までくっきり見えていたのでホッとする。
 今回の目的地は朝里岳、前回はキロロスキー場側から登ったので、今回は国際スキー場から登ってみることにした。
 こちらの方がゴンドラ終点からの標高差が大きいものの、帰りにはスキーで楽しく滑り降りられそうだ。キロロからだと、登りも下りも歩かなければならないような標高差しかないのである。
 札幌を出る時は空は晴れていたものの、薄い霞がかかった感じで見通しはあまり良くない。それが国際スキー場まで来ると、その霞も取れて真っ青な澄んだ空が広がっていた。
朝里岳に向けて出発 ワクワクしながらゴンドラに乗り込む。いつもならゲレンデの状態が気になるのに、山スキーを始めるとそんなことは全然関係なくなる。心は既に山の上だ。
 ゴンドラ駅を出て少し登ると、なだらかな丘のような山が見えた。これが朝里岳らしい。これまで何回も国際スキー場に来ているけれど、朝里岳の姿をこうして眺めるのは初めてだった。
 板にシールを取り付けていると、二人連れの男性がやって来て声をかけられた。
 「白井岳まで行くんですか?」
 「いや、朝里岳までです。」
 一瞬、怪訝そうな顔をされる。
 「まだ初心者なものですから。」
 どうやら朝里岳は、わざわざ目標にして登るような山では無いらしい。まあ、我が家単独で最初にチャレンジする山としては手頃なところだろう。
 いつものように私は山スキー、かみさんはスノーシューで登り始める。しばらくは緩やかな傾斜が続き、ダケカンバやトドマツがまばらに生えている樹林帯の中を進む。
 暖かな日が続いたので、樹氷で真っ白になった木々の姿を楽しめないのは残念だ。
 直ぐに体が汗ばんでくる。チセヌプリの時で懲りたので、今回は冬用のジャケットではなくフリースとゴアテックスの雨具の重ね着。フリースは出発時に脱いでいたがそれでも汗をかいてしまう。
 結局、雨具も脱いで上着無しで登ることにしたが、それくらいでちょうど良い感じである。
 やや傾斜がきつくなってきた。それでも。ジグザグに登らなければならなかったチセヌプリの時と比べたら、傾斜というようなレベルではないかもしれない。雪面も堅く締まって歩きやすいのだけれど、それでも直ぐに息が切れてしまう。
 普段から結構歩いているし、それなりの運動もしていると言うのに、山を登る時はそれらが全然役に立っていないようだ。山を登る体力を付けるためには、やっぱり沢山山を登らなければならないのだろうか?

ひたすら登る私 ひたすら登るかみさん

 頂上が近づいてくると次第に傾斜も緩くなってきた。
 真っ青な空に一条の飛行機雲。
 周りの雪面には複雑な風紋が描かれ、所々にダケカンバの枝が突き出している。厳冬期ならばそれらの枝も白いモンスターと変わるのだろうが、今は裸の姿を晒していた。
 トドマツが雪に覆われたモンスターも所々に立っているが、その表面はあばただらけになってしまい、所々から青黒い素肌がのぞけてしまっている。
 気温は低いものの、春先の雪山の雰囲気だ
頂上到着 やがて雪原の向こうに真っ白な余市岳の頂上がちょこんと見えてきた。登るにしたがって、次第に山の全体が浮かび上がってくる。
 そろそろ朝里岳の頂上に到着したようだ。と言っても、ここの頂上はほとんど真っ平らに近いのでどの辺が本当の頂上なのか判然としない。
赤いテープを巻いた木がポツンと立っていたが、もしかしたらこれが頂上の印しなのかもしれない。
 写真を撮りながらのんびりと登ってきたので、スタートしてから1時間ほど経っていた。
 確か、チセヌプリに登った時も1時間かかったはずだが、同じ1時間でも内容は雲泥の差である。へたり込みながら頂上に達したチセヌプリと比べて、途中で息切れはしたものの、まだまだ余力十分である。
 山に登れば眼下に広大な風景を見下ろすのが普通である。ところがここでは、眼下でなくて目の前に広大な雪原が広がっているのである。そこは飛行場とも呼ばれている場所だ。
 前回キロロスキー場から登った時は、ガスがかかって見通しが悪かったためにその広さを実感できなかったが、今回初めてその全貌を見ることができた。
モンスターの間を抜けて 上空には文句なしの青空が広がっているが、下界の方には靄がかかって石狩湾の姿はかすんでしまっている。遠くその霞の上に白い頂が頭を出しているのは積丹岳だろうか。
 その霞さえ無ければもっと素晴らしい風景だったのにと思われるが、まあそこまでの贅沢は言うまい。
 朝里岳から見る余市岳の姿にも期待していたのだけれど、その手前に広がる丘で余市岳の麓の方が隠れてしまっている。
 その丘の左側にももう一つの丘があり、そこからならば余市岳の姿も良く見えそうだ。昼食にするには早すぎるので、その丘まで登ってお弁当を食べることにした。
 シールを外すのも面倒なので、そのまま歩いて雪原まで下る。そこから朝里岳を振り返ると、何となく見覚えのある風景。前回、キロロからガスの中をさまよい歩いていて、ガスが晴れた一瞬に見えた丘がやっぱり朝里岳だったのである。
 こんな場所を方向も解らないまま歩いていたのだと考えると、ちょっと怖くなってしまった。
 陽射しが強くて、雪焼けが心配になったかみさんはタオルで覆面をする。
 丘を登っていくと、一旦は見えなくなっていた余市岳が再び姿を現してきた。そしてその横には遠くの羊蹄山が仲良く並んで見えている。モンスターの間を抜けながら、そんな風景を楽しむ。
 かみさんが真っ先に丘の上の一番高い場所に駆け上がった。どんな場所でも頂上に立つのは気持ちが良いものだ。
 そこからは直ぐ近くに白井岳の姿も見える。適度な疎林で、山スキーで滑るには面白そうな山である。実力がつけば一度は白井岳にもチャレンジしてみたい。


丘の頂上到着 お昼にしましょう

 昼食を終えて再び朝里岳まで戻る。そこからはいくらか斜度もあるので、かみさんはスノーシューからスキーに履き替えて滑り降りた。最後の登りは、再び私のザックにかみさんのスキーを取り付けてやる。
 今シーズン、約束の山スキーを買ってやることができなかったので、これくらいのサービスは仕方のないところだ。
 最高の天気に最高の風景を楽しんで、後は下山するだけ。シールを外してビンディングの踵を固定する。
 これで本来の滑りなれた普通のスキーに戻った筈なのに、踵が上がらなくなると急に自由が奪われてしまったような気分である。何だか、スキーの滑り方まで忘れてしまったような感覚だ。
 雪面も風紋でガタガタなので、私の技術ではまともに滑られない。
 それでも歩いて降りるよりはずっと楽である。下の方に見えるスキー場を目標にほとんど直滑降で滑り降りる。
 後ろから付いて来るかみさんが「ちょっと、こっちへ行くんじゃないのー!」と声をかけてきた。
 「そっちに行ったら崖だろう!」
 試しにちょっと横に寄ってみたら、本当に落ちたら死にそうな崖だった。
 「全く、かみさんの方向音痴も困ったものだ。」と思いながら、またスキー場の方に向きを変えて滑り降りた。
 ところがふと気が付くと、ゴンドラの駅が真横に見えている。
 「あれ?何処かで方向を間違えたんだろうか?」
 沢を一つ挟んだ向こうの尾根にゴンドラ駅が見えているのだ。
 「ごめん!間違えちゃった。ちょっと登り直そう。」
 「何言ってるのよ!あれはキロロのゴンドラよ!」
 「えっ!・・・。」
 一瞬、頭の中が真っ白になってしまった。完全に勘違いしていたようである。
 これでは、何のために地図とコンパスを持ってきているのか分からない。下り始める前にチラッとでも良いから地図を確認すれば、直ぐに気が付くことだ。
 目の前に見えるのが国際スキー場の一部であると、何の疑いも持たずに信じ込んでいた自分が恐ろしくなる。山での遭難は、こんなちょっとした油断がきっかけで引き起こされるのだろう。
 1kmほど滑り降りた斜面をもう一度登るだけで済むのだから、安い授業料だ。
 もっとも、かみさんはかなりご立腹の様子である。
 スキーを引きずってツボ足のまま斜面を登り始めたので、「あっ、そんな無理しないで、スキーは僕が持ちますから。」と、ひたすら低姿勢になる私であった。
 頂上まで登り直さなくても、斜面をトラバースしてようやく本来のコースまで戻ることができた。
 そこからは傾斜も急になっているので、ようやく気持ちよく滑り降りられそうだ。ところが、デコボコの堅い雪面の所々に雪が吹き溜まっていて、おまけに気温が上がってその雪が重たくなっているものだから、まともにターンができない。
 自分のスキーの技術の下手くそさに腹が立ってしまう。かみさんも、「これならば登りの方がよっぽど楽だわ!」と文句を言っている。
 何とかゴンドラ駅まで降りてきて、後はスキー場のゲレンデを一気に下まで滑り降りる。
 相変わらずのドタバタで終わりを迎えた我が家の3回目山スキー。
 次回はいよいよ余市岳チャレンジかな?

余市岳その1 余市岳その2

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