キャンプの予定のないゴールデンウィーク、少しはアクティブに過ごしたいので、1日だけカヌーに出かけることにした。
ブラーッと出かけて日帰りで楽しめる川と言ったら、千歳川か美々川くらいしかない。
千歳川に行くとしたら、今回はパドリングの練習ということになってしまいそうなので、春の日射しを浴びて居眠りしながら下れそうな美々川へ行くことにした。
下る区間も、上流部の美々橋から松美々橋までにする。これならば、自転車での回送も楽である。
アクティブに過ごすと言いながら、かなり気の抜けた川下りになりそうだ。
天気は快晴、ただ少し風が強い。でも、上流部ならばそれほど風の強さは影響しないはずである。
松美々橋から下流は、風の強い日には下る気がしない。4年前のGWには、強風の中、美々橋からウトナイ湖まで下って、酷い目にあったことがあるのだ。
考えてみれば3年前のGWにも美々川を下っている。私の場合、この時期になると、春の小川に舟を浮かべたくなる傾向にあるみたいだ。
美々橋にカヌーを降ろし、車を松美々橋に回して、そこから自転車で美々橋まで戻る。
颯爽と自転車にまたがり、ペダルを踏む足に力を入れると、何だか変な感触がしたから伝わってきた。
あれっと思ってタイヤを見ると、そのタイヤは完全に潰れていた。
冬の間、部屋の中に入れて大事に保管していた自転車を、そのまま車に積み込んで持ってきたのだが、まさかタイヤの空気が抜けているとは思わなかった。
パンクしているわけではないので、そのまま何とか乗ることにする。空気さえ入っていれば快適に走れる道なのに、ヨタヨタしながら美々橋までたどり着いた。
「あーあ、大変だった。」と言うと、かみさんも「こっちも大変。」
カヌーの上でコーヒーでも沸かそうとガスストーブを持ってきたのに、肝心のガスカートリッジを忘れてきたというのだ。
まあ、良くある話しではある。
気を取り直してカヌーに乗り込み、まずは上流に向かって漕ぎ始める。
かみさんが「エッ!上流に行くの!狭くて通れないんじゃないの」と言うが、「大丈夫、大丈夫」と気にせずに漕ぎ進んだ。
しかし、直ぐに流れは生い茂ったスゲ等に遮られてしまった。
かみさんは、橋の上から上流部の様子を確認していたみたいだが、私の頭の中には数年前の同じ時期に、上流へ遡って美々川源流を見に行った時の川の様子しか残っていなかったのだ。
川は消えていたが、水の上に根を張ったスゲの上を無理やり乗り越えて進む。
そこを乗り越えると、また水面が広がった。ホッとするのもつかの間、直ぐにまた川が無くなっている。
こんな事の繰り返しだ。酷いところでは、何処に川があるのか全く解らないような状況である。
のんびりと美々川ででパドリングを楽しむはずが、必死になって周りの草をパドルで押しながら進むという、何とも情けないことになってしまった。
そのうちに水面が大きく開けている場所に出るだろうという願いも空しく、何処まで行っても水草との戦いが続く。
とうとう、途中で音を上げて、引き返すことにする。
来る時に道を付けたので、帰りは楽だろうと考えたが、やっぱり同じ状況だった。
やっとの思いでスタート地点まで戻ってくることができた。
これからは普通の川下りができるだろうと思ったら、今度は向かい風が強くなってきた。
それでもこの区間ならば、大して風も影響なく下れるはずである。
美々橋の直ぐ下流にある排水溝からは、赤茶けた汚水が相変わらず流れ込んでいる。その直ぐ近くまでゴミの埋め立て処分場が広がってきていた。
当然、汚水が地下に染みこまないような対策は取られているのだろうが、排水溝から流れ込む汚れた水を見ると、ちょっと不安になってきてしまう。
そこから先は、川縁の水草の根にヘドロのようなものがびっしりとくっついている。一応、川の水は澄んでいるが、とても清流というイメージにはほど遠い。
この辺もやっぱり、ヨシやスゲ類が勢いを増して、以前よりもかなり川幅が狭くなってきている。美々橋上流と同じく、ここでも所々川が塞がっている場所がある。
もっと下流部でも、夏は水中の水草が繁茂して、カヌーで下るのは難しい状況になってきている。
このままでは、数年後には、美々川はカヌーフィールドとしての地位を失ってしまうことになるだろう。
川を下りながら、とても空しい気持ちに包まれてしまった。
しばらく下ると、ようやく川幅も広がってきたが、今度は向かい風の影響をもろに受けてしまう。
ゴールデンウィークののんびりとした川下りのはずが、全く予定が狂ってしまった。
ふと空を見上げると、空は薄曇りになり、太陽には見事なかさがかかっていた。
天気予報通り、明日からは天気も崩れてくるのだろう。
岸辺の谷地坊主やミズバショウが、沈んだ心を慰めてくれる。
そうしてようやく、松美々橋に到着、ちょうどインフレータブルカヌーのファミリーがそこから出発するところだった。
この向かい風では、彼らも苦労することになるだろう。
果たして我が家は、もう一度美々川を下る機会はあるのだろうか。
(2004.5.2)
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