北海道キャンプ場見聞録
瀬戸内の旅(石鎚山)
休暇村瀬戸内東予シーサイドキャンプ場(4月6日~7日)
この日は午前5時起床。
今回泊まっている石鎚山白石旅館は、登山宿らしく朝食は午前6時から用意してくれる。
相変わらず、質素だけれど品数豊富な朝食だ。
宿に到着してから若い男性1人の姿しか見たことがなく、男性1人で全て切り盛りしているのかと感心してしまう。
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宿の猫も朝飯中
午前7時過ぎに宿を出て、成就社で登山の安全を祈願し、さあ出発しようと思ったら、宿の男性が声をかけてくれる。
宿を出る時に「アイゼンを忘れてきたので、山頂までは無理だろうから行けるところまで行ってみます」と挨拶したのだけれど、二人分のアイゼンを貸してくれるという。
これは有り難かった。
もしかしたら、山頂まで行けるかもしれない。
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午前7時15分、神門をくぐって登山開始
境内から神門をくぐって、登山道へと足を踏み入れる。
そこから直ぐに登山道は下り坂となり、距離にして1キロ、標高差にして100mも下ってしまう。
これから山を登ろうとしているのに、そこを下っていくのは精神的にはあまり良くない行為である。
途中に霊峰石鎚山遥拝の鳥居と書かれた看板のある鳥居があった。
しかし、そこからは石鎚山はまだ見えない。
下り切る直前になってようやく樹木の間からその姿を仰ぎ見ることができた。
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石鎚山遥拝の鳥居
今回の旅で、石鎚山に登るつもりはあまり無かった。
それでも、良い天気が約束され気温も高くなり、そんな日が旅の行程と上手く合えば登ってみようと、旅のオプション的に考えていたのである。
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曲がりくねったブナを椅子代わりに一休み
それが、天気にも恵まれ、旅の予定も当初計画通りに進み、もしも登るとしたらこの辺りかなと考えていた日が、考えていたような天気になってくれたのだ。
この日、麓の西条市の最高気温は20度。
ここまで気温が上がれば山の雪渓も緩んでくれるかなと期待していたが、山の上の気温はやっぱり低いままだった。
フリースの上着を脱ぐことができない。
途中から丸太階段の急な登りが始まった。
標高差200m位を一気に登る。
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登山道には階段が多い
そしてその先に鎖場が現れた。
これが試しの鎖。
この先には一の鎖から三の鎖までが待ち構えている。
石鎚山と聞けとその鎖場のイメージがあるので、私達が登るレベルの山ではないと思っていた。
しかし、調べて分かったのはそれらの鎖場には全て迂回ルートがあるので、意外と初心者でも登れる山だということだった。
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写真撮影用に試しの鎖を登ってみたけれど、意外と登れてる?
試しの鎖は勿論パス。
ちょっとだけ登ってみたけれど、ロープの代わりにチェーンが下がっている様な鎖場とは全然違って、鎖そのものがやたらにごっつい。
それを握った時の冷たさだけで心が折れてしまう。
その試しの鎖がある岩峰を回り込むと、その後ろには下りの鎖場があった。
試しの鎖は、登るための鎖ではなく、本当の練習用の鎖だったのである。
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試しの鎖がこんな場所にあるとは知らなかった
そこにあるのが前社ケ森小屋、石鎚山のパンフレットを見ると成就社からここまで約2000m90分と書かれていたが、私たちは約1時間で登ってきていた。
まずまずのペースだろう。
そこから石鎚山山頂までは1500m80分となっている。
そこから少し歩くと夜明かし峠がある。
石鎚山の全貌が見られるビューポイントだ。
もしもアイゼンがなければ、ここから見られた石鎚山の姿だけで十分に満足して帰ることができただろう。
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この石鎚山の姿を見られただけで満足できそうだ
お遍路で歩いている時も、遠くに見える石鎚山の姿が気になってしょうがなかった。
石鎚山に一番近づいたのは、第60番札書の横峰寺まで登ってきた時だ。
ここも遍路ころがしと言われる険しい道程だった。
その横峰寺の奥之院星が森からは石鎚山を拝めると言うので、疲れた体に鞭打って更に50m登ったけれど、雲に隠れてその姿は見えず。
その星が森の標高は820m、石鎚山からの直線距離は7.3キロくらいだった。
そんな事もあって、夜明かし峠から見える石鎚山の姿はとても感動的だったのである。
夜明かし峠から更に登っていくと一の鎖が現れた。
鎖の下の方は雪に埋もれたままだ。
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一の鎖の下部はまだ雪に埋もれたまま
このあたりから雪が多くなり、宿で貸してくれた6本爪の軽アイゼンを装着する。
私達が持っているのは4本爪なので、もしもそれで登っていたら山頂までは登れなかったかもしれない。
日当たりの良い場所では雪も溶けて柔らかくなっているけれど、日陰に入るとガリガリのアイスバーンである。
それでも、雪が柔らかい時に歩いた登山者の足跡があるので、それで何とか助けられた。
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二の鎖下の鳥居
二の鎖は完全に雪の中に埋もれていた。
雪は更に深くなってくる。
硬い雪渓のトラバースは滑落の恐怖もある。
何時もなら「これ以上は無理」と泣き言を言い始めるかみさんも、頑張って登ってきていた。
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こんな場所のトラバースが何箇所かある
山頂が近づいてくると、エキスパンドメタルの橋や穴開き鉄板の階段が多くなってくる。
そんな場所は大体が雪が付いてなくて、アイゼンを付けたままだととても歩き辛い。
最初はそんな場所ではアイゼンを外したけれど、何度も出てくると面倒なので、アイゼンを付けたまま歩く。
何か不安定なのでアイゼンを見てみると、両足とも前の爪が1本折れてしまっていた。
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山頂までもう少しだ
そんなトラブルも有りながら午前9時50分、ついに石鎚山山頂に立つことができた。
青空が広がり風も吹いていない。
最高の天気である。
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まさか石鎚山山頂に立てるとは思ってもいなかった
百名山でもある人気の石鎚山。
そんな山の山頂にいるのは私達だけ。
こんな贅沢は滅多にないだろう。
アイゼンを貸してくれた宿の方には本当に感謝するしかない。
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最高の風景が広がる
しばし、山頂からの風景を楽しむ。
目の前に見えている天狗岳は眺めるだけ。
百名山としての石鎚山の山頂は、その天狗岳の標高1982mの山頂のことをいう。
しかし、信仰登山の山頂は私達のいる標高1974mの弥山なのである。
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天狗岳は眺めるだけで良い
一般的な山屋さんは天狗岳山頂を目指すのだろうが、私たちは信仰登山者である。
石鎚神社奥宮頂上社に無事登頂できたことのお礼をした。
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石鎚神社頂上社に参拝
そして下山開始。
雪も緩んできたけれど、日陰部分はまだアイスバーンのままである。
そんな場所ですれ違った登山者は、アイゼン・ピッケルの冬山装備。
今の季節に石鎚山に登るのならば、それが正しい装備だろう。
それにしても、ロープウェイの始発時間は午前8時40分。
すれ違ったのは午前10時半頃だったので、計算してみると山頂駅からここまで1時間40分くらいで登ってきていることになる。
やっぱり私達とはレベルが違う。
その後も何名かとすれ違う。
皆、始発のロープウェイに乗ってきた登山者なのだろう。
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写真を撮れるのは余裕のある場所だけ、余裕が無い時は降りるだけで精一杯
試しの鎖も過ぎ、雪も無くなり、後は成就社を目指して下山するだけ。
そんな時に事件が起こった。
突然、体が宙に浮き、逆さまに落下していく感覚があった。
そして脇腹を何かにぶつかた感触。
自分では何が起きているのか理解できない。
見えるのは、目の前を流れるように通り過ぎる笹の葉っぱだけ。
体が横向きになって滑落が止まったかと思ったら、更にそのままずり落ちていく。
慌てて周りの笹を手で掴み、ようやく止まった。
滑落した高低差は多分5mくらいだろう。
登山道まで這い上がってきて、体をゆっくりと動かしてみる。
あちこちを擦り剥いていたが、それほど深い傷ではなく、体も無事なようだ。
他には眼鏡が少し歪んでいるくらいだ。
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滑落後途中まで登ってきたところ、矢印の根に躓いたようだ
この時の私の様子を、かみさんは一部始終見ていた。
後ろ向きになって、スローモーションのようにゆっくりと登山道から落ちていったという。
私には一瞬の出来事で、そんなスローモーションとは思えなかった。
それでも、その話を聞くと、擦りむき傷程度で済んだのは、本当にラッキーだったと改めて思った。
滑落した斜面を見ると岩のある場所もあり、その岩に頭でもぶつけたりしていたら、こんな傷では済まなかっただろう。
正に不幸中の幸いである。
気を取り直して再び下山開始。
かなり下ったところで50代くらいのご夫婦とすれ違う。
こちらの方は見るからに初心者登山者といった感じである。
この先はアイゼンが必要ですかと聞かれたので、「アイゼンがないと無理ですね、でも夜明かし峠まで行けば石鎚山の美しい姿を見られるし、一の鎖までならアイゼンがなくても行けると思います」と優しく教えてあげる。
見た感じでは、アイゼンよりも体力の方に問題がありそうな気がした。
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宿の猫が出迎えてくれた
そしてちょうどお昼に成就社まで戻ってきて、無事下山できたことのお礼をする。
滑落事件はあったけれど、大した怪我もしないで済んだのは、石鎚山の神様が守ってくれたおかげだと思った。
そして軽アイゼンを旅館にお返しする。
爪を折ってしまったので、同じものがAmazonで売られているのを見つけたので、代わりの品を後で送りますと誤ったところ、貸出用に用意していたアイゼンなので大丈夫ですと言ってくれたのでそれに甘えさせてもらう。
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白石旅館で食事もできる
旅館では食堂もやっているので、そこで昼食を食べる。
蕎麦をすすっていると、外から法螺貝を吹く音が聞こえてきた。
「さすが石鎚山、昼には法螺貝を吹くんだ」と感心していたら、郵便配達の人が宿に荷物を届けにきた。
その郵便屋さんの首には法螺貝がぶら下げられていたのである。
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ロープウェイで下山
法螺貝を吹く郵便屋さんのことは何処かで聞いたことがあるような気がする。
帰りのロープウェイでその郵便屋さんと一緒になったので、色々と話しをしていると、グレートトラバースの田中陽希さんと石鎚山で偶然会って、その時に法螺貝を吹いて聞かせたという。
それで合点がいった。
最初の百名山の時の放送でそのシーンが出てきて、私はそれを見ていたのだ。
ロープウェイを降りてから法螺貝を吹いて聞けせてくれた。
今回の旅での良い思い出になったのである。
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法螺貝を吹く郵便屋さんは結構有名人
ロープウェイを降りたところにも温泉に入れる宿があったけれど、ネットで調べるとあまり良いコメントは無かったので、途中で何処かの温泉を探すことにする。
今日の宿泊は愛媛県西条市の休暇村瀬戸内東予シーサイドキャンプ場を予約していた。
最後に周辺の景色にお別れして、石鎚山を後にする。
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途中の道にも美しい風景が広がっている
温泉は西条市の湯之谷温泉に入る。
源泉かけ流しの良いお湯で、場所を変えたのは正解だった。
この頃から脇腹が次第に痛くなってきたので、夕食の買い出しのついでに湿布薬も購入。
そして曲がったメガネを直すために、西条市内の眼鏡屋にも立ち寄る。
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休暇村からも石鎚山が見えていた(右側の山)
そんな事もあって、キャンプ場到着は午後4時半、いつもより遅い到着になってしまった。
キャンプの受付は休暇村のホテルでするのは、五色台と同じシステムで、料金も1区画3500円に管理費1人600円と同じである。
お風呂の方はキャンプ場利用者は無料で入れるみたいだが、その時間帯は18:00~20:00と決められている。
嬉しかったのは、「今日は空いているので好きな場所にテントを張ってから、後でサイトの番号を教えて下さい」と言われたことだ。
サイト選びはキャンプの際に一番重要な部分だと思うので、それを一方的に決められるのは納得できない。
残念ながらそんなキャンプ場の方が多いのが現実である。
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今日も海の見えるサイトにテントを張れた
各サイトはちょっと狭くて、その配置もあまり良くない。
でも、周りに他のキャンパーは居ないので、海が一番良く見えるサイトにテントを張る。
ここも、海が見えるキャンプ場なのである。
この頃には脇腹の痛みもかなり強くなってきていて、設営の際も力仕事はかみさんにお願いするしかない。
吐き気のするような痛みなので、これは骨にヒビが入っているのは確実で、もしかしたら折れているかもしれない。
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肋骨が痛くてもキャンプは楽しむ
それでもじっとしていたら痛みは少ない。
海岸にイスとテーブルを持っていて、海を見ながらビールを開ける。
東向きの海岸なので夕日は見られないけれど、明日は朝日を拝めるだろう。
今日の夕食は全てスーパーで買ってきた弁当にお惣菜。
こんな状態なのでしょうがない。
明日の午前中は病院に行くことにして、早めにシュラフに潜り込んだ。