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初秋の美々川

(松美々橋〜ウトナイ湖)

 千歳川で自分のパドリングのお粗末さを痛感してからというもの、テクニックの向上に目覚め、本棚の隅でほこりを被っていた技術書を読み直し、湖で練習を重ね、後は実践で試してみるばかりの状態となった。
 ちょうど前日の土曜日、FODS(NIFTYのカヌー関係のフォーラム)のメンバーで千歳川の川下りの予定が有ったのだが、都合がつかずに参加することができなかった。
 ファミリー単独で千歳川にチャレンジするほどの自信もないので、取りあえず美々川で試してみることにする。
 初心者でも安全に下れる美々川だが、上流部は蛇行が激しく、これまではカーブの度に外側の土手にぶつかってしまうような状態で下っていた。
 ここでカヌーを巧くコントロールできないようでは、とても千歳川をスイスイとは下れないのだ。
 これまでは2回とも同じ区間を下っていたので、今回は松美々橋〜ウトナイ湖までを下ることにした。
 美々川のウトナイ湖流入部までは細い未舗装の道を入っていくことになる。
 この道は車1台がやっと通れるくらいの細さで、両側から張り出した笹や木の枝がバシバシと車に当たってくる。「一応去年買ったばかりの新車なんだけどなー」と、ぼやきながらそろそろと車を進めた。
 流入部付近はヒメジオンやリンドウの花があちらこちらに咲いており、なかなかいい雰囲気の場所だ。
 上陸地点を確認後、車を松美々橋のスタート地点に回し、そこでカヌーを降ろし、再び私一人でここへ戻ってくる。そこに車を止めて後は再び自転車でスタート地点まで舞い戻るのだ。
 道のりは約8km、そこを一生懸命自転車を走らせ、すぐにカヌーに乗り込みまたスタートするという、なんだかトライアスロンの選手になったような気分がしてくる。

 息子には部活の予定が入っていたのだが、今回は必死になって拝み倒して連れて来ることにした。
 最近、少し体力に自信が無くなってきたので、途中でかみさんと息子の2人にカヌーを漕がし、自分は真ん中でのんびりしようと密かに考えていたのである。
 スタートでは息子が前を漕ぐことにする。
 早速、これまでの練習の成果を試してみたが、なかなか思うようにいかない。カナディアンでは前後の漕ぎ手の息が合わないと、細かなコントロールはできないのだ。
 よくよく考えてみたら、これまでは息子に対して特別なテクニック等は教えたことが無かったのである。
 それでも何とか最初の蛇行区間は、前回よりもいくらかはましに下ることができた。
 途中、川幅が広がるあたりから、水草で川面が覆われるようになってきた。カヌーの進行を妨げられるほどではないが、それでも何もないのと比較すると、かなり抵抗が大きくなる。
 今年の夏の暑さのせいだろうか。去年の秋に下ったときはこんなにひどくは無かった。
 おまけに美々川特有の向かい風まで吹いてくるものだから、かなり体力を消耗してしまう。
 第二美々橋へ到着したところで漕ぎ手を交代することにした。息子は後ろ、妻が前を漕いで私は真ん中でのんびりさせてもらうことにする。
 ところがこの2人の息が全然合わないのだ。スタート直後からカヌーは右へ、左へと方向がまったく定まらない。
 のんびりするはずだったのに、しばらくは2人へのパドリングの指導に苦労させられる。特に妻にはこれからの川下りのパートナーとして、しっかりとした技術を身につけてもらわないと困るのだ。
 ドタバタしながらも何とか植苗橋までたどり着いた。
 そこを過ぎたあたりで昼食タイムを取ることにする。例によってカヌーに乗ったままの昼食である。
 川にカヌーを浮かべたまま食事ができるなんて、美々川くらいしか考えられない。

 そこで再び漕ぎ手の交代である。後ろを漕ぐ面白さに息子が目覚めてきたみたいなので、私が初めて前に乗ってみることにした。これまで妻のパドリングにさんざん文句を付けてきたので、少しはお手本を示さなければならないのだ。
 植苗橋から下流は今回初めて下るのだが、こんなに素晴らしい場所だったのかと改めて驚かされた。水の流れも適度にあり、両岸を過半林に覆われ、それまでの美々川とはまったく違う様相を示している。
 美々川を下るのならばこの区間が一番お薦めの場所だと思う。
 ただ、川幅が非常に狭く、両岸から張り出した枝が水面を覆っていたりして、全くの初心者にはちょっと厳しいかも知れない。
 それでも川は全くの直線なので、ゆっくりと進めば特に危険でもなく、仮に枝に引っかかってしまっても、慌てさえしなければ、沈することも無いだろう。

 ここで解ったのだが、カナディアンの前を漕ぐのもなかなか楽しいものなのである。
 後ろを漕いでいて舵を取ると、どうしてもカヌーの反応がワンテンポ遅くなってしまうのだが、前の漕ぎ手が舵をとる場合は思った方向にカヌーを向けることができる気がする。
 おかげで、枝と枝とのわずかな隙間を的確に通り抜けることが出来るのである。
 途中、子育て中の白鳥の親子に出会ったが、川幅が狭いものだから、手を伸ばせば届きそうな近さで通り過ぎなければならない。
 親鳥を刺激しないように恐る恐る通過したが、横目で睨み付ける白鳥の目つきがやたら迫力があった。
 そんな快適な区間を漕ぎ抜けると、突然視界が広がり、ウトナイ湖へと到着した。
 ウトナイ湖はカヌー乗り入れ禁止なので、そこから先へは進めないが、頭上を舞うツバメの姿や、沖の方で一斉に飛び立つ水鳥を見ていると独特な感慨に浸ることが出来る。
 川下りをしていて海にでたときも、こんな気持ちになるんだろうな。
 一度そんな川下りをしてみたいものだ。 


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