北海道キャンプ場見聞録 夏山歩きの部屋
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利尻山(2013/7/26)

ちょっとだけ自信が


薄暗い中を登り始める昨夜来の雨も上がり、午前3時55分に霧に包まれた利尻北麓野営場を出発。
既に辺りも明るくなり、ヘッドランプの灯りに頼る必要もなくなっていた。
登山口から10分ほどの甘露泉水までは、道も綺麗に舗装されていて、登山道と言った雰囲気ではない。
「甘露泉水から先には水場が無いので、ここで十分に水を補給すること」などとガイドブックには書かれているけれど、キャンプ場の水道水はこの甘露泉水と同じものである。
管理人さんからその話を聞いていたので、私達はキャンプ場で水を用意してここは素通り。

この甘露泉水が利尻山の3合目になり、そこから先がいよいよ本格的な登山道となる。
しばらくの間は傾斜も緩く、トドマツ林の中を野鳥のさえずりを聞きながら快調に登っていく。

合目毎の標識この登山道には合目ごとに標識が整備されているので、登っている時のちょうど良い目安になる。
3〜4合目、4〜5合目まで、それぞれ20分かかっていた。
このペースで登っていけば頂上までは20分×7で140分と言うことになる。
この先は傾斜も急になり、そのペースで登れる訳はないと分かっていても、自分のペースが速いのか遅いのかは気になるところだ。
夏山ガイドや昭文社の山地図にはコースタイムも出ているけれど、何時ものことながら登り始めるとそんなことは直ぐに忘れてしまう。
それを調べるために、わざわざザックの中から地図を取りだすのなら、その間に少しでも先に進んだ方が良いと考えてしまい、標準のコースタイムと比較して一喜一憂するのは何時も下山後のこととなるのである。

真っ直ぐに立って歩けないダケカンバの中の登山道登るにしたがって、周りの林相はトドマツ林から背の低いダケカンバへと変わってくる。
このダケカンバのトンネルが私をイライラさせた。
普通に立って歩くと頭を枝にぶつけてしまうので、ずーっと腰を屈めたまま歩かなければならない。
それでもたまに、張り出した枝に思いっきり頭をぶつけてしまうことがある。
それだけならまだ良いが、頭をぶつけた衝撃でダケカンバの葉に溜まっていた水滴が一斉に降り注いでくるのである。
ダブルパンチである。

昨夜の雨とこの霧で、ダケカンバだけではなく周りの笹なども、葉にたっぷりと露をたくわえている。
それらが露の重みによって登山道の上まではみ出てきているので、触れると直ぐにずぶ濡れになってしまう。
この登山道を登り始めたのは、今朝は私達が一番最初である。
何事も一番最初なのは気持ちが良いことだけれど、これはちょっと別だった。
露払いと言う言葉があるが、今の私がちょうどその立場にあると言えるのだろう。

露ばかりでなく、登山道を横切るように張られた蜘蛛の糸も厄介である。
堪らずに、かみさんに先を歩いてもらうが、私の顔の高さに張られた蜘蛛の糸はそのまま残っているのだ。
鬱陶しいことこの上ない。

第一見晴台で次第に傾斜もきつくなり、汗が吹き出てくる。
気温は早朝にもかかわらず20度以上はありそうで、風は無く、おまけに湿度は100%。
三重苦、四重苦の中を登っていく。

6合目が第一見晴台となっていた。
ここまで、キャンプ場を出てから1時間20分。
山頂方向はガスに包まれて何も見えないが、下界はガスも取れて海岸線まで見えているところもある。
でも大部分は雲海に隠されたままである。
その雲海と上空の雲の境目が分からないような場所は、ガスが両者を繋げているのだ。
ただ、雲海と雲の隙間に明るい空が僅かに見えているところもあり、天気は確実に回復傾向にあると思われる。
半ば希望的観測だけれど、昨日の夜から降るはずだった雨が午後から降りだして、午前6時頃に上がる予報がもっと前に降り止んでいたので、それだけ天気の回復も早まっているのだろうと予測しているのだ。

胸突き八丁のきつい登り7合目の標識には胸突き八丁と書かれていた。
急斜面の長い坂道を表す言葉である。
「えっ?ここまでで充分に急な坂道だったけど、これ以上きつくなるってことなの?」
残念ながら、その通りだった。
両手もフルに使い、岩や樹木を手掛かりにしながら登っていく。
でも、この方が足にかかる負担を軽くできるので、結果的には楽に登れる気がする。

利尻山の登山道はオーバーユースで荒れてきていると聞いていたので、今回はストックは持ってきていなかった。
でも、ここまでの登山道はストックがあった方が楽に登れていたかもしれない。
胸突き八丁の急斜面で、これまで何も働いていなかった腕の筋肉が、ようやく役に立ってくれたのである。

さっきまで見えていたはずの下界が、何時の間にかガスで隠されていたり、また晴れたりと、変化は大きい。
第二見晴台の標識が有ったけれど、そこでは完全にガスに包まれ何も見えなかった。
何処かで樹林帯を抜けるのかと思ったが、ダケカンバ林やハイマツ林がずーっと続いていて、相変わらずの露払い状態が続く。
特にハイマツ林の中を歩く時は、かみさん曰く「洗車機の中に入った車の気分」だそうである。


晴れそうだけど ハイマツの中に続く道
何となく晴れてきそうな気配も これから洗車機の中に入っていく?

利尻山の山頂が姿を現す長官山のピークが8合目になっていた。
第一見晴台からここまで1時間。
ここでようやく、霧の中から利尻岳山頂が姿を現した。
おまけに青空さえも覗いてきている。
このまま一気に晴れるのかと思ったが、現実はそうは甘くはなく、直ぐにまたガスが流れてきた。
でも、このガスが晴れれば上空には青空が広がっていることが分かったので、希望的観測は現実味を帯びてきたようだ。

そこから、避難小屋に向かって登山道はやや下っている。
そこが一番、登山道が笹に覆われているところだった。
これまでは、張り出した木の枝や笹の葉などを何とか避けながら登って来れたものの、ここはもうまともに突っ込んで行くしかない。
それまでも着ているものはかなり濡れていたけれど、ここではあっという間にタイツもシャツもずぶ濡れとなってしまった。
雨具を着れば良かったと後悔したが、それも後の祭り。
こうなったら、そのまま突っ切るしかない。
タイツを濡らした水が、スパッツを通り越し、靴下を濡らして、靴の中へと浸み込んでいく。
雨の屋久島を縦走した時の様に、靴の中までぐしょぐしょとなってしまう。

そうしてようやく避難小屋に到着。
中で着替えようと思って小屋の戸を開けると、中に人がいたので驚いてしまった。
この避難小屋を利用するのは、遅い時間に登り始めてご来光を見る人くらいだろうと思っていた。
9合目付近から花が増えてくる昨日は午後から雨が降りだしていたので、ここに泊まっている人がいるとは全く予想もしていなかったのである。
遠慮して中には入らず、外のベンチで着ていたシャツや靴下を脱いで水を絞る。
汗をかくのが嫌で雨具を着るのを避けていたけれど、これだけ濡れてしまえば汗も関係ない。
それに、体を冷やすと後が面倒なので、濡れた服の上から雨具を着こんで、再び歩き始める。

9合目は大きな広場になっていた。
これまでは花の姿はほとんど見られなかったのに、ここで突然エゾトラノオやノコギリソウの花畑が現れた。
下界の様子は見えているのに、山頂は完全にガスの中だ。
9合目の標識には「ここからが正念場」と書かれている。
私達も覚悟を決めて、ガスの中を登り始めた。

火山礫が積もった滑りやすい登山道花の姿に励まされながら、岩場の登山道を両手もフルに使って登っていく。
沓形コースの分岐あたりからはガレ場となって、足下が滑りやすい。
おまけに傾斜も急になり、ロープを頼りに登るしかない。
気をつけていないと落石を起こしそうだ。
こんなところを大人数のパーティーでは絶対に登りたくない。

山肌が大きくえぐられて門の様になっている場所を通り抜ける。
登山道の横は垂直に切れ落ちた崖になっていたりして、なかなかスリリングである。


大きくえぐられた登山道 足がすくむ
大きくえぐられた山肌 こんなところに立つと足がすくむ

頂上への最後の登りローソク岩が見えてきて、頂上への最後の登りとなる。
そうして午前7時50分、利尻山神社奥宮の建つ山頂に到着。

ローソク岩にまつわり付いていたガスも間もなく晴れて、島の西側の海岸線までがくっきりと見渡せるようになった。
島の東側を覆っているガスはなかなか取れずにいたけれど、30分も経つとそのガスも消えて本土の姿まで見えてくる。
正に360度の展望である。
残念ながら礼文島は雲海に隠れてその姿を確認できなかったけれど、まさかここまで天気が良くなるとは思っていなかった。


まだガスがかかっている ガスが晴れた
徐々にガスが晴れてきて ついに青い海が見えた

ローソク岩と南峰
青空が広がり南峰とローソク岩がくっきりと浮かび上がる

雲海の風景
下界は雲海に隠されていた

利尻山山頂に広がる青空中学生くらいのお孫さんを連れた年配の方と単独の男性が相次いで登ってきた。
単独の男性は3時間20分で登ってきたとのこと。
私達は3時間55分かかっていたので、かなり早いタイムである。
でも、「だからどうなの?」って感じだ。
山には、人ぞれぞれの登り方があり、タイムが早ければ良いってものでもない。

ただ、我が家にとって、1500mの標高差を一気に登るのは初めての経験で、それだけの体力があるのかさえ心配していたくらいなので、それを4時間以内に登れたのは、私にとっては結構嬉しい結果だった。

彼らに山頂を譲って、午前8時25分、私達は下山開始。
キャンプ場方向の下界は、再び雲海に覆われていた。
その雲海に向かって下りていく感じである。
火山礫の急斜面では登り以上に注意して降りなければならない。
9合目近くの急斜面あたりから、登りの登山者とすれ違うことが多くなってきた。
狭い場所なので、その度に立ち止まって道を譲る。


雲海に向かって下山
雲海に向かって下りていく、9合目の広場も見える

下りが大変 断崖と花畑
滑りやすい場所はロープが頼り 花畑の反対側は断崖絶壁

9合目の広場ではツアーの団体が休憩していた。
私達もそこで休憩を兼ねて食事することにした。
本当は昼に食べる予定で山食のスパゲティを持ってきていたが、時間はまだ午前9時を過ぎたばかりで、これでは朝食と言った方が正しそうだ。
今日の朝飯は、登っている途中に行動食を食べただけだったので、朝食にはちょうど良かった。
山頂は再びガスに包まれるお湯を沸かしている間に、山頂にはガスがかかり始めていた。
また直ぐに晴れるのだろうと思っていたが、食事を終えて私達が再び下り始める頃には山頂は全く見えなくなっていた。
山頂を隠したガスは次第に下に下がってきて、私達もその中に取り込まれてしまった。
どうやら、私達が山頂で見た青空は、本当に奇跡的に広がった青空だったのかもしれない。

避難小屋を9時50分に通過。
ここですれ違った登山者が今日の一番最後だった。
時間的には、登頂してから安全に下山するためにはこの辺りがタイムリミットなのだろう。
ただ、それ以上に、今日の天気では利尻山に登ろうと考える人自体が少なかったのかもしれない。

長官山も完全にガスの中で、私達が登って来た時よりも状況は悪くなっていた。
途中で雲の下に出たけれど、下界は相変わらず厚い雲海の下だ。
この調子ではキャンプ場付近もずーっと霧がかかったままで、これでは雨で濡れたテントも乾いていないかもしれない。

甘露泉水登りは素通りした甘露泉水だが、下山時はここで飲める冷たい水が最高に美味しく感じる。
そうして昼の12時ちょうどにキャンプ場に到着。
まさか、午前中にキャンプ場まで戻ってこれるとは思ってもいなかった。
重たい縦走用ザックさえ背負っていなければ、このクラスの山でもそれ程無理なく登れることが分かって、ちょっとだけ自信が付いた山行であった。

利尻山登山の写真 




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