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白鳥をお出迎えクッチャロ湖キャンプ(前編)

クッチャロ湖キャンプ場(10月16日〜18日)

 しばらくカヌー中心の行動が続いていたので、久しぶりに落ち着いたキャンプへ出かけてみよう。
 そうなるとやっぱり、今時期ならばどこかで紅葉キャンプということになる。しかし、今年はどこも紅葉がパッとしないみたいで、なかなか適当な場所が思い浮かんでこない。
 2泊キャンプの予定なので、ちょっと遠くまで足を伸ばしてみたい。紅葉に関係なく、どこか面白そうな場所は無いか。
 そう考えたときに浮かんできたのがクッチャロ湖キャンプ場だった。
 クッチャロ湖と言えば白鳥が渡ってくる湖として知られているが、未だにここで白鳥にお目にかかったことが無いのである。
 インターネットで調べてみたら、そろそろ白鳥が飛来する時期を迎えているようだ。
 これでひとまず場所が決定。次は追加のオプションを考える。
 地図を眺めていたら松山湿原が目に入った。ここも以前から行ってみたい場所の一つだったが、なかなかこの付近を通りかかる機会が無くて、長い間憧れの場所となっていた土地だ。
 キャンプ地と途中の観光地が決まり、久しぶりの2泊キャンプに心も弾んできた。

 当日の天気は夜中に寒冷前線の通過に伴う雨が降ったものの、その後は次第に回復傾向になるみたいだ。
 気温が低くなると言う予報も出ているが、そんなことは全く気にならず、9時前には勇んで札幌を出発した。
 高速道路を一路北上、旭川付近の紅葉は1週間前にほぼ見頃になっていたのが、そろそろ終わりに近づいてきているような様子だ。
 先週はカヌーレース出場のため旭川に来たばかりなのに、何だかそれが遠い昔の出来事のように感じてしまう。まして、2週間前の洞爺湖キャンプとなると、思い出すのも難しいくらいの過去の話しだ。
 年を取ると時間の経過が早く感じると言うが、早く過ぎ去った時間をいざ振り返ってみると、やたら昔に感じてしまうというのは不思議な現象である。
 高速道路を終点一つ前の和寒インターで降りて、剣淵町のゴトウくんせい(ゴトウチキンズ)という店で薫製チキンを購入する。
 美味いのかどうかは解らないが、たまたまネット上で検索していて見つけた店だ。
 昼にはちょっと早いが名寄市で昼食にする。これもネット上で見つけた北緯44度という店、カレーが美味しいという話しだったが、カレーはどこで食べてもやっぱりカレーである。
 私の場合は味覚音痴なのかもしれないが、美味いカレー、不味いカレーと言うものを経験したことが無いのである。

 腹が一杯になった後はいよいよ最初の目的地「松山湿原」に向けて出発である。
 美深町から松山湿原に向かう道道49号は初めて走る道だ。道内の主要な道路は道南の一部を除いてほとんど走り尽くしているつもりだが、道北からオホーツクにかけての町と町を結ぶように張り巡らされている道道はなかなか走る機会がない。
 初めて走る道はそれだけで楽しくなってくる。
 この道路沿いには、利用した方にはとても評判の良いトロッコ王国がある。我が家の子供が小さい頃に、ここのトロッコに乗っておけば良かったと今でも後悔している。
激流の滝 道路地図を見ると「激流の滝」という名前が出ていた。
 ちょうど道路沿いに看板があったので、ちょっと寄り道することにした。
 紅葉した林道はなかなか良い雰囲気である。トンネルのように両側から覆いかぶさる紅葉の木々、秋の深まった時期にこんな場所を走るのは最高だ。
 やがて「激流の滝」の看板が立てられている場所に到着。
 その名前に何となく胡散臭さを覚えてはいたのだけれど、その場所を見て「あーあ、やっぱりなー」と言う気持ちになってしまった。そもそもそこは、滝が流れ落ちるような高低差のある場所では無いのだ。
 「まあ、見るだけは見ておこう」と川の方へ近づいてみた。
 「あれ?何、これ?」不思議な風景が目に飛び込んできた。
 大きな岩が川の両岸から迫り、その間にできたわずかな隙間を伝いながら川の水が流れ落ちている。
 こんな場所を見ると最初に考えることが、「ここをカヌーで下れるだろうか」というのは最近の悪い傾向である。
 もう少し水量があれば小さなカヤックならば何とかなるかもしれない。ただ狭いところでは岩に挟まってしまいそうだ。
 実際に私の入っているカヌークラブでは、こんな場所でカヤックが挟まれ、そこを支点にカヤックが水車のようにクルクルと回ったという人がいるそうである。
 思わぬ穴場の発見に嬉しくなって、次の松山湿原へと向かった。

 その途中にも「高広の滝」と言う滝がある。
 これは道路上から直接見ることができるのだが、間に川が流れているので近くまで行くことが出来ない。結構な落差がある滝だが、滝壺まで近づけない滝には大して興味が湧いてこない。。
 道道から分かれて松山湿原へと向かう道の途中でも、また滝の看板を発見した。道路地図にもこの滝の名前は載っていない。先ほどの滝に気をよくしていたので帰りに寄ってみることにする。
 駐車場に車を停めて急な山道を歩き始める。駐車場から湿原までの距離はそれほど遠くはないが、急な登りが続くので結構しんどい。四つ足のフウマが元気よく駆け上がっていくのが羨ましくなってくる。
 そうして湿原まで辿り着くと、茶色に冬枯れした湿原の風景が広がっていた。ワタスゲの花が風になびく夏の湿原も良いが、今回はこんな寒々とした様子を見たかったので期待通りである。

松山湿原、アカエゾマツ 松山湿原の木道で

 ただ、寒すぎた。
 気温は何度くらいだったのだろう。そこに強烈な北風が吹き付けて、完全に真冬の吹雪の寒さである。
 手袋などしていないので、手が直ぐにかじかんできた。
 一面の茶色い風景の中に、風雪を堪え忍んでねじくれたように育ったアカエゾマツが点在する様子はとても素晴らしいのだが、それをゆっくりと楽しむ余裕もない。
 急ぎ足で湿原の中に続く木道を一巡りする。この木道がやたらに幅が狭く、所々が朽ちていて穴が開いていたり傾いていたりするものだから、強風に煽られて湿原の中に転びそうになったりする。
 それでも、期待通りの素晴らしい湿原だった。
 駐車場の隣の天竜沼も、一周400mほどの小さな沼だが、なかなか良い雰囲気である。

 そこを後にして、来る途中に見つけた滝を見に行くことにする。
 林道を奥に進むと、やがて滝の姿が見えてきた。
 それが「雨霧の滝」である。極めてオーソドックスな滝だが、森町の鳥崎渓谷で見た上大滝を小さくしたような感じで、とても気に入ってしまった。
 去年の上大滝以来、滝巡りが趣味になってしまいそうである。
 そこから200mほど上流に遡ると「女神の滝」がある。
 正面から見た姿はそれほどパッとしない。しかし、その滝の上に登ってみてビックリした。
 規則正しい柱状節理の岩が真横に敷き詰められたような感じの場所を、水が流れ落ちてきているのである。自然が作り出した奇跡というのだろうか、初めて見るような奇怪な造形物にしばし見入ってしまった。
 そのうちに、「もしかしてこれって人工物じゃないの?」って話しになってきた。
 六角柱のコンクリートの柱を積み上げてダムを造り、それが長い年月で崩れてこの様な滝になってしまったのでは。それくらい規則正しく六角柱が並んでいるのだ。
 その真偽は解らないが、思わぬ発見に大満足してそこを後にした。

雨霧の滝 女神の滝

 滝巡り、湿原巡りに思いの外時間をとられてしまい、時間は既に3時を過ぎていた。
  ここからクッチャロ湖までは2時間くらいはかかりそうだ。
 それに、札幌を出てからと言うもの、ずーっと強い風が吹いている。しかもこの風向きでは、クッチャロ湖のキャンプ場は湖側から風が吹き付けることになり、風を遮るものが何もない。
 1泊めは、ここからも比較的近いコムケのキャンプ場へ行こうかという考えがチラッと頭をよぎった。
  でも、今回のキャンプでは同じ場所で2泊して、ゆったりとした時間を楽しもうと思っていたので、予定どおりそのままクッチャロ湖へ向かうことにする。
 午後4時前だというのに西の空にはビックリするほど大きくて真っ赤な太陽が浮かび、もう少しで山影に隠れようとしていた。
 「あーあ、こんなに素晴らしい夕日はクッチャロ湖のキャンプ場で楽しみたかったなー」とぼやきながら、ひたすら北に向かって車を飛ばした。 かろうじてまだ明るさの残る4時半にキャンプ場に到着、直ぐにテントの設営に取りかかる。風もいくらかは弱まっていたので、苦労しないでテントを張ることができた。
 荷物を運びながら、同時に夕食の準備も始める。キムチ鍋に回鍋肉、ご飯は急遽レトルトご飯で済ませることにする。
 我ながら感心するような手際の良さで、夕食の準備が整った。
 それにしても寒い。温度計を見ると3度まで下がっていた。それなのに、何時もどおりにビールで乾杯。冷えたビールが冷えた体に染み入ってくる。
 奇妙な鳴き声に空を見上げたら、ちょうど白鳥の群れが飛んできたところだった。暗い湖の奥からは、白鳥達の賑やかな鳴き声が聞こえてくる。
風に吹かれながらの焚き火 食事が終わると直ぐに焚き火に火を付けた。強い風に煽られ、あっと言う間に薪に火が回る。
 焚き火にかじりつくように体を温めた。
 また頭上から白鳥の鳴き声が聞こえてきたので空を見上げると、星が煌めく真っ黒な空の中を真っ白なシルエットの白鳥の群れが横切って行くところだった。
 その幻想的な美しさに思わず息をのんでしまった。
 こんな光景を見れただけで、はるばるとクッチャロ湖までやって来た甲斐があるというものである。
 剣淵町で仕入れた薫製チキンを肴にしてワインを飲む。なかなか美味しい薫製だ。寒さのためか酔いを感じないうちに1本のワインが空になってしまった。
 風が強いためか薪の消費量もいつもより多い感じだ。たっぷりと用意はしてあったが、この調子で燃やし続ければとても二日間は持ちそうにない。
 明日になれば海岸で流木を拾って来ようと言うことにして、遠慮無く薪を焚き火の中に放り込み続けた。
 それでも9時にはテントの中に潜り込む。秋のシーズンになって初めて使う羽毛のシュラフがとても暖かく感じる。相変わらず聞こえて来る白鳥の鳴き声を子守歌に眠りについた。

 昨夜は朝になれば風も止むだろうと考えていたが、目が覚めてもまだテントが風に揺らされる音が聞こえていた。
 時計は5時、この日はオホーツクの朝日を撮影しようと思っていたので、早めに起きることにする。
 かみさんはまだ眠そうで起き出そうとしない。フウマだけが喜んで、私と一緒にテントから飛び出した。
 風に吹かれ、寒さに震えながら顔を洗って、直ぐに車に乗って出発する。
クッチャロ湖の朝 キャンプ場からは背後の樹林地に遮られて、東の空の様子が解らないのだが、キャンプ場を出てみると海の方の空は雲に覆われていた。 とりあえずベニヤ原生花園まで行ってみるが、その雲に邪魔されてしばらく朝日の姿を拝めそうにない。
 海から昇る朝日は諦めて、朝日に輝くクッチャロ湖の写真を撮ってみようと、湖の反対側へ回ってみることにした。
 一箇所だけ道路から屈斜路湖を見通せる場所があったが、いまいち眺めがパッとしない。他にどこか良い場所が無いかと探しているうちに30km以上も走ってしまい、キャンプ場の近くまで戻ってきてしまった。
 そこでようやく雲間から朝の光が射し始める。その朝日の前を白鳥の群れがゆったりと横切っていった。
 「ああっ、絶好のシャッターチャンスだったのに。」
 慌てて車から飛び降りてカメラを構えるが、そうやって用意して待っている時はシャッターチャンスは全然訪れないのである。
 朝日の写真だけで諦めることにする。

 キャンプ場へ戻ってくると、かみさんが焚き火に火を付け、コーヒーを入れているところだった。
 テントの直ぐ前の湖上を、白鳥たちがゆっくりと飛び過ぎていった。
 「オオッ、凄いなー。」
 その様子にカメラを向けていると、かみさんが「私が起きてからはずーっとこんな感じで白鳥が飛んでくるのよ。」
 無理して朝日を撮しに行くよりも、ここでじっとしていた方が良い写真が撮れたかもしれない。
 でも、いざカメラを構えて待っていると、全然飛んできてくれなくなるのは同じことだった。
我が家のサイト 風もいくらかは弱まり、これでのんびりとした朝の時間を過ごすことができる。
 湖上からは、白鳥の賑やかな鳴き声が聞こえてくる。頭上には何匹もの鳶がゆったりと舞い、マガンやカモメの群れ、カラス達も賑やかで、やたらに大型の鳥類の多い場所だと感心してしまう。
 朝食後は近くの森の中の散策路を歩いてみた。
 小高い丘の上に続く気持ちの良い道だ。階段を下りるとその道は湖岸へと続いていた。
 葦に茂みに遮られたその先の湖面では、多くの白鳥たちが翼を休めている。静かに歩いていたつもりが、何かに驚いたように一斉に白鳥たちが大きな水音を立てて飛び立った。
 洞爺湖に住み着いている、やたらに人慣れした白鳥とは大違いである。
 サイトに戻ってくつろいでいると、管理人らしき男性がやってきた。昨日は到着が遅かったので、まだ料金を払っていなかったのだ。
 料金の話しは別にして、管理人さんによると白鳥が飛来する時期は犬を禁止しているということであった。
 絶対に放さないようにと厳しく注意を受けてしまった。数日前にもキャンパーが連れてきた犬が白鳥に吠えかかり、驚いた白鳥はしばらくそこに寄りつかなくなってしまったというのだ。
 たまたまその時のフウマはテントの後ろで大人しくしていたから良いけれど、昨日の夜から好き勝手にテントの周りを歩かせていたものだから焦ってしまう。
 フウマが鳥に興味が無いのは解っていたけれど、決まりは決まりである。
 それ以降は、ちょっと吠えただけで厳しく叱られようになってしまったフウマは何だか不満そうである。
 人間の方も何となく居心地が悪くなってきたので、昼間は周辺のドライブで時間をつぶすことにする。

 − 後編へ続く −

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