翌朝目覚めたのは午前3時半、既にテントの中は明るくなっていた。
かみさんの起き出す気配を感じたけれど、さすがにまだ眠たい。でもここでまた眠ってしまうと朝日を見逃す事になりそうなので、私も頑張って起きることにする。
テントの外に出ると、まだ明るい月が上空に浮かんでいた。
展望台に上がって朝日が昇ってくるのを待つ。東の空低くに雲がかかっていて、朝日はその雲の中からぼんやりと姿を現してきた。
夕日ほどの美しさはなかったけれど、360度に広がる大地が徐々に明るくなってくる様子は感動的だった。
キャンプ場入り口の案内看板を見ると、ライダー用のサイトと言うものが別の場所にあるらしい。
そんなものが存在することを初めて知ったので、早速車に乗ってその場所を確かめにいくことにした。
そして訪れたライダー用サイト。林間キャンプ場と書かれた看板の先には、東屋や野外卓ばかりが目に付く小さな広場があった。
しかしその半分ほどは笹に覆われ、炊事場の水は出ないし、トイレも鍵がかかったまま。
しばらくの間、利用された形跡もなく、忘れ去られたキャンプ場となっているようだ。
雰囲気は良いのだけれど、樹木に囲まれ展望も利かず、多和平に来てわざわざここにテントを張る気にはならないだろう。
眺めの良いサイトに戻り、雲一つ無い完璧な青空の下で、しばし幸せな時間を過ごす。
最高の条件が全て整った今回の多和平、これ以上望むものは何もないなんてキャンプはそう経験できるものではない。
ゆっくりと荷物を片付け、満ち足りた気分でキャンプ場を後にした。
このキャンプ場で一つ、不思議な現象を目にした。
場内の1本の木の下にだけ、松ぼっくりが散らばっているのである。その木はハルニレだろうか。勿論、松ぼっくりができる木ではない。
誰かが意図的にそこにばらまいた様に見えるけれど、それにしてもその目的が解らない。
考え出した結論は、管理棟の裏にハイマツの茂みがあるので、野鳥がその松ぼっくりをこの木まで運んできて、そこで中の実を食べたと言うこと。
その証拠に、数個の松ぼっくりがその木の枝に引っ掛かっている。
それにしても、他にも場内には木が生えているし、ハイマツの茂みにもっと近い木だってあるのに、何でこの木の下にだけ松ぼっくりが落ちているのか。
野鳥の習性にも関係がありそうだし、なかなか興味深い謎である。
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