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カヌー三昧の夏休み然別湖キャンプ(後編)

然別湖北岸野営場(8月6日〜8日)

 ハードな川下りを終え、くったり温泉レイク・インで一風呂浴びてからキャンプ場まで戻ってきた。
 川を下っているときに少し雨が降って、湖畔沿いの道路もかなり濡れている。テントの出入り口をメッシュのフライだけにしておいたのでちょっと心配だったが、中までは濡れていなかったのでホッとした。
 時間は7時になっていたので、大急ぎでそれぞれ夕食の準備に取りかかる。
 一通りの準備が整ったところで、ようやくビールに手を伸ばした。皆が忙しそうにしているときに先に一人だけビールを飲んだらひんしゅくを買いそうなので、ひたすら我慢していたのだが、何のことはない、既に皆それぞれビールを飲みながら夕食の支度をしていたのだ。
夕食中 川下りで疲れた体にビールが染みこんできた。
 明日はカヌーで湖を横断して、東雲湖まで行ってみようと言うことになった。
 我が家もサダ吉さんのところも、東雲湖はまだ見たことがない。
 私たちよりも北海道を知り尽くしている感じのKevipaさん夫婦は、東雲湖は当然経験済みである。前回はナキウサギも至近距離で見ることができたとの話しだ。
 ミエさんの説明によると、雨の降った後の早朝がナキウサギに出会える確率が高いとのこと。明日の朝なら絶好の条件が整っている。
 「朝6時には湖にカヌーを浮かべている状態にして、朝食は向こうで食べることにしましょう。」
 ミエさんの仕切りで話しがまとめられる。
 いつもはこれがサダ吉さんの役目なのだが、今回だけはミエさんにおまかせだ。
 我が家はいつものように「はーい、了解しました。」と、他の人の計画に乗っかるだけである。
 それでも、あらかじめ東雲湖ツアーへ行くことを予想して、キャンプ道具の中にはしっかりとデイパックも用意されているのだ。

 缶ビールを3本空けただけなのに、頭がフラフラしてきた。
 早朝のカヌーとその後の激流下りで、体がかなり参っているのかもしれない。
 イスに座ったままスーッと意識が遠くなり、そうすると目の前に突然大きな岩が現れた。頭を振って、正気を取り戻す。
 しかし直ぐにまた意識が薄れていき、今度は白く泡立つ急流が目の前に迫ってきた。
 かなり重傷である。
 昨晩は、これまでの旅の疲れが出たのか、Kevipaさんが早々とイスの上で沈してしまったが、今日は私が沈してしまった。
 皆より一足早くテントの中に潜り込んだ。それでも時間はもう10時を過ぎていた。我が家のいつものキャンプと比べたら、これでも夜更かしの部類に入ってしまう。
 いびきをかかないように、かみさんに時々頭を小突かれながら気持ちの良い眠りについた。

朝の然別湖 翌朝は何時もどおりに4時過ぎに目が覚めた。
 昨日の疲れも、体にはほとんど残っていない。もっとも、昨日の疲れが出てくるのは多分明日になってからなので、一晩で疲れが取れたわけでは無いのである。
 湖は今朝もべた凪である。くちびる山の麓には薄い雲もかかって、昨日の朝よりも美しい景色が広がっていた。
 昨日の雨の影響で少し蒸し暑そうなので、半袖のTシャツで東雲湖ツアーに出かけたいところだが、藪のような場所を歩くみたいなので、しょうがなく厚手の長袖Tシャツを着ていくことにする。
 今回のキャンプでは半袖Tシャツだけは沢山持ってきていたけれど、長袖の服はこれしかないのだ。
 そもそも、最高気温が35度の十勝へキャンプへ行くのに、長袖の服が必要になるとは全く考えていなかったのである。
 それが昨晩などは、この長袖シャツを着て焚き火にあたっていてもまだ寒くて、更にもう1枚雨具を重ね着したくらいなのだ。
 我が家の場合、キャンプで着る服は自分で用意することになっているので、かみさんに文句を言うわけにもいかない。
 軽く羽織れる服が1枚あれば良かったのだけれど、我慢してこの長袖Tシャツで歩くしかなさそうだ。

 予定どおり、6時にはキャンプ場を出発。
 べた凪の湖をのんびりとカヌーを進める。
フウマも楽しそう そんな時間なのに、早くも遊覧船が営業を始めていた。私たちのカヌーに向かって遊覧船が突き進んで来る。
 どちらに避ければ良いのか判らないし、しょうがなく漕ぐのを止めてその場にとどまる。
 こちらから避けようとして、逆に遊覧船の進行方向に入ってしまうことが良くあるので、こんな時は相手が避けてくれるのを待っていた方が良い。
 この遊覧船も私たちを大きく避けて通りすぎてくれた。しかし、そのしばらく後にやってくる大きなうねりは、あまり気持ちの良いものではない。
 昨日に引き続き弁天島でお参り、相変わらず「サマージャンボが当たりますように」だ。
 全く、他にもっと気の利いたことでも然別湖の神様にお願いできないものだろうか。
 そこから見える岬の先を回り込んだ奥が、東雲湖への入り口だそうだ。カヌーを寄せあっておしゃべりをしながら、のんびりとカヌーを漕ぐ。
 そうしてやっと目標にしていた岬まで到着。そこを回り込んだ途端、目の前のに現れた光景に皆感嘆の声を上げた。
 そこには見事なまでの鏡のような湖面が広がっていたのだ。
 こんな場所でカヌーを漕げるのは、まさにカヌーイスト冥利に尽きると言っても良いだろう。くちびる山も湖面にくっきりとその姿を映している。

Kevipaさん艇   サダ吉さん艇

 そんな風景に感動しながら、目的の場所に到着。
 そこには、壊れかけた小さな桟橋がある。以前は遊覧船もここに立ち寄っていたそうだが、自然保護のために止められたとのことである。
東雲湖への入り口 登山道を歩いてここまで来ることもできるが、キャンプ場からここまでのんびりと漕いで約1時間、カヌーで来た方が絶対に楽そうだ。
 温泉街からカヌーを出せば、もっと短時間で来られるだろう。
 カヌーをロープで倒木に固定して、東雲湖を目指して歩き始めた。 先頭は、ミエさんとルーク・クレアの2匹の犬たち。我が家はフウマを先頭に、その後に続いた。
 人一人が通れる幅の道が続いている。
 こんな山道が大好きで、いつもなら先頭を切って走っていくフウマだが、ルークとクレアが前にいるものだから、そうもいかない。
 そして時々ケビンが直ぐ後ろに迫ってきてお尻の臭いを嗅がれ、困った顔をしているのがとても可笑しい。
 犬が止まれば人間も止まらなければならない。犬たちのペースに合わせて、のんびりと山道を歩いた。
 そのうちにピッという鋭い鳴き声が聞こえてきた。ナキウサギの声だ。
 森の中を抜けて、岩がゴロゴロと転がる開けた場所に出てきた。そこがナキウサギの生息場所である
 岩のすき間に小さな穴があるが、そこにナキウサギが潜んでいるとのこと。今回は4匹の犬が一緒なものだから、ナキウサギ達も警戒して姿を現さないだろう。
ナキウサギ そう思っていたら、先頭を歩いていたミエさんが急に立ち止まった。上の方を指さして、「ほら、あそこ!」小さな声で囁いた。
 その方向に目をやると・・・、いたいた。
 岩の手前の草の中に、可愛らしい姿でちょこんと座っている。そっとカメラを取り出して、その姿を撮影した。
 やがてそのナキウサギは岩のすき間に姿を隠してしまった。
 何時間もカメラを構えて待ち続け、結局一度も姿を見られずに引き返すカメラマンもいるという話しだが、到着した途端にその姿を見られるなんて本当にラッキーである。
 結局、ナキウサギの姿を見られたのはそれだけだった。

 そこから直ぐで東雲湖に到着、普通に歩けば湖畔から20分程度の距離だろうか。
 湖畔まで降りられるのかと思っていたら、その姿を下に眺められるだけである。ちょっとガッカリしたが、それでもその美しい姿は十分に楽しめる。
 そこで朝食を取ることにした。
朝食中 眼下に東雲湖の姿を眺め、後ろからはナキウサギの声が時々聞こえてくる。なんて贅沢な朝食タイムだろう。
 でも、そんな贅沢な朝食を食べながらも、私はどうしても納得できなかった。せっかくここまでやって来たのに、東雲湖の姿を遠くから眺めただけで帰ってしまう気にはなれない。
 よく見たら、笹藪の中を人が歩いたような跡が残っていた。
 「よし!ここまできたら行くしかない!」
 決死隊として、私が湖畔まで降りて写真を撮してくることにした。
 笹は昨日の雨で濡れたままだ。雨具は上だけしか持ってきていなかったが、それでも何も無いよりはましだろう。
 身支度を整えて、笹藪の中に足を踏み入れた。踏み分け道があるかと思ったが、それも直ぐに消えてしまっていた。
 私の顔の高さまであるようなクマザサ、それを体で押し分けながら先に進む。ズボンは既にびしょ濡れである。
 「止めときゃ良かったかな〜」と後悔の念が頭をよぎったが、ここまで来たら先に進むしかない。
 足下の地面が突然えぐれていて、危うく転びそうになる。藪は酷かったが、結構簡単に湖畔までたどり着くことができた。
 上から見下ろすのとは全然違う、神秘の湖東雲湖の美しい姿が目の前に広がる。苦労して藪こぎするだけの価値がある光景だ。
 その姿をカメラに納めて皆のところまで戻ってきた。絞れば水がしたたり落ちるくらいにズボンはびしょ濡れである。
 それでも速乾性の素材なので、歩いているうちに乾くだろう。
 東雲湖を満喫して帰途についた。

東雲湖   東雲湖

 来るときは全くの無風だったのに、帰りは結構な風が吹いていた。南よりの風なので、カヌーを漕ぐのには全く問題がない。
 何もしなくても、風がカヌーをキャンプ場まで運んでくれるような感じだ。
 もしもこれが向かい風だったら、地獄のカヌーに変わっていただろう。
 安定した天候の時ならば、朝夕はピタリと風が止んで、日中に風が吹き始める。それでも、夏の間なら大体は南風となるので、早朝にキャンプ場を出れば帰りは追い風で戻ってこられる。
 今回はキャンプ場から全行程4時間の楽しい東雲湖ツアーだった。

 キャンプ場に戻って、まずはビール。これがむちゃくちゃに美味しかった。
 そして、我が家が来る途中で仕入れてきた夕張メロンの登場。途中で出さずに、最終日まで残しておいて正解だった。
 心地良い疲れに、夕張メロンの甘さがとても美味しく感じられる。
 可哀想なのはかみさんで、最近果物アレルギーの症状が出るようになってきて、スイカとメロンはダメなのである。
 恨めしそうに横から眺めるかみさんの視線をものともせずに、一気に夕張メロンを食い尽くしてしまった。

皆で記念撮影 明日まで休みを取ってあるので、帰る時間も気にせずにのんびりと然別湖最後の時間を楽しんだ。
 昼食は素麺とグリーン麺の麺バイキングだ。
 カヌーに乗って川で流し素麺とかやったら面白いね、などとくだらないことを言い合いながら楽しい昼食も終わった。
 もっと沢山遊びたかったけれど、そろそろ帰り支度を始めなければならない。
 Kevipaさん達はこれからどこへ行くかもまだ決めていないという。2週間以上の北海道旅行も、今日で折り返し点を過ぎたくらいとのこと。
 そんな夏休みを私も過ごしてみたいものだ。
 それでも、おかげで2泊3日の私の短い夏休みもとても楽しく充実したものとなった。
 秋のキャンプシーズンが始まるまで、この夏休みの余韻だけでしばらくは時を過ごすことができそうだ。
 全ての荷物を車に積み終えた後、皆で記念撮影をして、まだ暑さの続いていそうな札幌へと車を走らせた。

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