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フウマと一緒にサロマ湖キャンプ後編

キムアネップ岬キャンプ場(9月21日〜9月23日) 

 その後は網走湖の南に位置する女満別温泉「湯元ホテル山水」に向かった。
 あまり下調べもせずに、道路地図を見ながら「比較的近くの温泉」と言う条件だけで決めたところだけれど、これが源泉かけ流しでなかなか良い温泉だった。
 アルカリ泉なのでお肌ツルツル、蛇口から出るお湯も温泉なので、体を洗った後も石鹸が残っているようにヌルヌルした感じである。
女満別湖畔キャンプ場 ここの直ぐ隣りが女満別湖畔キャンプ場となっているので、そこも覗いてみることにする。
 以前から気になっていたキャンプ場だったのだけど、訪れるのはこれが初めてである。
 林間の芝生が清々しく、そこから見る網走湖の風景も美しい。何時かはテントを張ってみたくなるキャンプ場だ。
 その前の道路をもっと奥まで進んでいくと、女満別野営場がある。
 同じような立地環境だけれど、こちらは芝生広場のサイトなので雰囲気はかなり違っている。
 私の好みはやっぱり湖畔キャンプ場の方である。

 昼食は、観光パンフに載っていた道の駅「メルヘンの丘めまんべつ」のさくら豚丼を食べてみることにする。
 道の駅の隣りにはシジミラーメンの店もあって、かみさんはそちらの方を食べたそうにしていたけれど、ここは強引に私の意見を通した。
 何だか「さくら」のネーミングに惹かれてしまい、とても美味しそうに思えたのである。
 大空町で飼育されている国産豚「さくら201」のロース肉を使った豚丼で、軟らかい肉質とあっさりした脂が特徴とのことだけれど、印象はただの豚丼だった。
 多分シジミラーメンも普通のラーメンにただのシジミが入っているのだろうけれど、旅先ではご当地メニューを食べるのが一番である。
 そこの近くにあったパン屋「ブランジェ・アンジュ」も気になったので、そこでおやつ用のパンを購入。
 地元の人が頻繁に来店していたので、きっと人気店なのだろう。

呼人浦キャンプ場で その後、網走市へ向かう途中で呼人浦キャンプ場にも寄ってみた。
 そこの駐車場に車を入れると、かみさんが歓声を上げて車から飛び降りた。
 女満別のキャンプ場に寄った時は車から降りようともしなかったかみさんである。
 交通量の多い国道と湖に挟まれた細長い緑地がキャンプ場となっていて、私は全く興味が湧かなかったのだけれど、何故かかみさんはここが好きなようだ。
 湖畔の木の下に駆けていって、そこで一人でポーズをとっている。
 ボートの記念碑も見つけて嬉しそうにしていた。
 ボート部に入れば網走に来られるとの理由で高校時代にボート部に所属していたかみさんなので、ここには何か感じるものがあるのだろう。

美岬のヤチダモ 網走市内を通り過ぎて能取岬へと向かう。
 能取岬は過去何度か訪れているのだけれど、今回は「美岬のヤチダモ」と呼ばれる巨木を見たかったので、能取岬はついでに立寄るようなものだ。
 観光バスが停まって人も沢山歩いていたので、ここを訪れた証拠写真を1枚写して直ぐにそこを後にした。
 美岬のヤチダモは林道を少し入って、山道を少し歩くだけで簡単に辿り着ける。
 空に向かって真っ直ぐに伸びた何処でも見かけるような普通のヤチダモ。
 最初に目に映った姿ではそんな印象しか持たなかったけれど、幹に触れようとして近づいた時、ようやくその太さを実感できた。
 真っ直ぐに伸びている幹が根際近くから、異様に思えるくらいに地面に向かって広がっているのだ。
 巨木巡りは面白いけれど、森の中にある巨木では、その姿を完全に画像で伝えられないのが残念である。
 近くからではカメラのファインダーの中に全ての姿を納められないし、ちょっと遠ざかれば他の樹木に邪魔される。

 これで本日の予定は全て終了。
 ここからキャンプ場までは、途中から全く同じ道を走らなければならないので、景色はあまり楽しめない。
 そして、考えていたよりキャンプ場到着が遅くなりそうなので、自然とアクセルを踏込む力が強くなってしまう。
 前を走っていたキャンピングカーを追い抜いた瞬間、レーダー探知機がステルスの警戒音を鳴らした。
 ビクッとして辺りを見回したけれど、取締りをやっている様子も無い。
 「また何時もの誤作動か」とホッと胸を撫で下ろし、ふとバックミラーに目をやると、そこには赤色灯を派手に点滅させる白黒の車が大きく映っていた。
 「よりによって一番スピードを上げた瞬間に・・・」
 覚悟を決めていたけれど、印字されて出てきた記録を見ると、それはまだ金で解決できる範囲内に納まっていたのである。
 まさに不幸中の幸い。悲しいような嬉しいような、複雑な気持ちだった。

蠅だらけ やや意気消沈しながらキャンプ場へと戻ってきた。
 「いっぽんの木」のところで外を歩いた以外はずーっと車の中で寝たままだったフウマも、さすがに疲れたようである。
 車から降ろしてやると、フラフラとテントへ向かって歩いていった。
 南からの風がやや強く吹いていたので、今日は蚊に悩まされずに済みそうだと喜んだら、蚊の代わりに何故か今日はハエがやたらに多い。
 ハエは吸血しないとは言っても、頭の周りをブンブンと飛び回られたら五月蝿くてしょうがない。
 結局今日も、テントのメッシュの窓越しに外の風景を眺めることになってしまった。
 そしてその窓には無数のハエがへばり付いているのである。

雲が広がる 空には雲がかなり広がってきていた。
 これでは今日は夕陽も見られそうに無い。
 それでもライダーのソロキャンパーが、雲の隙間から少しだけ顔を出している太陽に一生懸命カメラを向けていた。
 昨日の素晴らしい夕陽を、是非彼にも見せてあげたかった。
 風が更に強まってきたので、ペグをしっかりと打ち直し、張り綱も追加する。
 これでは今夜の焚き火は諦めるしかない。
 家から持参した薪がまだ半分も残っているのに、そのまままた札幌まで持ち帰ることになりそうだ。
 食事もテントの前室の中に篭って食べる。
 9月にしては暖かな夜なのに、アウトドアでわざわざ窮屈な場所で食事をしなければならないのは、何とも面白くない。
 でも、そんな時間をちょっとだけ楽しませてくれたのが、思わぬ訪問者だった。
 どこから入ってきたのかキリギリス、いつの間にかテーブルの上にちょこんと乗っかっていたのだ。
 間違って潰してしまったらかわいそうなので、そっと掴んでテントの外に出してあげる。
 ところが、いつの間にかまたテントの中に入ってきていたので、もう一度外に出す。
テントの中で食事 しばらく経ってからふと下を見やると、何と今度は私の膝の上に乗っかっていた。
 そのうちに本当に足で踏み潰しそうなので、膝にキリギリスを付けたままハマナスの茂みの中に入っていって、今度はそこで放してやる。
 茂みの中では他の虫たちも賑やかに秋のメロディーを奏でていた。
  ワインが1本空になったところで、昨日の睡眠不足を解消するために早めに寝ることにする。

 昨晩のフウマ放置事件により私の信用は失われてしまい、今日はかみさんも私のテントで寝るという。
 そして深夜、ウトウトしながらもかみさんがフウマを外に連れ出す気配を感じていた。
 しばらくしてテントに戻ってきたけれど、フウマが中に入ってこない。
 今回もまた前室部分で寝てしまったので、そのままにしておくとのこと。
 「それじゃあ昨日と同じじゃないか」と思ったけれど、インナーテントの入り口もメッシュだけにしてあるので、「ここから時々様子を見るから大丈夫」とかみさん。
 家にいる時も、調子がよければ朝まで寝ているフウマだけれど、下痢気味のときは一晩に2回、3回と起こされる。
 その度に外まで連れ出し、舗装の上では絶対にウンコをしない犬なので、フウマが気に入った草地を見つけるまで家の周囲をブラブラと歩き回らなければならない。
前室で寝るフウマ まあそれと比べれば、外に出るのも楽だし、周りは全て草地なので何処ででも用をたせるので、幾らかはましである。
 どっちみち、強風によってテントが何度も煽られ殆ど寝られずにいるかみさんなので、時々フウマの様子を見るのにはちょうど良いのかもしれない。

 テントが揺れるたびに金属の軋む音まで聞こえるようになってきて、私もなかなか熟睡できない。
 目が覚めるたびに時計を見るけれど、その前から10分も経っていない。朝の訪れが本当に待ち遠しく感じられる。
 そして、時計を見るのももう何度目になるのかも分からなくなってきた時、時計の針はようやく朝の4時をさしていた。
昨日起きたのと同じ時間である。
 「もしかしたら雲が全て吹き飛ばされて快晴になっていたりして」
 もしそうなれば、もう一度幌岩山まで登ってみようと考えていたので、インナーテントを出て外の様子を窺う。すると、そこに寝ているはずのフウマが見当たらない。
 「あれ?フウマがいないよ?」
 「えっ?そこに寝てるでしょ!」
 「いないって!」
 「・・・」
 昨日と全く同じ展開である。
 テントの周りをぐるりと回ったけれど、そこから見える範囲にフウマの姿は確認できない。
 「これはちょっとまずいかもしれない・・・」
 二人で手分けして、私は湖岸の方を探してみることにした。
 すると、薄暗闇の中にフウマらしい影を発見。
 「ふうまっ!」
朝の風景 大声で呼びかけたけれど、そんな声に全く反応する様子も無く、砂に足を取られながらヨボヨボと歩き続けるフウマ。
 どうやらウンコする場所を探して移動途中の様である。
 そしてしばらくしてようやく気に入った場所を見つけたようで、おもむろに腰を下ろした。
 全く人騒がせな犬である。

 密かに期待していた青空は広がっていなかったけれど、東の空の地平線付近にだけ雲の隙間ができていた。
 これならば僅かの間だけでも完全な太陽の姿を見ることができそうだ。
 何せ昨日は雲に隠されて太陽の半分も拝めなかったのである。
 潮の引いた湿地の良い場所があったので、そこに三脚をセットして、朝日が出るのを待ち構える。
 やがて、その湿地を斑に赤く染めながら、朝日が昇ってきた。
 今日は狙い通りの朝日の写真が撮れて満足である。

 
美しい朝日

 テントに戻ってコーヒーを飲んでいる最中にも、風がますます強まってきているような気がした。
 天気予報を確認しても、日中の方が風が強まるようになっている。
 まったりとコーヒーなんか飲んでいる場合じゃ無さそうだ。
 大急ぎで朝食を済ませて撤収に取り掛かる。
 そして最後に残されたテント。
 前回フレームを折ってしまったのもテントをたたむ最中である。
風にあおられるテント 強風時、テントをたたむのを風上からやるか風下からやるか。
 前回は風下からチャレンジして失敗していた。
風上の張り綱を先に外してしまうのが不安だったので、張り綱をしたままで風下からフライを外そうと持ち上げた瞬間、突然吹きつけた暴風により張り綱など関係ないようにグシャリとフレームが潰れてしまったのである。
 今回は風上からチャレンジすることにした。
 かみさんにフライの裾をしっかりと掴ませて、まずは張り綱を1本外した。
 そして私もフライの裾を掴みながら、2本目、3本目の張り綱を外す。
 もしもこの瞬間に、フライを手で支えきれないような暴風に吹き付けられたら、一巻の終わりだ。
 一番無防備になる瞬間を切り抜けたので、その後は二人で一気にフライを持ち上げた。
 中に空気をはらんで気球のように膨らむフライ。
 そんなことは気にしないで、フレームの上まで持ち上げたフライの裾をそのまま反対側の地面まで持っていき、膨らんだフライを体全体で押さえ込む。
 強風の中でのテントの撤収は本当に大変である。

黒い雲が広がってきた 最後の荷物をリヤカーに積み込んでサイトを後にする頃、上空を覆った真っ黒な雲はその後の天気の崩れを予告するかのように不気味に波立っていた。
 荷物は全部車まで運び終えたけれど、まだ残っている物があった。
 私達が荷物を片付けている間、管理棟の陰で風を避けるように寝転がっていたフウマである。
 「片付けはもう終わったの?」とでも言いたげな顔をして、トボトボと最後に一匹で歩いて来る姿は、とても滑稽だった。
 キャンプ場近くのサンゴ草群生地に最後に立ち寄る。
 前回ここに来たときはそれほど見ごたえのある群落じゃなかった気がするけれど、今回は随分見ごたえのある群落に変わっていた。
 サロマ湖の他の2箇所の群落と比べてもここが一番だろう。
 今日はこの後瀬戸瀬温泉まで一気に走る予定だったけれど、その前にサロマ湖の観光地でまだ見逃していた「サロマ湖畔遊歩道」に立ち寄る。
 全長5kmの遊歩道で、今からここを全部歩くわけにもいかないので、その様子だけでも見ておくことにする。
 サロマ湖畔の森の中に作られた遊歩道は、緑も濃くて楽しく歩けそうなところだった
 紅葉の季節を狙って訪れたいところである。

 

キムアネップ岬のサンゴ草群落

瞰望岩 遠軽町では「太陽の丘えんがる公園」に寄り道する。
 虹の広場ではコスモスが公称1000万本のコスモスが満開になっていたけ。
 でも、ここは一度見たことがあるし入場料300円が勿体ないので柵の外から写真を一枚写すだけにしておいた。
 今日の目的はコスモス畑ではなくて「瞰望岩」に登ること。
 この瞰望岩は国道を走っていていつもその存在が気になっていたのだけれど、去年「なんまらほっかいどう」のアサさん達がここに登った写真をブログにアップしていたのを見て、我が家も登ってみたくなったのだ。
 登ると言っても駐車場から少し階段を上がるだけで、簡単にこの願望岩の上に出ることができる。
 その上からの眺めは絶景。
 そして柵が無いのでスリルも満点。
 今までここに登らずに通り過ぎてしまっていたのが、我ながら信じられなかった。

 

願望岩からの眺め   柵がないのでスリル満点

 そして瀬戸瀬温泉に入る。
 建物に入ると、ここで飼われているらしい黒い雑種犬が出迎えてくれた。
 浴槽の真下から43度の源泉が湧き出しているとのことで、湯船からは勿体ないくらいにお湯がざぶざぶと溢れ出ている。
源泉が溢れる湯船 ここもめまんべつ温泉と同じくアルカリ泉だけれど、肌のツルツル感は女満別の方が強い気がする。
 温泉から出てフウマを散歩させていると、先ほどの犬がクンクンと鼻を鳴らしながら建物から飛び出してきた。
 山奥で暮らしていると、人恋しいと言うか犬恋しくなるのかもしれない。
 しかし犬見知りの激しいフウマはそんな彼(彼女?)が鬱陶しいみたいだ。珍しく鼻に皺を寄せている。
 クンクンとなき続けるワンちゃんがかわいそうだったけれど、フウマを車に乗せて温泉を後にして札幌へと車を走らせた。
 途中の丸瀬布でフウマのウンチタイムで車を降りたとき、汗ばむくらいの暑さに驚かされた。
 車の温度計を見ると26度になっている。
 その後、横殴りの雨が降り始め、10km程走って白滝のパーキングで車から降りたとき、あまりの寒さに再び驚かされた。
 車の温度計は13度。すさまじい気温の変化である。
 でもこれからの時期、これが普通になってくる。
 次のキャンプは確実に冷たい秋風の中で過ごすことになるのだろう。

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