今日は赤岩トンネルを抜けた先の高速道路下からスタートするという。 
赤岩青巌峡と言えば、赤岩トンネルのこちら側、赤岩橋から下流の事を言うのだと思っていたが、一部の物好きな人達の間ではその上流部が赤岩青巌峡の核心部分になるらしい。 
我が家は、赤岩橋上流の僅かな区間を見ただけで、とてもカナディアンで下れるような場所ではないと判断し、その下流から合流する事にした。 
      スタート地点に移動して、皆を見送る。 
        そしてトンネル入口まで先回り。 
        直ぐに皆の姿が見えてきた。 
        穏やかな流れの中を9艇のカヌーがゆったりと下ってくる。 
         この先で待ち受けているはずの修羅場と比べると、あまりにも対照的な風景である。 
       ラフト業者の間ではビッグママ、チーママと呼ばれている凄い場所もあるらしい。 
        そこを見るためには、今はもう草に覆われてしまった旧道を歩いていかなければならない。 
        今回のツアーリーダーであるT津さんは、昨日仕事を休んで、熊の気配に怯えながらそこを確認してくれていた。 
        今回のミニ例会の参加者の中では、一人がラフトで下ったことがある以外、赤岩青巌峡を下るのは全員が初めてなのである。 
        いくら水が少ないとは言っても、安全に下るためには、事前準備が肝心である。T津さんには本当に感謝するしかない。 
       私達は本来の観光名所である赤岩青巌峡へ移動して皆を待つことにする。 
        そこから川の水面まで、大型のカナディアンカヌーを降ろすのはかなり大変である。 
        幸い、ラフト業者の方が使用しているロープが張られていたので、それを使わせてもらってカヌーを下まで降ろした。 
       既に昼を過ぎていたので、巨大な赤い岩の上でおにぎりを食べる。 
        この辺りはロッククライミングの練習の場としても人気のあるところで、その様子を眺めながら時間をつぶす。 
        しかし、待てど暮らせど、皆はやって来ない。 
        しびれを切らして、旧道を少し歩いて上流の方の様子を見に行ったけれど、影も形も見えない。 
       赤岩トンネルの延長は約2キロ。 
        川の延長もそれと大して変わりはない。 
        たったそれだけの距離を下るのに、既に2時間を経過していた。 
        スタートが遅かったので、もしかしたら今日はここで時間切れになるかもしれない。 
        ツアーリーダーのT津さんの考えでは、元々が高速道路下からここまでのツアーにするつもりでいたらしい。 
        ところが、会長が「赤岩青巌峡って言ったらここから下流の事じゃないですか〜」って言うし、我が家も「途中から参加します」なんて言うものだから、下る区間を延長したのである。 
      我が家の場合、最初から「本当に我が家が赤岩青巌峡なんて下れるんだろうか?」って思っていたので、仮にここでツアーが中止になってもそれ程気にもならない。 
        ただ、苦労してここまでカヌーを降ろしたのに、一度も乗らずに帰ってしまうのも馬鹿らしい。 
         瀞場にカヌーを浮かべてかみさんに写真を撮ってもらう。 
        これで一応は、赤岩青巌峡でカヌーに乗ったと言う事実を作ることができたのである。 
      それにしても遅い。 
        スタートしてからもうすぐ3時間になる。 
        これは確実に誰かが怪我をしたのだろう。 
        そんな心配をし始めた頃、岩の間にT津さんの姿が見えた。 
        他のメンバーも、一応は一人も欠けることなく下ってきているようだ。 
        「ここはポーテージするしかないだろう」って見ていた岩だらけの場所も、ぶつかったり、乗り上げたり、張り付いたりしながらも、全員がそこを下ってくる。 
        しかし、その下流には舟やパドルや人間が次々と流されてくる。
        全く呆れた人達である。 
      そんな様子を見届けた後にサッサと自分のカナディアンを片付けようとしていると、皆が何やら相談を始めた。既に午後3時半を過ぎて、まさかこのまま下り続けるつもりじゃないだろう。 
        どうするのかと思ったら、このままカヌーをここに置いておき、明日になってからこの続きを下ろうと言うのだ。 
      ようやく赤岩青巌峡から逃げ出せると思ったら、そう簡単には解放してもらえないみたいである。 
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