北海道キャンプ場見聞録
山陰九州の旅(投入堂までプチ登山)
山崎アウトドアランド(4月15日~16日)
朝7時半にホテルを出て三徳山三佛寺へ向かう。
天気も回復し、青空が広がってきていた。
お寺の境内の中も神聖な雰囲気が漂う
登山受付所で靴底のチェックを受けてから、入山する。
国宝投入堂に参拝するのは登山と変わらないらしい。
1人での入山が禁止されている他、入山にあたっての様々なルールも定められているのだ。
昨日下見に来た時、雨の後なので上半身は大丈夫だとしても下半身は泥まみれになると聞いていたので、雨具のパンツを履いておいた。
入って直ぐに、いきなり現れた巨大な杉に感動する。
入り口の門の両側に立つ杉もかなりの太さである。
その門をくぐると、これから聖域へと足を踏み入れるのだという神聖な気持ちが湧いてくる。
巨大な杉が出迎えてくれた
その先の赤い橋を渡るといきなり岩場の急登が始まる。
両手を使いながらそこを登ると役行者の石像が出迎えてくれた。
息つく暇もなく、樹木の根の間をほぼ垂直に近い角度でよじ登る。
投入堂までの様子を事前に調べた時、少し大げさに書いてあるけれど実際に登れば大したことないだろうと思っていた。
そんな考えはいきなり吹き飛んでしまった。
ほぼ垂直ん鎖場
岩の上に建っている文殊堂の下までやってきた時、何処からここを登れば良いのかと途方に暮れる。
横に回り込むと垂直の岩場に鎖が垂らされていて、どうやらそこを登るらしい。
私は登れたけれど、心配なのはかみさんである。
何時もなら「絶対無理!」と言い出すところだが、今日は愚痴も言わずにそこを登ってきた。
文殊堂の周りには濡れ縁が回っているのだけれど、手すりも無くて、場所によっては10m以上の高さがありそうだ。
かみさんもさすがにこの上には乗れなかった。
私も壁に張り付くようにしながら、堂を一回りした。
文殊堂の濡れ縁を歩くのも命がけ
更に登りは続く。
バランスを崩すと転げ落ちそうな岩の上を越えると地蔵堂が見えてきた。
その建物が建っている岩を、鎖を頼りに横切っていく。
岩の上に地蔵堂が見えてきた
かみさんも滑落の恐怖に耐えながらそこを渡り切った。
地蔵堂の濡れ縁の上も一回りする。
この濡れ縁が下に向かって傾斜しているものだから、余計に恐怖感が増すのである。
鎖を頼りに岩場のトラバース
傾いた濡れ縁が恐怖だ
文殊堂は桃山時代の建立、地蔵堂は室町時代末期の建立と推定され、どちらも国の重文に指定されている。
それにしても、こんな険しい場所にどうやって建てたのかと、それが不思議だった。
鐘の音が山の中に響き渡る
鐘楼があったので鐘を突いてみる。
山の中にその音が静かに響き渡っていく。
ちなみにこの鐘の重さは3トンもあるらしく、それだけの重さのものをどうやってここまで運び上げたのかも謎である。
上から降りてきた3人連れの男女とすれ違う。
彼らの足元は裸足に草鞋である。
登山事務所で履物が適当でないと判断された場合、草鞋を購入してそれで登ることが許可されるのだ。
履き心地は良いみたいだが、足は泥だらけだった。
投入堂はもう少しですよと励まされる。
岩窟の中に建てられた重文の納経堂、観音堂、元結掛堂の前を通り過ぎて、岩を回り込むと、目指す投入堂がついに姿を現す。
登り始めてからここまで約50分かかっていた。
重文のお堂が並ぶ
ここまでに見てきたお堂も、全て凄い場所に建てられていたが、投入堂はもう近づくことも困難な崖の途中に建っている。
役行者が法力で断崖絶壁にある岩窟に投入れたとの言い伝えが、本当の話ではないかとさえ思えてくる。
北海道の太田神社も凄い場所にあるけれど、ここはその比ではない。
ただ、太田神社では最後の垂直の鎖場を登れなかったけれど、ここでは何とか投入堂を見上げる場所までは登って来られる。
何となくそこを去り難く感じながらも、充実した気分で下山を開始した。
どうしてこんな場所にお堂を建てたのだろう
所々で登りと下りのコースが分かれていて、下りの方が比較的楽なようにも思えた。
もしかしたら登りのコースは、修行の意味もあって敢えてきついルートで登らせているのかもしれない。
投入堂の参拝は登山ではない。
それは、受付所で輪袈裟(わげさ)を渡され、それを付けて参拝するようになっていることでも分かるだろう。
道中は修行・参拝の道であることを忘れないようにしたい。
ここまで降りてきてやっと一息付けた
境内まで降りてくると、昨日下見に来た時に話をした若者とあった。
「素晴らしい所だった」と言うと「それは良かったです」と、とても喜んでくれた。
最後に境内を出ようとしていた時、この寺の住職と思われる方が話しかけてきてくれた。
この寺で会う人たちは皆、とても感じの良い人ばかりである。
泥だらけになった靴と雨具
靴も雨具も泥だらけになって車まで戻ってきた。
雨がパラパラと降り始め、これから登ろうとしていた男女が途方に暮れている。
予定以上に時間がかかって、既に午前11時近くになっていた。
今日のキャンプ場は兵庫県宍粟市にある山崎アウトドアランド。
そこへ向かう前に岡山県の棚田を見に行く予定だった。
大垪和西の棚田など日本棚田100選に選ばれている棚田が四つも集まっている場所があり、棚田好きの私としては是非行ってみたいところなのである。
ただ、水の張られていない棚田はあまり見栄えがしないことも分かっている。
時間的にも厳しいので、棚田は諦めて真っ直ぐにキャンプ場に向かうことにする。
突然降りだした雨も、直ぐに止んだ。
何気ないこんな山里の風景も良いものだ
鳥取の道の駅「楽市楽座」の隣にあった田舎茶屋緑満(よりみち)で昼食にする。
地元の食材を使った料理はなかなか美味しかった。
桜の咲く山里の風景を楽しみながら車を走らせる。
お腹いっぱいになったかみさんは、そんな風景を見ようともせず、助手席でぐっすりと眠り込んでいる。
岡山県の道の駅「奥津温泉」。
寄り道するつもりもなく通り過ぎたけれど、桜の花に包まれた温泉街の様子が目に入って、車をUターンさせる。
道の駅の駐車場から眺めた温泉街はとても風情があって良い感じだ。
おやつにとちもちを買ってキャンプ場を目指す。
奥津温泉も良さそうなところだ
三徳山を登っている時に、今日泊まる山崎アウトドアランドのおばちゃんから電話がかかってきた。
キャンプ場の周りには何もないので途中で買い物を済ませて、夜は寒いから暖かい服装で来てくださいとのこと。
アドバイスはありがたいけれど、それは織り込み済み。
心配なのはキャンプ場までの道である。
私好みのキャンプ場だ
そして心配した通りの細い曲がりくねった道が延々と続いていた。
道の両側は蓋のないコンクリート側溝で、脱輪したらアウト。
所々にすれ違える場所はあるけれど、その途中で他の車と鉢合わせしたら、どちらかがこの細い道をバックしなければならない。
そして午後3時半、想像以上の山奥にあった山崎アウトドアランドに到着。
そんな場所にありながらトイレは水洗で、各サイトには流しに野外炉、電源まで付いている。
どんなキャンプ場なのか全く分からないので、管理人のおばちゃんが選んでくれたサイトにテントを張ることにしたが、そこで全く不満はなかった。
ただ、テント床が少々狭くて、我が家のソレアードでもペグを打つ場所がテント床からはみ出してしまう。
かみさんのソロテントも、車の駐車スペースの空いている場所に張るしかなかった。
それでも、高低差のある場内を上手く使ってサイトが配置されていて、今回の旅で泊まったキャンプ場の中ではここが一番のお気に入りとなった。
昨日までの雨で、場内に落ちている枝も湿っているだろうと思っていたが、日当たりの良い南向き斜面で結構乾いた枝を十分な量確保できて、今夜は盛大な焚火ができそうだと嬉しくなる。
焚き火の暖かさがありがたく感じる
ここの標高は650mくらい。
天気予報によると、兵庫県内陸部では明日朝の最低気温は3度くらいまで下がるみたいなので、標高の高いここならばもしかしたらマイナスになるかも知れない。
それでもこの夜は、真っ赤な炎を上げて燃える焚火のおかげで、寒さは感じずに過ごすことができた。
翌朝は思ったほど冷え込まず、テントも結露していなくて、快適な朝だった。
残っていた薪も完全に灰になるまで全て燃やし尽くし、気持ち良く撤収する。
キャンプ場からの帰り道は昨日と違うルートで走ってみたが、道は狭いものの昨日よりは少しだけましな道だった。