トップページ > キャンプ > キャンプ日記 > 2005年キャンプ日記

風に吹かれて尾岱沼キャンプその1

尾岱沼ふれあいキャンプ場(4月30日〜5月3日)

 今年のGWは7連休、そこで我が家としては初めてのこの時期の長期キャンプへ出かけることにした。
 目的地はとりあえず風蓮湖。風蓮湖は私にとって、道南の松前付近を除いて道内に残された数少ない未踏の地なのである。せいぜい道の駅スワン44からその一片を眺めた程度の経験しかない。
 そしてそこには春国岱という、とても魅力的な場所もある。日本一の野鳥の楽園と言われ、「北海道の森と湿原をあるく」によると、アカエゾマツの林床に広がる苔の絨毯やかつての野付半島のトドワラを思わせるようなアカエゾマツの立ち枯れた姿も見ることができるという。
 風蓮湖や周辺の川ではカヌーも楽しめそうだし、時間をかけてじっくりと探索する価値がありそうな場所である。
 しかし周辺に適当なキャンプ場がない。根室市キャンプ場は今年で閉鎖、もっともここは夏場にしかオープンしていなかったのでGWには泊まることができない。
 今年新たにオープンする築択キャンプ場もすぐ近くだが、オープンは7月からだと言う。キャンピングガイドにはテントを張っている写真が載っていたので、オープン前でも泊まらせてもらえないか問い合わせのメールを送ったが、返事が返ってこない。
 比較的近場では「別海町ふれあいキャンプ場」、浜中町の「MO-TTOかぜて」や「きりたっぷ岬キャンプ場」などがあるが、迷った末に「尾岱沼ふれあいキャンプ場」に決定した。
 ここに決めた理由は、もちろん私のお気に入りの場所ということもあるが、今時期ならばサイトのすぐ横でミズバショウが咲いているかもしれないということである。
 ミズバショウの花を眺めながらのキャンプなんて、それだけでも行く価値がありそうだ。
 天気予報も、2日が雨の予報になっているだけでまずまずの天気になりそうだ。しかし、気温が低い。
 道北方面に出かけることも考えていたが、週間予報での稚内の最高気温が5度、一方根室は7度、最終的にこれが目的地を決定する際の最大の理由になったのである。

土ぼこりに霞む十勝の野 なんと言っても札幌から根室は一番遠い土地なので、清水町の実家で1泊してから尾岱沼に向かうことにした。
 GW初日の札幌はパッとしない天気だったが、今日は実家に泊まるのでそんな天気もまるで気にならない。午前中にゆっくりと準備を整え午後から札幌を出発する。
 途中の日勝峠では、十勝側に入った途端に雪混じりの猛烈な風が吹き荒れはじめた。その風は翌日になっても止むことなく、畑起こしが始まったばかりの十勝の野は土ぼこりに霞んでいた。
 春先の日高山脈から吹き付けるこの強風を地元では日高おろしと呼んでいるが、この気象現象だけは好きになれない。これさえなければ、十勝は本当に住みやすい土地なのだが。
 阿寒湖を過ぎる付近から上空が雲に覆われ、また雪が舞い始めた。積もるほどの降り方でもないが、夏タイヤで走っているのであまり良い気持ちはしない。
 そんな生憎の空模様も弟子屈まで行けば解消されるはず。そう思いながら走り続けても、一向に天気は良くならない。
それどころかますます風が強くなってくる。山の上で雪が降るのは理解できるが、平地に下ってきても吹雪模様なのにはさすがに驚かされた。
 車の屋根に積んでいる我が家のカヌーアリーが、強風に煽られて今にも折れ曲がってしまいそうな感じだ。急流の中で岩に捉まって壊れるのならまだ良いが、風に煽られて壊れるなんてことだけは勘弁してもらいたい。
大草原展望台からの風景 虹別を過ぎる頃からようやく青空が広がりはじめた。それでも風の強い状況だけは変わらない。
 国道243号と272号の交差点付近にある大草原展望塔なるものに登ってみたが、あまりの風の強さに吹き飛ばされそうになり、這々の体で車に逃げ込んだ。
 それにしても我が家が走ってきた道路と立体交差している国道272号、一瞬「何時こんなところに高速道路ができたんだ?」と勘違いしてしまうくらいの立派な国道である。
 北海道内の高速道路整備には賛成している私だが、この付近だけには絶対に高速道路は必要ないと感じさせられてしまった。

 別海町のAコープで今日の食材を仕入れる。今回のキャンプでは食べ物は全て地元調達する予定だったので、ここで初めてクーラーボックスに中身が入ることになった。
 厚岸産の牡蠣も売られていたので、炭焼きの用の材料としておまけで購入。
 今日はまず、キャンプ地に入る前に春国岱を歩く予定である。
 その前に、地図上で見つけた新酪農展望台というところに寄り道する。ここでも風が強く、展望台の上から写真を撮るのが精一杯だ。
新酪農村 このあたりから広々とした牧草畑に巨大なサイロが点在する風景が見られるようになる。
 国の一大プロジェクトとして進められた新酪農村の建設、国に言われるまま素晴らしい未来を思い描き膨大な借金を背負って大規模酪農経営に挑んだ人達、その後の乳価の低迷、現在の状況について詳しくは知らないが、酪農家の息子として生まれた私としてはその風景に単純に感動することはどうしてもできない。
 国道を離れて立派な農道の中を走っていると、その巨大なサイロの横で朽ち果てている牛舎と民家を見かけた。そこに住んでいた一家のことを考えやると、とても切ない気持ちになってしまう。
 道の駅スワン44でやや遅い昼食にする。メニューは私の母親が持たせてくれたおにぎり、いつまで経っても子供は子供のままなのである。

 そしていよいよあこがれの春国岱へ到着。車を降りるとやっぱり風は強いままだ。
 駐車場からまっすぐに木道が伸びている。オホーツク海と風蓮湖に挟まれた部分の木道なので、もろに強風が吹き付けてくる。 帽子を飛ばされそうになりながらも、アカエゾマツの森に続く木橋までたどり着いた。この木橋だが、少し傾いていてちょっと危なっかしい。
 この先にあるもう一つの木橋は、現在壊れていて渡れなくなっているみたいだが、この橋もあと数年で壊れそうな感じだ。
 そしてその橋を渡るとアカエゾマツの枯れ木が横たわる、トドワラならぬアカエゾワラが広がっている。
 野付半島のトドワラを私が最初に見たのは30年近く前くらいになるが、その頃は今よりも沢山の数の立ち枯れたトドマツが残っていたと記憶している。現在のトドワラは風化が進み、昔の姿を知っている人間にとっては何とも物足りない風景に見えてしまう。
 今ならこちらの風景の方が、立ち枯れた木の姿だけをとってみるなら魅力的かもしれない。それでも、原生花園に包まれたトドワラの景色が劣っていると言うことではない。
 そしてアカエゾマツの砂丘林に踏み入ると、まさに苔の絨毯に覆われた幻想的な風景が広がっていた。
 私は京都の苔寺のような場所に憧れを感じ、妻の方もキャンプの時に採取した数種類の苔を水槽の中で育てたことが有ったりと、夫婦揃って地味に苔好きなものだからこのような光景に出会うと嬉しくなってしまう。
 林の中に入るとようやく風も弱まり、ゆっくりと散策を楽しむことができた。しかしそこを抜けるとまた強風にさらされる。
 遊歩道はさらに先まで伸び、展望塔やハマナスの間を抜ける道もあるようだが、この強風の下、まして花の時期でも無いので、今回はこれで引き返すことにした。
 駐車場からここの先端まで約8km、ハマナスの花が咲き風もなく穏やかな一日、のんびりと歩いてみたいコースである。


 
湿地帯を渡る木道   アカエゾマツ林の中の遊歩道
 
立ち枯れたアカエゾマツの風景   苔に覆われた林床

 後はキャンプ場へ向かうだけ。再び牧場だらけの風景を楽しみながら車を走らせていると、次第に風も弱くなってきたように感じられた。
 キャンプ場に到着すると、2組のテントが張られているだけだった。受付で犬を連れていることを申告すると、今年からペットの扱いが変わったとのことである。
 これまでもここは一応ペット禁止とされていたが、混雑期以外は大目に見てくれていた。しかし去年、一部のペット連れキャンパーが場内で犬を放し飼いにして、しかも芝生の中で犬がした糞をそのまま残していったとなどのケースがあり、内部で話し合った結果今年からは犬連れキャンパーがテントを張れる場所を制限したと言うのだ。
 その場所は駐車場の隣の林間部か一番奥のフリーサイト、ここのロケーションを期待して来たキャンパーにはちょっとがっかりするような場所である。
 さすがに今日は他にキャンパーもほとんどいないので、好きな場所にテントを張って良いですよと言ってもらえたが、何時までたっても繰り返されるこんな話し、いい加減うんざりである。

我が家のサイト どこにテントを張っても良いと言われても、ちょっと困ってしまった。
 静かな野付湾の風景が広がっているような時ならば速攻でベストポジションを確保するのだが、これだけ風が強いと吹きっさらしの場所にテントを張るのはためらってしまう。奥のフリーサイトにテントを張ろうとも思ったが、前回ここに泊まったときも風を避けてそこにテントを張っていたし、そこの入り口部分には既に別のキャンパーがテントを張っていたので、あまり気が進まない。
 そこも諦めてメインのサイトに戻ろうとした時、かみさんが「ここだって良い場所じゃない?」と言った。
 そこはメインのサイトと奥のフリーサイトの中間部分で浜辺には一番近い場所になる。海との間にはカラマツが生えているが、葉を落としているのでそれほど視界の妨げにもならない。何と言ってもここのキャンプ場の中では初めてテントを張る場所だ。
 私に何の異存も有るわけは無く、晴れて我が家のサイトが決定した。今回はここで2泊、もしかしたら3泊することにもなりかねないので、気に入った場所にサイトを確保できたことはとても嬉しいことなのである。
 風は海とは反対側から吹いているので、テントの入り口を野付湾に向けて、理想的な位置取りとなった。
 夜の焚き火に備えて薪を拾い集め、いつでも火を付けられるように炭焼き用の炭の準備も整える。
 しかし、一時は弱まっていた風が再び強く吹き始めた。温度計を見ると2度である。この気温で強風に吹き付けられたら、冬のキャンプよりも寒さが身に凍みてくる。
 とても炭火でゆったりと牡蠣を焼くような場面ではなく、夕食はテントのフライを締め切ってその中で食べることになってしまった。
寒いときの我が家の定番キムチ鍋、テントの外を吹く風は冷たいが、中はホカホカである。
 ご飯はおふくろが持たせてくれた山菜おこわ、おまけにビールにバナナ、仕舞いには大量の長いもまで持たせられて、有り難いやら迷惑やら。
 夕食の火が消えると急にテントの中も寒くなってきた。その寒さに耐えかねて、シュラフの中に潜り込んだ。
 こうなってしまうと、なかなかシュラフの中から抜け出せなくなってしまう。
 それでも次第にテントの揺れも小さくなってきた。
 「おっ!これなら焚き火も出来そうだぞ。」
 一時はテントを張ることさえ危ぶまれた強風の1日だったが、いつもどおりの焚き火も楽しみ、無事に道東キャンプ最初の日を終えることが出来た。

 翌朝は4時半に目を覚ました。雲が多いものの青空も見えている。風もすっかり静まっていた。
 炊事場の水は強烈に冷たい。顔を洗っていると手がしびれてきてしまう。
 朝日が顔を出すのを待っていたが、なかなか出てこない。今時期の日の出って何時頃だったろう?
 かみさんが、「ここは東の方だから札幌よりも日の出が遅いんじゃないの?」
 「それってまるで反対だろうが!」
 どうやら既に日は昇り、その上の雲の中に隠れてしまっていたようだ。
静かな野付湾にカヌーを浮かべてみた。
 海でカヌーに乗るのは初めての経験だったが、ほとんど波もなく、そこが海であることをまったく感じない。
野付湾でカヌーに乗る 少し沖に出ると、遠くに真っ白な知床の山並みが見えていた。
 「よし!明日は知床の方までドライブに出かけることにしよう。」
 サイトに戻って焚き火と朝のコーヒーを味わい、朝食後は隣接する森の中を散歩した。
 奥の方のサイト周辺ではミズバショウが可憐な花を咲かせている。そのミズバショウの群落が目の前に見渡せる場所にテントを張っても面白かったかもしれない。

その2へ 

キャンプの写真アルバムを見る


戻る   ページTOPへ