落石岬からは道道142号を走って厚床へ抜けたが、この付近の風景も結構私の好みだったりする。
とろろ昆布のようなサルオガセを枝に絡ませた樹木が、道路沿いに多く見られる。
高校生の頃、バスケ部の遠征で根室まで来たとき、汽車の車窓から見たこのサルオガセの風景が心に強く焼き付き、私はそれ以来サルオガセ大好き人間になってしまったのだ。
再び別海町のAコープに寄って食材を仕入れ、尾岱沼では漁協の直売店で巨大ホタテを購入した。1ヶ200円と値段はちょっと高めだが、この大きさのホタテは他では手に入らない。
今日こそは豪快にホタテと牡蠣の炭焼きを味わうのだ。
夕食前に近くの温泉「浜の湯」に入りに行く。この「浜の湯」は、国道からも密集した家並みの中に看板だけが見えているが、その様子はまるで街中の普通の銭湯である。
ところが中に入ると、源泉が惜しげもなくかけ流しとなっていて、泉質の違う浴槽が二つあり、露天風呂も想像以上の広さで、ちょっと感激してしまう。
前回は野付湾が見渡せるシーサイドホテルの風呂に入ったが、こちらの「浜の湯」の方がお勧めである。
サイトに戻り一息ついて、「さあ、そろそろ夕食の準備でもするか!」と思った頃、再び風が強くなりはじめた。昨日と違って、今日は海側から風が吹いている。テントの入り口を海に向けているものだから、前室部分に入ってもその風から逃れることが出来ない。
再び今日もテントを締め切っての夕食になってしまった。
巨大ホタテは、しょうがないので刺身とバター焼きにして食べる。もしかしたら、炭焼きで食べるよりもこちらの方が美味しかったかもしれない。
ところでこの風は、昨日のように止んでくれるんだろうか。
日中は海より陸の方が暖まるので海風が吹き、夜は陸の方が冷えるので陸風が吹く。この方程式が5月のこの時期にも成り立つのか、はなはだ疑問である。どう考えても、昼も夜も陸の方が寒そうなのだ。
それでも今日も、7時頃には風が弱まってきた。
ホタテは食べてしまったが厚岸産の牡蠣はまだ残っている。昨日から準備していた炭に、ようやく火を付けることが出来た。
ところがこの牡蠣、いくら焼いても口を開けてくれない。
「死んでんじゃないのか、この牡蠣!」
とうとう我慢できなくなり、ハンマーで殻をたたき割ってみると、水分が無くなりかけてはいるものの、プリンプリンとした身が出てきた。
何とか食べれそうだけど、あきらめて捨ててしまった。
厚岸産の牡蠣はやっぱり厚岸で買った方が良さそうである。
札幌を出るときの週間予報では、明日だけが雨の予報になっていた。もしかしたら予報が変わっているかもしれないと、再び天気予報を確認してみたが、やっぱり明日は雨みたいだ。
天気が良ければ、次はどこかへ移動するつもりでいたけれど、しょうがないのでもう1晩ここに泊まることに決める。
2日目の夜も焚き火とワインで暮れていった。
次の朝はやっぱりテントをたたく雨の音で目が覚めた。
早起きしてもしょうがないのでテントの中でウダウダしていたら、雨も上がったようである。
テントから出てみると、雨は止んだもののどんよりとした霧に覆われて暗い風景が広がっていた。
こんな時こそ雨に濡れたミズバショウのしっとりとした写真が撮れそうだと、国道からの入り口近くにあったミズバショウの群落を見に行く。
網走湖のミズバショウのように観光地化されていないこんな場所の方が、ゆっくりとミズバショウの花を楽しむことが出来る。長靴を履いて林の中に入り、しばらくの間ミズバショウの花と戯れた。
どんよりと曇った空の下、知床ドライブへ出発。するとまもなく、それまで知床の山を隠していた暗い雲が次第に薄れはじめ、真っ白な雪に覆われた山並みが現れてきた。
遠くの海面すれすれに立ちこめた霧の上からは、国後島の姿も見えている。
やがて空は完全に晴れて、雄大な知床の山並みが見渡せるようになった。海も空も完璧な青色に染まり、そこに浮かぶ真っ白な山が息をのむような美しさである。
知床はやっぱり素晴らしい土地だ。
ただ、純の番屋だけはちょっと・・・。
ドラマ「北の国から2002 遺言」で純が住んでいた番屋を羅臼の市街地に再現したものだそうだが、その建っている場所がパッとしないのだ。
やっぱり純の番屋は、玉石の海岸にポツンと建っていた方が風情がある。それでも我が家でさえその前で記念撮影してくるくらいだから、観光には少しは役立つのだろう。
羅臼からウトロへ抜ける知床横断道路は冬の通行止めが続いていたので、羅臼側の道路の行き止まり、相泊まで行ってみることにした。
羅臼市街地から24kmを往復することになるので、時間の余裕が無ければなかなか行くことが出来ない。
羅臼までは何回か来ているが、相泊まりまで行くのは学生時代以来になる。途中の奇岩や滝を楽しみながら海岸のセセキ温泉までやってきた。
ここも「北の国から2002 遺言」の舞台になった場所だ。学生の頃、この温泉に浸かりながら、すぐ横の海底から採ったウニを食べたときの美味さは今でも忘れられない。
そのウニの美味さだけは鮮明に覚えているのに、温泉の様子は「あれ?当時もこんな感じだったかなー?」って感じで、はっきりとは思い出せなかった。
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