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曇りのち晴れ夷王山キャンプ

夷王山キャンプ場(5月3日〜5日)

 GWには道南の清流、天の川を下ろう。そんな企画をカヌークラブの中で提案し、我が家のGWの行動もそれに合わせて考えることとなった。
 そこで、3連休の中日4日に川を下るので、まずはその前日に松前の桜を見に行くことにする。
 GWの松前と言えば交通渋滞は必至なので、それに巻き込まれないように朝4時半に自宅を出発。休みも取らずに一気に走って、9時には松前に到着した。
三分咲きの血脈桜 松前公園の看板を目当てに車を走らせていると、そのまま臨時駐車場らしき場所に誘導されてしまう。現在地も分からぬままに車を降りると、駐車場の案内係の方が「血脈桜はこの道を歩いて行けば直ぐですよ。まだあまり咲いていないですけどね。」と教えてくれた。
 血脈桜が4月29日に開花したとの話は聞いていたけれど、それからまだ4日しか経っていない。しかも、その後の気温も低いままで経過し、「満開には早すぎるかもしれない」との心配はどうやら当たってしまったようだ。
 そもそもここまで走ってくる途中、桜の花など何処でも目にしていない。「もしかしたら松前だけは気候が違うのかもしれない」との淡い期待もあっさりと砕かれてしまった
 光善寺境内の樹齢300年以上と言われる血脈桜は3分咲き程度。しかも蕾の数そのものが少ない感じで、全くの期待外れである。
松前藩陣屋で取り調べを受けるかみさん そこを出て、龍雲院から松前家藩主墓所へと歩いて行っても桜の花の姿は何処にも見あたらない。
 5年前に初めて松前を訪れてここを歩いた時には、古都の寺巡りをしている様な雰囲気にいたく感動していたのに、今回は桜の花だけが目的だったものだから、同じ場所を肩を落として歩いていた。
 前回は素通りしていた松前陣屋に入場料を払って入ってみたものの、ここも全然面白くなかった。
 当時の陣屋を再現したテーマパークのような作りになっているのだが、どうもこの手のものには興味がわかないのである。

 地図を頼りに園内の一番奥、桜の見本園などがある場所まで行ってみたが、頭上を覆う桜のトンネルに開いている花は一輪も無し。
 気落ちしながら松前城のある園内中心部へと歩いていくと、ようやく花を咲かせた桜も目立ってきた。
 咲いている桜の種類は全て大山桜で、染井吉野や南殿よりも開花が早いようだ。
 特に松前城の入り口付近の桜は満開に近く、観光客も群がっていて、まるで表の顔になる部分だけ体裁を整えているようなものである。

 
大山桜はいくらか花を咲かせていた   松前公園の表玄関だけは桜が満開

 そのまま街に降りて買い物や食事を済ませる。
 昼食は「手打ちそばおぐら」という店でニシン蕎麦を食べたけれど、上に乗っているニシンが全然美味しくなかった。
 去年の秋に江差の「やまげん」で食べたニシン蕎麦がとても美味しかったので、「その味をもう一度」と思ってここでも注文したのだが、江差のニシン蕎麦とは似ても似つかない代物だった。
 これからは、他の店のメニューにニシン蕎麦が有ったとしても、もう注文することはないだろう。

美しい竹林 駐車場まで戻ってくると、入場待ちの車の列が長く伸びていた。そしてその列は街の中まで延々と繋がっていたのである。
 まだ桜もそれ程咲いていないのに、これで満開になったらどうなるのだろうと空恐ろしく感じてしまう。
 その行列を横目で見ながら、観光地図に載っていた孟宗竹林を見に行くことにする。
 看板に従って細い道を入っていくと、最後には「本当にこの道で良いのか?」と思えるような人家の庭先を通り、車幅ぎりぎりの細い橋を渡って、ぬかるみにタイヤ埋め、車体をこする笹にヒヤヒヤさせられ、半分崩れかけた木製の橋でその道は行き止まりとなる。
 橋を渡った先に、ここが北海道であることを忘れてしまうような美しい竹林が広がっていた。
 北海道に住んでいるとこんな竹林を見られただけで嬉しくなってしまう。
 それにしてもGWの松前で桜ではなくて竹林を見て感動することになるとは思ってもいなかった。

天の川 松前を後にして、知内経由で今日のキャンプ地である上ノ国町の夷王山へと向かう。
 道路は渋滞こそしていないものの、沿線の道の駅は何処も車で溢れかえっていた。
 途中、湯ノ岱温泉の保養センターで風呂に入る。
 そのすぐ前が明日の川下りのスタート地点となるので、上ノ国町まで戻るついでに川の下見をしながら車を走らせる。
 水量もたっぷり、周辺の風景も美しく、明日の川下りが楽しみになってくるが、天気予報は今夜から下り坂。
 今日下っていれば最高だったのにと思っても、予定は簡単には変えられない。
 ちょっと前までの天気予報では4日が一番天気が良くなるはずだったのに、本当に天気予報は当てにならないのだ。

混雑する?キャンプ場 キャンプ場に到着すると、既に結構な数のテントが張られていた。
 これでも空いている方なのだろうけれど、我が家がここにテントを張った過去2回で他のキャンパーの姿を見るのはまれだったので、ちょっと驚いてしまう。
 その混雑から逃げようとオートサイトではない芝生広場の隅の方にテントを張りたがっているかみさんを説得して、段々畑状の一番上のサイトにテントを設営する。
 そこには通路側にファミリーらしいテントが張られているだけなので、奥の方に入れば隣のことはほとんど気にならない場所である。
 それでも、他にキャンパーのいる場所でのキャンプに慣れていないかみさんなので、少しでも離れた場所に行きたがるのである。

 テントを張り終えて直ぐにビールを飲みたいところだけれど、その前に近くの海岸へ流木を拾いに行くことにした。
 このキャンプ場で2泊する予定なので、家から持参した薪では足りそうにないのである。
我が家のサイト それに、今夜から雨も降るらしいので、今のうちに乾いた薪を確保しておく必要があるのだ。
 毎回同じことをやっているので近くで流木を拾える場所も覚えていて、直ぐに十分な量を拾い集めてキャンプ場へと戻ってくる。
 我が家とファミリーの間には更に車が一台増えていたが、車中泊の老夫婦なのであまり気になることもなさそうだ。
 見ると、ワンボックスカーの後ろには釣り竿がずらりと並んでいたので、それを話題に少し話をする。
 こうして一言二言でも言葉を交わしておけば、お互いにその後の居心地はずいぶんと変わるものである。
 薄曇りの空で太陽が淡い光を放ち、その横には幻日が現れていた。これは天気が下り坂へ向かう前兆でもある。
 念のためにテントに張り綱を張っておくことにした。
 夕食を済ませると早速、拾ってきた流木でたき火を始める。
朝の早起きのせいで寝不足気味なので、ワインを1本空けたところで早々にテントに潜り込んだ。


幻日   焚き火でまったり

 夜中に風の音で目を覚まさせられた。
 テントが大きく揺れ、時々インナーテントごと持ち上げられそうな突風が吹き付けてくる。
 張り綱を張っておいたのは正解だったようだ。
 出入り口のファスナーが勝手に開いて、それがばたついていたので、いったん起き出してロープを張り直したり、出入り口部分をペグで止めたりの補強を施す。
 到着時の風向きに合わせてテントの入り口を東に向けたのだが、今はその東側から強風が吹き付け、我が家のテント「ソレアード」にとって一番の弱点となる方向から風を受けることになっていた。
 大型テントとスクリーンタープを張ったファミリーキャンパーが二組泊まっていたけれど、どちらも悲惨な状態になっていた。
 隣のコールマンのスクリーンタープは入り口が完全に開いてしまって、風で大きく煽られている。
 私が前を通り過ぎると、その中から怯えきった犬のうなり声が聞こえてきた。飼い主はテントの方で寝ているみたいで、風でつぶれそうなスクリーンタープに一匹残された犬は不安でしょうがないのだろう。

強風にあおられるテント 自分のテントに戻ってもう一度眠りにつく。耳栓があるおかげで、うるさい風の音もあまり気にならないで眠れる。
 明け方になっても風は弱まる気配もなく、おまけに雨まで降り始めたようだ。
 テントのばたつく音が大きくなったので様子を見てみると、メッシュの窓の部分のファスナーがまた勝手に開いていて、前室に雨風が吹き込んでいた。慌てて起き出したが、それ程強い雨ではなかったのが幸いして、キャンプ道具がびしょ濡れになることだけは免れた。
 かみさんも隣のテントから起きてきた。
 場内では大型テントが一張り潰れていたものの、スクリーンタープは持ちこたえていた。
 GWのキャンプでは4年前のみどりとロックの広場で、今回使っているソレアードのフレームを折ってしまったこともあり、天気の安定しない今時期のキャンプは注意を怠れない。
 雨は止んだものの、前室側から風を受けているので窓を開けることもできず、テントの中に閉じこもったままで朝食を済ませる。
 今日は旅のメイン行事である天の川の川下りの日。ただでさえ参加予定者が少ないのに、この天気で果たして何人集まるのだろうと不安になってくる。
 風は相変わらず強いままで、テントの中にじっとしていてもしょうがないので、少し早めに集合場所へ向かうことにした。

 (この間の川下りの様子は川下り日記参照)

 そうして、楽しい川下りを終え、ゴール地点に隣接する花沢温泉で暖まって、キャンプ場へと戻ってきた。
 朝にそこを出た時からはテントの数も少なくなり、昨日は多かったライダーの姿はなく、ファミリーキャンパーばかりに変わっていた
 夕食のメニューに、川下り中に収穫した行者ニンニクとアズキナが加わる。
雲が消えてきた 食事を終える頃には、上空を覆っていた雲が急に薄くなってきたなと思ったら、その後かき消すように姿が消えてしまった。
 こうなると夕日を楽しまないわけにはいかない。キャンプ場の法面を登り、隣接する公園の広場の方まで歩いて行って、そこから海に沈む夕日を眺めることにする。
 そこの丘の上には何年も前から閉鎖されたままになっている建物がある。窓から中を覗くと厨房が見えるので、レストランとして使われていたのだろうが、素晴らしロケーションの場所に建っているのに何とももったいない施設である。
 そこで美しい夕日を満喫してサイトへと戻る。
 昨夜からの強風はほぼ治まったものの、まだ東よりの風が吹いていた。
 その風に吹かれて火の粉が隣のテントまで飛んでいかないように、サイトの隅の方でたき火を楽しむ。
 頭上には満天の星空が広がっていたが、サイト内の照明が明るすぎた。
 キャンプ場から離れた場所まで行けばその星空をもっと楽しめそうだけれど、寒くて風も強くそこまでの元気はなく、この日も早めにテントに潜り込む。


夷王山から見る夕日

 翌朝は0℃近くまで気温が下がり、テントの中も外も結露でびしょ濡れ。
 今日は早めに撤収して方々寄り道しながら札幌まで帰る予定だったのに、これではテントが乾くまで待たなければならない。
 最後に残しておいた薪でたき火をしながら、テントが少しでも早く乾くように結露を拭き取る。こんな時に限って風は無くなり、雲が広がって日差しを遮り、テントはなかなか乾いてくれないのである。
 完全に乾かすのは諦め、最後に生乾きのテントを片付けてキャンプ場を後にした。

ヒバ爺さん この後の予定は、乙部町の宮の森公園でカタクリの花を見て、せたな町の浮島公園でエゾノリュウキンカの花を見て、最後に黒松内町の大金鉱山精錬所跡へ行くことになっていた。
 何れも、最近になって雑誌やテレビ、新聞から仕入れた情報から決めた訪問先である。
 道南の日本海側は結構訪れる機会が増えていて、大体の場所は既に訪れてしまっているので、ひたすらマイナー観光地情報に目を光らせているのである。
 そこへ、厚沢部町のヒバの巨木のことがテレビニュースで流れていたことも思い出し、急遽行き先に追加する。

 最初に向かったのは厚沢部町。
 キャンプ場のある土橋自然観察教育林の中に「ヒバ爺さん」と呼ばれるヒバの巨木があるらしい。
 キャンプ場のバンガローは埋まっているみたいだが、サイトにテントの姿は無かった。我が家も一度、キャンプするつもりでここを訪れたことがあるが、何となくしっくりこないで引き返してしまった。
 ここのサイトはその周囲を山や樹木に囲まれているので、何となく薄暗いイメージなのである。
 そのサイトを通り抜けて山の中へ入り険しい山道を歩いて行くと、その先に見上げるような巨木が鎮座していた。
 幹や枝が複雑に絡み合ったその姿からは、ヒバ爺さんの名前通り、永い年月を生き抜いてきたものだけが身に付けることのできる風格が感じられた。
 時間が無くてそこから同じ道を引き返したが、森の中を一周できる道もあるので、時間に余裕のある時に、もう一度訪れてみたい場所である。ただし、その時もここのキャンプ場を利用するかどうかはちょっと微妙なところだ。


針葉樹林に日が射す   ヒバ爺さんと記念撮影

宮の森公園 次に向かったのは乙部町の宮の森公園。
 そこの駐車場からは乙部町市街地を一望できて、館の岬の姿も美しく眺められる。
 ここを訪れた目的は、その展望ではなくてカタクリの花である。
 樹高4m前後のイタヤカエデだろうか。背は低いものの枝振りの良い樹木が茂った園内の林床には、花の盛りを過ぎたカタクリが一面に広がっていた。
 しかし、時期が遅かったようで、その花はすでに盛りを過ぎてしまっていた。
 その代わりに花盛りを迎えたニリンソウ林床を彩っていたので、それなりに満足して乙部町を後にする。

浮島公園のエゾノリュウキンカ 昼食は我が家の道南追分ソーランラインの旅の定番「海を眺めながらのコンビニ弁当」である。
 その後はせたな町の浮島公園へ。
 こちらはエゾノリュウキンカが見頃を迎えているとの新聞記事が元ネタだった。
 確かにエゾノリュウキンカは綺麗に咲いていたけれど、そこで一緒に咲いているミズバショウは既に葉が大きく茂ってしまい、こちらも時期的には少し遅すぎたようである。

玉川公園のクリの木 そしてもう一ヶ所、途中で手に入れたせたな町の観光パンフレットでスイセンの名所の玉川公園のことを知り、そこにも寄り道することにした。
 ところがこちらは時期的にまだ早すぎて、一部のスイセンしか咲いていなかった。
 しょうがないので長い階段を登った先にある玉川神社に参拝する。
 ここではスイセンよりも「クリリンの木」と名前のついたクリの巨木の方が私たちの好みに合っていたようだ。

大金鉱山精錬所跡 そしてようやく最後の目的地である黒松内町の大金鉱山精錬所跡へと向かう。
 雑誌に載っていた一枚の写真に触発されてどうしても見てみたいと思った産業遺跡。そもそも黒松内町に鉱山があったなんて初めて聞く話だった。
 その場所は黒松内町よりも寿都町市街地から近く、追分ソーランラインから少しだけ入った山の中である。
 車で近くまで入れそうだったけれど、両側から迫る笹藪で車が傷付くのが嫌で途中から歩くことにした。
 そして700m程歩いたところで、大金鉱山の精錬所跡が忽然と姿を現した。
 山の斜面そって作られた精錬所の石組みだけが残り、まるで要塞のように見える。廃墟マニアの私にとっても、ここは一級品の廃墟だった。
 隣の急斜面を立木を手がかりにしながらよじ登り精錬所跡の頂上に立つ。雪を被った遠くの山並みまで見渡せる絶景が広がっていた。
 そこからまた石積みを一段ずつ降りながら廃墟を見て回る。その複雑な構造がまた廃墟マニアの心をくすぐるのである。
 そんなものに全く興味を示さないかみさんは、その間ずーっと下で待っていてくれた。


大金鉱山精錬所跡頂上からの風景

 こうして今回の旅は終わりを迎える。
 期待はずれの松前の桜から始まり強風に雨、それから楽しい川下りに青空の下でのマイナー観光地巡りと、実際の天気も、気分的にも、曇りのち晴れのGW道南の旅であった。

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