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360度独り占め多和平キャンプ

多和平キャンプ場(5月2日〜3日)

鹿除け柵の扉を開け閉め 今回の道東道北の旅で二つ目の目的は、津別町にある「最上のミズナラ」を見に行くことだった。
 津別町のホームページの情報では樹齢1200年、幹周6m、苔に覆われた瘤状の幹など想像しただけでワクワクしてくる。
 道有林の中に存在し、林道のゲートの鍵を借りれば車で行くこともできる。
 しかし、ゲートから巨木までは4キロ弱、鍵を借りるのも面倒なので、歩いて見に行くつもりでいた。
 現地に到着し、まずは鹿避け柵の大きな扉を開けて中に入る。そしてその先には、鍵のかかったチェーンが張られていた。
 ところが、その鍵はチェーンの一つの輪に留められているだけで、先のフックを外せばそのままチェーンを外して中に入ることが出きるのだ。
最上のミズナラ 歩く気満々でここまで来たけれど、完全に拍子抜けである。
 車で行けるところをわざわざ歩くほどストイックでもないので、そのまま車で行くことにした。
 所々に太い枝が落ちていたりするので、かみさんが車から降りてそれを片付ける。
 途中から路面に雪が残るようになり、さすがに夏タイヤでそこを走るのも良い気持ちはしないので、その先は素直に歩くことにした。
 そうして最上のミズナラの前に到着。
 周りの木々を圧倒するかのように枝を広げるその姿はさすがに巨木らしいけれど、それは何処の巨木でも同じである。
 しかし、傍まで寄ってみると、私がこれまでに見てきた巨木とは明らかに様子が違っていた。
 そのゴツゴツとした樹皮は、公表樹齢1200年が決してオーバーなものではないと感じさせる。
 枝の一部から剥がれ落ちた樹皮が下に落ちていたけれど、持ち上げてみるとずしりと重たく、とてもそれが木の皮だとは思えない。
 裏に回ってみると、ゴツゴツとした瘤が盛り上がり、その間を這うようにして太い葡萄の蔓が上へと伸びている。
 私がこれまで見てきた北海道の巨木の中では、このミズナラがもっとも存在感のあるものであった。


最上のミズナラ   剥がれ落ちたミズナラの樹皮

西洋軒の塩ラーメン 津別町の市内へと戻り、「西洋軒」の塩ラーメンを食べることにする。
 Googleで津別町を検索すると、変換候補の中に西洋軒が出てくるくらいに名前を知られている店のようだ。
 一番混んでいる時間帯だったので半ば諦めながら店まで行ったところ、店内は満席だったものの、並んでいる人はいない。
 「車の中で待っていてくれれば、席が空いたらお呼びします」との親切な対応。これも人気の一端なのかもしれない。
 一番人気の塩ラーメンは確かに美味しかったけれど、食べログの人気ランキングで2009年の一位(オホーツク地区)になるほど飛び抜けて美味しいものでもない。
 でも、ラーメン以外のメニューでも美味しそうなものが沢山あり、それらを含めて人気ランキング一位の理由なのだろう。
 その後は町内の木材工芸館へ。
津別町木材工芸館 津別町も林業の街だけあって立派な施設だったけれど、そこで売られているのは私たちの手の出るような値段ではなかった。 今日の宿泊予定地は多和平キャンプ場。
 津別峠を越えて、そこからの屈斜路湖の絶景を楽しみながらキャンプ場へ向かうつもりでいたが、冬期間の通行止めが解除されているかが心配である。
 札幌を出る時はそんな事は全く考えなかったのだけれど、これまで走ってきた周辺の状況を見ているうちに、次第に心配になってきたのである。
 でも、途中で「津別峠大型車通行止め」の看板を見つけ、普通車だけは通れるようなので安心して車を走らせた。
 そして、ややしばらく走ったところで突然「津別峠5月31日まで冬期間通行止め」の看板に出くわしたのである。驚いて、その先にあるホテルフォレスターに電話で確認したところ、確かに開通は6月に入ってからとのこと。
 ここから屈斜路湖まで出るには、一旦美幌町まで戻らなければならない。約50キロの遠回りである。
 途中まで戻って先ほどの「津別峠大型車通行止め」の看板をもう一度見直したら、「大型」の文字だけが薄く消されたようになっていた。つまり「津別峠  車通行止め」のつもりだったのだろう。本当に紛らわしい。
 他のキャンプ場へ行こうかと思ったけれど、多和平だけは今回泊まらなければ次の機会は無さそうなので、頑張って遠回りすることにした。
 早くキャンプ地へ入りたいので、美幌峠の展望台も素通り。
 屈斜路湖に向かって坂道を下りながら、その美しい風景を楽しんでいると、突然雨が降り出してきた。数分でその雨も止んだけれど、やっぱり雨男の本領発揮である。
 バックミラーを覗くと、そこには真っ青な空が映っているのに、私たちの向かう先にはどんよりとした雲が広がっているのである。

 屈斜路湖畔で一風呂浴びてから多和平を目指す。
 コムケでさえ私たちを含めて4組のキャンパーがいたのだから、多和平はどれくらい混んでいるのだろう。そんな心配をしながらキャンプ場に到着すると、サイトにテントの姿は一つも見えなかった。
 丁度観光バスが一台出て行くところで、観光客の姿もまばらだった。
 私が以前に抱いていた多和平のイメージは、「観光客が何時もゾロゾロと歩いていて、サイトは直ぐその隣の傾斜地で落ち着いてキャンプも出来ないようなところ、であった。
 それが、ネットの知り合いの方がホームページの掲示板に「とても素晴らしかった」と書き込んでくれたのを読んで以来、ちょっと気になるキャンプ場に変わっていたのである。
多和平にテントを設営 まずは一番の問題だった観光客の多さはクリア。
 二つめの問題は傾斜したサイト。確かに、冬はソリ遊びが出来そうな傾斜である。
 それでも一番奥まで歩いていくと平らな場所が所々にあった。
 普通のキャンプ装備でそこまで歩くのは大変だけれど、今回は歩き旅装備なので駐車場からの遠さは全く気にならない。
 そこにテントを設営。
 上空を覆っていた雲はいつの間にか東の空へ流れ去り、その後には大きな青空が広がっていた。
 そして目の前に広がる大地の風景。
 掲示板に書かれていた方の気持ちをようやく本当に理解することができた気がした。
 そんな風景を眺めながらグビッと飲んだビールは、たまらなく美味しかった。
壊れた水道 ところが、炊事場へ行ってみてビックリ。配管が割れていたり、蛇口が取れていたりして、勿論水が出るわけはない。
 かみさんが、水抜き栓を探してそれを開けると、何とか無事に水は出てきたが、配管の方々から吹き出してくる有様である。
 まあ、水さえ出れば用は足りるけれど、一々水抜き栓を開け閉めしなければならないのがちょっと面倒だ。
 受付では何も言ってなかったので、もしかしたらこんな状態なのも知らないのかもしれない。
 普通のキャンパーなら文句を言いそうなところだけれど、私たちにとっては水が出るだけでもありがたいことである。


この展望を独り占め

多和平展望台からの眺め 展望台へと上がってみる。
 阿寒の山から摩周岳、斜里岳、知床方面の山まで見渡せる。
 そして根釧平野の丘の連なり、360度の地平線は大げさな表現ではない。
 やがて最後の観光客もいなくなり、他のキャンパーがやってくる気配も無し。
 今夜は360度の大地を独り占めである。
 夕日が沈む前に食事を済ませる。
 そしてまた展望台に上がり多和平のサンセットショーを楽しむ。
 空をオレンジ色に染めながら、夕日が静かに静かに沈んでいく。
 決して派手な夕日ではなかったけれど、心に染み入るような美しい夕景だった。


多和平の夕日

多和平の夕日   多和平の夕日

多和平の一番星 テントに戻ると、まだ青みの残る西の空に一番星が輝きはじめた。
 「二番星も出てきた、あっ、三番星、・・・、十二番星、十三番星・・・」
 「ずーっと数えていなさい!」とかみさん。
 風はほとんど吹いていないけれど、昨日の夜より寒さが身に凍みるようだ。
 ここではたき火は出来ないだろうと思って薪は用意していなかったが、コンクリートのU字トラフがあちこちに置いてあったので、それを利用すれば小さなたき火は可能だった。
 こんな季節に焚き火無しで過ごすことなど殆どないので、余計に寒く感じるのかもしれない。
 満天の星空が広がっていたけれど、寒くてゆっくりと眺めてもいられない。
 明日の朝日は絶対に見逃せないので、早めにテントにもぐり込んだ。


多和平の星空

多和平の朝日 翌朝目覚めたのは午前3時半、既にテントの中は明るくなっていた。
 かみさんの起き出す気配を感じたけれど、さすがにまだ眠たい。でもここでまた眠ってしまうと朝日を見逃す事になりそうなので、私も頑張って起きることにする。
 テントの外に出ると、まだ明るい月が上空に浮かんでいた。
 展望台に上がって朝日が昇ってくるのを待つ。東の空低くに雲がかかっていて、朝日はその雲の中からぼんやりと姿を現してきた。
 夕日ほどの美しさはなかったけれど、360度に広がる大地が徐々に明るくなってくる様子は感動的だった。

忘れ去られたサイト キャンプ場入り口の案内看板を見ると、ライダー用のサイトと言うものが別の場所にあるらしい。
 そんなものが存在することを初めて知ったので、早速車に乗ってその場所を確かめにいくことにした。
 そして訪れたライダー用サイト。林間キャンプ場と書かれた看板の先には、東屋や野外卓ばかりが目に付く小さな広場があった。
 しかしその半分ほどは笹に覆われ、炊事場の水は出ないし、トイレも鍵がかかったまま。
 しばらくの間、利用された形跡もなく、忘れ去られたキャンプ場となっているようだ。
 雰囲気は良いのだけれど、樹木に囲まれ展望も利かず、多和平に来てわざわざここにテントを張る気にはならないだろう。

快晴の多和平キャンプ場 眺めの良いサイトに戻り、雲一つ無い完璧な青空の下で、しばし幸せな時間を過ごす。
 最高の条件が全て整った今回の多和平、これ以上望むものは何もないなんてキャンプはそう経験できるものではない。
 ゆっくりと荷物を片付け、満ち足りた気分でキャンプ場を後にした。

 このキャンプ場で一つ、不思議な現象を目にした。
 場内の1本の木の下にだけ、松ぼっくりが散らばっているのである。その木はハルニレだろうか。勿論、松ぼっくりができる木ではない。
 誰かが意図的にそこにばらまいた様に見えるけれど、それにしてもその目的が解らない。
 考え出した結論は、管理棟の裏にハイマツの茂みがあるので、野鳥がその松ぼっくりをこの木まで運んできて、そこで中の実を食べたと言うこと。
 その証拠に、数個の松ぼっくりがその木の枝に引っ掛かっている。
 それにしても、他にも場内には木が生えているし、ハイマツの茂みにもっと近い木だってあるのに、何でこの木の下にだけ松ぼっくりが落ちているのか。
 野鳥の習性にも関係がありそうだし、なかなか興味深い謎である。


不思議な松ぼっくり   不思議な松ぼっくり

 観光地が混み合うGW。我が家にとってはそんな混雑には無縁のGWである。
 多和平を出た後は、ちょっとだけ一般の観光客の仲間入りをして、摩周湖、硫黄山と回って十勝の実家へと向かう。
 その途中、足寄町のパンフレットに載っていたシオワッカ公園に寄り道してみた。
 そこには、冷泉に含まれる炭酸カルシウムが沈殿してできた石灰華ドームがある。
 想像していたとおり、わざわざ見に行くほどのものでは無かったけれど、こうしてあまり人に知られていない様な場所を探し出して、それを旅の目的にするのは楽しいものである。
 我が家のマイナー観光地巡りはまだまだ続きそうである。

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