雨でしっとりと濡れたオンコの森は、木々の緑がさらに鮮やかになり、トトロの世界にでも迷い込んだような雰囲気だ。
遊歩道のあちこちに大きなカタツムリが這い出てきているものだから、それを踏まないように気をつけて歩かなければならない。
気休めに折り畳み傘も用意してきたけれど、土砂降りにならなければわざわざさす必要もなさそうだ。
でも、森の中でこの傘をさしてみて、あることを思いついた。
港の入り口に立っている巨大なオロロン鳥のモニュメント。その隣りに傘をさしたかみさんに並んでもらう。
「う〜ん・・・」
森の中のバス停で、さつきが傘をさしてトトロと並んでいる姿をイメージしていたのだけれど、目の前の光景は全然違っていたのだった。
フェリーに乗って30分で天売島に到着。
相変わらず雨が降り続いているので、まずは「海の宇宙館」に立ち寄って、そこでしばらく天気の様子を見ることにした。
ここは、自然写真家の寺沢孝毅さんが私費を投じて作った施設で、天売島の様々な情報を得ることができる。
最初に利用するときは300円の入館料がかかるけれど、これがシーズン券になっているので、後は自由に利用できる仕組みだ。
コーヒーを注文し、天売島の海鳥や野の花の写真を見ながら時間を過ごす。
雨も少しは小降りになってきたので、覚悟を決めて天売島一周に出かけることにした。
島の東部には野鳥の姿を楽しめる遊歩道もあるみたいだけれど、今回は時間も限られているので、反時計回りで島を一周するだけにしておいた。
天売島も焼尻島も島の西部へ行くほど標高が高くなっている。最高標高は焼尻島が94mで天売島が184m、90mの差がある分、天売島の方が坂道が長い。
長いと言っても、緩やかな坂道なので歩くのにはそれほど苦にならない。
島にはレンタル自転車もあるけれど、この坂を自転車で登るのは大変そうだ。
もっとも、西端までたどり着いてしまえば、帰りはペダルを一漕ぎもしないで港までたどり着けそうである。
自転車の場合は、上り坂の区間が短い、時計回りで回るのが良いかも知れない。
自然林の残っている焼尻島と比べて、天売島はニシン漁が盛んだった明治の頃に森が乱伐され、それに加えて数度の山火事により、自然林は完全に消滅してしまったそうである。
道沿いにも大きな樹木は全くなく、草原が広がっているだけだ。
でも、そのおかげで島の端から端まで全てを見渡しながら歩くことができる。
それに、道ばたではハクサンチドリや、それによく似たノビネチドリ、センダイハギにチシマフウロなど、所々でひっそりと花を咲かせていて、歩く楽しみを増やしてくれる。
自転車や車で走っていれば気が付くことのないような花たちである。
途中、観音岬展望台への分かれ道があったけれど、天気も悪いので帰りに時間があれば立ち寄ることにして、そのまま通り過ぎる。
天売島北岸の荒々しい断崖絶壁の景観も、所々から見下ろせる。
天売島と言えば海鳥の島だけれど、道を歩いていると、カラスの姿の方が目に付く。
そのカラスも、札幌で見かけるカラスとは何処となく違っていて、「私は天売のカラスよ!」とばかりに気取った顔をして木の枝にとまっている姿が、とても生意気に見えてしまう。
やがて、海鳥展望舎が前方に見えてきた。
雨が降っているので、今日の昼食はその中で食べることにする。
幸い、観光客の姿は何処にも見えない。
観光客の群がる観光地が我が家は大の苦手なので、天気が悪い方がたまには良いこともあるのである。
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