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紀伊半島の旅の始まり

下北山スポーツ公園(4月13日〜14日)

雪の朝定年退職後、最初に企画した紀伊半島への旅。
出発日の朝、札幌の町は白く雪化粧していた。

この日(4月11日)は夜の11時30分小樽港発のフェリーで舞鶴を目指す予定だ。
車のタイヤをこの旅行のために例年より早く夏タイヤに交換していたので、雪道にならないか気が気ではなかった。
夜の9時過ぎに小樽港に向かう途中も本格的な吹雪に見舞われたが、何とか無事にフェリーターミナルまでたどり着き、予定通りに出港。

今回は、春旅GOGO割を利用すると個室にお得な料金で泊まれるので、ちょっとだけ奮発してみた。
このプランは年齢が55才以上で利用できるのが嬉しいところだ。
十分におつりが来る年齢だけど、定年退職後の最初の旅で利用するのにちょうど良かった。
フェリーの個室ホテルの部屋で寛いでいる間に舞鶴まで運んでもらえるようなものだから、いたって快適である。

フェリーの揺れが心地良く、揺りかごで揺られているように、家で寝る時よりもぐっすりと眠ることができた。
船上から眺める朝日や夕日も美しかった。
風呂に入って映画を見て、22時間近い船旅も退屈することなく舞鶴に到着。

その後はビジネスホテルに直行。22時前にチェックインしてチェックアウトが朝の4時前。
これで1人3800円を支払うのが何とも勿体なかったが、車中泊できる車でもなく、僅かな時間でもベッドの上で眠りたいのでしょうがない。

 
船上から見る夕日
船上からサンセットショーを楽しむ

朝早くに出発するのは吉野の桜を見るのに、混雑する前に現地に着きたかったからだ。
初めて乗る本州の高速道路。複雑なジャンクションを上手く通過できるかドキドキだったが、何とか吉野まで行くことができた。
吉野の観光駐車場に着いたのは朝の7時前。
広い駐車場がまだガラ空きだったのには拍子抜けした。
花の盛りが過ぎてしまったこともあるのだろう。

満開の桜も残っている奥千本の桜がまだ咲いていそうなので、そこを目指して歩くことにする。
歩くと言っても標高差は450m、コースタイムは2時間、ちょっとした登山である。

下千本、中千本と、殆どが葉桜になっていた。
それでもたまに花を咲かせている木もあって、それなりに楽しめる。

金峯山寺の仁王門は防護柵で囲まれちょっと残念だった。
今回の旅を最初に考えた時、ここから始まる大峯奥駈道を歩くことが目的だった。
ところが、よく調べてみると女人結界というものがあり、女性は大峯奥駈道を完全には縦走できないことが分かった。
それでは面白くないので、どうせならばカヌーも積んでいって紀伊半島の川を下ってみようと考え、フェリーに乗ってくることとなったのである。

上千本まで登ってくると、散り遅れた桜も目立つようになってきた。
それなりに美しいけれど、観光パンフレットなどで見るような山全体が桜色に染まるような風景には程遠い。


吉野の桜   水盤に浮かんだ花びら
社殿に桜は良く似合う   水盤に浮いた桜の花びらも良い感じ

吉野の葉桜
下千本、中千本は殆どが葉桜に

それにしても急な坂道が続いている。
上千本までは道路沿いに民家やお土産や等が並んでいるが、上千本を過ぎて奥千本までは山の中の道となる。
その山道をひたすら登り、ようやく奥千本の入口らしきところまでやって来た。
奥千本の入口奥千本まで登ってくるような観光客は殆どいないだろうと思っていたら、何とそこは団体客で大賑わい。
私達が登っている間に、奥千本までの連絡バスの運行も始まっていたようだ。
それに、開花期間中の交通規制も解除され、車で入って来られるのである。
ここまで登ってきた苦労は何だったのだろうとガッカリしてしまう。

気を取り直して、そこから更に西行庵などを歩いて一回り。
ここまで来ると満開の桜も多くなるが、小さな木が多い。
杉林を皆伐して、そこに新たに桜が植樹されているところもあり、まだこれからの場所なのだろう。
吉野の桜はやっぱり上千本までと言ったところだ。


奥千本の桜
奥千本ではこの辺りの桜が一番見応えがあった

後は駐車場まで下山するだけ。
その頃になると、急な上り坂を顔を歪めながら登ってくる人達と次々にすれ違うようになってきた。
やっぱり吉野の山は歩いて登るのが一般的なようだ。

上千本の桜土産店等が軒を連ねている場所は歩くのにも苦労するような大賑わい。
花が散った後でもこれなのだから、満開の時期の人出を想像すると恐ろしくなる。

昼食は柿の葉寿司。
歩き疲れたら茶店で一服。

帰りに中を見ようと思っていた金峯山寺は、あまりの人の多さにパス。
何気なく入った吉水神社は、源義経の鎧とか弁慶の七つ道具とかが展示されていてビックリした。
そんな貴重な品々があまりにも無造作に展示されているので、これって本物なのか?って疑ってしまう。
重文に指定されているものもあるので、やっぱり本物なのだろう。

駐車場まで戻ってくると、そこもほぼ満車になっていた。
吉野の桜を楽しむためには、やっぱり朝早くに来るのが良さそうである。


大賑わいの吉野   茶店で一服
土産物街は大賑わい   眺めの良い茶店で一服

幽玄な山の風景この後は国道169号経由で熊野本宮へと向かい、その途中で何処かのキャンプ場で一泊する予定だった。
いくつかの候補を考えていたが、この日の天気予報が夜に雨となっていたので、その中からバンガローのある下北山スポーツ公園に泊まることに決める。

169号線は、次第に山奥深くへと入っていく。
途中から早くも雨が降り始めた。
すれ違う車もほとんど無いような山道。
そんなところでも、食堂などがポツンと建っていたりして、ここにお客さんが来るのだろうかと余計な心配をしてしまう。

それにしても、山の深さに圧倒されそうになる。
峰々の間には霧も立ちこめ、尚更幽玄な雰囲気に包まれる。
こんなところで暮らしていれば、物の怪の存在も普通に感じられる気がする。

雨の中、バンガローに到着ダム湖を通り過ぎ、ダムの下へと下りていくと突然小さな集落が現れた。
そこが下北山村の中心部である。
まずはスポーツ公園の管理等で受け付け。
バンガローは、ここから離れたダム湖沿いの平成の森の中にあるので、鍵を受け取って元来た道を引き返す。
雨足が強くなり、バンガローの中に荷物を運び込むのも大変である。
その周りも大きな水溜まりになっていた。

一息付いてから、スポーツ公園内にある下北山温泉きなりの湯に入りに行き、戻って来てからビールで乾杯。
朝4時前に舞鶴を出てからの長い一日が、こうして終わった。

下界の風景翌朝には雨も上がっていた。
回りの山々には、雨の名残の白い雲が所々にかかっている。
静まりかえったダム湖の湖面。
その湖畔では1本の桜がシットリと花を咲かせている。
雨上がりの朝の美しい風景が広がる。

ダムの下には下北山スポーツ公園が霧に霞んで見えていた。

荷物を片付け、管理等まで鍵を返しに行く。
スポーツ公園の桜は散りかけていたけれど、数日前までは見事な桜のトンネルとなっていたのだろう。


雨のバンガローで一服   スポーツ公園の風景
雨が降ってもバンガローは快適   スポーツ公園の池に浮かぶ桜の花びら

朝の風景
雨上がりのシットリとした風景だ

こんな風景を見る余裕も無いこの後は観光しながら熊野本宮へと向かう。
その先の七色ダムへの道は、車もすれ違えないような細い道。
この先の旅でもこんな道を何度も走ることになるのだが、まだ慣れていないこともあって緊張の連続。
そんな道には、山側に蓋のかかっていない側溝が付き物。
脱輪すれば直ぐにJAFを呼ぶことになり、余計に恐ろしく感じるのだ。

谷底を流れる川の水は、惚れ惚れするくらいに澄んでいる。
新緑に彩られた回りの山々も美しい。
しかし、運転に集中していて、そんな風景をゆっくりと楽しんでいる余裕は全く無い。

瀞峡今回の旅では川下りも予定に入っていたので、その候補の一つである北山川の下見もしておく。
北山川を下る時は、瀞峡のジェット船乗り場からスタートするのが一般的だと聞いていた。
しかし、そこからスタートするには、急な階段からカヌーを川原まで下ろさなければならない。

大変だとは聞いていたけれど、私が見た限りでは大変と言うより、そこから大きなカナディアンカヌーを下ろすのは物理的に不可能である。
そう思って、階段の掃き掃除をしていたおばちゃんに聞いてみると、あっさりと「皆さん、ここからカヌーを下ろしているよ、遊ぶためには苦労も気にならないんだろうね」との答えが返ってきた。

その後は近くの丸山千枚田を見に行く。
千枚田と呼ばれる棚田は全国に何ヶ所か有るけれど、ここの千枚田も結構有名らしい。

丸山千枚田 看板を頼りに山道を走っていく。
こんな山の中に田んぼがあるのだろうかと思っていると、それは突然目の前に現れた。
山の斜面全体が見事な棚田になっているのだ。
ちょうど水田に水を張る作業が行われている最中で、ちょうど良いタイミングだった。
せっかくの棚田の風景も、水が張られていなければ見栄えがしない。

満開の花を咲かせた1本の桜が、棚田の風景の中で見事なアクセントになっている。
この急峻な斜面での農作業は大変なのだろうが、その風景だけは何とものどかである。
棚田を見下ろす東屋の中でカップ麺の昼食をとる。


丸山千枚田

これだけの棚田を造った昔の人のパワーには驚くばかりだ


山里に咲く美しい桜丸山千枚田の近くに、天空の城とも呼ばれる赤木城跡が有ることが分かったので、そちらにも足を伸ばす。
同じく天空の城、或いは日本のマチュピチュと呼ばれる竹田城跡は有名だけれど、ここの赤木城跡のことは、ここに来るまで全く知らなかった。

小さな山里を見下ろす高台の上に、城の石垣だけが残されていた。
その石垣の上に立ちながら、何でこの山奥のこんな場所に城を造り、一体何に備えていたのだろうと日本の歴史に思いを馳せた。

山里の中に1本の美しい桜が見えていたので、そこにも行ってみる。
吉野の桜は散っていたけれど、紀伊山地の山奥ではまだ美しく花を咲かせていた。
この後の旅の中でも、美しい桜の花を何度も目にすることとなるのである。

紀伊半島の旅、縦走を終えて」へ続く 

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赤木城跡から山里を望む
ここに城が必要だった日本の歴史に改めて驚きを覚えた


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