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礼文島の旅(後編)

憧れの野営地・久種湖畔キャンプ場(7月26日〜28日)

我が家の憧れのサイト礼文島に来て2日目。
憧れの場所にテントを張ったのも束の間、直ぐにポツポツと雨が降り始めた。
沢水で汗を拭いてから、テントの中に避難する。
直ぐに雨は本降りとなってきた。

雨さえ降らなければ、かみさんも自分のテントを担いで来ていたので2張り設営するつもりだったが、翌日の雨の中の撤収を考えると、1張りで済ませた方が無難である。
その分、窮屈さには耐えなければならない。

そこの海岸が、奇跡的に携帯圏内だったのはありがたかった。
天気の状況が全く分からないままに、ここで一晩を過ごすのは、さすがに心細い。
礼文島トレイルマップでは西海岸全体が携帯圏外になっているのに、この場所は何処から電波が届いているのだろう。
ただ、通信状態はとても不安定で、下に置いたままにしていると直ぐに圏外となり、再び通信を再開するには色々と向きをかえたり、それでも駄目な時は再起動したりと、かなり苦労させられた。

我が家憧れのサイト到着と同時に沢水に付けておいた500mlのビールを飲むことにしたが、全然冷えていない。
沢水そのものが大して冷たくないのでしょうがないが、生ぬるいビールでも重たい思いをして担いできた分、ありがたい味がした。

雨雲レーダーの今後の予想を見ると、午後4時頃には雨雲も過ぎ去りそうである。
私はスマホでフェイスブックを見て暇をつぶすが、退屈したかみさんは雨具を着てテントの外へと出て行った。
花の写真を撮ったり海藻アートを作ったりと、1人で遊んでいる。
ただ、遊び終わってテントの中に入る時は大変である。
タオルで雨具の水滴を拭いて、その雨具をゴミ袋の中に押し込んで、そしてテントへ潜り込む。
そうやっても、結局はテントの中も少し濡れてしまうのである。

 
  海藻アート
    タイトル「礼文の思いで」

正面の崖が崩れる狭いテントの中でじっとしていると、エコノミー症候群になりそうである。
時々ストレッチをしながら、雨が止むのを待ち続ける。

突然、雷のような轟音が辺りに鳴り響いた。
それが雷ではなく、崖からの落石の音であることは直ぐに分かった。
落石を心配して、崖から離れた場所にテントを張っているのだが、良い気持はしない。
その後も頻繁に落石の音が聞こえてくる。
落石が発生している場所は、私達がその下を歩いてきた崖で、見るからに脆そうな岩である。

トレイルマップには、この辺りの海岸線は高波や強風の時は通行不可と書かれている。
それに加えて、雨天時も通行不可にした方が良さそうな気がする。
大雨は確実に落石を誘発するのである。

雨の降る中、落石の音に怯え、自然の力に圧倒されそうな自分がいた。
4年前の春国岱のキャンプでも、大自然の中に放り込まれた様な独特の寂寞感を味わったが、その時と同じような感覚である。
日常生活では決して味わうことのないこの感覚。
それを味わえただけで、ここにやってきた意味があるというものだ。


最高のテントサイト
我が家にとっては最高のテントサイトである

宇遠内まで見渡せる午後4時を過ぎ、レーダー画面では雨雲も完全に通り過ぎているのに、まだ霧雨が降り続けていた。
その霧雨も午後5時頃には上がり、ようやくテントの外に出ることができた。
改めて周りを眺めてみると、ここは本当に素晴らしいテントサイトである。
宇遠内の港まで続く荒々しい海岸線の風景、それがテントの中から一望できる。
反対側にはアナマ岩。そしてテントの前と後ろ、四方全てが荒々しい岩の風景に囲まれている。
その中で、沢の流れる谷だけが緑に覆われ、心を癒す風景を作っている。
今回礼文島に渡ってきた目的は、ここにテントを張るため。
そう言い切っても間違い無いくらいに、私はこの場所が大好きなのである。

そのくせに「大雨が降って直ぐ横を流れる沢が増水して渡れなくなったらどうしよう」なんて心配もしていた。
その沢の流域面積を考えれば、時間雨量100mの雨でも降らない限り、そんな事態になりそうにはない。
また、海側の岩のすぐ横にテントを張ったのだが、そこからの落石の可能性もゼロではないと心配になってくる。
岩の方に頭を向けて寝る予定なので、もしもそこから岩が落ちてきたら、頭を直撃である。
こんな場所で野営する割には、余計なことまで心配してしまう小心者の私なのである。

極上のテントサイト簡単な夕食を済ませてから、再び海岸の風景を楽しむ。
薄くなった雲を透して何となく夕日の気配を感じたが、期待する間もなく、直ぐにまた灰色の雲に変わってしまう。
天気が良ければ夜には素晴らしい星空が広がっていたはずである。
かみさんは、その星空が見られないことがとても残念だったようである。
ワインを1本あけて、8時過ぎには就寝。

夜中になって、テントを大きく揺らす風が吹き始めた。
東風なら、ここでは風が避けられるだろうと考えていたが、谷を吹き降りてきた風がまともにぶつかってくるのである。
時折、その風の音と一緒にテントを叩く雨音も聞こえる。
逆に波の音はほとんど聞こえなくなったので、安心して眠ることができた。

テントの横に旗を立てた翌朝になっても、雨は降ったり止んだりを繰り返していた。
雨雲レーダーを確認すると、礼文島にかかる雨雲は疎らだったが、西の方からまとまった雨雲が近付いてきている。
天気予報の降水確率は、昨日見た時よりも更に高くなっていた。
これだけ徹底して、日が経つに従って天気予報が悪い方へと変わっていくことも、そうあることではない。
朝食を食べている間に降り出した雨は、もう暫くは止みそうにない。
雨の中で撤収するのは気が進まないが、雨雲の様子を見た限りでは雨が止むのを待つより、雨がまだ小降りのうちに撤収する方が良さそうである。
フェリーの運航状況を確かめると、今日は全便が天候調査中となっていた。

全ての荷物をザックに詰め、最後に濡れたテントをザックの一番下に押し込んで、それを背負う。
ビールとワインと飲み水が無くなった分、昨日より随分とザックが軽くなった気がする。
天気が良ければ、今日はスコトン岬まで歩くつもりでいたが、とてもそんな状況ではなく、とりあえずは人里まで出ることが目標である。
沢を渡ってキャンプ地を後にするその場合、昨日の道を引き返して香深井へ出るのが最短となるが、雨の中で崖崩れの恐れのある場所を歩くのも危険すぎるので、8時間コースを北に向かう選択肢しかなかった。
そうして6時50分、野営地を後にした。

まずは沢の横から一気に標高200mまで登らなければならない。
8時間コースを歩く場合は、北から南へ歩くのが一般的であり、コース看板もそれに合わせて立てられている。
ここを逆に歩いた場合、この沢を通り過ぎて、そのまま海岸沿いに北上してしまう人もいるみたいだ。
昨日泊った宿の人の話では、それで一度遭難騒ぎもあったらしい。

沢からの登りはかなりの急登だが、こんな場所は下るよりも登る方が楽である。
登るに従って、私達の野営地が遥か下に見えてくる。
花も結構咲いていて、今日のコースの中で最大の難所だろうと考えていた場所を、意外と楽しく歩くことができた。


野営地横の沢   沢に咲く花
この沢の横を一気に登る   意外と花の多いところだった

一気に200mを登る
200mの急登は登る方が楽かもしれない

しかし、本当の難所はその先に待ち構えていたのである。
5年前にここを歩いた時の記憶では、その先にも足を踏み外すと海まで転がり落ちそうな道があった筈だ。
歩く時はちょっと冷や冷やするけれど、その代わりに素晴らしい絶景を楽しめた気がする。

8時間コースの藪こぎその記憶にあった場所がなかなか現れないのだ。
道は逆に藪の中へと入っていき、展望は全く効かない。
それどころか、両側から笹が覆いかぶさり、自分の足元さえ見えないくらいだ。
おまけに雨が降っているものだから、まるで洗車機の中で体を洗われている気分である。

5年前にこんな場所を歩いた記憶は無かった。
コースが変わったのか、それとも笹が伸びただけなのか。
家に帰ってからGPSのログで確認したところ、部分的にルートが変わった場所はあったものの、大きくは変わってはいなかった。
やっぱり笹が伸びただけなのである。
途中の谷で少しだけ展望が開けた以外は、延々と2時間近くの藪こぎが続いた。

途中には展望の良い場所も礼文島の8時間コースと言えば、トレッカーには憧れのトレイルでもあるはずだ。
それがこんな廃道の様な状態になっていて良いんだろうかと疑問に感じてしまう。
もしかしたら、8時間コースを歩く人がそれ程減ってしまたという事なのかもしれない。

樹木に囲まれているので風は遮られるが、そのおかげで逆に蒸し暑く、雨具を着ていることもあって体が汗で濡れてくる。
それとも、さすがのゴアテックスの雨具でも、こんな洗車機状態の中を歩くと水を透してしまって、それで体が濡れているのだろうか。
おまけに靴の中にも少しずつ水が浸み込んできていた。
屋久島で、下着までずぶ濡れになって歩いた時のことを思い出してしまう。

2時間の藪こぎを終え、9時30分召国への分岐へ到着。
昨日までは、標準のコースタイムよりかなり早く歩けていたけれど、さすがにここでは藪こぎもあって、ほぼコースタイムと同じ時間がかかってしまった。

樹木が無くなると風が吹き付けてくる樹林帯を抜けると、風がまともに吹き付けてくるようになる。
それでも予想していたほどの風の強さではなかった。
ガスがかかって展望も全く効かない。
花も咲いていないし、ここではただひたすら歩き続けるしかない。
こんな天気の中、今日、礼文島のトレッキングコースを歩いているのは、多分私達だけだろうと言う気がしてきた。

靴の中、雨具の中もかなり濡れてしまっていた。
そこに容赦なく襲いかかる雨と風。
数年前のトムラウシでの遭難事故も、多分こんな状況だったのだろう。
勿論、風や雨はこことは比べ物にならないくらいに酷かったのだろうが、その時の状況は十分に想像がつく。
ザックカバーを付けていても、雨風がひどければ、ザックの中まで濡れてしまう。
屋久島を歩いた時はザックの中の荷物も防水対策をしていたが、普段の縦走ではそこまでの準備はしてない。
ダウンの上着を持っていても、濡れてしまっては役に立たない。
ここで今、テントを張ってビバークしようとしても、テントの中をドライに保つのは困難だろう。
遭難した人たちのことを簡単に批判することはできない。
そんなことを考えながら、黙々と歩き続けた。

西上泊が見えてきたガスに霞んで西上泊の集落が見えてきた。
5年前に8時間コースを歩いた時、そこで食べた蕎麦が感動的に美味しかったことを覚えている。

ようやく携帯が繋がるようになったので、久種湖畔キャンプ場に電話をかけてみる。
雨はまだ止みそうにないし、この状況でテント泊をする気にはならないので、バンガローに泊れるかどうかを確認したのだ。
そしてバンガローが空いていると聞いた時は本当に嬉しかった。
そうなれば、真っすぐにキャンプ場を目指すだけである。

当初の目的地がスコトン岬だったことなど、とっくに忘れ去っていた。
5年前に食べた蕎麦が本当に美味しい蕎麦だったのかを確認してみたい気持ちはあったが、今はキャンプ場まで最短ルートで向かうのが優先である。

5年前に歩いた時の8時間コースは、スコトン岬がスタートで礼文林道までだったはずだ。
それが現在は、浜中がスタートに変わり、西上泊は8時間コースからは外れているのだ。
スコトン岬からゴロタ岬、澄海岬を通り、西上泊までのコースは、現在は「岬めぐりコース」の一部となっている。
そして岬巡りコースは、西上泊からはゴールの浜中まで車道を歩くことになる。
スコトン岬から礼文林道までを8時間で歩くのは、実質的に不可能なので、8時間コースのルートが変更になったのは妥当なところだろう。

やっと車道へと出てきたただ、現在の8時間コースならば、今回歩いた印象では、敢えて歩く価値も無いのかなと感じてしまった。
5年前はカラフトゲンゲが美しく咲いていた場所も、今は植生保護のため立ち入り禁止になっていたし、そして2時間の藪こぎである。
礼文島を北から南まで縦走したという勲章が欲しい人以外は、大した楽しみの無いコースなのである。

10時15分、ようやく車の走る道路まで出てきた。
そこから浜中まで下って行く途中に、礼文アツモリソウの群生地があるが、花期の終わった今は閉鎖されていた。
そうして浜中まで降りてきたところでバス停の小屋があったので、その中で一休みをする。
野営地を後にしてからここまで4時間近く、ずーっと歩きっぱなしだった。
ザックを降ろして近くの公衆トイレまで歩いていく時、背中の重しが無くなったので何だか体が浮き上がりそうな感覚がした。

キャンプ場に到着本来の8時間コースはここが終点だけれど、キャンプ場まで後1.5キロ歩かなければならない。
これまで歩いてきた道のりを考えれば、町の中のそんな距離は全く苦にならない。
そうして11時過ぎ、久種湖畔キャンプ場に到着。
場内には5、6張りのテントが張られていたが、それらのテントのキャンパーは多分、昨日の午後からずーっとここで停滞しているのだろう。

バンガローの中は広くて気持ちが良かった。
ただ、濡れたものを干す場所が無いので、そこらにロープを張り巡らして、着ていたものを全部かける。
昼食はバンガローの中で棒ラーメンを食べた。
嬉しいことにキャンプ場には洗濯機と乾燥機があるので、着るものに予備がまだあったけれど、せっかくなので利用する。
靴は簡単には乾かないので、新聞紙を中に入れて水分を吸わせる。

午後3時近くになってようやく雨も上がったので、町まで買い物に出かけ冷えたビールを買ってくる。
何時もの金麦だったが、これほど金麦が美味しく感じたのは初めてだった。
多分、5年前に8時間コースの途中で食べた蕎麦が過去に食べた蕎麦の中で一番美味しかったのと、同じ理由なのだろう。

バンガロー内部   キャンプ場の様子
バンガローの中でホッと一息   外人キャンパーの多い場内

日本最北の銭湯その後また、日本最北の銭湯までお出かけ。
この日のキャンプ場は外人の利用者が多く、国際的な雰囲気が漂っていた。
日本人キャンパーなら、天気が悪くなるのが分かっていれば、わざわざ礼文島までは渡ってこないだろう。
と言うか、バックパッカー的な日本人キャンパーそのものが少なくなっているのかもしれない。

銭湯で汗を流して、キャンプ場に戻ってくる。
風呂上がりのビールよりは、歩き終えた後のビールの方が美味しかった。
テントがまだ濡れていたので、組み立てた状態で乾かすと風も吹いていたのであっという間に乾いてしまう。
夕食は、船泊の食堂か居酒屋に行くことも考えたが、疲れていたので町のスーパーで買ってきたもので簡単に済ませ、8時過ぎには就寝。

キャンプ場近くの展望台から礼文島滞在最後の朝も、相変わらず曇りがちの天気だった。
早々に朝食と片付けを済ませ、フェリーターミナル行きのバスまで時間があるので、キャンプ場の裏山に登ってみる。
展望台まで行くと、今回歩くことのできなかったスコトン岬やごろた山の岬巡りコース(旧4時間コース)が見えていた。
礼文島の中ではこのコースが、眺めも良く、変化にも富んでいて、私は一番好きである。

キャンプ場から朝一番のバスに乗ってフェリーターミナルへと向かう。
香深井のバス停からは、外人バックパッカーの二人連れが乗り込んできた。彼らは、緑ヶ丘キャンプ場に泊っていたのだろう。
礼文島も随分と国際化したものである。

このバスは、フェリーの出航時間の10分ちょっと前にフェリーターミナルに着くので、お土産屋を覗く余裕もなく、急いでフェリーに乗り込んだ。
2等船室に場所を確保してから直ぐに、デッキへと出る。
桃岩荘の見送り桃岩荘のヘルパーや宿泊客による見送り風景を見るためである。
多分もう40年以上、フェリーが出航するたびにこの見送りが繰り返されてきているのだろう。
時代は移り変わっても、若者たちのひたむきな姿に変わりは無い。
彼らが大声で「遠い世界へ」を歌い続ける中、フェリーは静かに岸壁を離れ、それと同時に汽笛が鳴り響く。
その瞬間、胸の中に熱いものが込み上げてきた。
また近いうちに島に戻って来たくなってしまうのである。

礼文島の旅後編のアルバム 


久種湖にお別れ   礼文島にお別れ
これで久種湖のキャンプ場にお別れ   フェリーの上から手を振り続ける


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