ハードな川下りを終え、くったり温泉レイク・インで一風呂浴びてからキャンプ場まで戻ってきた。
川を下っているときに少し雨が降って、湖畔沿いの道路もかなり濡れている。テントの出入り口をメッシュのフライだけにしておいたのでちょっと心配だったが、中までは濡れていなかったのでホッとした。
時間は7時になっていたので、大急ぎでそれぞれ夕食の準備に取りかかる。
一通りの準備が整ったところで、ようやくビールに手を伸ばした。皆が忙しそうにしているときに先に一人だけビールを飲んだらひんしゅくを買いそうなので、ひたすら我慢していたのだが、何のことはない、既に皆それぞれビールを飲みながら夕食の支度をしていたのだ。
川下りで疲れた体にビールが染みこんできた。
明日はカヌーで湖を横断して、東雲湖まで行ってみようと言うことになった。
我が家もサダ吉さんのところも、東雲湖はまだ見たことがない。
私たちよりも北海道を知り尽くしている感じのKevipaさん夫婦は、東雲湖は当然経験済みである。前回はナキウサギも至近距離で見ることができたとの話しだ。
ミエさんの説明によると、雨の降った後の早朝がナキウサギに出会える確率が高いとのこと。明日の朝なら絶好の条件が整っている。
「朝6時には湖にカヌーを浮かべている状態にして、朝食は向こうで食べることにしましょう。」
ミエさんの仕切りで話しがまとめられる。
いつもはこれがサダ吉さんの役目なのだが、今回だけはミエさんにおまかせだ。
我が家はいつものように「はーい、了解しました。」と、他の人の計画に乗っかるだけである。
それでも、あらかじめ東雲湖ツアーへ行くことを予想して、キャンプ道具の中にはしっかりとデイパックも用意されているのだ。
缶ビールを3本空けただけなのに、頭がフラフラしてきた。
早朝のカヌーとその後の激流下りで、体がかなり参っているのかもしれない。
イスに座ったままスーッと意識が遠くなり、そうすると目の前に突然大きな岩が現れた。頭を振って、正気を取り戻す。
しかし直ぐにまた意識が薄れていき、今度は白く泡立つ急流が目の前に迫ってきた。
かなり重傷である。
昨晩は、これまでの旅の疲れが出たのか、Kevipaさんが早々とイスの上で沈してしまったが、今日は私が沈してしまった。
皆より一足早くテントの中に潜り込んだ。それでも時間はもう10時を過ぎていた。我が家のいつものキャンプと比べたら、これでも夜更かしの部類に入ってしまう。
いびきをかかないように、かみさんに時々頭を小突かれながら気持ちの良い眠りについた。
翌朝は何時もどおりに4時過ぎに目が覚めた。
昨日の疲れも、体にはほとんど残っていない。もっとも、昨日の疲れが出てくるのは多分明日になってからなので、一晩で疲れが取れたわけでは無いのである。
湖は今朝もべた凪である。くちびる山の麓には薄い雲もかかって、昨日の朝よりも美しい景色が広がっていた。
昨日の雨の影響で少し蒸し暑そうなので、半袖のTシャツで東雲湖ツアーに出かけたいところだが、藪のような場所を歩くみたいなので、しょうがなく厚手の長袖Tシャツを着ていくことにする。
今回のキャンプでは半袖Tシャツだけは沢山持ってきていたけれど、長袖の服はこれしかないのだ。
そもそも、最高気温が35度の十勝へキャンプへ行くのに、長袖の服が必要になるとは全く考えていなかったのである。
それが昨晩などは、この長袖シャツを着て焚き火にあたっていてもまだ寒くて、更にもう1枚雨具を重ね着したくらいなのだ。
我が家の場合、キャンプで着る服は自分で用意することになっているので、かみさんに文句を言うわけにもいかない。
軽く羽織れる服が1枚あれば良かったのだけれど、我慢してこの長袖Tシャツで歩くしかなさそうだ。
予定どおり、6時にはキャンプ場を出発。
べた凪の湖をのんびりとカヌーを進める。
そんな時間なのに、早くも遊覧船が営業を始めていた。私たちのカヌーに向かって遊覧船が突き進んで来る。
どちらに避ければ良いのか判らないし、しょうがなく漕ぐのを止めてその場にとどまる。
こちらから避けようとして、逆に遊覧船の進行方向に入ってしまうことが良くあるので、こんな時は相手が避けてくれるのを待っていた方が良い。
この遊覧船も私たちを大きく避けて通りすぎてくれた。しかし、そのしばらく後にやってくる大きなうねりは、あまり気持ちの良いものではない。
昨日に引き続き弁天島でお参り、相変わらず「サマージャンボが当たりますように」だ。
全く、他にもっと気の利いたことでも然別湖の神様にお願いできないものだろうか。
そこから見える岬の先を回り込んだ奥が、東雲湖への入り口だそうだ。カヌーを寄せあっておしゃべりをしながら、のんびりとカヌーを漕ぐ。
そうしてやっと目標にしていた岬まで到着。そこを回り込んだ途端、目の前のに現れた光景に皆感嘆の声を上げた。
そこには見事なまでの鏡のような湖面が広がっていたのだ。
こんな場所でカヌーを漕げるのは、まさにカヌーイスト冥利に尽きると言っても良いだろう。くちびる山も湖面にくっきりとその姿を映している。
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