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島歩きキャンプ(焼尻編)

焼尻島白浜野営場(6月6日〜8日)

 息子がよちよち歩きを始めた頃からスタートした、我が家のファミリーキャンプ。
 その後、ライフスタイルの変化とともにキャンプのスタイルも移り変わり、そして20年後に新たに足を踏み入れようとしているのがバックパッキングの世界である。
 山登りをしていれば、特別にバックパッキングを意識することも無いのだろうけど、我が家のアウトドア・アクティビティに「登山」の項目だけは含まれないまま今に至っているので、何だかそれが全然違う世界に思えてしまうのだ。
 息子が一緒に行動しなくなってからは、愛犬フウマがリラックスできるようにと、ひたすら静かなフィールドを探し求めてキャンプへ出かけていたのが、そのフウマがいなくなってしまうと、キャンプへ出かける大きな目的の一つが失われたような気分に陥った。
 そこで、何か新たな刺激を与えてくれるものは無いかと考えて、出てきたのがバックパッキングだったのである。
 以前から装備の軽量化は徐々に進めてはきたけれど、今年の春からは本格的にザックなどを買い揃えて、何時でもバックパックキャンプへ出かけられる準備は整った。
 バックパックデビューの場として、車が横付けできるようなキャンプ場では意味が無いし、どうせならば必然的にそれを強いられるようなところの方が良い。
 そこにピタリと填ったのが天売・焼尻だった。
 フウマがまだ生きていた頃から、車の料金を払ってでも良いから天売・焼尻島に渡りたいと考えていたのが、結局フウマもいなくなって、二人だけでザックを背負っての島行きになってしまったのはちょっと残念である。

焼尻を歩くかみさん 土曜日の早朝5時半に札幌を出発して、羽幌発午前8時半のフェリーに乗船。
 最近は礼文島や奥尻島へも渡っているので、以前のようにフェリーに乗る時の感動も薄れてきた気がする。特に今回は体一つで島に渡るので、まるでバスに乗るような気軽さである。
 焼尻で降りたのは10人足らずで、土産屋のおばさんも暇そうにしている。
 本格的な観光シーズンに入っていないためか、それとも今週末の天気が悪いためなのか、もっと賑やかな島の様子を想像していたので、ちょっと意外だった。
 土産屋の前を足早に通り過ぎ、海沿いの道をたどってキャンプ場を目指す。
 ザックの重みが肩にのしかかる。昨夜、家で重さを量ったら、15キロを超えていた。
 ポケット等にまだ余裕があったので、雨が降った時のためにと分厚い単行本を入れたりしたので、さらに重さは増していそうだ。
 そして腰には、重たい一眼レフカメラを入れたウエストバックを巻いているので、さらに歩きづらくなっている。
カメラを構えながら歩く私 そもそも、炊事場の完備したキャンプ場に泊まるのに、ザックの中には2リットルの水まで入っているのである。
 初めてのバックパック。
 果たして自分が、どれくらいの重量を担いでどれくらいの距離を歩けるのか、全くの未知数なので、それを確かめるための今回のキャンプでもあるのだ。
 花で飾られた家々の庭を眺めながら、ゆっくりと歩みを進める。
 集落を抜けると、その先は原野の中をうねる様に細い道が続いているだけだった。そして海の向こうには、天売島の姿も浮かんでいる。
 その風景に感動しながらも、ザックがますます重たく感じられてくる。
 そんな状況の中で、チャレンジしなければならないことがあった。
 「なんまら通信」のアサさんご夫妻が、ザックを背負って歩く自分達の後姿の写真をブログに時々アップされているけれど、私達もそんな写真を撮りたかったのだ。
 手のひらサイズのミニ三脚にカメラをセットし、腰を屈めて構図を確認し、シャッターを押したら頭の中で10カウントを数えながらかみさんのところまで小走りに駆けて行き、そしてシャッターの切れるタイミングに併せてゆっくりと歩を進める。
 一度でピタリと決まることはまれで、これを何度か繰り返すことになる。
 こんな写真を何度もブログにアップして、時には二人で自転車に乗っている後姿まで写っていたりするアサさんご夫妻って、なんて素敵な人達なのだろうと改めて感じ入ってしまった。


焼尻を歩く夫婦

 道ばたではエゾカンゾウが花を咲かせている。
 牧場のヒツジ達に声をかけながら歩いていると、木柵で囲われた展望台のような場所を見つけたので、早速そこに登ってみた。
 草が伸び放題の平らなスペース。周りに植えられた樹木は全て枯れてしまっている。
 「ここは一体、何なんだろう?」
 そう考えながら中に入っていくと、その向こう側に隠れていた建物が見えてきた。
 「何だ!ここがキャンプ場だったんだ!」
 今回のキャンプ地は白浜野営場。
 炊事棟裏のサイトとその上のサイトに分かれていると聞いていたけれど、この展望台のような場所が上のサイトらしい。
 ここへ来る前から、テントを張るのなら上のサイトと決めていたけれど、この草の伸び方ではそれも難しそうだ。
テント前の草刈り その中で海側の角の部分が、若干だけど草の密度が低かったので、そこにテントを設営することにした。
 ザックを肩から降ろすと、体が急に軽くなって、フワフワと浮いてしまいそうな間隔である。
 牧草の茎がピンと伸びていて、踏みつけても全然倒れない。しょうがないので、テントの前の生活スペースの部分だけは、小型のナイフで草を刈ることにした。
 鎌でもあれば簡単な作業だけれど、バックパック装備の小型ナイフではなかなか大変だ。
 北からの風がやや強いので、その風を避けるように海に向けてテントを設営。
 目の前に広がる大海原、そしてサイトの前の斜面に咲き乱れるエゾカンゾウ。天気が良ければ最高のロケーションなのだけれど、残念ながら上空は灰色の雲に覆われて、雨粒が落ちてこないのがまだ救いと言ったような状況である。
 天気予報によると、今日からの3日間、全て雨マークになっているのだ。


我が家のサイト

羊たち 隣接する牧場では羊たちがのんびりと草を食んでいる。
 その反対側の遠くの丘にも羊の群れが見える。何とものどかな風景である。
 全てサフォーク種で、顔が真っ黒なのが特徴。キョトンとした表情でこちらを眺めている様子がとても可愛らしい。
 でも、近づいていくと警戒して逃げ出してしまう。
 羊肉にされてしまう運命のせいなのか。
 この中の誰かが、島のイベントの日に選び出されて丸焼きにされてしまうのだから、簡単には人間に気を許さないのももっともである。

 昼食はインスタントラーメン。
 今回のキャンプの2泊3日分の食料は、全て持参していた。これもバックパックキャンプの経験のためである。
 二人分のラーメンを作るのに、苦労して担いできた2リットルの水の半分が、直ぐに無くなってしまう。
 水を補給できないとき、どれくらいの水を準備しておけば最低限の食事ができるのか。
 真剣に悩んでいる私の気持ちなどまるで関係無いかのように、かみさんは「食器を洗うついでに水も汲んできたわよ〜」とパンパンに膨らんだ水タンクを炊事場から運んできたのである。

焼尻島の道 食事を終えて、いよいよ焼尻島一周へと向かう。
 小型のザックまで用意する余裕も無かったので、中身を大方出してしまってペシャンコになったザックを再び背負った。
 開放的な島の風景を楽しみながら島の西端「鷹ノ巣園地」を目指す。
 歩いていると、何処からとも無く賑やかな音楽が聞こえてくる。
 天売島のフェリーターミナルから流れてくる音かと思ったら、それは沖で操業している漁船が流している音楽だった。
 漁の間の退屈しのぎにでも聞いているのだろう。
 同じ曲がエンドレスで流れ続けている。それもパヒュームのポップ調の曲と言うのが、何とも場違いな雰囲気である。
 小高くなった鷹ノ巣園地からは天売島が直ぐ目の前に見えている。
 振り返ると、歩いてきたばかりの焼尻島が端から端まで一望の下に見渡せる。
 道路を一周すれば約12キロ、車で走ればあっと言う間、自転車でもせいぜい1時間、歩いて回るのにちょうど良い大きさと言えるだろう。


鷹の巣園地からの眺め

 トイレで小用を足していると、突然大音量の演歌が鳴り響いて、驚かされた。
 何事かと思って私が外に出るのと、日に焼けた漁師風のおじさんがトイレに駆け込んでくるのが同時だった。
 外に停められているライトバンのドアは開け放たれたままで、大音量の演歌はその車の中で鳴り響いていた。
 かみさんも驚いた表情でトイレから出てきた。最初は、トイレの音姫の演歌バージョンなのかと思ったらしい。
 それにしても、ドアを閉めて車の中でこれを聞いたらどうなるんだろうと心配になるほどの大音量である。
 帰りは島の北岸の住宅沿いの道もあるけれど、島の中央に真っ直ぐに伸びる道の方が眺めも良いのでそこを歩くことにした。
焼尻島を縦断する道 「島にはやっぱり演歌の方が似合うよな〜」などと、かみさんと話しながら歩いていると、先程の車が私達の直ぐ後ろまできて止まった。
 先程すれ違った日に焼けた漁師風のおじさんが、車の窓から顔を出して、「女子トイレに入った人はいますか?」と聞いてきた。
 かみさんが、「は、はい、入りましたが・・・」と返事をすると、ニコッと笑って「カメラを忘れませんでしたか?」と、先日私が買ったばかりのOptio W60を手からぶら下げていた。
 「あっ!!」
 どうやら、トイレの見回りに来たおじさんだったらしい。
 もしもおじさんが気が付いてくれなかったら、カメラをトイレに忘れたことに何時気が付いていたのだろう。
 再び島の先端までカメラを取りに戻る前に、激しい夫婦喧嘩が行われていたのは確実である。
 日に焼けた漁師風のおじさんには本当に感謝だった。

 道は途中からオンコの森へと入っていく。
 天売島と言えば海鳥の楽園、焼尻島はオンコの原生林と言うイメージである。
 でも、出発前に焼尻島へ4回も渡っていると言う造園屋さんから、「オンコの森には期待しない方が良いですよ、まあ行ってみれば分かると思いますが」と言われていたので、大体の見当は付いていた。
 風雪に耐え、捻じ曲がって育ったオンコが純林を形成している。
美しい森 最初はそう思っていたけれど、実際はミズナラなどの樹木に混じってオンコが生えているだけ。
 でも別にガッカリはしなかった。その森が、なかなか奥深い森なのである。
 複雑に捻じ曲がるミズナラの幹、根室のミズナラ風衝林の中を歩いた時を思い出させてくれる。
 その森の中には散策路が張りめぐらされ、探検気分も味わえる。
 木の枝に覆われ空は見えず、まるで緑のトンネルの中を歩いているようだ。
 その森を通り抜け、フェリーターミナルのある港へと戻ってきた。
 近くの店でビールを仕入れる。500ml缶を一人一本、かみさんが不満そうな顔をするので、もう一度店に入りなおして350ml缶を追加した。
 荷物を減らしたのとのと同じく、何となく飲み物まで減らそうと考えていた私。
 一方、かみさんはそんな気持ちはさらさら無いらしく、「私のザックにもっと入るわよ」と、まだ足り無さそうな表情を浮かべていた。
 そのまま集落の中を少し歩いてみる。
 思わぬところにハスに覆われた溜め池があったり、野鳥がひっきりなしに飛び交う池があったり、妙に立派な空き家があったりと、初めての町を歩く楽しみが一杯だ。
鶯谷を渡る 再びオンコの森を抜けて、キャンプ場へと戻る。
 薄暗い森の中でマイズルソウやクルマバソウが群落を作って花を咲かせていた。
 これは何だろうと二人で迷っていた花は、後で調べたらベニバナイチヤクソウだった。
 鶯谷と呼ばれる場所までやってくるとマツの香りが強くなった。その付近にだけマツの巨木が多くなっている。
 何故か、風で倒れたり、立ち枯れしたマツが多いのがちょっと気になった。
 前方の森が明るくなってきたなと思ったら、突然のように森を抜け出した。
 ちょうどそこが「オンコの荘」と呼ばれているところである。
 高さ1mのオンコが10mも枝を伸ばし、その内部はまるで部屋のようになっている。
 そこから牧場の中を抜けてサイトまでは直ぐである。
 羊たちがこちらを見ていたので、手を振って挨拶すると、皆クルリと向きを変えて逃げていってしまった。


ベニバナイチヤクソウ   ギンラン

エゾカンゾウと同じ色のテント サイトへ到着して、まずはビールで乾杯。
 これが堪らなく美味しい。
 今回は飲む直前に店でビールを仕入れられたので良かったけれど、荷物を背負ったまま歩いていて到着したテン場で冷えたビールが飲めない状況と言うのは、一体どんなものなのだろう。
 そんな経験も一度くらいはしておかなければならないな〜と考えながらも、冷えたビールが次々と喉の中へと流れ込んでいくのであった。
 今日は米を多めに炊いて、残りを明日の昼食用のおにぎりにする。
 海岸で拾ってきた板切れが、ちょうど良いテーブル代わりになる。
 あればあったで便利だけれど、無くても何とかなるもの。無くても困らないけれど、こだわりとして持っていたいもの。
 何時ものオートキャンプとは違って、この辺の見極めは、実際に経験してみないと、なかなか判断できない。
夕食準備中 何もかもが全てが新鮮に感じられて、まるでママゴトのようにキャンプを楽しんでいる自分がいた。
 ご飯と味噌汁にサンマの蒲焼缶詰、歩き疲れた体にはこれでもご馳走に思えてしまう。
 今日一日の疲れがドッと襲ってきて、20時前にはぐっすりと眠ってしまった。
 そして3時頃に目が覚める。
 天気が良ければそのまま起きても良いような時間だったけれど、聞こえていたのはテントを叩く雨音だった。
 それを子守唄に5時過ぎまでシュラフの中でうだうだとしていたけれど、さすがにそれ以上は寝ていられないので起きだす事にした。
 朝のコーヒーも、何時ものパーコレーターと勝手が違って、粉の分量が難しく、随分と薄いコーヒーになってしまった。
 朝食はレトルトのお粥。重さの軽いフリーズドライの食品で揃えるのが普通だけれど、色々と試してみたいのだ。
 それほど強い雨ではないものの、一向に止む気配は無い。雨雲レーダーを確認しても、日本海を雨雲が次々と北上してきていた。
 本来ならば今日は天売島を一周する予定になっていて、そのためには9時40分のフェリーに乗らなければならない。
 しかし、この雨で天売島に渡ってもどうしようもないので、昼頃まで様子を見て、雨が止めば天売に渡って港の周辺だけでも歩くような計画を考えてみた。
エゾスカシユリ 雨音を聞きながら、テントの中でゆったりと本を読んで過ごすのもたまには良いだろう。
 でもそれが全然良くないのは、かみさんだった。
 1時間くらいならそれでも良いけれど、それ以上テントの中でジッとしているのは耐えられないと言うのである。
 「登山の途中、天気待ちで一日停滞しなければならないような時はどうするんだ」と聞いてみたら、「そんなことは最初からやらない」との明確な答えが返ってきた。
 テントの中でゴロゴロしているより、雨の中を歩く方がましだとのかみさんの意見に押されて、予定通り天売島へと渡ることにした。
 雨具の上下を着込み、ザックにカバーをかけてサイトを出発。
 ザックカバーは「雨の日に歩くことなんてないだろうけど、もしもの場合に備えてやっぱり買っておこう」と、つい先日に買ったばかりだったけれど、こんなに早くそれが役に立つとは思ってもみなかった。

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