次第に上空に広がってくる雲を心配しながら見上げていたら、バスを待っている間にとうとうポツポツと雨粒が落ちてきてしまった。
その雨から逃げるように大原行きのバスに飛び乗る。バスは、先程私達が亀の飛び石で渡ってきた高野川に沿って北上する。
かみさんは高校の修学旅行以来の大原。私は始めての大原なので、思っていた以上にバスがどんどんと山奥に分け入っていくので驚いてしまう。
雨脚は次第に強まり、終点の大原に着いても雨は降りやまず、バスを降りて直ぐに近くの茶店に逃げ込む。
時雨れ模様の天気で、時々日も射してくるものの、雨脚はなかなか弱まらない。私の気のせいかもしれないが、京に降る雨はきめが細かい。北海道でこんな雨が降るのはあまり見たことがない。
多分、この雨が北海道で降れば雪に変っているはずだ。きめの細かい雪が降るのは見慣れている風景なのである。
雨が小降りになってきたと思って店を出ると、直ぐにまた強まってきた。
三千院へと続く参道には土産屋が立ち並び、その中には参道を覆うように庇を延ばしている店がある。
ちょうど良い雨宿り場所になるのは良いけれど、当然ながら蜘蛛の巣に捕まった蝶のように土産屋の餌食となってしまう。
もっとも、かみさんは最初からその餌食になるつもりでいたらしく、漬物にドレッシングと次々と買い漁っていた。
そして買ったものは、全て私のザックに納まっていくのである。
幸か不幸か、本来はザックの中に入っているべき二人分のウィンドブレーカーとダウンと傘は全て出払って空っぽになっていたのだ。
三千院に着いて寺の中を拝観する。
これまで大きな寺や神社ばかりを巡ってきたので、人間のスケールで作られたこんな寺に入ると心が落ち着く。
葉が付いたままの竹の筧が何とも風流である。
雲間から漏れ出た太陽の光が庭に射し込むと、その庭を覆っている一面の苔が鮮やかな緑色に染まる。
裸の木々の枝先に付いた水滴、降り続ける雨の細い筋、それらも光を受けてキラキラと輝く。
この雨が大原の里を一層艶めかしいものにしているようだ。
三千院を出た後は勝林院へ向かう。
他にも近くには宝泉院や実光院などもあるが、それぞれに拝観料がかかるので、全部を回っていてはその金額も相当なものになってしまう。
そこで、門の前から中を覗きこみ、さてどうしようと悩むことになる。
800円の拝観料をケチったばかりに宝泉院の座敷から眺める美しい竹林を見逃してしまったことが残念でしょうがない。出発前にもう少しそれぞれの寺の内容を調べておけば良かったと後悔しても後の祭りである。
|