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早春の美々川

(美々橋〜ウトナイ湖)

 ゴールデンウィークの最後は、キャンプに行くかカヌーを楽しむかで迷った末に、6日は天気が良さそうなので美々川でのんびりとカヌーに乗り、連休最後の7日は翌日からの仕事に備えてゆっくりと体を休めるという、模範的な勤め人の休日過ごし方コースを選択することにした。
 ところが、これが過酷な川下りになるとは思いもよらなかったのである。

 天気予報によると、連休の中では6日が一番天気が良く気温も暖かい、なんて話だったのだが、美々川へ向かう途中、空はどんよりとした雲に覆われ、冷たい風が吹きすさんでいた。
 それでも、気持ちはまだうららかな行楽気分、現地に着くと青空も少し顔をのぞかせ、南よりの強い風も、車の回収に自転車を走らせるには追い風でちょうど良いな、なんてあくまでも楽観的に考えていたのである。
 下る区間も、追い風の影響で自転車も楽に乗れることだし、今回は美々橋からウトナイ湖までのフルコースで行ってみよう、ということに決めてしまった。
 おまけに、いつもはゴール地点に車を回しておくのだが、今回自転車をゴール地点においておくことにしてしまった。 そうしたらその間一人で待っている妻も、ウトナイ湖を眺めながら退屈しないで過ごせるだろう、と考えたのである。

 スタートしてしばらくのクネクネ蛇行区間は、いつも通り快適で楽しく、カモと追いかけっこをしながら下っていった。
 この時期、いつも以上に美々川の水は澄んでおり、川岸には水芭蕉の群落が広がっている。
 去年の秋に下った時には、異常に繁茂して苦労させられた水草も、どこに行ってしまったのか、きれいさっぱりなくなってしまっていた。
 ここら辺までは、とても楽しい川下りだったのだが、中流域にさしかかると様相は一変してきた。
 最初は軽く考えていた南風が予想以上のものだったのである。
 前日はこどもの日だったが、鯉のぼりがしっぽの先までピンと伸ばして元気に泳げるくらいの風の強さである。
 風が斜めから吹いてくるときは、立ち枯れたヨシの陰で身を潜めるようにカヌーをこぐのだが、真正面から風が吹き付ける区間ではどうしようもない。
 パドルを止めるとカヌーはどんどん後ろへと流されてしまい、通常のパドリングではその場から前へ進まない、前進するためには全力でパドリングしないとだめなのである。
 おまけにとても美々川を下っているとは思えないような波が押し寄せてくる。
 次第に口数も減り、ただひたすらパドリングを繰り返していると、ようやく第二美々橋が見えてきた。

 ここでは白鳥の夫婦が出迎えてくれた。
 子育て時期には気が荒くなっているので要注意、という話を聞いたことがあるが、今回は妻がパンくずを投げ与えるとカヌーのすぐそばまで近づいてきて、やたらカヌー慣れした感じである。
 この白鳥夫婦に力付けられ、再びゴールへ向けて漕ぎ進んだ。
 植苗橋から先は、木の陰に入り風が遮られるので、後は何とかこの橋までたどり着くだけである。
 ところがこの区間もまた、もろに真正面から風が吹いてくるところなのである。
 腕の筋肉が次第に硬直してくるのが感じられ、のんびりとカヌーを漕いで、翌日はのんびりと体を休めるという当初のもくろみが脆くも崩れ去り、一日中筋肉痛に悩まされる自分の姿が頭に浮かんできた。

 それでも何とか植苗橋までたどり着き、風の遮られる場所にカヌーを浮かべ、やっと昼食をとることが出来た。
 ここから先はショートカット区間を進むことになるが、去年の秋に見たときは水草に埋め尽くされていた旧河川も、この時期にはきれいに開けていて、そちらを下ることも出来そうだった。
 ショートカット区間は適当に流れもあり、風も遮られているので、何もしなくてもカヌーは流されていく。
 流れのある川のありがたさが、ここにきてやっと解るのである。
 疲れ切った体でゴール地点にたどり着き、ここからまた10kmの道のりを車を回収しに自転車に乗らなくてはならない。
 でも、この部分だけは当初の計画通り、強い追い風を受けて快調に自転車を飛ばすことが出来た。

 その日の夜は家族で近くの居酒屋へ、ほろ酔い気分で店を出た後、向かいのゲームセンターへ入った。
 そこで初めて息子とダンスダンスレボリューションなるもので対決してみたが、昼間のカヌーでヘロヘロになっていた割りには、華麗なステップで息子に勝ってしまったのだ。
 フフフッ、昔取った杵柄だぜ、なんて言いながらもう1回プレーしてしまい、ほとんど足腰ガタガタになってしまった。
 これじゃあ月曜日になっても体の痛みは消えそうにないや、トホホ・・・。


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