隣接する牧場では羊たちがのんびりと草を食んでいる。
その反対側の遠くの丘にも羊の群れが見える。何とものどかな風景である。
全てサフォーク種で、顔が真っ黒なのが特徴。キョトンとした表情でこちらを眺めている様子がとても可愛らしい。
でも、近づいていくと警戒して逃げ出してしまう。
羊肉にされてしまう運命のせいなのか。
この中の誰かが、島のイベントの日に選び出されて丸焼きにされてしまうのだから、簡単には人間に気を許さないのももっともである。
昼食はインスタントラーメン。
今回のキャンプの2泊3日分の食料は、全て持参していた。これもバックパックキャンプの経験のためである。
二人分のラーメンを作るのに、苦労して担いできた2リットルの水の半分が、直ぐに無くなってしまう。
水を補給できないとき、どれくらいの水を準備しておけば最低限の食事ができるのか。
真剣に悩んでいる私の気持ちなどまるで関係無いかのように、かみさんは「食器を洗うついでに水も汲んできたわよ〜」とパンパンに膨らんだ水タンクを炊事場から運んできたのである。
食事を終えて、いよいよ焼尻島一周へと向かう。
小型のザックまで用意する余裕も無かったので、中身を大方出してしまってペシャンコになったザックを再び背負った。
開放的な島の風景を楽しみながら島の西端「鷹ノ巣園地」を目指す。
歩いていると、何処からとも無く賑やかな音楽が聞こえてくる。
天売島のフェリーターミナルから流れてくる音かと思ったら、それは沖で操業している漁船が流している音楽だった。
漁の間の退屈しのぎにでも聞いているのだろう。
同じ曲がエンドレスで流れ続けている。それもパヒュームのポップ調の曲と言うのが、何とも場違いな雰囲気である。
小高くなった鷹ノ巣園地からは天売島が直ぐ目の前に見えている。
振り返ると、歩いてきたばかりの焼尻島が端から端まで一望の下に見渡せる。
道路を一周すれば約12キロ、車で走ればあっと言う間、自転車でもせいぜい1時間、歩いて回るのにちょうど良い大きさと言えるだろう。
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