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斜里平野から山を眺めて

クリオネ遊牧場キャンプ場(10月8日〜9日)

斜里岳から見下ろす斜里平野斜里岳を登っている途中までは、昨日混雑していて泊まれなかった和琴半島湖畔キャンプ場へ戻るつもりでいた。
しかし、斜里岳に登頂し、そこからの展望を目にした後は、今日のキャンプは逆に下から斜里岳を見上げられる場所にしようとの気持ちに変わっていた。

10月でもオープンしているキャンプ場で、斜里岳を眺められるところと言えば、この周辺では「クリオネ遊牧場キャンプ場」しかない。
当初の計画では斜里岳登山の前泊として、キャンプ旅行の初日に利用する予定だったところである。

午後3時前に下山してきて、まずは清里町のホテル緑清荘で汗を流す。
ここの温泉も、加水して温度調整をしているものの源泉かけ流しの良いお湯だった。
今回のキャンプ旅行では二日目の羅臼のホテル峰の湯以外は、本当に良い温泉に入れた気がする。

緑清荘から眺めた斜里岳温泉で汗を流してすっきりしたものの、今日も時間に追われていた。
陽の高いうちにキャンプ場に着いて濡れたテントを乾かしたかったのに、温泉を出た時で既に午後4時近くになっていて、テントを乾かすのはもう望み薄だった。
時間もないので今日の夕食はコンビニ弁当で済ませることにする。

陽はどんどん西の空に傾いてきているのに、途中で道が分からなくなったりして、本当に時間との戦いだった。
訳も分からずに走っていた道が、たまたま正解だったようで、道路沿いにキャンプ場の案内看板を発見。
そうしてようやく、まだ日の沈む前にキャンプ場に入ることができた。

ここのキャンプ場を訪れるのは今回が初めてで、それまでここには際物的なイメージしか持っていなかった。
そしてその場内はやっぱり、際物的な臭いがぷんぷんと漂っていた。
でも、最近はそんな際物にも直ぐに溶け込めるような心の余裕が自分にはできてきているので、大して気にならない。
逆にワクワクしてしまうくらいだ。
いわゆるライダー向けキャンプ場である。
受付を済ませて、テントを張る場所を探す。
サイトは4か所に分かれていて、ライダーハウスに一番近いサイトには既にライダーのテントが数張り張られていた。
敷地の中にはライダーハウスや管理棟、山小屋風のログハウス、池、ものすごい高さの展望台などがあって、その間に隠れ家的にサイトが点在している。
我が家はその中から、ここへ来た目的でもある斜里岳を眺められるサイトを選んだ。

夕日に染まる斜里岳その斜里岳は夕日に照らされ赤く染まっていた。
「これはテントを張っている暇などない」
そう考えて、まずは場内の展望やぐらに登ってそこから夕陽を眺めることにする。
この展望やぐらが、階段の踏板が腐って穴が開いていたりして、入口には「自己責任で登ってください」との張り紙まであったりする。
おまけに最後の階段の急なこと。かみさんは怖がって途中までしか登ることができなかった。

朝起きた時の雲一つない空は、夕暮れのこの時間になっても全く変わりは無かった。
「朝から天気が良すぎると、その後で雲が出てくるのよ」との、かみさんの説は、この日ばかりは関係なかったようだ。
美しい姿を見せる斜里岳は、つい数時間前に私達がその頂上に立っていたとは思えないくらいに、孤高をもって聳えていた。
海別岳や羅臼岳、知床連山が海に消える先までくっきりと見渡せる。

 
既に日が沈みかけていた   展望やぐらの上で
既に夕日は沈みかけていた   かみさんは怖がって上まで登ってこない

キャンプ場の場内
展望やぐらの上から場内を見下ろす

夕日をバックにテントの設営展望台からのそんな風景を一しきり楽しんだ後、テントの設営を始める。
かみさんの動きが何時もより緩慢である。
今日は朝からずーっとドタバタしていたので、さすがに疲れているようである。
と言うか、今回のキャンプ旅行は最初からずーっとこんな感じなので、尚更だろう。

それでも、「こんな計画を立てて、本当に予定通り進むのだろうか?」と最初は心配していたけれど、何とかこうしてすべてのイベントを終えて、最終日のキャンプ地へとたどり着けたのである。

途中で夕日の写真を撮ったりしながら、ようやく設営を終えてビールを開ける頃には、既に辺りは薄暗くなっていた。
まだ明るさの残る空を背景に、斜里岳のシルエットがくっきりと浮かび上がっている。

斜里岳に乾杯!やっぱりここのキャンプ場に来たのは正解だった。
自分が登っていた山をこうして振り返りながら飲むビールの味は最高である。

天気が良かった分、夜の冷え込みも強くなりそうだ。
今夜は焚き火もないので、テントの中に引き籠ってコンビニ弁当を食べる。
ガソリンランタンだけが唯一の暖房源である。
食事を終えると体が急に冷えてきて、これまでの疲れがドッと襲ってきた。
「歳なんだから、こんなキャンプはもう止めた方が良いかもな」
そんな弱気な言葉が口を衝いて出てきてしまう。

夜の場内を少し歩いてみる。
通路の両側ではソーラーライトの明りが怪しく光っている。
三角のモニュメントを縁取ったちょっと暗めのネオンも怪しい光を放っている。
この怪しさが何とも良い感じである。
夜のキャンプ場ライダーハウス内の「だべり部屋」と名付けられた雑然とした部屋の中では4人のライダーが雑談中だった。
軽く挨拶を交わすが、さすがにその仲間に入るほどの元気はない。

場内を歩いて少し体が温まると、ようやく元気が回復してきたようだ。
先程まで飲む気も起らなかったワインに手を付ける。
身体がクタクタになるまで遊び尽くして、こんな風変わりなキャンプ場にテントを張って。
いい年をして、こんなことをしている夫婦なんて、他にはあまりいないかもしれない。
そう考えると、「こんなキャンプはもう止めよう」と言っていたくせに、「次は何をしてやろうか」って気持ちに変わってくるのである。
そもそも今回のキャンプ、普段履いている靴の他にランニングシューズ、パドリングシューズ、登山靴、長靴、サンダルと五つの靴を車に積んでいるなんて、普通ではないのである。
ガソリンランタンの燃料が切れかかったところで、今日は寝ることにした。


星の輝くキャンプ場の夜
今日も星空が綺麗だ

夜の場内   夜の場内
園路を照らすソーラーライト   ネオンが怪しく光る

翌朝のテントの結露はひどかった。
ポタポタとフライシートの内側から水滴が落ちてくるほどである。
朝の斜里岳でも、今日はもう札幌へ帰るだけなので、ゆっくりとテントを乾かすことができる。
今日も朝から青空が広がっていた。
日中や夜の天気は別にして、今回の4泊中、朝の天気は見事なほどに快晴が続いていた。

朝のコーヒーを味わった後、展望台の上から日の出を楽しむことにする。
快晴だった空には、何処からともなく雲が湧き出してきていた。
その雲が、まだ地平線の下に隠れている太陽に照らされて、赤く染まる。
朝日も夕日も、少し雲があった方が美しく見えるのでこの方が良かった。

ダイヤモンド海別岳しかし、朝日がなかなか昇ってこない。
どうやら今の季節、この辺りでは海別岳の山頂付近から朝日が昇るらしい。
山の高さの分、日の出も遅くなる。
身体が冷えてきたが、展望台の上で辛抱強く、朝日が昇る瞬間を待ち受ける。

赤く染まっていた雲も、次第にその色が薄れてきた。
一足早く、周辺の防風林や家々に朝に光が当たり始める。
そうしてとうとう海別岳の山頂付近が一際明るく輝いた。
「ダイヤモンド海別」の光景は期待した程ではなかったが、一応は満足して展望台を降りることができた。


知床連山の朝焼け
知床の空が紅く染まった

展望やぐら聞き覚えのある鳴き声が聞こえてきた。
空を見上げると4羽のハクチョウが南を目指して飛んで行くところだった。
もうそんな季節になっていることを思い出す。

朝食を済ませて、テントを乾かして、最後にもう一度展望台へと登る。
怖がって一番上まで登らずにいたかみさんも、ようやくそこへ登ることができた。
私も後を追って頂上まで登ったが、「ここって二人分の重さに耐えられるんだろうか?」と不安になってくる。
そんな展望台なのである。


ハクチョウが飛んで行く   我が家のサイト
斜里岳の上をハクチョウが飛んでいく   これだけ日が当たるとテントも早く乾く

濤沸湖の白鳥公園で斜里岳にお別れ片付を終えてキャンプ場を後にする。
帰りも旭川紋別自動車道経由で走ることになるが、全く同じルートでは面白くないので、少し海岸沿いに北上してみる。
今朝、南へと向かうハクチョウの群れを見ていた。
濤沸湖にもそろそろハクチョウが飛来してきているのかと思ったが、濤沸湖の白鳥公園にはその姿は無し。
そこから見える斜里岳に最後の別れを告げる。

その後内陸に入って女満別付近にやってくると「朝日ヶ丘展望台」の看板を見つけて寄り道する。
そこには季節外れのひまわり畑が広がっていた。
なかなか良い眺めの場所である。
斜里岳の姿も遠くに見えていて、今度こそ最後の別れを告げた。

昼食には美味しい蕎麦を食べたかったけれど適当な店が見つからず、結局は丸瀬布でコンビニ弁当を買って、白滝のサービスエリアでそれを食べる。
4日前にここに立ち寄った時よりも少しは紅葉も進んだようだが、まだまだ紅葉最盛期には程遠かった。
こうして4泊5日のハードな道東キャンプ旅は無事に終了したのである。

前日の屈斜路湖キャンプへ 


朝日ヶ丘展望台のヒマワリ畑   朝日ヶ丘展望台のヒマワリ畑
朝日ヶ丘展望台では季節外れのヒマワリの花が   今度こそ斜里岳と知床の山々にお別れ


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