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歴史を学ぶ上ノ国キャンプ

夷王山キャンプ場(10月23日〜24日)

 かもめ島キャンプを終え、まずは昨日行けなかった乙部町の「縁桂」へ向かう事にする。
 昨日走った道を引き返すのは面白くないけれど、それ程の距離でもないので我慢できる。
 山の中の駐車場に到着。
 案内看板を見ると、渓流沿いに1キロ程歩いた先に目指す「縁桂」があるらしい。
 念のために熊避けの鈴をつけて、ウッドチップの敷かれた遊歩道を歩き始める。
 所々に鐘が吊るされていて、それを鳴らすとかなり大きな音がするので、これならば鈴が無くても熊と鉢合わせする心配は無さそうだ。
ブナの森を歩く 途中でブナの森と書かれてある方に寄り道した。
 ブナの木が多いと森の中も明るく感じる。
 樹肌の白さのせいもあるのだろうけれど、ブナの葉がちょうど良い具合に木漏れ日を森の中に通してくれるのである。
 歩き始めて20分後に縁桂に到着した。
 2本の巨木が仲良く寄り添う姿は「縁桂」の名前の通りである。
 良く見ると幹の途中で2本の木が繋がっており、縁結びの御神木として社まで建てられている。
 かみさんはそこで息子の良縁をお願いしたようだ。
 もっと良く見えるポイントを探して裏の斜面を登っていると、かみさんが「この木って浮気してるわよ」と言いはじめた。
 なるほど、その斜面から斜めに伸びた同じ桂の木が、縁桂の一方の木と、上空で仲睦まじく枝を交差させていたのである。
 もう一方の桂はそれに気付く様子も無く、脳天気に枝を伸ばしているだけだ。
 かみさんの言によると、浮気している方が女の木らしい。
 これが縁結びの木として信仰されているのだから、世の中で何を信じて良いのか分からなくなってしまう。


  縁桂の一方が浮気中?!

 駐車場に戻ってきた時は、そこを出発してから既に45分が経過していた。
回るほっけとネコ 今日はのんびりと江差観光をするつもりでいたのに、これではまた何時ものように忙しい一日になりそうだ。
 その後は乙部温泉のいこいの湯に入る。
 これがなかなか快適な湯で、何時ものようにカラスの行水で出てしまうのが勿体無く感じられた。
 そして同じく乙部町の泰安丸直売所に寄って、今日の夕食の食材を仕入れる。
 名物の100円のひらきほっけは残念ながら売り切れ。
 しょうがないので冷凍ひらきほっけと冷凍の生干しイカ、そして活ホタテ2枚を購入。
 これで支払いが700円ちょっとなのだから安いものだ。
 今夜のメニューは海鮮バーベキューである。

にしん蕎麦 昼食は江差に戻って「やまげん」で蕎麦を食べる。
 江差なので、注文したのはやっぱりニシンそばである。
 ニシンの甘露煮の甘さがしょっぱいそば汁に合わさり、何とも絶妙な美味しさであった。

  その後は「旧中村家住宅」、「旧檜山爾志郡役所」、「旧関川家別荘」などを見て回る。
 何処も最初に説明員の方からの説明がある。
 我が家は自分達で見て回りたいタイプなので、こんな説明は正直言ってありがた迷惑なのだけれど、説明を聞いて初めて知る事もありそれはそれで面白い。
 何れも歴史のある建物だけれど、保存のためにかなり修復されている。
 特に「旧檜山爾志郡役所」などは、外壁の色や内装の壁紙まで建設当時のものと全く同じ形に復元したそうである。
旧中村家住宅内部 こうなると、建物の古さを知る事ができるのは階段の踏み板と手すり程度であり、何の趣も感じられない。
 一方、300年も前に建造された法華寺を見学しようとした時、「法事が行われているので、申し訳ないですが今は駄目です」と断られた事の方が、現在に残る建物の真の姿を見られたようで面白かった。
 そして今日の宿泊地予定地である上ノ国町の夷王山キャンプ場へ向かった。
 この付近で10月もオープンしているキャンプ場は、他には厚沢部レクの森キャンプ場しかない。
 そこは前回の道南キャンプの時に一度訪れていて、樹木が茂った薄暗い雰囲気に尻込みして、テントを張るのを諦めたところである。
 今時期のキャンプでは、できるだけ太陽の光を浴びれる場所にテントを張りたいのである。

かもめ島の見える海岸で流木拾い キャンプ場に向かう前に、例によって焚き火用の薪を確保しなければならない。
 流木を拾えそうな海岸を探しながら車を走らせていると、直ぐにちょうど良い場所が見つかった。
 手ごろな大きさの流木が大量に打ち寄せられていて、そのままここでキャンプをしたくなるような砂浜だった。
 波打ち際には美しい小砂利が打ち寄せられていて、思わず座り込んでその中にお宝が混じっていないか探し始める。
 するとかみさんから「そんなことしている時間は無いのよ!」と怒られてしまい、数個ほど拾った石をその場に投げ捨てて車へと戻った。
 日が短い今時期のキャンプは、本当に時間的な余裕が無い。

4年前の写真 泊まるキャンプ場は決まっていたけれど、問題はテントを張る場所だった。
 このキャンプ場のサイトは谷間のような場所に造成されているので、展望は海側の方向に僅かに開けているだけである。
 一方、近くの丘の上には野外炉がずらりと並んだ園地があり、そこからはかもめ島以上の展望を楽しめるのだ。
 4年前にここに泊まった時も、次にテントを張るのならこの場所しかないと考えていた。
 水飲み台の水も出るし、近くには水洗トイレもある。
 ちょっと気がかりなのは、隣接する駐車場がタイヤ痕だらけなことだった。
 今日は土曜日なのでそんな輩が出没する確立も高そうだ。
 それでも私はそこにテントを張ろうと思ったけれど、かみさんがどうも乗り気では無く、私も何となく心に引っ掛かるものがあった。
 「もしかしたら園地の管理人がやって来て注意されるかもしれない。」
 先月の霧多布岬キャンプ場でのトラブルが尾を引いているようで、楽しいキャンプで不愉快な思いはしたくないという気持ちが強かった。
テント設営完了 美しい風景は昨日で十分に堪能しているので、今日は素直に正規のサイトにテントを張ることにした。
 そうと決まれば日没も迫っているので急がなければならない。
 テントを張り、コメを研ぎ、焚き火の準備、バーベキューの準備、二人で黙々とそれぞれの仕事をこなす。
 そうして全てが整ったところで、キャンプ旅行最終日を祝って乾杯をした。
 眺めは良くないけれど、その分、風も当たらず静かなキャンプを楽しめる。
 小鳥のさえずり、牧場からの牛の鳴き声、忙しないキャンプばかりが続いたけれど、ようやく落ち着いた時を過ごせている。
 考えてみれば、今回は一度も他のキャンパーとは会っていなかった。
キャンプ場の風景 と思っている時に、1台の車がサイトまで入ってきた。
 ちょっとガッカリしたけれど、ソロの男性だったので、気にしなくても大丈夫のようだ。
 西の空が赤く染まっていたので、サイト横の法面を駆け上がって1枚だけ写真を撮っておいた。
 ソロの男性は車中泊のようで、フリーサイトの野外炉で盛大な焚き火を始めた。
 どうも彼は焚き火だけが目的でキャンプをしているようで、私達が寝るまで豪快な炎を上げ続けていたのである。
 炭を熾し、泰安丸直売所で買ってきた海の幸を焼く。
 活ホタテは勿論、ひらきほっけも生干しイカもとても美味しい。
 素材の良さもあるけれど、焼き方を担当したかみさんの腕前もなかなかのものだった。


ホタテを焼く   イカを焼く   ホッケを焼く

 食後は焚き火の時間だ。
 既に月が昇っていた。
 今夜が本当の満月だが、薄い雲が広がっていて朧月のようになっている。
満月と焚き火 それにしても今回の旅行は、今日まで素晴らしい天気に恵まれてきた。
 明日からは下り坂に変わるようだけれど、それでも今年の道北、道東でのキャンプと比べたら雲泥の差である。
 最後の最後で雨男、霧男の名前を完全に返上できたようだ。
 私達が寝る頃、ソロ男性の焚き火の炎もようやく小さくなってきていた。

 夷王山のキャンプ場に泊まった時は、夜明けの塔から朝日を見るのも楽しみの一つである。
 雲の様子が心配で、目覚めたら直ぐに空の様子を確認する。
 天気予報とは違って、まだそれ程雲が広がっていなかったので急いで起き出した。
 顔を洗っていると、男性が焚き火をしていた野外炉からチロチロと赤い炎を上がっていた。
 「まさか、昨夜からずーっと焚き火をしていたの?」と驚いて見に行くと、燃え残っていた太い薪が、朝から強くなってきた風吹かれて再び燃え出したらしい。
 それにしても一晩中くすぶり続ける薪なんて、一体どれくらいの太さのものを燃やしていたのだろう。

 車で夜明けの塔へと向かう。
 そこには既に車が1台停まっていて、私達がやって来ると同時に出て行ってしまった。
 若い男女が乗っていたようで、ちょっと邪魔してしまったようだ。
夜明けの塔からの展望 日の出までまだ時間がありそうだけれど、塔に登ってみる。
 既に東の空はピンク色に染まり、蛇行する天の川がその色を映して、とても美しい。
 5年前に朝日を見た時とまったく同じ色合いである。
 先ほど出て行った車が再び戻ってきた。
 何処か他で朝日を見られるポイントを探しに行ったけれど、良い場所が見つからずに戻ってきたと言うところだろう。
 塔に登ってきたので、この場所は若い二人に譲って、おじさんとおばさんは下の牧草畑から朝日を楽しむ事にする。
 風を避けるため二人で1枚の毛布に包まって登ってきた男女とすれ違う時、「おはようございます」と挨拶すると、向こうも爽やかな笑顔で挨拶を返してくれた。
 その後私は、良い撮影ポイントを求めて広い牧草畑の中を走り回る事になる。
 次第に厚さを増してきた雲のため、すっきりとした朝日は拝めなかったが、美しい朝焼けを堪能してサイトへと戻ってきた。


朝日を眺める   夜明けの塔

上ノ国の日の出

 コーヒーを入れ、残った薪で最後の焚き火をする。
 そして札幌を出る時に持ってきた18本入りのタバコが1本だけ残っていて、その最後の1本に火をつける。
最後の焚き火 1週間ほど前から禁煙にチャレンジしていたものの、中途半端に残してしまったタバコがその禁煙の大きな障害となっていた。
 そしてキャンプへ来る時、そのタバコを持ってくるかどうかで大いに悩み、結局持ってくることになってしまった。
 そうなるとどうしても我慢する事ができずに、毎日数本ずつ手を出してしまい、こうなったらキャンプ中にこれを全部吸ってしまってそれから禁煙しようと言う事になったのである。
 最後の1本を吸うには最高のシチュエーションとなったけれど、果たしてこれで本当に禁煙できるかどうかは不明である。

 片付けを終え、最後にもう一度、昨日テントを張ろうと思った場所へと行ってみた。
 そしてそこで信じられない光景に出会ったのである。
あの場所にテントが! 散々悩んだ末に我が家がテントを張るのを諦めたその場所に、まるで何事も無かったかの様にポツンとテントが張られていたのだ。
 近くに居たライダーの方に話しを聞いてみると、役場に確認したら何処にテントを張っても良いと言われたそうである。
 私の場合、「役場に電話してもどうせ駄目と言われるに決まっている」との先入観があるものだから、一々確認しようと言う気持ちにはなれないのだが、その話しを聞いて、手間ひまを惜しんでいてはいけないと思い知らされた。
 ちなみにこのライダーの方は私のホームページを良く見てくれているそうで、思わぬ出会いとなったのである。

 その後は上ノ国町の名所旧跡を少し回ってから帰る事にして、まずは勝山館跡ガイダンス施設の駐車場に車を停めて夷王山の山頂へ登ってみる。
 そこの鳥居を通してみる上ノ国町の眺めがなかなか素晴らしい。
夷王山の山頂 駐車場に戻ると、何か行事でもあるのか人や車が沢山集まってきていた。
 それにまだ9時前なのにガイダンス施設もオープンしているようである。
 せっかくなのでそこも見てみることにした。
 何処だかの視察があるそうで、役場の人達が事前に集まっているらしい。
 通常の開館時間は10時からなので、これはラッキーだった。
 それなのに、この館の管理人の方が「騒がしくて申し訳ない」としきりに誤ってくれるのでこちらの方が恐縮してしまう。
 そして江差町の時と同じく、館内の展示物などの説明を熱心にしてくれる。
 私達は全く予備知識無しにここに入ってきて、「そもそも勝山館って何なの?」って状況だったので、この説明は有り難かった。
 勝山館を、本来の意味の「かつやまだて」ではなく「かつやまかん」と読んでいたものだから、何か由緒ある建物の跡地程度に思っていたのだ。
 おまけに説明ビデオを見る事まで進められて、一方的にスイッチを入れられたので止むを得ず15分のビデオまで見る事となる。
熊の糞? でもそのおかげで、勝山館を含めた道南の歴史への理解をますます深める事ができた。
 その後は勝山館跡を見て回る。
 そこへ向かう園路の真ん中に、大型動物のものと思われる真新しい糞が落ちていたのには驚かされた。
 アライグマやタヌキにしては量が多すぎるし、熊の糞としか考えられない。
 しかし、市街地の直ぐ近くで、周辺は牧場や牧草畑が広がっているような場所なので、こんなところに熊が出るとは信じられない。
 やっぱり道南の熊の生息密度は高いのだろうか。

勝山館跡 勝山館跡は、建物や門、井戸のあった場所などに石を並べて表示している。
 この方法で史跡を公園の様にして復元している場所を方々に見かけるが、そこから昔の状況を想像するのはなかなか難しい作業だ。
 それよりも、草木に覆われた中に建物の跡が残っている方がイマジネーションをかきたてられる。
 でも、大昔の遺跡ともなれば杭の立っていた土の窪みしか残っていないのだろうから、この様な復元方法になるのは仕方が無いのだろう。

 道の駅「もんじゅ」に寄ってから、上ノ国史跡巡りの続きで旧笹浪家住宅を見に行く。
 ここでも、施設を管理しているおばちゃんから詳しい説明を受けて、炭を熾した囲炉裏の横でお茶まで入れてもらった。
 話の中で「この辺には熊でも鹿でも狸でも何でもいるからね」と言われ、やっぱり先ほど見た糞は熊のものに間違いないと確信する。
 その後は笹浪家所有の蔵の中も見せてもらったが、そこの展示物に特に興味を引くものは無かった。
旧笹浪家住宅内部 しかしここにもビデオ施設があり、200年余り前に道南を旅した管江真澄について知る事ができるらしい。
 全く名前も聞いた事のない人物だったけれど、大田神社も出てくるようなので、またここでビデオを見る事となった。
 今日はサラッと観光して札幌へ帰る予定だったのが、説明を聞いたりビデオを見たりと予定外に時間がかかっている。
 でも、そのおかげで道南檜山方面の歴史に随分と詳しくなってしまった。
 植物の名前を覚えれば森歩きがより楽しくなるし、山の名前を覚えれば山の風景をより楽しめる。
 そして、歴史を知れば、その街の風景がまた変わって見えてくるのである。
 その後は北海道内に現存する神社建築では最古に属する上ノ國八幡宮本殿に参拝。
 嘉吉3年(1443)開基と伝えられる北海道有数の古刹上國寺本堂は、残念ながら修復工事中で囲いの中だった。
 上ノ国町には他にも幾つか史跡があるが、それらはまた次の機会に回る事にして札幌へと戻る事する。

道南の紅葉 帰り道は厚沢部から八雲町落部へと抜ける道道を通り、その後は道央自動車道で一気に札幌へと走る。
 道道沿いの紅葉はちょうど見ごろを迎えていた。
 三泊目のキャンプでは森町の緑とロックの広場も候補地に考えていたが、そちらに泊まれば美しい紅葉を楽しめたかもしれない。
 欲を言えばきりが無いので、それはまた来年秋の道南キャンプの宿題としよう。
 道央道から見る紅葉は、盛りのところもあれば全く色付いていないところもあり、斑模様の様子である。
 そして帰ってきた自宅の庭では、ヤマボウシの木が色付いているだけで、他の木々はまだ緑色のままだった。

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