私が入っているカヌークラブの初例会は、千歳川が恒例となっている。
4月の11日と言えば、まだ水も冷たい。我が家のカヌーウェアはセパレートタイプのセミドライスーツである。沈したりすると、どうしても上下の合わせ目から水が入ってきてしまう。
最近は、千歳川の岸から張り出したいやらしい倒木も、余裕を持って避けれるようになってきたので、この程度のドライスーツでも問題は無いだろう。
風はまだ冷たいが、春の日射しが優しく千歳川の水面を照らしている。
今回の例会から、新たに数名のメンバーが加わった。私が2年前にこのクラブに入会した時と比べると、皆、装備もしっかりとしているし、カヌーの技術もある程度は身に付けているようである。
自分たちが入会した時のことを思い出すと、本当に恥ずかしくなってしまう。
カナディアンを一人で漕ぐ男性がちょっと危なっかしそうな感じだが、ベテランメンバーがサポートしてくれるので心配ないだろう。
スタート地点は、第一烏柵舞橋下流のいつもの場所。その付近は結構流れも強くて、まだ経験が浅かった頃は、下流に流されそうになりながら岸辺の草に必死になってつかまって、皆がスタートするのを待っていたものである。
今では、流れの中央部まで漕ぎ出して、ゆっくりと上流に向かってパドリングしながら皆の準備が整うのを待つくらいの余裕ができた。
別にこれはカヌーが上達したからではなくて、最初の頃はカヌーは上流に向かっても漕げると言うことに気が付いていなかっただけの話しなのだ。
半数ぐらいの艇が出発したので、我が家もカヌーを下流に向けて千歳川の流れに乗った。
久しぶりのカヌーだったが、直ぐにパドリングの感覚を思い出した。千歳川程度の流れならば、自由にカヌーを操って自分の好きな場所にカヌーを進め、そして止めることができる。
ひたすら流れにまかせて前に進むことしかできなかった頃と比べると、周りの風景もゆっくりと楽しむことができるようになった。
やがて烏柵舞橋上流の、「まなぶ」とか「溜まり」とかの通称で呼ばれる部分にたどり着いた。
ここは、何時下っても、常にロールやスラロームの練習をしているパドラーに出会う場所だ。
それまで退屈そうに下っていたカヤックのベテランメンバーも、急に生き生きして流れの中でグルグルと回り始める。
我が家もストリームインやストリームアウトの練習をするが、なかなか頭の中に描いているようなルートで曲がれない。
ちっとも上達なんかしていないみたいだ。まだまだ練習が足りないようである。
しばらくそこで時間を過ごして次のポイント魚道へ向かう。
いつものことながら、魚道の真ん中へカヌーを進める時は少しだけ緊張してしまう。
上手く入れば、後は快適な滑り台だ。
水量が少ない時は、迫力の無いお子様向けの滑り台と言った感じだが、今回は途中に適度な波も立っていて、気持ちの良い水しぶきが顔にかかった。
この魚道は改修工事が行われるという話しだったが、この時はまだ何も手が付けられていなかった。
できれば、ちょっとしたスリルを味わえる場所として残しておいて欲しいところだ。
そしていよいよ蛇篭の落ち込みへと近づいてきた。
去年の例会の時は、情けなくポーテージしてしまったので、今年こそは絶対にチャレンジするつもりでいた。
下見無しにそのまま下ろうと思っていたが、かみさんが絶対に嫌だと騒ぐので、しかたなく一度上陸することにする。
ベテランメンバーが次々と気持ちよさそうにそこを下り降りる。
嫌がるかみさんの尻を押して、無理やり我が家のカヌーに再び乗り込ませた。去年は、別のメンバーとここを無事に下っていると言うのに、本当に往生際の悪いやつである。
落ち込みの手前は、かなり緩やかな流れになっている。
そこをゆっくりと進み、直前でパドリングに力を込める。
そのまま引き込まれるように、カヌーは激しい流れの中に入っていった。
別に難しいテクニックが必要な訳でもなく、バランスさえ失わなければ特に問題のない場所である。
水しぶきを受けて落ち込みを抜けると、後ろから皆の歓声が聞こえた。
ここでは、落ち込みの後には、直ぐ正面に隠れ岩が待ち受けているので注意しなければならない。
そのことは十分承知しているので、直ぐにカヌーを左岸に寄せる。
流れの中でカヌーが横向きになった瞬間、ガツンという衝撃と共に突然水の中に投げ出されてしまった。
前を良く見ていなかったので、その先にあった岩にもろにぶつかってしまったのである。
浅い場所なので、直ぐにカヌーを捕まえてそのまま岸に歩くが、かみさんがパドルを放してしまったので、別のメンバーが直ぐに拾いに行ってくれた。
ちょっとお粗末な沈である。
我が家を皮切りに次々とビギナーメンバーがそこを下ったが、何のことはない、沈したのは結局我が家だけであった。
そうして高速道路の手前で上陸。
そんなに激しい沈では無かったのに、セミドライスーツの中には水が入ってしまい、パンツまでぐしょ濡れである。
それほど冷たくは感じないが、やっぱり本格的なドライスーツが欲しくなってしまった。
沈してもやっぱり楽しい川下り |