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瀬戸内の旅(犬島・石山寺)

赤穂海浜公園オートキャンプ場・船中泊(4月15日~18日)

帰りのフェリーでの船中泊を除けば、長かった旅も今日が最後の宿泊となる。
そして最後にまた瀬戸内海の島に渡る。

宝伝港午前8時発犬島行きファリーに乗るため、宿泊先のビジネスホテルを6時半にチェックアウト。
やって来た宝伝港は、「ここからフェリーが出るの?」と思ってしまうような小さな港だった。
公衆トイレはあるけれど、フェリーターミナルのような建物は無し。
犬島行きの船が入ってくると、桟橋の上で女性が料金を集める。

宝伝港
瀬戸内で乗ったフェリーの中では一番小さいフェリーだった


昨日から瀬戸内国際芸術祭2022が始まっていて、犬島もその会場の一つとなっている関係なのか、平日だけれどお客さんも多い気がする。
犬島での目的は犬島製錬所美術館である。
廃墟好きの私なので、ここの製錬所の遺構を活用した美術館の写真を見て、是非訪れたいと考えていたのだ。

宝伝港
宝伝港を出発


事前に作成した行程表では予備日のオプションメニューとして考えていた犬島観光だったけれど、それが丁度いい感じでこの日に嵌ったのである。
10分もかからずに犬島に到着。

犬島のアート
道端にも何気ないアートが


瀬戸内国際芸術祭は、今回私が回った小豆島や女木島、そしてここの犬島を含め12の島が会場になっている。
犬島製錬所美術館の開館は午前9時からなので、それまで島内を歩いてい回る。
周囲4キロの小さな島なので、歩いてでも一周できるくらいだ。

アートを楽しむ島として、製錬所美術館の他にも島内には色々なアート作品が点在する。
その中でも、集落の中にギャラリーが点在する「家プロジェクト」が知られているようだ。

犬島のアート
家プロジェクトの一つF邸のアート


散歩しながらアートを見られるのは、私にとっては理想的な形である。
初めて訪れる町や村の中を歩くのが私はとても好きなのだが、その途中に色々なアートがあるのだから、街歩きの楽しさが倍増するのだ。

犬島のアート
岸壁の舗装の上にもアートが描かれている


フェリーに乗っている時から、大きな花崗岩が防波堤のように並んでいる様子が気になっていたので、近くまで行ってみた。
自然のままなのか、人工的に積み上げたのかは分からないが、不思議な風景だ。
犬島の花崗岩は犬島石として知られていて、大阪城の築城にも使われているらしい。

犬島の花崗岩
人工的に並べられた石なのだろうか


アートなのか、良くわからないものもある。
形よく網が張られていて、これもアートなのかと思ったら、中に鶏がいたので、ただの鶏小屋なのかもしれない。

犬島のアート
ただの鶏小屋もアートに見える


家プロジェクトの中で気に入ったのはS邸「コンタクトレンズ」だった。
私にはコンタクトレンスと言うよりも水滴に見えて、反対側に居たかみさんが一つ一つの水滴に映り込んでいて、なかなか面白い。

犬島のアート
水滴の向こうにいるかみさんが(家プロジェクトS邸)


その近くに、窓の内側全面に緑と茶色の葉がびっしりと茂っている家があった。
これもなかなか面白いアートだと思ってみていたけれど、これはやっぱり空き家の内部までツタが入り込んでいるだけなのだろうとの結論に達した。

犬島のアート
これは真面目にアート作品だと思った



9時を過ぎたので、製錬所美術館に向かった。
ゲートから製錬所敷地内に入ったところで、直ぐに嬉しくなってくる。
レンガ舗装にレンガの壁、そしてその先に見える崩れかけた4本のレンガの煙突。
既に廃墟感たっぷりである。

犬島製錬所美術館
この廃墟感がたまらない


そこに使われているレンガは、あまり見たことのない色と風合いである。
後で調べてみると、これはカラミ煉瓦と言って、製錬時に排出されたスラグでつくられた煉瓦らしい。

犬島製錬所美術館
独特の色合いのカラミ煉瓦


感動したまま美術館の中へ入っていく。
最初は手探りしながらでないと進めないような真っ暗なトンネルが続く。
その先には明るい光が見えている。
しかし、角を何度か曲がっても、その光は同じような場所に見えている。
鏡を使っているようだ。
展示内容は三島由紀夫をモチーフにしたものらしいが、よく理解できない。
この美術館の建物やその環境システムなどを含めてが一つの作品となっているらしい。

犬島製錬所美術館
トイレの壁にはこの建物の換気システムの図が落書きのように描かれていた


そして、直ぐに出口まで来てしまった。
あれ?もう終わりなの?
それが正直な感想である。

私が考えていたイメージとは全然違っていた。
製錬所の廃墟の中にアート作品が展示されているような、以前に見ていた「赤平炭鉱アートプロジェクト」的なものを考えていたのだ。

犬島製錬所美術館
美術館から出ると期待していた風景が広がっていた


ガッカリしながら外へ出たところ、そこには私が期待していた風景が待っていたのである。
それは正に廃墟の風景だった。
そして、その廃墟具合が絶妙なバランスを保っているのだ。

犬島製錬所美術館
これは私にとって最高のアート作品だった


ツタの絡まり具合、植物の成長具合、そしてレンガの煙突の崩れ具合。
この様な廃墟は、時間が経つにつれて自然の中に飲み込まれていくものであるが、植物に覆われすぎていても面白くないし、当時の姿がそのまま残りすぎていても物足りない。
廃墟ファンはこだわりが大きいのである。

犬島製錬所美術館
パーツを拡大するとその美しさが良く分かる


美術館を出て、帰りのフェリーまでまだ時間があるのでもう少し島の中を歩いてみる。
9時前には入れなかった施設でも、中を見られるようになっていた。

犬島のアート
犬島家プロジェクト「F邸」


島の西側の集落まで歩いてみた。
そこにあった犬島ハウスプロジェクトによる作品「犬島の島犬」は見応えがあった。
その大きさにも驚いたけれど、近づいてみるとそこに使われているタイル一つ一つにプロジェクトに加わった人達によるものなのか、名前や模様が刻まれているのも興味深かった。

犬島のアート
インパクトの大きい作品だった


もう少し見てみたい場所もあったけれどフェリーの時間が迫っていたので、港へと戻る。
そして11時10分発のフェリーで本土へ。

犬島港フェリー
犬島港を出発


その乗っていたフェリーが、犬島の直ぐ隣りにある犬ノ島に寄り道。
そこからも誰かが乗るのかなと思っていたら、桟橋でもない岸壁にフェリーの舳先を接岸させる。
するとそこで待っていた人が、弁当の空箱を船に載せ、代わり船に積んであった弁当をそこに下ろす。
犬ノ島には工場があるので、そこに弁当を届けるのもフェリーの役割らしい。
何となく島の人達の暮らしぶりが見えて面白かった。

犬島港フェリー
ここで弁当の積み下ろし


本土に戻ってきてから、気になっていた近くの神社に行ってみる。
道路沿いの看板に「御鎮座2600有余年 安仁神社」と書かれているのを見て、「こんな場所にそんな古い歴史のある神社があるのだろうか」と興味を持ったのだ。
周りには畑が広がり、そんな神社がる雰囲気は全くなかったのだ。

安仁神社
こんな田舎に由緒のある神社があるのも歴史のある土地の面白さだ


神社そのものは、拝殿も本殿もそれなりに立派で、由緒のある神社なのは確かなようだ。
御朱印も貰えて、良い記念になった。

今日のキャンプ地は兵庫県赤穂市にある赤穂海浜公園オートキャンプ場である。
翌日の名古屋港までの移動を考えて、なるべく名古屋に近く、そして瀬戸内の旅を締めくくるキャンプ場として、瀬戸内海に面しているキャンプ場が良いとの理由で選んだところだ。



昼食に良い店が見つからず、途中の牛窓のコンビニで弁当を買い、港を眺めながら車の中で弁当を食べる。
ここ牛窓は、自称「日本のエーゲ海」として観光地にもなっているようだ。
後で調べてみたら、小豆島を意識しているのか、オリーブ園に風車、エンジェルロードに対抗してウィーナスロードもあるらしい。
そんなことは全く知らずに、日本のエーゲ海を後にして、途中で道の駅に寄り道しながら午後3時にキャンプ場到着。

すると、受付のおじさんが事務所の外まで出てきて出迎えてくれた。
とても親切な方である。
受付の際に「とても失礼かもしれませんが、65歳以上の方は割引になるのですが」と言ってくれた。
自分がそう言われる対象に見えたのかが気になったけれど、そんなことより少しでも安くなる方がありがたい。
「ハイ!66歳です」と申告して、1区画5000円の平日料金を500円割引してもらった。
できれば疑ってもらって証明書の提示を求めて欲しかったけれど、すんなりとそのまま申告が受け入れられたことも、少しだけ心に引っかかったのである。

赤穂海浜公園オートキャンプ場
最後のキャンプはちょっとだけ奮発


ちなみにここのオートサイトにはエコノミーとロイヤルがあり、流し台と野外炉が付いているロイヤルの方が千円高くなっている。
最後のキャンプだし、流し台があるとかみさんも楽なので、ここは奮発してロイヤルを選択した。
風呂はキャンプ場利用者だと割引してもらえる、近くの温泉施設に入りに行く。

ここのキャンプ場は海に面していると思っていが、正確には川の河口に位置している。
そして西側に向いているので、夕日も見られそうだが、今日は曇っているので夕日は見られない。
そもそも、サイトからは松林や植え込みがあるので、川側の風景はほとんど見られないのだ。
川との間には1本の道路が通っているけれど、その間には柵と擁壁があるので、道路にも出られないのである。

赤穂海浜公園オートキャンプ場
焚き火もできずにテントに籠もって過ごす最後の夜


焚き火用の枯れ枝は拾い集められそうだけれど、今日は風が強いので焚き火は止めておく。
場内はキャンパーも少なく、静かな夜を過ごせた。

翌朝は、風があったおかげでテントは全く結露していなかった。
最後のキャンプでテントは完全に乾かして片付けたかったので、これは有り難かった。

赤穂海浜公園オートキャンプ場
サイトからは外の様子が全く見えない


少しキャンプ場の周りを歩いてみる。
キャンプ場のゲート前までやってくると、丁度職員の方がやって来てゲートを開けてくれた。
その時は気が付かなかったけれど、朝7時半までゲートは閉められていて、車も人も出入りできなくなっていたのだ。
自分たちのテントの前の川まで歩いてきたけれど、キャンプ場のゲートからは1キロ以上もあった。
以前にイノシシが侵入してキャンパーが怪我をしたこともあったらしく、キャンプ場を完全に囲ってしまうのはしょうがないことなのだろう。

赤穂海浜公園オートキャンプ場
サイトの前にはこんな風景が広がっていた


サイトまで戻ってくると、テント内がカラスに荒らされていた。
ゴミは中の方に入れてあったので大丈夫だろうと油断していたのだ。
でも、そんなに酷い被害はなく、買ってから日数が経ってかみさんが捨てようと思っていた豆腐も綺麗に片付けてくれて助かったのである。

赤穂海浜公園オートキャンプ場
最後の撤収なので綺麗に片付ける


陽射しも強く、洗った食器類も天日で乾かして、気持ちよく撤収完了。
午前9時20分にキャンプ場を出た。
近くの赤穂御崎公園で瀬戸内海に最後の別れを告げる。

赤穂御崎公園
瀬戸内海に最後のお別れ


公園内では藤の花が咲き、木々は新緑に染まっている。
昨日辺りから花粉症の症状が酷くなってきていた。
旅の最初の頃はスギ花粉が終わってヒノキ花粉が飛び始めていたけれど、それには全然反応しなかった。
それが新緑の季節になって急に症状が現れる。
私はシラカバ花粉症というより、広葉樹が飛ばす色々な花粉に反応しているのかもしれない。

赤穂御崎公園
新緑の季節は私達夫婦には辛い季節でもある


その後、高速道路に乗って宝塚北SAで昼食を食べる。
ついでにフェリー乗船時の弁当も購入。
フェリーの名古屋港出発時間は午後7時。
前回の旅ではその時間を利用して名古屋市内の観光を楽しんだけれど、今回は滋賀県大津市の石山寺を訪ねることにした。

石山寺
石山寺の参道は緑に覆われていた


新緑に包まれた境内はとても美しく、見どころもいっぱい。
その中でも一番はやっぱり、石山寺の名前の由来にもなったという硅灰石の奇岩だろう。

石山寺
この石が硅灰石


国宝の本堂に日本最古の多宝塔も国宝だ。
その他にも重文指定の建造物も多数。

石山寺
国宝の多宝塔


紫式部がこの寺で源氏物語を書いたという事実も初めて知った。
紫式部の銅像が余計にありがたく思えてしまう。

石山寺
この銅像が結構気に入った


花も美しい。
桜は既に散ってしまったけれど、遅咲きのサトザクラやミツバツツジが満開で出迎えてくれた。

石山寺
見どころ一杯の石山寺だった


他にも色々とあって、一つ一つ紹介してもいられない。
大津市には他にも三井寺や西教寺もあり、それらの寺は次の太平洋フェリー利用時にとっておくことにする。

そうして、名古屋港まで戻ってくることができた。
出港時には名港トリトンの上に満月に近い月が浮かんでいた。
確か、前回の名古屋港出港時にも同じ景色を見た気がする。

名港トリトン
3年ぶりに見る名港トリトンと満月のツーショット


発達した低気圧の影響で太平洋は大荒れだったけれど、酔い止め薬のおかげで無事に翌朝を迎えることができた。
夕食の買い出しで途中下船した仙台では美しい夕日を見る。
同じ時期の旅なので見る風景がどうしても重なってしまう。

仙台港
同じ夕日の写真じゃ面白くないので、撮影アングルだけ変えてみた


そして今回の旅最終日を、瀬戸内の島で何度も目にした美しい朝日で締めくくることができた。

今回の旅で、東北は福島県を除いてほぼ回り尽くせたと思う。
しかし、今回予定していた鳥海山には行けなかったし、前回の東北旅では出羽三山の月山に行けていないし、この辺りが宿題として残ってしまった。
旅の宿題は新たな旅の目標のようなものであり、宿題は多ければ多いほど楽しみも増えるのである。

フェリーから見る朝日
朝日をバックに海面すれすれを鳥が次々と飛んでいく



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