北海道キャンプ場見聞録
我が家のファミリー通信 No.86-4
奈良旅四日目(飛鳥)
奈良旅4日目。
この日は吉野の桜を見に行くかどうかで迷っていた。
吉野の桜は丁度週末に見ごろを迎えそうだったけれど、コロナのこともあり週末の混雑は避けたかった。
そうすると、金曜日か週明けの月曜日に行くかのどちらかである。
考えた末に、吉野は山の方に位置するので月曜日でも桜はまだ綺麗に咲いているだろうと考え、金曜日のこの日は飛鳥を回ることにしたのである。
今日も万葉の里巡りで歩く気満々でいたけれど、飛鳥は見どころが点在しているのでレンタサイクルで回るのが定番らしい。
自転車で観光するのも初めての体験なので、今日はレンタサイクルを借りることにした。
近鉄奈良駅から電車に乗って、大和西王子駅で乗り換え。
JRよりも近鉄の方が混んでいるようで、大和西王子駅の乗り換えではホームが通勤客で溢れていた。
コロナ感染が怖いので思わず息を止めてしまうが、普通に仕事をしている人達は何時もこんな状況で通勤しているのだろう。
乗り換えた電車は比較的空いていたので少しは気が安らいだ。
橿原神宮前でもう一度乗り換えて、丁度レンタサイクル屋がオープンする午前9時に飛鳥駅に到着。
駅前の明日香レンタサイクルで自転車を借りる。
このママチャリで飛鳥の里を巡る
「起伏があるので電動自転車がお勧めですよ」と言われたが、「大丈夫です」と直ぐに断る。
電動自転車だと600円高くなるのだが、後になって600円くらいケチらなければ良かったと後悔することとなる。
飛鳥は田んぼが広がるような平坦地だろうと勝手に想像していたのだが、実際はその殆どが丘陵地だったのだ。
おまけに変速機の付いていないママチャリなので、余計に坂道が大変だったのである。
最初に向かったのが高松塚古墳。
周辺は国営飛鳥歴史公園高松塚周辺地区として整備されている。
公園まで緩やかな登りが続き、公園に入ってからもアップダウンの道。
早くもこの段階で電動自転車を借りなかったことが失敗であることに気が付いてしまった。
高松塚古墳、古墳自体はただの土盛りである
この後の飛鳥以外の観光でも何度も古墳を見ることになるのだが、古墳自体はただの築山と何の変りもない。
そんな中でもこの高松塚古墳は、極彩色の壁画があることで有名である。
その壁画は、高松塚壁画館の中で復元展示されている。
しかしコロナウイルスの影響で施設は閉館中、これではここまでやって来た意味が何もない。
開館していたとしても殆ど人の来ないような施設なのに、何で閉館しなくてはならないのか、疑問を感じてしまう。
何となく飛鳥っぽい風景だけれど、勝手にそう思っているだけかも
それでも古墳の近くからは飛鳥らしい田園風景が眺められて満足できた。
ただ、何を持って飛鳥らしいのかは、私の全く個人的な主観でしかない。
次の目的地である橘寺へ向かう途中にも天武・持統天皇陵や亀石などの観光スポットがあったが、どちらも「ふーん」と言いながら写真を撮って終わるようなものだった。
観光スポットがパッとしなくても、ここでは万葉の里とも呼ばれる飛鳥の風景を楽しむのが主な目的だったので、全く不満はない。
この丘が天武・持統天皇陵
橘寺本堂
聖徳太子生誕の地でもある橘寺は良いところだった。
満開の桜が咲き誇る境内は美しく、二面石や三光石などの飛鳥時代の石造物が残る。
寺の周りの風景も、私のイメージ通りの飛鳥の風景である。
橘寺境内の二面石
菜の花畑や桜に囲まれる橘寺
近くの川原寺も歴史のある寺のようだが、現在は特に見るべきものも無さそうなので中には入らずに済ませた。
しかし、寺の前には大きな遺構が広がっていて、飛鳥に都が置かれていた頃は、ここも大きな寺であったことがしのばれる。
川原寺前に広がる遺構
石舞台古墳へ向かう途中、飛鳥川沿いの美しい桜並木に誘われて、川沿いの道に自転車を乗り入れる。
こんな時は機動力のある自転車が便利である。
飛鳥川の桜並木を自転車で走ってみる
しかしそこから先、石舞台古墳までは緩やかな登り坂が続き、おまけに歩道も無くなって交通量の多い道路の際を走らなければならなかった。
自転車で回る時は良いことも悪いこともあるのだ。
石舞台古墳は見応えがあった
そうして辿り着いた石舞台古墳は多くの人で賑わっていて驚かされた。
周囲は国営飛鳥歴史公園石舞台地区として整備され、お土産処の夢市、農村レストランの夢市茶屋などもあって、人気の観光地なのだろう。
平日なのに駐車場も満車になっているほどの混雑ぶりである。
離れた場所から眺めた石舞台古墳
石舞台古墳は、元々は土の中に埋もれていた石室が露出したもので、ただの築山にしか見えない古墳と違って見応えがあった。
おまけに古墳を取り巻く様に植えられている桜が満開で、更に見応えを増していた。
石室は外から見ても、その石の大きさに圧倒されるが、中に入ると更にその大きさを実感できる。
6世紀の築造で、これだけの巨石を積み上げたことが信じられない。
石舞台古墳の内部
石舞台古墳を楽しんだ後は夢市茶屋で昼食をとる。
店内は混雑していたけれどテラス席が空いていたので良かった。
この時期、人の多い密閉された空間はなるべく避けたいのである。
地元野菜をふんだんに使った古代米御前もなかなか美味しく、満足して店を出る。
次の目的地である岡寺までの道も歩道のない狭い道だったけれど、下り坂なのが良い。
しかし、山の中腹にある寺なので、途中からは再び登り坂となる。
しかもその坂は次第に傾斜が急になり、途中でとうとう自転車を諦め、徒歩で登ることにした。
歩くのも大変な坂道を登って、12時15分岡寺に到着。
堂々とした造りの仁王門を抜けて境内に入ると、ここでも満開の桜が出迎えてくれる。
岡寺の境内
6世紀末から100年間にわたって都が置かれた飛鳥の地は、埋蔵文化財の宝庫ではあるけれど、歴史が古すぎて現存する建物も無く、重要文化財に指定されている建物は岡寺のこの仁王門と書院の二つだけらしい。
眺めの良い三重塔、奥の院の石窟など、ちょっとした見どころもあって楽しく境内を歩く。
シャクナゲが綺麗な事で知られているみたいだが、花の時期は4月中旬以降になるのでまだ少し早い。
それでも1株だけ、満開の花を咲かせているシャクナゲがあって楽しめた。
岡寺からの眺め、眺めは良いけどここまで登ってくるのが大変だった
岡寺を出てから次の飛鳥寺までは下り坂がずーっと続いて、ペダルを漕がなくても自転車は勝手に進んでくれる。
今まで散々苦労したのだから、これくらいのご褒美はあって当然だ。
途中で酒船石に寄り道。
美しい竹林の中を歩いていくと、ポツンと置かれた巨大な石が現れる。
酒船石の美しい竹林
表面に溝が刻まれているが、何の目的で使われたのか諸説あって、はっきりしないらしい。
飛鳥の地にはこのようなミステリーストーンと呼ばれる石造物が幾つかある。
飛鳥の歴史遺産は土に埋もれたものばかりで、地上で見られる石造物は貴重な遺物となっている。
最近放送されたNHKのブラタモリにも登場した酒船石
酒船石の近くには平成4年に発掘されたばかりの石垣が公開されていた。
説明看板には、この辺りの丘は石垣を積み上げて作った人工の丘であることが分かったと書かれている。
古代都市のあった飛鳥の地は、地面を掘れば何かが出てくるのかもしれない。
周りに広がる風景にロマンを感じてしまう。
大仏の名前の割にはあまり大きくはない飛鳥大仏
飛鳥寺での見どころは日本最古の仏像である、飛鳥大仏だ。
大仏とは言っても高さは3m。
東大寺の大仏とは大きさが違い過ぎるが、同じなのは写真撮影が可能であること。
今回の奈良の旅で、仏像の写真を堂々と写せたのはこの二つの大仏だけ。
大仏さんは形ばかりではなく、心が大きいのだろう。
この梵鐘の音が素晴らしく美しかった
飛鳥寺でもう一つ感動したのは、梵鐘の音の良さである。
ここの鐘は自由に突けるのだが、その音の余韻が感動的に美しい。
鐘自体は昭和になって作られたものだけれど、専門家による音響設計がされているらしく、新しく作られたものが押しなべて価値が低いとは限らないのである。
飛鳥寺の隣に広がる田園風景も、私のイメージしていた通りの飛鳥の風景だった。
その風景の中を颯爽と自転車で駆け抜けるのはとっても気持ちが良い。
飛鳥京のあった場所を自転車で走る
次に向かったのは国営飛鳥記念公園甘樫丘地区の展望台。
公園入口に自転車を停め、展望台まで歩いて登る。
展望台からは飛鳥の地を一望でき、しかも満開の桜が出迎えてくれて、今日の飛鳥サイクリングのこれがクライマックスだったかもしれない。
素晴らしい眺めが広がる甘樫丘展望台
飛鳥京のあった場所を眺める、これが日本の原風景なのだろう
その後も駅に戻りながら、飛鳥ミステリーストーンの鬼のせっちん、鬼のまないた、猿石などに寄っていく。
そうして午後2時半に飛鳥駅まで戻ってきて、この日のサイクリングの距離は20キロとなったのである。
普通のサイクリングならば何ともない距離だけれど、変速機の無いママチャリで起伏の多いこの距離を走ると、さすがに太ももが痛くなっていた。
ライトアップされた佐保川桜並木
この日は更に佐保川桜並木のライトアップを見に行き、ここでもまた4キロ歩くこととなる。
さすがにこの日は夕食は作らずに、近くの定食屋で済ませることにした。
良くあるタイプの安く食事のできる店で、宿の近くにこんな定食屋があるのもありがたい。
今回の奈良旅では昼食を含めた外食の中で、一番低料金で腹いっぱいになれたのである。
火の灯った行燈も良い雰囲気だ
3日前に一度歩いた桜並木だけれど、ライトアップされた桜はまた別の美しさがあり、手作りの行燈にも火が灯され、昼間の疲れも忘れさせてくれた。