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大雨洪水警報兜沼キャンプ

兜沼公園キャンプ場(7月6日〜7日)

 子供の夏休みに合わせたキャンプ旅行、楽しい夏の思いで、それが通常のファミリーキャンプの正しい姿である。
 ところが、最近の夏のキャンプ旅行を振り返ってみても、今ひとつ楽しい思い出というものがよみがえってこない。
 子供が大きくなったことも理由の一つではあるが、考えてみると、一番楽しかった頃のキャンプ旅行は全て夏休み前に出かけたものばかりである。
 小学校入学前ならば夏休みなんて関係なし、いつでも好きなときにキャンプへ出かけられるし、小学校に入ってからも1週間くらい学校を休ませてキャンプへ行ったこともあった。
 暑くて、虫が多くて、しかも一番混雑している夏休みの時期って、北海道のアウトドアシーズンの中では、一番キャンプに不向きな時期なのかもしれない。

 そう考えた今年は夏のキャンプ旅行は無し、その代わりに、道北の原生花園が見頃になる7月の上旬にキャンプへ行くことにした。
 そうは言っても、最近は妻も仕事を始めたため、簡単に休みを合わせることも出来ない。
 1ヶ月前から、「7月の第1金曜日は絶対に休みが取れるようにすること」、と妻に命じて、やっと確保できた金土日の3連休である。
 ちょっと前までは、「1泊2日のキャンプなんて本当のキャンプではない、2泊以上して初めて心のゆとりが持てるキャンプが出来るのだ」、なんて偉そうなことを言っていたが、最近の我が家のキャンプと言えば、午後から出かけて到着したらすぐに夕食、たき火を楽しんで早めの就寝、朝飯食ったらすぐに帰宅、帰ってきたらまだ昼前といった、何とも情けないキャンプしか出来なくなっているのだ。

 そのような状況だから、出発1週間前からもうワクワク気分、週間予報でも天気はまずまずである。
 ところが、次第にその予報も怪しくなってきた。北海道に近づく低気圧の動きが遅く、とうとう出発前日の予報では雨のち曇りに変わってしまった。
 それでも土日はまずまずの天気、これならば気持ちの良いキャンプが楽しめそうだ。長距離運転になるので、早めに眠りにつくことにする。
 夜中に目を覚ますと雨音が聞こえてきた。こんなに早く降り出す予報では無かったのに・・・。

 朝起きると、幸いその雨もあがっていた。ところがテレビの天気予報を見てビックリ、道北の宗谷地方にはなんと大雨洪水警報が発令されているではないか。
 ちょっとだけがっかりしてしまったが、そんな天気もキャンプのあや、ひと味違ったキャンプを楽しめるかもしれない。
 薄曇りの札幌を後にして日本海川の道路を一路北へと車を走らせた。
 目の前にはどんよりとした曇り空が待ち受けている。案の定、すぐに霧雨が降り出してきた。
 快適なオロロンラインのドライブのはずが、どこまで行っても鉛色の空に鉛色の海、一向に気分は盛り上がってこない。
 留萌を過ぎたあたりから雨あしもいよいよ本格的なものになってきた。道路のわだちに出来た水たまりにハンドルを取られるので、運転も慎重になってしまう。
 小平町の「ゆったりかん」で昼食をとる頃には、ほとんど土砂降り状態である。

 「やまない雨はない」、こんな時の高橋家のキャンプの格言であるが、それもむなしく聞こえるくらいに雨は一向にやむ気配がない。
 こんな状況でキャンプ場に着いても何もすることがないので、途中のキャンプ場をのぞいてみたり道の駅に立ち寄ったりと、暇つぶしをしながら北上を続けた。
 天塩川を過ぎたあたりから道路沿いには野生の花達が咲き乱れ、海の向こうには利尻だけの姿が・・・
 望めるわけもなく、沿線の花も咲いてはいるが、ゆっくりと写真を写せるような状況ではない。
 一度、車から降りてみたが、冷たい北風に吹き飛ばされそうになり、あわてて車の中に逃げ込んだ。車の温度計を見ると10度である。
 「今は7月だぞー、ここは本当に日本なのか!」、思わず愚痴がこぼれてしまう。

 実はこの段階までは、泊まるキャンプ場のことは全く考えていなかったのだ。
 出発するときに、妻から「ところでどこに泊まるの?」と聞かれ、「うーん、良くわかんない。」
 走りながら考えようと思っていたのだが、この風と雨、一番近い兜沼公園キャンプ場へ向かうしか選択肢は無いようである。
 一瞬弱まりかけた雨も、兜沼に近づくに従って、今度は濃い霧に変わってきた。
 風と霧、この組み合わせも最悪だと言うことは去年の霧多布岬で経験している。
 最初は兜沼のオートキャンプ場の方にしようかとも考えたが、ここは周りに遮るものがあまりないので、風当たりが強うそうだ。
 受付前に下見をさせてもらったが、防風ネットが張り巡らされていて、それほど風は強くない。でもやっぱり、兜沼でキャンプをするならば林間のサイトを選びたい、通路のすぐ近くにテントを張れば何とかなるだろう、そう考えて公園キャンプ場の方を利用することにした。
 受付のお姉さんが気の毒がって、「バンガローの方も空いてますよ。」と声をかけてくれたが、「いや、犬を連れているのでテントを張ります。」と答えた。
 ところが、その後返ってきたお姉さんの言葉を聞いて、一瞬、自分の耳を疑ってしまったのである。
 「今日ならば、特別にバンガローの中に犬を入れても良いですよ。」
 今時、犬を連れているだけで白い目で見られるご時世に、なんて暖かい対応なんだろう。
 その言葉だけで十分ありがたかった。「いや、がんばってテント張ることにします。」

 樹木に囲まれた場内は、思っていたよりも風が遮られていた。
 それに5年ぶりに訪れた兜沼公園は、芝生がきれいに整備され、雨に濡れたその芝生の青さで、見違えるような雰囲気である。
 他のテントはライダーらしき1人用テントが一張りだけ、場内の一等地にテントを張ることにした。
 雨具を着込んで、まずはタープの設営、次はその中にテントを張る、テキパキと二人で作業を行い、すぐに雨風をしのぐ住処が完成した。これでもう、竜巻さえこなければ、一晩、安心して眠ることが出来る。
 負け惜しみではないが、こんな時のテントの設営は本当に楽しいのだ。

 しばらくして、ようやく雨もやんできた。
 それでも、時折風が吹くと、サツキとメイがバス停でバスを待っていてトトロがジャンプしたときのように、頭上の大木からいっせいに雨粒が落ちてきて、タープにぶつかり大きな音をたてる。
 木々の間をツバメが飛び交い、途中の大雨が嘘のような、のどかなキャンプ場の風景である。
 園内のやすらぎの湯で体を温め、出てきたときには雲の切れ間から夕日の姿さえ眺めることが出来た。
 満ち足りた気分であるが、一つだけ納得できないことがあった。
 それは、あこがれのオロロンラインドライブが、雨のため全く楽しめなかった事である。
 このまま次のキャンプ場へ移動するのは悔しすぎる。明日の朝、早起きして、もう一度オロロンラインを走ってやるぞ、そう決意して早めに眠ることにした。

 翌朝、目を覚まして恐る恐るテントの外をのぞいてみたら、すばらしい青空が目に飛び込んできた。
 早速、車に乗って昨日来た道を引き返す。ラジオのスイッチを入れると、なんだか朝から賑やかな番組が放送されている。
 なんだこれはと思ったら、その番組はなんと「オールナイトニッポン」だったのである。
 それもそのはず、まだ朝の5時前だ。
 生憎、利尻富士は山頂が雲に隠れたままで、エゾカンゾウやエゾスカシユリの花も雨に打たれてかなり痛んでしまっていた。
 それでも朝日に照らされたオロロンラインの風景は最高である。
 北海道の道路の中で、僕はここ稚咲内付近の風景が一番好きだ。走りながら、目的地に着かないでこのままの景色の中をずーっと走り続けたい、なんて感じてしまう。
 30kmばかり、そんな風景を楽しみながら車を走らせた。
 数キロ先の対向車の姿が地平線上に浮かび上がり、それが次第に近づいてくる様子なんて、ここでしか味わえないだろう。

 朝のドライブを楽しんだ後、キャンプ場へ戻り朝食を済ませる。
 最悪の天候のスタートだったが、今日明日と天気は良いはずだ。
  次の目的地も決まらないまま、兜沼公園キャンプ場を後にした。

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