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我が家のファミリー通信 No.52

鉄ちゃんの函館観光


函館駅江差のかもめ島キャンプから函館に戻ってきたこの日は、一日函館観光の予定である。
我が家が函館を訪れるのは多分、新婚の頃に遊びに来て以来のような気がする。
もしかしたらその後にも訪れているかもしれないが、それは車で通過する程度だ。
我が家にとっての函館は、根室や稚内よりも遠い街なのである。

駅の大型コインロッカーに二人分のザックを無理矢理押し込む。
駅の建物から一歩外に出た瞬間、冷たい風に震え上がった。海からの冷たい空気が流れ込んでいるようだ。
江差の気温に合わせて半袖半ズボン姿になっていたので、余計にその風が身に沁みる。

まずは五稜郭に向かうことにした。
市電の停留所に行くとちょうど良いタイミングで電車が入ってきたので、それに飛び乗る。
タワーから五稜郭を見下ろす周りの人の服装を見ても、私のような薄着の乗客は誰もいない。
五稜郭公園前で電車を降りてから五稜郭までは、少しでも暖かくなるように、日の当たっている側の歩道を歩いていく。

五稜郭タワーの建物の中に入ってホッと一息。
天気も良いので、タワーの展望台からは遠くの山並みまではっきりと見えている。
全面ガラス張りで、そのガラスも斜めに張り出した形なので、90m下の風景が足元に広がり、高所恐怖症の人ならば目まいを覚えるかもしれない。


足がすくみそうな風景
目がくらみそうだ
  土方さんと一緒に
  土方さんと一緒に

展望台から降りて建物を出る前に、長袖のTシャツを着込む。
その後は、今は公園となっている国の特別史跡五稜郭跡の中を一回り。
サクラの名所としても知られているけれど、桜が咲いていなければ、普通の都市公園と大して違いは無い。

五稜郭の石垣 五稜郭の真ん中には2010年に再建された函館奉行所の建物があるけれど、わざわざその中を見学する気にはなれない。
五稜郭を見に来るのならば、事前に函館戦争前後の歴史を調べておけば、もっと興味を持ってその中を歩くことができたかもしれない。
特に、昨日は江差で旧幕府軍の旗艦でもあった開陽丸の展示を見たばかりなのだから、ちょうど良い機会を逃してしまったようだ。

私にとっては初めての五稜郭、かみさんにとっては修学旅行以来の五稜郭だったけれど、ここを訪れるのならばやっぱり桜の季節に来た方が良さそうである。


函館奉行所 五稜郭からタワーを望む
真新しい函館奉行所 五稜郭からタワーを見上げる

塩ラーメン昼食はやっぱり塩ラーメン。
腹も減っていたので、五稜郭タワーのすぐ前にあった「函館あじさい麺厨房」という店に入った。
場所柄、如何にも観光客を相手にしたような店だが、ラーメンはそれなりに美味しくて安心する。
こんな場所で不味いラーメンを食わせていたら、それこそ函館塩ラーメンの名前を落としてしまうことになるだろう。

電車の停留所まで戻る途中、手を触れると幸せを呼ぶと看板に説明のあった「ふしぎな石」を撫でてみる。
詰まらない仕掛けに見えるけれど、今日の様に観光客気分で歩いていると、こんなものでも面白く感じてしまうのだ。


ラッキーピエロ ふしぎな石
ラッキーピエロにも入りたかったけど・・・ 幸せになりますように

ハイカラ号停留所で電車を待っていると、向かい側の停留所にレトロ市電「函館ハイカラ号」がやってきた。
そのレトロ市電は一日に数本しか運行していないので、ちょうど良いタイミングだった。
もっとも、自分たちの乗る側に来てくれたら、もっと嬉しかったのは確かである。
事前に調べておけばその時間に乗ることもできたのだが、今回は突然思い立った函館観光なので、事前リサーチが全くできていないのである。

再び市電に乗って、函館駅を通り過ぎ、終点の函館どっく停留所で下車。
今回の函館観光で頼りにしたのが、「函館街歩きマップ」である。
全部で22コースが設定されていて、その中から適当に選び出したコースを自宅のパソコンで印刷して持ってきていた。
2年前に弘前市内を観光した時も、同じような街歩きマップがあって、とても重宝したことがある。

市内に点在する観光施設を点で訪れるのではなく、線として歩いていると、途中で地元の人達の生活に触れられたり、思わぬ発見があったりして、楽しめるのだ。
古民家「遠くへ行きたい」の歌詞の様に「知らない街を歩いてみたい」が我が家の旅の楽しみ方である。

最初に参考にしていたマップは「てくてく坂道 姿見坂・弥生坂編」である。
本来のコースは一つ手前の停留所大町がスタートになるのだが、細かいことは気にしない。
最初の見所は昭和3年創業の大正湯。現在も営業中の風呂屋というのが面白い。

でも、そんな建物よりも一般の古い民家の方に興味がいってしまう私達である。
小樽もそうだけれど、北海道内の歴史のある街では、観光化した建物よりもこんな民家の方に本当の歴史を感じてしまうのだ。


古民家 古民家
和洋折衷のふしぎな家 古民家を改造した雑貨屋

坂道の多い函館だけれど、歩くのが好きな私達夫婦には全く苦にならない。
ここでも、それぞれの坂に名前が付けられていて、それぞれに違う風景を楽しめる。
その中の一つ「幸坂」を登り詰めたところの山上大神宮にお参りをし、途中の舟見公園では港の風景を眺めながらブランコに乗る。
地図も参考になるけれど、面白そうなものは自分で見つけなければならない。

函館らしい坂の風景
函館らしい坂の風景だ

ブランコ 窓辺の猫
港を眺めながらブランコに 高級住宅街では窓辺の猫も気品がある

コースを外れて元町方向に歩いて行くと、やたらに立派な建物が目に付くようになる。
名前のある建造物かと思ったら、どれも個人の家のようだ。
豪邸というレベルを遥かに超えたような建物である。

元町公園そのまま歩いて行くと、こちらは観光施設である旧函館区公会堂の前に出てきた。
私はこの公会堂のように、外装だけを新しくした歴史的建造物があまり好きではない。
その建物が出来たばかり頃の様子に復元したのだろうが、そのおかげで、年月を経たことによる風格というものが全くなくなってしまっている。
その様式を真似て最近建てられたばかりのような個人住宅と比べても、外観上は何の違いも無いのである。

この辺りに来ると急に観光客の姿が多くなる。
街歩きマップの「これぞ王道!函館の魅力凝縮コース」に入ってきているので、それも当然。
ソフトクリーム屋の客引きお姉さんが、「この先にアイスクリーム屋がありますが、うちはそのもう一軒先の店です。美味しいですよ〜」と割引券を配ってくる。
適当に相づちをうちながら通り過ぎると、また別の客引きお姉さんが行く手を塞ぐ。
ハリストス正教会「うちは3軒目のソフトクリーム屋です。何々なのが特徴で〜」
何だかな〜って感じである。

で、結局2軒目の店でソフトクリーム買って、それを食べながらそぞろ歩く。
ハリストス正教会などの写真を撮ったりして観光客気分を楽しんだ後は、街歩きマップ「北の豪商 高田屋嘉兵衛物語」コースに合流。

司馬遼太郎の「菜の花の沖」を読んだことがあるので、高田屋嘉兵衛には興味があり、高田屋嘉兵衛資料館に入ってみる。
でも、特に興味深い展示はなく、これならば昨日の江差で見てきた矢代鍛冶屋展示場の方が正直面白かった。
赤レンガ倉庫群には特に感想もなく、がごめ昆布の店「丸昌」で昆布を買う。
何故か店内に猪木さんの写真が貼られていて、それが嬉しかった。
街歩きマップを見るとその付近に日本最古のコンクリート電柱があるはずなのだが、何度かそこを通り過ぎたはずなのに、見つけられないまま終わってしまった。

手動制御エレベーター次に向かったのが丸井今井百貨店函館支店の建物を利用した地域交流まちづくりセンター。
目的は、ここにある東北以北最古の手動制御のエレベーターである。
センターのスタッフの方にお願いすると、このエレベーターに実際に乗せてもらえるのだ。
案内してくれたスタッフの女性はとても面白い人で、今回の函館観光の中ではここが一番良かったかもしれない。

私は最初、手動制御じゃなくて手動エレベーターだと思っていたので、「この女性がハンドルをぐるぐる回してエレベーターを上げ下げするんだろうか?」って心配してしまった。
お姉さんに笑われたが、そんな勘違いをしている人が結構いるそうだ。
エレベーターおたくの人達のこだわりポイントとかも教えてもらって、とても楽しい一時だった。

活イカその後、ホテルにチェックインしてから、外に食事に出る。
入ったのは、函館駅からも近い「活魚ろばた汐活」。
目的は勿論、活イカである。
皿に乗って運ばれてきた活イカ君は、足をもぞもぞと動かしながら、恨めしそうな目で私を睨んでいた。
他の食べ物も美味しく、最後の会計も思っていたより安くて、観光都市函館の居酒屋としては二重丸の店だった。

旅先のホテルに泊まっても早起きしてしまう私達夫婦なので、5時過ぎに散歩に出る。

摩周丸 旧函館第二岸壁に係留・保存してある摩周丸を見学。
高校生の頃、修学旅行や部活の全国大会などで何度も乗ったことがあるけれど、遠い昔のこと過ぎて、その姿を見ても特に感慨は湧いてこない。

その後は函館朝市で朝食を食べることにする。
朝市なのだから朝早くから賑わっているのだろうと思っていたら大間違い。
まあ、ある程度は想像していたが、ここまでとは思わなかった。
地元の人の姿は全く無く、時間も早すぎて観光客もまだほとんどいない。
必然的に市場の人達の全ての目線は私達に注がれる。
「おにいさん、カニの見分け方教えてやるよ」
「これはうちで作っている昆布だから他とは違うよ」
五月蠅くてゆっくり歩いてもいられない。
市場の中の食堂も、市場で働く人達の店ではなく、何処も観光客相手の様な店ばかりである。面倒なので、途中で目に付いた店にそのまま飛び込む。
賑やかになってきた函館朝市お客さんが誰もいないのに、店員がやたら沢山いるのに驚いてしまう。多分、観光客が押し寄せる頃には混雑する店なのだろう。
写真も撮らなかったので、ここで何を食べたのかも思い出せない。

その後、ホテルに戻り、午前9時30分発の特急に乗る前に、もう一度朝市を訪れた。
その時間になると、市場内は観光客で混み合い、中国語やら韓国語が飛び交っている。

人だかりが出来ていたので、何事かと思ってのぞき込むと、そこでは、はかりの上に乗せられた巨大なタラバガニが足をバタバタと動かしていた。
中国人の笑いものにされて気の毒なカニである。

そんな人混みのおかげで、こちらは欲しいものを探してゆっくりと買い物が出来た。
「函館朝市には朝一で行くものではない」
それが今回の函館観光での教訓である。

江差キャンプも含めた今回の鉄ちゃんの旅は札幌行き北斗5号で締めくくり。
函館駅で買った大沼黒牛弁当がとても美味しかったのは、車窓の風景がスパイスになってくれたせいもありそうだ。

2013年6月1日


北斗5号 駅弁
帰りは北斗5号 美味しい弁当だった


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