北海道キャンプ場見聞録
東北の旅(湯殿山と山寺)
天童高原キャンプ場(6月15日~16日)
朝4時に目を覚ましてスマホを見ると、雨雲が直ぐ近くまで近づいてきていた。
顔も洗わずに、起きて直ぐに撤収を始める。
そして朝5時に撤収を終えると同時にポツポツと雨が落ちてきた。
本当に際どいタイミングである。
雨を避けて炊事場で朝食
しかし、このまま出発するにはさすがに時間が早過ぎる。
キャンプ道具は全て車に積み終えていたけれど、屋根付きの炊事場の中で朝食を食べることにして、必要な道具だけを再び車から降ろした。
今年の百人浜のキャンプ場でも同じことをしていたのを思い出した。
そして結局、いつも通りの朝7時に羽黒山キャンプ場を後にした。
道路沿いの玉川寺庭園の看板を見て、寄り道する。
日本庭園の名園があるらしいのだけれど、拝観時間は午前9時から。
入り口から中の様子を窺っただけで、次に向かうことにする。
玉川寺は外から覗いただけ
この日、最初に予定していたのは湯殿山の参拝。
出羽三山の奥宮とされ、月山の山麓に位置している。
しかし、その月山は半分くらいが雲の中に隠れていた。
月山は雲の中
道の駅月山に寄り道した時には雨も止んでいたけれど、その後また風雨が強まってきた。
湯殿山の駐車場は標高1100m付近にあり、そこでは更に風雨が強いことは明白である。
それでも、とりあえずはそこまで行ってみようと、有料道路の料金を支払って駐車場を目指した。
大鳥居から本宮までは徒歩20分
そしてやって来た湯殿山の駐車場は、想像以上の悪天候だった。
それでも、既に車が何台か停まっていて、この悪天候の中でも湯殿山神社本宮まで登っている人もいるようだ。
本宮までは徒歩20分だけれど、さすがにこの天気では歩く気にはならない。
シャトルバスが出ているので、それに乗ることにした。
私たちは雨具の上下を着込んでいるけれど、バスに乗ってくる人の中には普通の服装で傘をさしている人もいた。
この強風で傘なんか役に立つんだろうかと心配してしまう。
そんな中で、登山装備に身を包んだ若者二人がバスにも乗らず歩いて登っていった。
どうやら月山の山頂を目指すみたいだが、月山はまだ山開き前。おまけにこの悪天候である。
バスの運転手さんや関係者の人達が心配して色々と話しかけていたみたいだが、余程のベテラン登山者なのか、ただの無謀な登山者なのかも分からず、黙って見送るしかなかった。
写真撮影はここまで
そうしてやって来た湯殿山神社本宮では、裸足になってお祓いを受けてから参拝しなければならない。
写真撮影は禁止、そして「語るなかれ、聞くなかれ」と言われ、「湯殿山で見聞きしたことは決して口外してはならない」との古来からの掟がある本当の神域なので、詳しいことはここには書かないでおく。
私にとっては素晴らしい経験だったが、こんな天気の中で岩の上を裸足で歩かされるかみさんは終始ご機嫌斜めで、あまり楽しい経験ではなかったようだ。
シャトルバスは片道券しか買わなかったので、帰りは歩くしかない。
歩くというよりも半ば駆け足で、駐車場まで降りてきたのである。
暴風雨の中を駐車場まで駆け下りた
私はげそ天もり蕎麦を食べた
昼食は山形市内で蕎麦を食べる。
山形県はそば王国として有名らしいが、ネットで調べて入った店「手打蕎麦きふね」の蕎麦は、「さすがにそば王国だけある」と思えるような美味しさだった。
今日の一番の目的地は、山形市の山寺(立石寺)である。
松尾芭蕉が「閑かさや 岩にしみ入る 蝉の声」と詠んだ場所としても有名である。
東北の旅のルートを考えている時、仙台は最初から訪れないつもりでいたので、山形市まで南下するのは少し無理があるような気がしていた。
それでも、芭蕉がこの句を詠んだ場所をどうしても訪れたかったので、無理矢理予定に組み込んだのだ。
宝珠橋を渡って山寺へ、この山の上まで登ることになる
事前に調べたところでは大きな駐車場が近くに無いみたいなので、やや離れた場所の山寺駐車場に車を停めるつもりでいた。
しかし、その駐車場には車が全然停まっていなかったので、そのまま登山口近くまで車を乗り入れる。
すると、そこら中の駐車場で係の人が手招きしていた。
料金は何処に入っても500円。店で買い物すれば無料というところも有ったが、面倒なのでたまたま目が合ったおばさんの手招きする駐車場にそのまま入った。
宝珠橋の上から見た立谷川の様子
山の上に建物が見えているが、おばさんの説明によると、そこまで登ることになるらしい。
その山を見上げながら立谷川に架かる宝珠橋を渡る。
橋の上から眺めた立谷川は岩盤が露出し、その岩盤の間を縫って川が流れている。
山寺もそんな岩場の中に建っているらしいので、川の岩盤もそれに関連するものなのだろう。。
雨はほぼ止んでいたが、時々パラパラと、傘をさすかどうか迷うくらいの雨が降っていた。
登山口の階段を登っていくと国の重文に指定されている根本中堂が出迎えてくれる。
私としては、この重文よりもその先にあった松尾芭蕉の像と句碑の方が嬉しかった。
これが目的で山寺を訪れたようなものなのである。
松尾芭蕉の句が無ければ山寺には訪れなかったかも
山門をくぐって、いよいよ奥の院までの階段登りが始まる。
登山口から奥の院まで、階段の段数は1070段あるらしい。
それでも、昨日の羽黒山の階段と比べたら半分以下である。
こんな風景の中を登っていく
階段の横には古い地蔵や石塔が並び、岩壁には無数の岩塔婆が刻まれ、その歴史を感じさせる。
松尾芭蕉も階段を登りながら同じ風景を眺めていたのだと思うと感慨深い。
ただ、次から次に登ってくる観光客の多さに、そんな感慨に浸っている余裕もない。
岩壁には岩塔婆が刻まれている
見上げるような岩壁の下に、芭蕉の句をしたためた短冊を埋めた「せみ塚」が立っている。
せめてエゾハルゼミでも鳴いていたらもっと気分が出るのだけれど、ここ山寺で本当の静けさを味わうには、観光客の少ない早朝に訪れるのが良さそうだ。
せみ塚
こんな石段を登るのは楽しい
閑かさや 岩にしみ入る 蝉の声
山寺仁王門まで登ってきた
仁王門を抜け、奥の院、岩の上に建つ納経堂と巡る。
そして麓からも見えていた五大堂まで登ってきた。
そこから見える山々は霧で霞んでいたけれど、それもまた風情があって良い風景である。
山寺を満喫して、今日のキャンプ地である天童高原へと向かう。
岩と寺の建物が織りなす風景が山寺らしい
岩の上に建つ納経堂
五大堂からの眺め
明日にかけても雨が続く予報だったので、この日は山形市内のビジネスホテルに泊まろうと考えていた。
昨日のうちに色々と宿を探したのだけれど、土曜日ということもあって空いているホテルがなかなか見つからない。
空いているのは素泊まりで1泊1万円以上のホテルばかり。
それなら何処かの温泉に泊まった方がましだと思って探すが、温泉宿は1泊2万円以上。
雨の中でテント泊するしかないと諦めかけた時にようやく、「1棟だけ空いています」と言われて見つかったのが天童高原のバンガローだった。
1泊5800円と、何時もならば我が家には対象外のバンガローだけれど、この状況では泊まれるだけで有り難い。
電話した際に、「電気も何もないバンガローですよ」と言われたけれど、ホームページの写真を見ると結構小綺麗なバンガローなので気にしなかった。
山形県ではやっぱりサクランボを買わなくては
キャンプ場に向かう途中、サクランボの直売所を沢山見かけた。
山形と言えばサクランボの産地。
せっかくなので1パック買ってみたが、その先で立ち寄った道の駅の方がもっと安く売られていたのでガッカリする。
天童高原キャンプ場は標高680m程度の高原にあるので、道路を登っていくと次第に雨風が強くなってくる。
そして到着して受付する時「駐車場に車を停めて荷物を運んでください」と言われ、唖然とした。
車を近くに停められなくても、荷物を降ろす時だけは車を横付けできるだろうと思っていたのだ。
事務所にいた作業員風の男性の方から「こんな天気で大丈夫ですか?」と問われ「バンガローだから大丈夫でしょう」と答えたけれど、そこまで心配してくれるのならば「車くらい入れさせてくれよ」と心の中で毒づいてしまう。
駐車場からバンガローまでは結構離れていて、苦労しながら荷物を運びこんだ。
丁度、隣のバンガローを予約していた人もやってきて、荷物を運んでいたが、私たちは雨具を着ていたけれど、彼は傘をさしているだけ。
気の毒になってしまう。
バンガローの窓から見た場内の様子
予約の電話をした時にバンガローが1棟だけ空いていると言われ、天気が悪いからバンガローも混んでいるんだろうなと思っていた。
しかしそれは、バンガローが2棟しかないうちの1棟を、彼がたまたま先に予約していただけの話しだったのだ。
外観だけは立派なバンガローだ
綺麗なバンガローだけれど、電話で言われたとおりに本当に電気が無いのには驚いてしまった。
最近できたばかりのバンガローのようだけれど、これだけ立派なのに何で電気を引かなかったのか、理解できない。
バンガロー内部
天候はますます荒れてきて、ちょっとした嵐のようである。
隣のバンガローには、後から男性2名がやってきて、彼らは炊事場の中で料理を始めた。
屋根はあるけれど、風が強いので中まで雨が吹き込んでいる。
どうやら炭を熾してパエリアを作っている様子で、それならば炊事場で料理するしかない。
二人は雨具を着ていたけれど、最初に荷物を運んでいた若者は半袖シャツのままである。
私たちはバンガローの中でも寒くて震えているというのに、呆れてしまう。
バンガロー内での火の使用は禁止されていたけれど、さすがにこの天気で外で調理することもできず、室内でガスコンロを使わせてもらった。
色々と不満のあるキャンプ場だったけれど、こんな天気の中でテント泊することにならなかっただけありがたかったのである。