コーヒーを入れ、残った薪で最後の焚き火をする。
そして札幌を出る時に持ってきた18本入りのタバコが1本だけ残っていて、その最後の1本に火をつける。
1週間ほど前から禁煙にチャレンジしていたものの、中途半端に残してしまったタバコがその禁煙の大きな障害となっていた。
そしてキャンプへ来る時、そのタバコを持ってくるかどうかで大いに悩み、結局持ってくることになってしまった。
そうなるとどうしても我慢する事ができずに、毎日数本ずつ手を出してしまい、こうなったらキャンプ中にこれを全部吸ってしまってそれから禁煙しようと言う事になったのである。
最後の1本を吸うには最高のシチュエーションとなったけれど、果たしてこれで本当に禁煙できるかどうかは不明である。
片付けを終え、最後にもう一度、昨日テントを張ろうと思った場所へと行ってみた。
そしてそこで信じられない光景に出会ったのである。
散々悩んだ末に我が家がテントを張るのを諦めたその場所に、まるで何事も無かったかの様にポツンとテントが張られていたのだ。
近くに居たライダーの方に話しを聞いてみると、役場に確認したら何処にテントを張っても良いと言われたそうである。
私の場合、「役場に電話してもどうせ駄目と言われるに決まっている」との先入観があるものだから、一々確認しようと言う気持ちにはなれないのだが、その話しを聞いて、手間ひまを惜しんでいてはいけないと思い知らされた。
ちなみにこのライダーの方は私のホームページを良く見てくれているそうで、思わぬ出会いとなったのである。
その後は上ノ国町の名所旧跡を少し回ってから帰る事にして、まずは勝山館跡ガイダンス施設の駐車場に車を停めて夷王山の山頂へ登ってみる。
そこの鳥居を通してみる上ノ国町の眺めがなかなか素晴らしい。
駐車場に戻ると、何か行事でもあるのか人や車が沢山集まってきていた。
それにまだ9時前なのにガイダンス施設もオープンしているようである。
せっかくなのでそこも見てみることにした。
何処だかの視察があるそうで、役場の人達が事前に集まっているらしい。
通常の開館時間は10時からなので、これはラッキーだった。
それなのに、この館の管理人の方が「騒がしくて申し訳ない」としきりに誤ってくれるのでこちらの方が恐縮してしまう。
そして江差町の時と同じく、館内の展示物などの説明を熱心にしてくれる。
私達は全く予備知識無しにここに入ってきて、「そもそも勝山館って何なの?」って状況だったので、この説明は有り難かった。
勝山館を、本来の意味の「かつやまだて」ではなく「かつやまかん」と読んでいたものだから、何か由緒ある建物の跡地程度に思っていたのだ。
おまけに説明ビデオを見る事まで進められて、一方的にスイッチを入れられたので止むを得ず15分のビデオまで見る事となる。
でもそのおかげで、勝山館を含めた道南の歴史への理解をますます深める事ができた。
その後は勝山館跡を見て回る。
そこへ向かう園路の真ん中に、大型動物のものと思われる真新しい糞が落ちていたのには驚かされた。
アライグマやタヌキにしては量が多すぎるし、熊の糞としか考えられない。
しかし、市街地の直ぐ近くで、周辺は牧場や牧草畑が広がっているような場所なので、こんなところに熊が出るとは信じられない。
やっぱり道南の熊の生息密度は高いのだろうか。
勝山館跡は、建物や門、井戸のあった場所などに石を並べて表示している。
この方法で史跡を公園の様にして復元している場所を方々に見かけるが、そこから昔の状況を想像するのはなかなか難しい作業だ。
それよりも、草木に覆われた中に建物の跡が残っている方がイマジネーションをかきたてられる。
でも、大昔の遺跡ともなれば杭の立っていた土の窪みしか残っていないのだろうから、この様な復元方法になるのは仕方が無いのだろう。
道の駅「もんじゅ」に寄ってから、上ノ国史跡巡りの続きで旧笹浪家住宅を見に行く。
ここでも、施設を管理しているおばちゃんから詳しい説明を受けて、炭を熾した囲炉裏の横でお茶まで入れてもらった。
話の中で「この辺には熊でも鹿でも狸でも何でもいるからね」と言われ、やっぱり先ほど見た糞は熊のものに間違いないと確信する。
その後は笹浪家所有の蔵の中も見せてもらったが、そこの展示物に特に興味を引くものは無かった。
しかしここにもビデオ施設があり、200年余り前に道南を旅した管江真澄について知る事ができるらしい。
全く名前も聞いた事のない人物だったけれど、大田神社も出てくるようなので、またここでビデオを見る事となった。
今日はサラッと観光して札幌へ帰る予定だったのが、説明を聞いたりビデオを見たりと予定外に時間がかかっている。
でも、そのおかげで道南檜山方面の歴史に随分と詳しくなってしまった。
植物の名前を覚えれば森歩きがより楽しくなるし、山の名前を覚えれば山の風景をより楽しめる。
そして、歴史を知れば、その街の風景がまた変わって見えてくるのである。
その後は北海道内に現存する神社建築では最古に属する上ノ國八幡宮本殿に参拝。
嘉吉3年(1443)開基と伝えられる北海道有数の古刹上國寺本堂は、残念ながら修復工事中で囲いの中だった。
上ノ国町には他にも幾つか史跡があるが、それらはまた次の機会に回る事にして札幌へと戻る事する。
帰り道は厚沢部から八雲町落部へと抜ける道道を通り、その後は道央自動車道で一気に札幌へと走る。
道道沿いの紅葉はちょうど見ごろを迎えていた。
三泊目のキャンプでは森町の緑とロックの広場も候補地に考えていたが、そちらに泊まれば美しい紅葉を楽しめたかもしれない。
欲を言えばきりが無いので、それはまた来年秋の道南キャンプの宿題としよう。
道央道から見る紅葉は、盛りのところもあれば全く色付いていないところもあり、斑模様の様子である。
そして帰ってきた自宅の庭では、ヤマボウシの木が色付いているだけで、他の木々はまだ緑色のままだった。
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