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待ち焦がれた青空焼尻島キャンプ

焼尻島白浜野営場(6月5日〜6日)

 去年は雨と霧にたたられた天売焼尻の旅。
 そのリベンジを期した今年の天売焼尻キャンプは、絶対に晴れていることが条件である。
 そこで、天気予報を確認しながら金曜日の休暇の予定を月曜日にずらしてもらって、土曜日に出発することにした。
 元々は休む予定だった金曜日、仕事に向かう朝は辛かったけれど、最新の天気予報で週末からの好天を確信した帰り道は、スキップしながら歩きたくなる程に気持ちが弾んでいた。
小平町まで来ても晴れてこない そうして土曜日の朝5時前に自宅を出発。
 空は雲に覆われていたけれど、そのうちに晴れてくるのは分かっているので大して気にもならない。
 望洋台キャンプ場近くの丘の上に車を停めて、コンビニで買ったサンドイッチで朝食にする。
 そこからは島の姿が直ぐそこに見えているはずなのに、海の上には灰色の霧が垂れ込めたままだ。
 「本当に晴れるの・・・?」
 さすがに心配になってくる。
 羽幌発8時30分のフェリーに乗って焼尻島に降り立っても、相変わらず青空の姿は何処にも見えない。
 ツアー客などはこの次の便でやって来るのだろうか。一緒に降りた乗客も少なく、空模様も相まって閑散とした港はとても寒々として見える。
 ザックを背負ってキャンプ場までの道を歩き始める。
 去年はこの島で2泊しているので、すっかり慣れた道だ。森の中の小道は後の楽しみにとっておいて、海岸沿いの車道を歩く。
 札幌では既に散ってしまったヤエザクラも、ここでは今がちょうど満開だ。
 道路沿いの庭先や玄関先でも色々な花が咲いている。けっして立派な花壇ではないけれど、島で暮らす人達の優しさがそこに感じられる。


道路沿いの花   島を歩く

テント設営完了 そうして白浜キャンプ場に到着。
 去年は牧草が伸び放題だったサイトも、今年は1度くらい刈ってくれた様子だ。
 テントの設営は迷うことなく去年と同じ場所。
 ただ、海からの風が少し強かったので、テントの向きは少し変えるしかなかった。
 草の刈った形跡はあっても、設営後はやっぱり、去年と同じナイフでの草刈作業が必要である。
 去年は満開だったサイト周辺のエゾカンゾウも、今年はまだ殆どが蕾のままで、気の早い花がポツリポツリと咲き始めた程度だ。
 相変わらずの曇り空と、それを映す灰色の海。
 去年と全く同じような状況だけれど、去年の方が風が無くて、花ももっと綺麗に咲いていた。
 リベンジするつもりでやって来た焼尻島なのに、これではまるで返り討ちにあったようなものである。
島を歩く 昼食に山食カップ麺を食べた後は、島内一周に出かける。
 去年も歩いたコースなので、新しい風景に出合える感動も無く、青い空と青い海が広がっていれば全く違う風景に見えるはずなのに、それも無し。
 目を楽しませてくれる道ばたの花も全然咲いていない。
 去年は見た覚えの無いスズランの群落が花を咲かせていたのが、唯一の収穫だった。
 花の代わりに、ワラビや美味しそうなウドが沢山生えているけれど、山菜採りのためにわざわざ焼尻島まで渡ってきた訳ではないのである。
 島の西端の鷹の巣園地までやって来て、明日渡る予定の天売島の姿を眺め、何の感動も無いまま、島の中央部の道を引き返す。
 ここで島の北側の道を選べば、島内の全ての道を歩いたことになるけれど、島を背骨のように貫く眺めの良いこの道は、やっぱり歩いておきたかった。
鷹の巣園地から見る天売島 しかし、牧草畑の横を真っ直ぐに伸びる道は、こんな天気の日に歩くにはあまりにも単調すぎた。
 歩いていても全然楽しくない。それどころか次第に気持ちが沈んでくる。
 せっかく焼尻まで来たのにこれでは駄目だと思い、林の奥に展望台のような施設が見えたので、そこまで行ってみることにした。
 去年と違う行動をすれば、少しは気分転換になるかもしれない。
 林業関連の観測施設の様だが、そこへ続いていそうな道は笹が茂って行き止まりとなり、空しく引き返すこととなる。
 しかし、ここの道ばたのワラビは太く育って、とても美味しそうだった。
 かみさんがその中の1本をポキッと折り採ったのをきっかけに、突然ワラビの収穫を始めてしまった私達。
 アク抜きをしなければ食べられないワラビ。最小限の荷物で島に渡ってきて、これから利尻島にも渡る予定なのに、採ったワラビを持ち歩く余裕など無い。
 そうとは分かっていても、他に楽しみも無く、この無意味な行動を止めることは出来なかった。
 結局、このワラビは捨てられることもなく、私のザックの隅に収まったまま札幌まで一緒に旅をすることとなる。


スズランの群落   ワラビの群落?

のんびりと寛ぐヒツジ達 ヒツジ達が放牧されている牧場までやって来た。
 天気のせいで落ち込んだ気分も、この島のヒツジ達の姿を見ると癒される。
 日本の畜産業を揺るがす口蹄疫騒ぎなどまるで関係無いかのように、のんびりと草を食んだり、ゴロリと寝転んだりしている。
 来月行われる焼尻めん羊祭りではこの中の何頭が食べられてしまうんだろう、何て考えながらヒツジ達の姿をしばし楽しむ。

 道は森の中へと入っていく。
 私が今年になって初めて目にする、新緑に彩られた森の風景である。
 時折薄日も射すようになってきて、そうすると新緑の森は更に美しさに磨きがかかる。
 森の林床にはマイヅルソウが絨毯のように広がり、可憐な白い花を咲かせている。
新緑の森 そこに混じって小さな花を付けたクルマバソウ、まだ蕾のままのホウチャクソウ、イチゲはもう花が終わって葉だけが茂っている。
 「どうやって育ったらこんな姿になるのだろう」と考え込んでしまうくらいに枝や幹が捻じ曲がったミズナラの姿も、この森のアクセントである。
 森の中を抜けると、少し元気が出てきたような気がする。私にとってここの森は癒しの森でもある。

 焼尻の家並みの中を抜けて、小田商店で今夜のビールを仕入れる。
 この店には初めて入ったけれど、生鮮食料品も結構売られていた。それがやたらに値段が高くて、小さなスイカが一個三千円で売られているのには驚いてしまう。
 この日は島の小中学校で運動会が開催されているので、それを目当てに仕入れたのだろうか。
 こんな店を見ていると、島民の生活の様子を感じることが出来てとても楽しい。

森を抜けて 再び森の中を抜けてキャンプ場へと戻る。
 途中の鶯谷の近くで、まだ蕾が伸びていないベニバナイチヤクソウの姿を発見。
 私達がこの花を初めて見たのは去年のこの場所だったので、再会できて嬉しかった。
 しかし花の姿は去年と比べるとあまりにも小さかった。
 森を抜けるとオンコの荘へと出てくる。
 低く枝を伸ばしたオンコの向こうに我が家のテントが見えている。
 去年に続いて今回も、キャンプ場は我が家だけの貸切のようだ。
 サイトに戻って、ここでようやくビールで乾杯。


マイヅルソウ   オオカメノキの葉

 空は相変わらず雲に覆われたままだけれど、所々から青空も見えるようになってきていた。
 それから暫くすると、その雲が急に薄くなってきて、そして全く突然に頭上には真っ青な空が広がっていた。
いきなりの青空 あれほどしつこく空を覆っていた雲も、消える時は本当に一瞬である。
 それにしても人間の感情が、晴れと曇りの違いだけで、これ程大きく左右されるものであるとは、自分でも驚きである。
 時間は午後4時43分、ちょっと遅すぎる気がしないでもないけれど、今の季節は日が沈むのも遅いので、青空を楽しむ時間はまだたっぷりと残っていた。
 僅かに咲いているエゾカンゾウも、太陽の日を浴びてその美しさを増したようだ。
 ウミウの群れが天売島を目指して、目の前を次々と飛び去っていく。
 ヒツジの群れが緑の丘を集団で走り回っている。誰かリーダーがいるのか、それともイワシの群れの様な本能的な集団行動なのか。
 見ていても飽きることが無い。
 夕食は米を炊いて、かみさんはレトルトカレー、私はフリーズドライのカルビ丼と小田商店で買ったサンマの蒲焼の缶詰。
 なかなかゴージャスな夕食だった。


青い海とヒツジ達   太陽を浴びるエゾカンゾウ

 晴れてくれたおかげで夕日も楽しめる。
 最初から晴れていれば、島の西端まで行って鷹の巣園地から夕日を眺めるイベントも考えられたけれど、既に曇り空の下で島を一周しているので、もう一度鷹の巣園地まで行く気にはなれない。
夕日を眺めに そこで向いの丘の先まで歩き、ヒツジ達を赤く染めながら沈む夕日を眺めて、サイトまで戻ってきた。
 その後も西の空は更に赤味を増していく。
 そしてその赤味が消えた後には、金星がポツンと明るく輝いていた。
 買ってきたビールを全て飲み干してしまったので、まだ空に明るさが残っているうちに早々と眠りについた。

 夜中にテントを揺らす風の音で目が覚めた。
 大型テントなら心配になるくらいの風の強さだったけれど、小さなドーム型なのでポールが折れる心配もない。
 外には満天の星空が広がっているかもと思いながら、眠気には勝てずに直ぐにまた眠りに落ちてしまった。
 その頃かみさんは、テントの外に出て美しい星空に感動していた。私にも声をかけてくれたようだが、反応が無いので起こさずにいたとの事。
 今回の焼尻キャンプでの目標は、青い空と青い海、そして満天の星空を楽しむことだったのが、かみさんだけがその全てを達成できたのである。


ヒツジ達   焼尻の夕日

一番星

 次に目が覚めたのは午前3時過ぎ。
 さすがに起きるにはまだ早すぎると思ったけれど、午後8時に寝ているので睡眠時間はほぼ十分、テントの中も明るくなってきたので、そのまま起きる事にする。
 完全に、太陽の出入りに合わせて寝起きするような生活である。
焼尻の朝日 東の空は赤味を帯びて、ヒツジ達は既に草を食んでいた。
 夜中に吹いていた風も、それほど気にならないくらいに弱まっていた。 
 美しい日の出を楽しんで、その後は朝のコーヒーを味わう。
 朝食はインスタントラーメンと、昨日炊いた米の残りで作ったおにぎり。
 お腹が満たされると、早起きしたせいもあって、眠たくなってくる。
 風を感じながらテントの中でウトウトするのが心地良い。
 ウミウの群れが昨日とは反対方向に向かって次々と飛んでいく。
 彼らがねぐらとしている天売島は霧に覆われてその姿が見えない。
 今日はその天売島に渡る予定だけれど、フェリーの時間は9時40分とその次が12時25分、どちらの便にするか迷っていた。
 焼尻島での目標は全て達成したので、晴れているうちに天売島に渡りたい気もする。今日の天気予報は午後から曇りの予報になっていたのだ。
ウミウ しかし、天売島では何十万羽ものウトウが夕方になってから一斉に戻ってくる様子を、歩いて見に行こうと考えていたので、あまり早く行っても時間を持て余すかもしれない。
 早く行って島を一周する観光船に乗るのもありだと考え、発着時間を聞くために前日に電話したところ「明日は波が高くて多分欠航になると思います」と言われてしまった。
 天気予報ではそんなに天気が崩れるような話しもしていなかったので「えっ?何で?」って感じである。
 それに心配なのは天売島のキャンプ場。
 去年はその場所を確認できなかったけれど、人の話を聞く限りでは相当に酷そうな場所である。
 最悪の場合、トイレだけがある公園で野宿をする覚悟もしていたので、そんなところで昼前からテントを張るのも気が引ける。
 そして、今現在、その天売島が霧で見えないということが決め手となって、昼の便で渡ることに決定した。

 時間はまだたっぷりとあるので、周辺で写真を撮ったりしながら過ごしていたけれど、そのうちにかみさんがテントを片付け始めた。
 「まだ早すぎるんじゃないの?」と言ったけれど、風が次第に強くなってきたので落ち着かないらしい。
 確かに、サイトでのんびりと寛げるような状態ではなくなってきていた。
 その風のおかげで、天売島を覆っていた霧も吹き飛ばされたようで、その姿がはっきりと見えるようになっていた。
ウサギが跳ぶ海 これなら朝の便にした方が良かったかなと、ちょっと後悔しながら私もテントの撤収を始める。
 最後に炊事場の中でザックへのパッキングをしていて、ふと外を見ると目の前にヒツジの群れが!何処かのゲートが開いて脱走してきたのだろうか?
 これは大変だと思って連絡先を調べていたら、いつの間にかヒツジ達は消えてしまっていた。狭い島なので遠くへ行くこともなく、それ程たいした事件でも無いのかもしれない。
 そんなハプニングはあったものの、 全ての荷物を背中に背負ってキャンプ場を後にする。
 森に入る前に最後にもう一度キャンプ場を見ておこうと後ろを振り返ると、その向こうの海一面に白いウサギが跳んでいた。
 その時はまだ、その後に待ち受けるトラブルのことなど思いも寄らなかったのである。

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