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雨の洗礼山麓キャンプ

利尻北麓野営場(7月25日〜26日)

雨の札幌を出発午前4時、雨の降る札幌を北へ向かって出発。
朝焼けで東の空は赤く染まっているが、上空の雲は厚そうだ。
札幌では2週間ぶりの雨が、我が家がようやくとれた休みに合わせるように降っているのである。

利尻島に渡って利尻山に登ろうという計画を立てたものの、天気予報を見る限りでは諦めるしかない様に思えた。
でも、せっかく取れた休暇。
無為に過ごすのも勿体ないので、とにかく島に渡ってみることにする。
北海道の主な島の中で、利尻島だけがまだ行ったことが無く、たとえ山に登れなくても何か新しい刺激を得られるかもしれない。そう考えたのである。

この日の北海道は、南へ行くほど天気が悪い傾向にあり、岩見沢から北はどんよりとした雲に覆われているものの、雨は時々ぱらつく程度である。
初山別村のみさき台公園キャンプ場で朝食を食べる。
海の向うには既に、利尻島の姿が見えていた。
利尻山の姿が見えるこれから先、北上するにしたがって、その姿が次第に大きくなってくる。
この付近を走る時は、そんな利尻島の姿を見て感動するのだが、今日はこれからその島に渡ると思うと、余計に感動も大きくなる。

利尻山の中腹には雲がかかっているものの、山頂だけはその雲の上に出ている。
今日、利尻山に登っている人達は、その山頂から雄大な風景を楽しんでいることだろう。

札幌を早く出たおかげで、フェリーの時間までにはまだ十分な余裕があった。
私の大好きな道道106号稚内天塩線では、車のスピードを落として、利尻島の姿を撮影しながらのんびりと稚内を目指した。


 
海の向こうに見える利尻山
海の向こうに見える利尻山の姿に気持ちも高ぶる

稚内9時50分発のフェリーで利尻島を目指す。
平日とはいえ、既に学校は夏休みに入っている。
その割にはフェリーは空いていた。
フェリーから見える利尻山夏休み、離島を目指す若者達でフェリーが混雑していたのは、既に遠い過去の話である。
今は、如何にもこれから山に登りますと言った雰囲気のおじさん、おばさん達が、パラパラと乗っている程度である。
フェリーのデッキに出ると、前方に利尻山の姿が大きく見えていた。

11時30分、定刻で鴛泊フェリーターミナルに到着。
ターミナルビルは現在新築工事中で、味気ないプレハブのターミナルに降り立つ。
かみさんが後で「何時もは島に着く時はワクワクするのに、今回は何故かそんな気がしなかった」と首をかしげていたけれど、もしかしたらこのプレハブターミナルのせいでそう感じたのかもしれない。
フェリーターミナルやその周辺の風景は、島の顔と言っても間違いは無いのである。

磯やき亭の店内まずは腹ごしらえ。
ターミナルビル前のお土産屋などが入る長屋の中に磯やき亭という店がある。
食べログでの点数も高かったので、迷わずにそこに入った。
ここでウニ丼を食べる気も無かったので、ご当地ラーメンと銘打った利尻ラーメン1300円を食べる。
こんなに高いラーメンを食べるのは初めてである。
食べログの点数が高いとは言っても、所詮は観光客相手の店でしかなかった。

その後はセイコーマートに寄り道して夕食の弁当とアルコール類を仕入れてから、今日の宿泊地である利尻北麓野営場を目指す。
そこの標高はおよそ210m。
キャンプ場までの道のりが、早くも登山の始まりと言えそうだ。

利尻山の山頂は雲の中港に着いた時にはまだ見えていた利尻山の山頂も、既に雲に隠れてしまっていた。
それにしても蒸し暑い。
先々週の十勝岳での野営でちょっと寒い思いをして、今回も北の孤島ということで、その時よりも厚手のパンツを履いてきたのは大きな間違いだったようだ。
ビールやワインで一気に重さを増した大型ザックを背負って歩いていると、汗が吹き出てくる。
急遽、途中にある「ファミリーキャンプ場ゆ〜に」に寄り道して、ショートパンツに履き替える。

大きなザックを背負って歩いている私達を見て、そこにいたキャンパーから「日本一周しているんですか?」と聞かれ、苦笑いを浮かべる。
こんなザックを背負っている人間がそれ程珍しい訳でもないだろうし、ましてここは利尻島である。
ただ、そう言われても悪い気はしない。
ザックを背負っているだけで、たとえ地元の人間であろうと、気分だけは旅人になれる。

キャンプ場へ続く道フェリーに乗る時に同じようなスタイルの若者と目が合い、何となくお互いに挨拶を交わしてしまう。
キャンプ場に向かって歩いていると、山から下山してきたようなソロの外国人男性とすれ違い、お互いに笑顔で言葉を交わす。
ザックを背負っているだけで、自然とそんなコミュニケーションが生まれるのだ。

北麓野営場までは一般道を登っていくのと、森の中の遊歩道を登っていく二つのルートがある。
遊歩道の方が少し遠回りになるけれど、折角なのでそちらを歩くつもりでいた。
しかし、この蒸し暑さである。森の中はもっと蒸していそうなので、そのまま一般道を歩いていくことにした。
この道路の歩道が、柔らかな舗装材を使っていて、そこにコケが生えていたり、時々樹木の間を抜けていくなど、なかなか快適な道だった。

キャンプ場に到着そうして午後1時40分、北麓野営場に到着した。
それと同時に、管理棟から管理人らしき人が出てきて私達を迎えてくれる。
たまたま外に出てきただけなのかもしれないが、何だか私達を歓迎してくれているようで嬉しくなる。
受付と同時に、登山届も一緒に書かされる。
登山目的以外でここに泊まる人などは殆どいないのだろう。

場内には、炊事場の隣にテントが一張りあるだけだった。
私達は、そこから登って、階段状に造成されたサイトの一番上にテントを張ることにした。
ここのキャンプ場は2年前に再整備の工事が入ったばかりで、サイトにはムシロのようなものが前面に敷き詰められていた。
多分、その中に芝の種子などが入っていると思われるのだが、発芽した様子は全くない。
その下は細かな砕石で固められているので、これでは芝が発芽したとしても、まともに育つとは思えない。
ちょっと理解不能な工法である。

雨の洗礼を受けるそれはともかくとして、テントを張り終え、まずはビールで乾杯である。
と思ったところで、何と雨が降り始めた。
天気予報では今日の夜から雨になるとなっていたが、これはちょっと早すぎる。
にわか雨程度で済むだろうと思いながら雨雲レーダーを確認すると、利尻島には大きな雨雲がかかりつつあるところだった。
北上する雨雲は太い帯となって南に向かって伸びているので、これは直ぐに止むような雨ではない。
諦めて、テントの中にもぐり込んでビールの缶を開けた。

予想外の雨だったけれど、テントを張り終えたところで降り始めたのが、不幸中の幸いである。
歩いている途中にこんな雨が降ってきたら堪ったものではない。
狭いテントの中でじっとしているのにも耐えきれなくなり、雨が小降りになった瞬間を狙って屋根の付いた炊事場まで移動することにした。

雨の中を下りてくる登山者そこではキャンプ場の先客が、山から下りてきて自分のテントを撤収しているところだった。
結構な年配の方で、その方から山の様子を色々と教えてもらう。
私達が本土から利尻山の写真を撮っている頃に、頂上に立っていたのだろう。
私達から見えていた雲が、頂上の南側に雲海となって広がっていたとのことでる。

その後、雨足は再び強まり、土砂降りの雨の中を次々と登山者が下りてくる。
疲れ切った様子で「俺はもうこれで山を止める」と言っている人とか、雨宿りしながら色々な登山者の様子を眺めているのはなかなか面白いものだ。
しかし、この雨が少し弱まってくれないことには、自分達もテントまで戻れないと言う問題を抱えていた。

ビールも飲み干してしまったので、雨が少し弱まった隙をついて、テントまで走って戻った。
そこでコンビニ弁当を食べて、それからワインを開ける。
時々、テントのファスナーを少しだけ開けて外の様子を窺うと、その度に雨の中を降りてくる登山者の姿があった。
結構な人数が登っていたのだろう。
それにしても、午後6時近くになってもまだ降りてくる人がいるのには驚いてしまう。
この雨の中で、おまけにもう少しで暗くなる時間である。これでは遭難すれすれと言っても良いだろう。

それにしても雨は全く止みそうにない。
予報では明日の朝6時まで傘マークがついている。
明朝は午前4時には登り始めるつもりでいたので、できればそれまでには雨が上がって欲しい。
降りはじめが早かったので、雨が上がるのもきっと早いはずだ。
私の希望的観測である。

場内風景することもないので、サッサと寝ることにして、歯を磨きに炊事場まで降りていく。
ソロの男性が、雨を避けて管理棟の軒下にテントを張っているところだった。
本州からやってきた初老の男性である。
バンガローに泊まっている初老の女性が、明日は天気が悪そうなので私達は明後日に登ることにすると言っていた。
私達もそれは考えていたが、今日の雨の降り始めさえ外している天気予報を鵜呑みにする気にはなれない。
それよりも自分の勘を信じて、私達はあくまでも明日の4時に登り始めるつもりだ。

そうして午後7時前には就寝。
早く寝すぎて、真夜中に目が覚め、その後1時間以上眠れなくて苦労したが、午前3時には目が覚めた。
私の見込み通り、既に雨は止んでいたものの、辺りは濃い霧に包まれていた。
山から下りてきたら直ぐに撤収できるようにテントの中を片付けてから、予定通り午前4時に利尻山山頂に向けて出発した。

(利尻山登山の様子はこちら

ようやくテントも乾いた午前12時前に、キャンプ場へと戻ってきた。
登山の途中で昼食を食べる予定が、山頂に早く着き過ぎて、昼食が朝食になってしまったので、ここで改めて昼食を食べることにする。
炊事場で棒ラーメンを食べてから、テントを撤収する。

山の上から見ていると、キャンプ場付近はずーっと雲海の下に隠れていたので、雨に濡れたテントも乾いていないだろうと覚悟していた。
しかし、下りて来てみるとサイトには燦々と太陽の光が降り注ぎ、おかげでテントは完璧に乾いていた。

気持ちよく撤収を終えて、荷物をザックに詰め込む。
次のキャンプ場へ下山1日で1500mを一気に登るのは、今回が初めての経験だったので、山から下りてきたら疲れ切って移動する元気も無くなっているかもしれない、と不安だった。
でも、それでは風呂にも入れないし冷たいビールも飲むことができない。
何が何でも、街の近くのファミリーキャンプ場ゆ〜にまで下りなければならない。

幸い、予定以上に早く下りて来られて、体力もまだ十分に残っていた。
アルコール類が無くなって幾らか軽くなったザックを背負い直し、今日の登山の本当のゴールを目指して再び歩き始めた。



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