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鵡川(赤岩青巌峡)

(赤岩橋〜ラフトゴール地点)

赤岩青巌峡スタート地点カヌークラブの7月例会は二日がかりで下る鵡川の赤岩青厳峡。
本当は土曜日で下り終える予定だったのが、高速道路下から赤岩橋まで下るのに3時間以上かかってしまい、赤岩橋から下流は日曜日に繰り越されたのである。
私達は赤岩橋から合流する事にしていたので、この日が初の赤岩青巌峡である。

元々の日曜日の予定は、ニニウから福山大橋まで下ることになっていた。
日曜日だけ参加するつもりでやってきたメンバーが、下る場所が赤岩青厳峡に変更になったなんて聞いたら腰を抜かしてしまうかもしれない。
「水が少ない今ならば、自分たちでも赤岩青厳峡を下れるかもしれない」と企画されたのが土曜日のミニ例会。
クラブの正規の例会でここを下るなんてとんでもない話である。
集まったメンバーによっては、下る区間を変更しなければならない。

そんな心配をしていたものの、結局は日曜日に新たに増えたメンバーは、どんな場所でも下っちゃえそうなmarioさん一人だけだったので、予定通り赤岩青厳峡を下ることになった。
キャンプ地の川原から、スタート地点の赤岩橋まで移動する。
久しぶりに、川を下る前に緊張のため胃が痛くなるような感覚を味わう。
前日から置きっぱなしのカヌーたとえ水が少ないとしても、泣く子も黙る赤岩青厳峡である。
腐っても鯛、水が無くても赤岩青厳峡。
我が家がそこを下ることなど到底不可能だから、お金を払って商業ラフトで下ってみようかとも考えたこともある川なのだ。
せめてカヌーを壊さずに下ることができれば御の字である。

カヌーやカヤックは、スタート地点の岩の上に前日から置きっ放しにしていた。
不用心かもしれないが、ここから道路までカヌーを引き上げて持って行こうなんて考える人間はまず居ないだろうし、いたずらで川に流されたとしても私達がキャンプしている川原まで流されてくる(あり得ない?)だけである。

そしていよいよ赤岩青厳峡の川下りが始まった。
一般の観光客が赤岩青厳峡と聞いてイメージするのが、赤岩橋から眺める渓谷の風景だろう。
赤岩青巌峡の岩の間を下る名前のとおり、赤い巨大な岩がゴロゴロと積み重なるその風景は、とても印象的である。
増水した時には、その巨大な岩をも覆い隠すような恐ろしい流れに変わるのだが、今日は全く穏やかな流れだった。
最初のうちは、巨大な岩の向こうには何が待ち受けているのだろうと、ドキドキしながら慎重に下っていた。
しかし、巨大な岩を回り込んだその先には、また穏やかな流れが続いているのだ。
勿論、所々に小さな落ち込みはあるのだが、対処に困る様なレベルのものではない。
巨大岩の区間を過ぎた先にザラ瀬が現れた。
岩避けに忙しくなるものの、そこも特に問題なし。


赤岩青巌峡の岩の間を下る   岩避けが忙しい
岩は多いけれど流れは速くない   パドルの水も切れないくらいに岩避けに忙しい

下るルートがどこにも無い長い瀞場を下っていくと、その先に岩や玉石がゴロゴロとした風景が見えてきた。
そこは道路上からも良く見える場所で、果たしてここをカナディアンで下れるのだろうかと心配していた区間である。
そしてやっぱり、心配した通りだった。
まともに下れそうなルートがどこにも見当たらないのである。
ちょっと下っては岩に乗り上げ、また下っては岩に乗り上げる。
かみさんを乗せたまま、カヌーを岩のない場所まで引っ張っていき、ルートが見つかったところで私が飛び乗って漕ぎ始める。
そんなことをしながら、何とかその難所を通り抜けることができた。(浅瀬で苦労する動画

その先にようやく、気持ちよく下れる瀬が現れた。
しかし、そこを下ったら直ぐにまた上陸。その先に、本物の難所があるので、全員で下見をするのだ。
そこは前日に我が家だけで十分に下見をしていて、チャレンジするかどうかで迷っていたところである。
最初のポーテージした瀬岩の間の狭い落ち込みになっていて、その先にちょっといやらしい岩が頭を出している。
でも、ちょっと見ただけであっさりとポーテージすることに決めてしまう。

その大きな理由は今日の私たちの服装である。
他のメンバーは、気温が高くてもドライスーツに身を固めている人が多かった。
私たちはポーテージ覚悟で参加しているので、重たいカナディアンを引っ張りながら岩の間を歩くのに、ドライスーツは着たくなかった。
勿論、濡れても良いようなウェアを着込んではいるけれど、今日は雲っているので、これで沈して泳いでしまうとさすがにその後は寒そうである。
身体を濡らすのが嫌だったのだ。

真っ先にポーテージして、落ち込みの下までカヌーを運ぶ。
そこで皆が下ってくる様子を写そうと後ろを振り返ると、私たちの後ろから全員がぞろぞろとポーテージしていたので驚いてしまう。
昨日は赤岩橋の下の、水の無い岩だらけの落ち込みを平気で下っていたので、ここも当然下るのだろうと思ったのだ。

必死のパドリングその先の流れもちょっと嫌らしかった。
カヌーを上手く操作しないと、本流の勢いに押されて途中で岩に乗り上げてしまいそうに見える。
予想通り、カヤックでもその岩にぶつかっている人がいた。
I田さんのOC-1などは、その岩にまともに乗り上げて身動きが取れなくなっていた。
我が家はそこを完璧なコース取りで下ることができて、ようやく今日初めての快感を味わうことができた。

先が見えないところでは、皆の一番後から下っていく。
たとえ障害物があったとしても、皆がすんなりと下っているのならば、どこかにルートがあるはずである。
ただ、それが大型のカナディアンでも通れるとは限らないのが辛いところだが、全て対応できる範囲内だった。


赤岩青巌峡を下る   赤岩青巌峡を下る
必死のパドリング   これくらいの瀬は楽しく下れる

次の難所の手前で再び上陸。
ツアーリーダーのT津さんが先行して、下見が必要な場所では指示を出してくれるので、とてもありがたい。
そこは、カナディアンでは絶対に下れないことが一目瞭然だったので、サッサとポーテージを始める。
カナディアンで下るのは無理だろうするとそこへ先頭を切って下ってきたのがK岡さんだった。
他のメンバーも当然ポーテージするのだと思っていたところへ、真っ先に突っ込んできたK岡さん。
「K岡さん、どうしちゃったの?昨日、何か、人生を変えるような経験でもしちゃったの?」
ゴツンゴツンと岩にぶつかりながら、あっさりとそこを下ってしまった。

ここにはもう一つのルートが有って、そこには大きな落差がある。
その手前で沈したN島さんは、まともにそこを生身で落下してしまう。
こんな場所を下る時、怪我をするかしないかは紙一重なのである。

結局、ここでポーテージしたのは我が家だけ。
大型のカナディアンとカヤックやOC-1とでは、瀬に対する感じ方が全く違うことを、ポーテージした二つの瀬で知ることができた気がする。


真っ先に瀬を攻めるK岡さん   落ちるN島さん
人が変わったようなK岡さん   真っ逆さまに落下、怪我をしなくて良かった〜

昼の休憩赤岩青厳峡を流れる水は十分に澄んでいるけれど、ちょっと臭いが気になる。
上流の流域は殆どが山間部なので、もしかしたら占冠かトマム辺りで何かが流れ込んでいるのかもしれない。

昼の休憩を挟んで三つ目の難所へとやってきた。
そこは並行して走る道路の上からも見下ろせる場所である。
ただ、道路は川よりもかなり高い場所を通っているので、そこから見下ろしても平面的にしか見えない。
その瀬を間近に見ると、巨大な岩が積み重なったとんでもないところだった。

しかし、その岩の間を縫う流れの中に、カナディアンでも下れそうなルートが見えていた。
二つの岩に挟まれた狭い落ち込みを抜けるルートである。
逃げてばかりいないで、そろそろチャレンジしても良いかもしれない。
ここもポーテージすることにかみさんは当然、及び腰である。
「何かあったら皆に迷惑かけるわよ」
それはどこを下っていても起こりえることだけれど、ここで考えられるトラブルは落ち込みの手前でバランスを崩し、横向きになって岩に張り付くことである。
そうなれば万事休す。落ち込みの途中にある岩なので、上からの水圧をまともに受けて、そこに引っ掛かったカヌーを回収するのはまず不可能だ。

そこまでのリスクを冒して、チャレンジする意味は無かった。
今回の一番の目的は赤岩青厳峡を無事に下り終えることである。
もしも何かあったら、後ろ指を指されることになるのだ。


皆で瀬を下見
下見の結果、下れそうなルートは有ったけれど、安全第一である

半端じゃないポーテージしかし、ここのポーテージは半端ではなかった。
巨大な岩が積み重なってできた山を一山越えなければならないのである。
ポーテージしながら、「夫婦でこんな馬鹿みたいなことやっているのって我が家くらいだろうな〜」と、しみじみと思った。(半端じゃないポーテージの動画

仁々宇橋が見えてきた。
そこを過ぎれば、車を停めてあるラフトのゴール地点は直ぐである。
その手前の最後の瀬を、岩を縫いながら、もう少しでクリアできると思ったところで、かみさんがパドルを止めてしまった。
「何でクロスを入れない?」
頭の中で、声にならない声をあげたけれど、我が家のカヌーはそのまま横の岩の間に突っ込んでしまった。
そこでようやく正気に戻ったかみさん。「あら?どうしたのかしら?」
何度も岩を避けているうちに、頭の中が空っぽになってしまったらしい。
「後は一人で漕いでくれない?」
面倒なので、僅かな区間だけれど、残りの瀬は私一人で下った。

仁々宇橋をくぐるとゴールは間近そうしてとうとう赤岩青厳峡を下り終えた。
正直言って、3度もポーテージしてしまうと、下ったという実感は湧いてこない。
もっと激しい流れの川を何度も下っているし、充実感の少ない川下りだった。
それでも、赤岩青厳峡を下ったことは事実である。
しかも、カナディアンの夫婦タンデムで。
この事実は、少しは誇りに思っても良いかもしれない。

もう少し水が増えれば、もっとスリリングな川下りを楽しめそうだ。
でも、多分、我が家が赤岩青厳峡を下るのはこれが最初で最後になることだろう。

2012年7月22日 曇り
当日12:00 鵡川水位(占冠観測所) 329.88m
(福山観測所) 168.37m


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