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カヌー三昧の夏休み然別湖キャンプ(前編)

然別湖北岸野営場(8月6日〜8日)

 何の予定もない今年の夏、歴舟川の1泊カヌーツーリングでもやろうかなと漠然と考えていたら、ホームページでリンクしているKevipaさんから、「今年も北海道へ行くので何処かでお会いできませんか?」とのメールが舞い込んだ。
 去年の夏もそうだった気がするけれど、夏に積極的にキャンプへ行こうという気はしないので、誰かに誘ってもらうのを待っているような他力本願状態である。
 その誘いがカヌーがらみだったら、喜んで飛びついてしまう。
 去年の夏も、そうしてKevipaさんご夫婦と空知川のほとりで初対面となったのだが、その時は時間が合わなくて一緒の川下りもできず、夜の宴会時に少しだけ乱入させてもらっただけで終わっていた。
 北海道に2週間以上滞在しているので、日にちと場所はこちらに合わせてくれるとのこと。合わせると言われても、もしかしたら私以上に北海道に詳しいようなご夫婦なので、変なキャンプ場を選ぶわけにもいかなくて困ってしまう。
 そこで、Kevipaさんの予定しているルートの中に然別湖が入っていたので、私も久しぶりに然別湖に泊まりたかったし、そこで合流することにした。
 本州からカヌーを積んでやってくるキャンパーと一緒に泊まるのなら、屈斜路湖、支笏湖、そして然別湖がやっぱり王道だろう。
 去年の夏にも一緒だったサダ吉さん夫婦も来られることになって、楽しい夏のキャンプになりそうだ。

 出発当日の天気予報では帯広の予想最高気温は35度になっていた。
 最近は寒い時期のキャンプに体が慣れてしまっているので、寒さならマイナス20度くらいまでは堪えられるが、暑さにはことのほか弱くなってしまっている。25度を超えるともうダメだ。それが35度の暑さの中でのキャンプだなんて、もう完全に想像を絶する世界に入ってしまう。
 冬にキャンプをすると「なんて物好きな奴」と言った目で見られてしまうが、私からすれば35度の暑さの中でキャンプしている人間の方がもっと物好きな奴に見えてしまう。
 我が家を朝の8時過ぎに出発、かみさんから「これじゃあ一番暑い時間に着いちゃうんじゃないの?」とチェックを受けた。
 8月の天気の良い週末、そして人気キャンプ場ともなれば混雑は必至である。こうなると、少しでも条件の良いサイトを確保するためには、たとえ35度の地獄の猛暑が待ち構えていようとも、少しでも早くにキャンプ場に着こうとするのが私の性格なのでどうしようもない。
 車の温度計は上がり続け日高町付近で30度に達した。さすがに日勝峠ではやや下がったものの、峠を下り始めると再び温度は上がり始め清水町に着く頃には遂に34度になっていた。
 そこで「目分料」という蕎麦屋で昼食にする。11時過ぎでオープン間もないのに、早くも店内は混み始めていた。
 私の故郷清水町で、現在一番集客力がある施設かもしれない。
長沢とうふ店 次は鹿追町瓜幕の「鹿追チーズ工房」で熟成ゴーダチーズ、「長沢とうふ店」で豆腐と油揚げを仕入れた後、然別湖を目指した。
 どちらの店も、出発前日にインターネットで検索して見つけた店である。
 「鹿追チーズ工房」は小さなショーケースが一つあるだけの地味な店、それでも全ての種類のチーズを試食させてくれるのでお気に入りのチーズを買うことができる。
 「長沢とうふ店」は80年以上手作り豆腐を作り続けている伝統の店、800gで200円と信じられないくらいに安い値段に「本当に美味しいの?」と心配になってしまうくらいだ。
 然別湖に近づくに従って、嘘のように気温が下がりはじめた。
 6年ぶりに泊まる然別湖、テントがびっしりと立ち並んだ様子を頭に描いていたのに、到着してみると場内は閑散としている。
 何だかキツネにつままれた感じだ。
 先に到着していたサダ吉さんが、湖寄りの一等地にビッグタープを張って待っていてくれた。10時頃に到着したサダ吉さんも、あまりにも空いているものだからどこにタープを張るか悩んでしまったとのことだ。
 3台あるリヤカーが全て使われていたので、駐車場から湖畔まで何往復もしながら荷物を運ぶ。普通ならここで汗だくになってしまうところなのに、涼しいのでほとんど汗もかかない。
私たちのサイト そして今回がキャンプデビューのニューテント、ヨーレイカの「ツーリング2」の設営に取りかかった。
 かみさんから「キャンプ場で説明書を見ながらテントを張るのだけは止めてね」と言われていた。
 これは夏のキャンプ場でよく見かける風景である。
 そのため、あらかじめ我が家の庭で予行演習をしておいたので設営はスムーズだったが、別に買ったテントを初めて張るのに、説明書を読むくらい構わない気もする。
 ただ、説明書を見てもなかなかテントを張れずに苦労するお父さん、子供達は「早く遊びに行こうよ〜」とだだをこね、お母さんはその横に立ちつくすだけでイライラしながら「静かにしなさい!」と子供達を叱りつける、なんて図だけは避けたいものである。
 そこへKevipaさんご夫婦も到着した。一年ぶりの再開である。
 そしてレトリバーのケビン、ワイアーダックスのルークとクレアの3匹の犬たち。初対面となる我が家のフウマはちょっとびびりがちだ。
 一通り設営が終わったところで待望のビールを開ける。毎度のことながらこの瞬間が何とも楽しい。特に夏のキャンプでは最高の一瞬である。
 湖からの涼しい風がタープの下を吹き抜け、下界の暑さが嘘のような快適さだ。
 3時を過ぎると、徐々にキャンパーの数も増えてきた。
 地元の人間が利用するようなキャンプ場なら昼前から一杯になるのに、やっぱりここは旅行者の利用が多いのだろう。
 それでも昔と比べたら、キャンパーの数もぐっと減ったような気がする。
 6年前に訪れたとき、湖畔寄りのここの広場はほとんど裸地状態だったが、現在はほとんど全体が草に覆われて落ち着いた雰囲気に変わっている。
 これまでは、はっきり言ってここはテントを張りたい場所ではなかったけれど、今の状態ならここがキャンプ場のベストサイトと言っても良いかもしれない。

6年前の然別湖キャンプ場   現在のキャンプ場
6年前の状況   現在の状況

 一息ついたところで、早速皆で然別湖にカヌーを浮かべた。
 濃緑の山に囲まれた夏の然別湖、先ほどまで吹いていた風もいつの間にか止んで、湖面にはその名残のさざ波が揺らめいている。
Kevipaさんご夫妻と3匹の犬たち 西に傾いた太陽の光が、その波に反射して湖面に輝きを映している。
 Kevipaさんのカヌーには3匹の犬たちも乗り込み、それぞれが然別湖の風景に見とれているようでとても面白い。
 ひとしきりカヌーで遊んだ後、タープに戻って夕食の準備をする。
 ミエさんの作ってくれたバーニャカウダーがとても美味しかった。これは是非、我が家のキャンプメニューに加えることにしよう。
 途中で仕入れてきたチーズや豆腐もなかなか美味しかった。
 これがきっかけで、十勝のグルメの話題となる。そうなると我が家の場合、ほとんど聞き役である。
 「へ〜」、「ホ〜」
 実家が十勝にあるくせに、十勝のことを何も知らないことに改めて気がついた感じだ。
 空を見上げると天の川の姿がくっきりと見えていた。然別湖の星空の美しさは格別である。
 一人で湖畔に降りてみたら、然別湖の湖面でキラキラと星の光が輝いていた。その様子に見とれていると、昔から考えてきたことがまた頭の中に浮かんできた。
 すぐにタープまで戻ってかみさんに「ねえねえ、ちょっとだけカヌーに乗りたいんだけど良いかなー?」
 「えっ、酔っぱらってフラフラしているのに大丈夫なの?」
 「絶対に遠くまで行かないから大丈夫だって、ね、ね、良いよね。」
 まるで母親に哀願する子供みたいだ。
 そうして夜の湖にカヌーで漕ぎ出した。さすがにちょっと恐怖感を覚える。
 それでも少し沖に出て空を見上げたら、圧倒的な星の数に息をのんだ。
 そのままカヌーの上に寝転がって星空を楽しむ。星の数が多すぎて、いつもならすぐに見つけられる白鳥座の姿もなかなか見えてこない。
 そのまま星空の中に吸い込まれていきそうな不思議な感覚に囚われる。
 ミエさんも一人でカヌーに乗って湖上に出てきた。やっぱり感動の声を上げている。
 何時までもそうしてカヌーの上で寝転がっていたかったが、心配されても困るので岸に戻ることにした。
 しかし、真っ暗なので帰るべき場所が判らない。岸に残っていたKevipaさんが灯りを付けてくれたので、それを目標に戻ることができた。
 ナイトカヌーを楽しむのなら、その程度の準備はしておいた方が良さそうである
 あっと言う間に時間が過ぎて、早く眠るつもりでいたのにテントに入ったときは既に11時近くになっていた。

早朝の然別湖 翌朝は4時過ぎに目を覚ました。
 然別湖の朝にゆっくりと寝ている時間はない。
 早速起き出して湖を眺めると、静かな湖面の遠くにくちびる山の姿が映っていた。
 顔を洗ってから、すぐにカヌーの準備を整えて湖岸に降りる。
 すぐ近くにヤンベツ川が流れ込んでいるが、その付近では湖面から水蒸気が立ち上っている。
 いつ見ても心を打たれる美しさだ。
 鏡のような湖面にそっとカヌーで漕ぎ出した。この一瞬が何とも言えずに楽しい。
 湖の東側の岸に沿ってカヌーを進める。この付近の湖岸は岩が積み重なって、その隙間からモミジやシダが葉を伸ばし、まるで日本庭園の石組みを見ているようだ。
 どんなに優れた石工でも、自然の力が組み上げたこの石組みには適わないだろう。
 ここは、かみさんお気に入りの場所でもある。紅葉の時期ならば更に美しい風景を楽しめそうだ。秋にもう一度来ようねと、ここでキャンプの予定が一つ埋まってしまった。
湖岸の日本庭園 そのうちに、サダ吉さんが一人乗りのカナディアンに乗って我が家のカヌーに追いついてきた。
 ホワイトウォーター用カナディアンで、流れのない湖を漕ぐのは大変そうである。
 湖の中央部のさざ波もその頃には治まって、いつの間にか近くにまで迫っていた弁天島が朝日を浴びて湖面に浮かび上がっていた。
 そこまで漕ぐつもりは無かったけれど、そのまま成りゆきで弁天島まで行くことにする。
 弁天島の鳥居の前でカヌーに乗ったまま参拝した。こんな場所でも神様にお願いすることと言ったら「どうかサマージャンボが当たりますように。」
 どうせなら、もう少しましなことをお願いすれば良いのにと、自分でも呆れてしまう。
 帰りは、朝日の当たる西側の湖岸に沿ってキャンプ場まで戻った。

弁天島へ向かうサダ吉さん   弁天島で参拝中

 ここのキャンプ場に新しくできたバイオトイレなるものに入ってみることにした。
 このバイオトイレを動かすためには、24時間電源を供給する必要がある。電気の引かれていないこのキャンプ場では、この施設ができる前は夜になると発電機が止まり、キャンプ場は真の闇と静けさに包まれたものだ。
 それが、このトイレのために夜中も発電機が動き続けることとなって、見聞録の掲示板にもそのことに対する不満が多く書き込まれていた。
 私たちのサイトまでは、その音は届いて来なかったが、近くに行ってみるとなるほど結構な音がしている。
 トイレは腰掛け式だ。便そうの中はおがくずがびっしりと詰まっている。終わった後に横のスイッチを押すと金属製の羽がゆっくりと回転しはじめる。
 自分の物体がおがくずの中に埋もれていく様を食い入るように見つめた。回転するうちに他の人の物体がおがくずの中から顔を出してこないかと冷や冷やしていたが、幸いそのようなことは起こらなかった。
 臭いもほとんどしない。
 確かに優れたシステムではあるみたいだが、発電機の騒音を響かせながら、本当にこのキャンプ場に必要な施設なのかなとちょっと疑問に感じてしまった。

我が家のニューテント サイトに戻ってくるとミエさんが、「シーソラプチ川を下ろうと言う話しになっているんですが、ヒデさんはどうですか?」
 全くの予想どおりの展開である。
 「然別湖で会いましょう」とだけしか決めていなかったけれど、このメンバーでキャンプをすれば当然どこかの川へ出かけるはず。来るときに見た十勝川は増水して茶色く濁っていたので、後はシーソラプチ川しか行く場所はない。
 「はい、そうしましょう。」
 すぐに話しはまとまった。
 大急ぎで川下りように、センターの浮力体を膨らませて取り付ける。
弁天島までカヌーに乗った後に、かなり水が増えているというシーソラプチ川を下る。
 何だかちょっと不安な気持ちがしたが、キャンプ場を出発して落合へと向かった。

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