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支湧別川(2023/06/17)

充実感に満ちたダウンリバー

清水町の家を午前6時前に出発。
目的地は支湧別川。
札幌の家から向かうより距離は短いけれど、高速道路を使えないので清水から向かう方が時間がかかる。
久しぶりに通る三国峠の絶景を楽しみ、交通量の少ない道路を軽快に車を走らせる。

三国峠
道内の峠の風景の中でここが一番好きかもしれない


ただ、何となく気分は重たかった。
清水を出る頃は素晴らしい青空が広がっていたのが、北上するに従って暗い雲が上空を覆い始めていたこともあるけれど、気分を重たくする主な理由は支湧別川を下ることに対する不安感である。
支湧別川を下るのは今回が7回目だけれど、最後に下ったのは7年も前の話で、その時は2回も沈していた。
それ以外で沈したことは無いものの、毎回苦労しながら下っている川なのだ。

集合場所に到着してもその気分は変らず、気持を落ち着かせようとO橋さんからタバコを1本分けてもらって吸ってみた。
久しぶりに吸うタバコはきつ過ぎて、気持ちを落ち着かせる役には立ってくれなかったようだ。

支湧別川のダウンリバー
スタート地点の河原


参加者は25名。
支湧別川は、場所によっては大型カナディアンがかろうじて通過できるような幅しかない小さな川である。
そこを25名の大人数で下るのだから川の上は大混雑必死。
過去の川下りでも、後ろの方から下っていくとエディが先客で殆ど埋まっていて、否応無しに先頭に出てしまい、危うく倒木ストレーナーの餌食になりそうなこともあった。

支湧別川のダウンリバー
以前はこの橋の上流側から出艇していた


新生橋の下流右岸から出艇。
川原ではルピナスの花が満開である。
ここからスタートするのは初めてかなと思ったが、何となく見覚えのある風景。
後で調べてみると以前は橋の上流左岸から出艇していたようだ。

支湧別川のダウンリバー
ルピナスが満開!


大人数によるエディ不足対策として、今回はなるべく前の方のポジションで下ることにしていた。
おかげで、下り始めて直ぐに現れた川を殆ど塞いでいる倒木も、余裕をもってその手前で上陸。

支湧別川は流木等の障害物が多い川だけれど、今回も少し前にここを下っていたACC(旭川カヌークラブ)の方からログ(流木等のこと)が3箇所入っているとの情報を得ていた。
最初のログは下り始めて直ぐの場所といっていたので、多分これのことなのだろう。

支湧別川のダウンリバー
最初のログ


そこをポーテージすると、すぐにまたその先にもログがあるようだ。
先に下っているカヤックのメンバーがログの状況を教えてくれるのが心強い。
ここまでは大丈夫だと合図を送ってくれるので安心して下れる。

支湧別川のダウンリバー
ツアーリーダーのいる場所までは下れるようだ


そしてそのログもポーテージ。
その先にもストレーナー気味の流木の山があったが、何とかかわして下れそうだ。
そこもポーテージしていたら下る場所がなくなってしまう。

支湧別川のダウンリバー
2箇所目のログ


ヒヤヒヤしながらそこを下っていくと、その先でまたログが待ち構えている。
これはもう完全に川を塞いでいたので、ポーテージするしかない。

支湧別川のダウンリバー
ストレーナー気味の流木の山


下り始めたばかりで早くも3箇所目のログ。
「えっ?このログは最近のものなの?」
そう思ったけれど、ACCの方が最初のログと言っていたのは、これの事だったらしい。
それまでのログは、上級者ならカヤックから降りないで漕ぎ抜けられるので、ACCではそれらはログとして認識していないのだろうと皆で笑ってしまう。

支湧別川のダウンリバー
3箇所目のログ


何だか川を下っている距離よりポーテージしている距離の方が長く感じる。
曇り空で気温もそれ程高くはないのに、ドライスーツの中は汗でびしょ濡れである。

支湧別川のダウンリバー
川下りならぬ川歩き


ログ地獄から開放されてようやく順調に下れるようになったと喜んでいると、先頭を下っていたI山さんがログに張り付くのが見えた。
そのまま沈脱するのかと思ったら、張り付いたままの状態で人間がなかなか出てこない。
そこへ今度はY田さんのカヤックが張り付くのが見えた。

 

 

上流から見る限りでは、それ程危ない場所とは思わなかったけれど、慌てて岸に上がる。
近くにいたツアーリーダーのH坂さんからストップサインが出された。
状況は分からないけれど、私も後続のメンバーにストップサインを出す。

結局ここは全員がポーテージとなったが、流木が川を横断していて中央部分は水中に沈んでいる。
上流から見ると中央部分を通り抜けられそうに見えるが、それがトラップとなっていたのかもしれない。
Y田さんは張り付いた後、人間だけが倒木の下に潜ってしまったという。
そのまま無事にすり抜けられたから良かったものの、川下りの中で一番危険なパターンである。

支湧別川のダウンリバー
ACCが下った時はもう少し水が多かったので、この上を下れたのかもしれない


そのログを過ぎると、ようやく順調に下れるようになる。
苔むした岩の間を清流が流れる、支湧別川の中でもこの辺りが一番美しい区間と言えるだろう。

ただ、古い橋の直前に岩に挟まれて川幅が狭まる場所があり、毎回ここでは岩に乗り上げてしまう。
今日こそは岩の間を華麗にすり抜けようと思ったが、最後に左側の岩にカヌーを擦ってしまった。

支湧別川のダウンリバー
この橋の直前がなかなか嫌らしい流れになっている


その先も岩絡みの瀬が続く。
ただ、それ程トリッキーな流れではなく、気持ちよく下ることができる。
途中で岸に上がって他のメンバーが下ってくる様子を撮影する。

支湧別川のダウンリバー
後ろの方から下っていくとギャラリーも多くなる


その先も美しい流れが続く。
陽が差していればもっと美しい風景に変わるのだろうけれど、今の風景にも全く不満はない。
苔むした岩の上で昼の休憩となる。
川を下っている間は楽しかったけれど、ポーテージ疲れで食欲もわかない。

支湧別川のダウンリバー
美しい川だ


休憩を終えて下り始めると撮影ポイントになりそうな場所を見つけて上陸。
私の言うところの撮影ポイントは、水しぶきを浴びながら下っている様子を写せると同時に、沈も期待できるような場所でもある。

支湧別川のダウンリバー
何かが起こりそうな瀬である


そこへ下ってきたのがタンデムの大型カナディアン。
普段はOC-1で下っているヨッシーだけれど、たまに彼女を連れてくる時は大型カナディアンのタンデムとなる。
彼女の方は完全なお客様状態なので、ほぼ一人で大型カナディアンを操らなければならない。
しかし、支湧別川はそんな甘い川ではない。
ここまで下ってくる間にも既に流木に張り付き、皆で苦労しながら流木から引き剥がしたばかりだった。

支湧別川のダウンリバー
入り口で沈するとヤバイ


当然、少し期待しながらカメラを向けていると、期待通りの沈を披露してくれる。
それだけなら笑っていられるのだけれど、岩の多い支湧別川である。
流される途中にまたしてもカナディアンは岩に張り付いてしまった。

2つに折れる寸前のカナディアンを3人がかりで岩から引き剥がす。
そうして流れ出したカナディアンだけれど、その先でも危うく岩に張り付きそうになっていた。

支湧別川のダウンリバー
最後はヨッシーが川の中に入って力任せに引き剥がした


そんなこともありながら、いよいよ核心部へと入っていく。
支湧別川は、白滝の市街地近くを流れる場所の方が難しい瀬が続くのである。
ACC情報ではこの核心部にも2箇所でログが入っているとのこと。
高速道路の手前でブラインドになっている右カーブ。
まずは手前で上陸して全員でスカウティング。

 

 

見える範囲にログは無かったけれど、もう少し下流に大きなログが入っているようだ。
右カーブの先までは下ることができるが、そこで沈をしてレスキューに失敗するとそのままログまで流されてしまう恐れもある。
できればポーテージした方が良いとの指示が出るが、上級者はそのまま下っていく。

ここのポーテージはカナディアンにはかなり厳しそうなので、私もそのまま下ることにした。
私の前に下り始めたカナディアンのT山さんが、カーブの手前で沈。
見ている方は焦ったけれど、T山さんは落ち着いて再乗艇して無事にクリア。
私も今日は調子が良いので、問題なく瀬を下る。

支湧別川のダウンリバー
流れが岩にぶつかっているけれど早めに本流から抜け出せれば問題ない


その先のログまでは、ライニングダウンしながら河原を歩いていく。
最後にログの上をカナディアンで超えるのは大変そうだったけれど、ログと水面の隙間をカヌーをくぐらすことができてラッキーだった。

支湧別川のダウンリバー
核心部最初のログ


これでまたカヌーの乗れると思ったら、その直ぐ先にももう一つのログが待ち受けているらしい。
そのままライニングダウンしていくと、次のログは流石にそのまま超えることはできず、やむなく河原を引きずる長いポーテージとなった。

支湧別川のダウンリバー
2つ目のログでは河原を歩いてのポーテージとなる


そのポーテージが終わったところで一騒動が起こった。
そこから下流でG藤さんが流されていくのが見えたという。
誰かが後を追わなければならないが、ポーテージを終えたばかりで誰もカヌーに乗っていない。
あたふたとカヌーに乗り込み、準備ができた人から後を追って次々と下っていく。
この先に特に危険な場所は無かったはずで、これで何とかなるだろう。

支湧別川のダウンリバー
G藤さんを追いかけて下っていく人達を見送る


後で聞いた話では、降り沈だったようだ。
この少し先で厄介な場所があるので、先回りしてレスキューの準備をしようとしたのだろう。
ここまで下ってくる間も、危ないポイントでは常にG藤さんがロープを持って待っていてくれた。
今日だけではなく、何時もの例会等でも同じである。
その時のツアーリーダーがお願いしている訳でもない
道内の川を知り尽くしているG藤さんなので、自分で危ないと思う場所ではそうしてくれるのだ。
本当に頭が下がる思いだ。

支湧別川のダウンリバー
激しい瀬の先ではG藤さんがロープを持って待っていてくれる


その騒ぎのお陰で、今回私が一番気にしている落ち込みを十分にスカウティングすることができた。
そこで沈したことが有るわけではないけれど、毎回ヒヤリとさせられて、沈しなかったのはラッキーだっただけとの印象なのだ。
一連の瀬の最後が岩絡みの落ち込みになっているので、毎回気がついたらその落ち込みが現れるので、スカウティングして下ったことがないのである。

支湧別川のダウンリバー
何時もぶっつけ本番で下る場所をじっくりとスカウティングすることができた


ここではヨッシーも、彼女を降ろして一人で下ってきた。
私は流れに合わせて回り込むようなコースで下るつもりでいたが、ヨッシーは真っ直ぐに落ち込みを乗り越えてクリア。
大型カナディアンならばそれで正解なのかもしれないが、私は自分で考えたコースで下ることにする。
そして、ラッキーではなくて自分の思っていたとおりにその落ち込みをクリアできたのである。

支湧別川のダウンリバー
ヨッシーは真っ直ぐに下ったけれど私は左から回り込む


その先も瀬が続いていて、G藤さんを追っていったメンバーの姿がなかなか現れない。
途中で、一人で下っていたヨッシーが沈して張り付きかけた横を通り過ぎる。
チラリと見えたカヌーは、シートも外れかけて、悲惨な状況になっていた。

支湧別川のダウンリバー
この状態の舟で下り続けたのは流石である


そしてようやく皆と合流できたのは、最後の核心部の直ぐ手前だった。
G藤さんは、かなりの長い距離を流されたことになる。
74歳の身体にはさぞ堪えたことだろう。

最後の核心部は岩に挟まれた狭い落ち込みがポイントである。
水が少ない時はカナディアンだと挟まってしまいそうな幅しかなく、水が多い時でも横から張り出している岩に身体をぶつけてしまいそうだ。
今まではポーテージするか、水が多い時は左岸側のチキンコースを下っていた。

支湧別川のダウンリバー
カヤックは完全に沈んでしまうので厳しそうだ


スカウティングの結果、狭い落ち込みを下ることは論外で、カヌーの底を擦りそうだけれど左岸のチキンコースを下ることに決めた。

ところがカヌーに乗り込もうとしていると、何となく周りがチャレンジする様な雰囲気になっていて、まずはカナディアンのT田さんが下っていって見事に沈。
次に私の前を下っていくタケちゃんが沈。

支湧別川のダウンリバー
皆は流れていくタケちゃんに視線を向けていた


ギャラリーの視線は、その先の瀬に向かって流されていくタケちゃんに釘付け。
私が狭い落ち込みを見事にクリアした瞬間を誰も見てくれてはいなかった。
でもそのおかげで、落ちた瞬間に前のめりになってパドルから手を離してしまったことに気が付いた人はいなかったかも知れない。

支湧別川のダウンリバー
落ちた瞬間に前のめりになってしまった


タケちゃんがもみくちゃになりながら流されていった瀬は、かなり複雑な波が立っていた。
そんな時は、カヌーがどんな動きをしても反応できるようにバランスを保ちながら入っていくだけ。
最近は、波に煽られての沈はあまり記憶にない。

そこもクリアした後は、皆の下る様子を気楽に楽しませてもらう。
ここはカナディアンよりもカヤックにとっての難所のようだ。

支湧別川のダウンリバー
ここは沈したまま流されたくない場所だ


その先もまだ気の抜けない瀬が続くけれど、一番の難所を過ぎた後では余裕をもって下ることができる。
何と言っても、あの狭い落ち込みを逃げずにチャレンジしたことが、自分を褒めてあげたいくらいに嬉しかった。
もしそれで沈したとしても、チャレンジしなかった時よりも遥かに充実感に満ちていただろう。

支湧別川のダウンリバー
まだまだ気を抜けない消化試合の川下り


タケちゃんから「ヒデさん、最近漕ぎが変わったんじゃないですか?、余裕を持って下っているように見えます」と言われる。
「そうかな~?」と何気ないふりを装いながら答えたけれど、内心はすごく嬉しかった。

以前は国道に架かる幽仙橋の手前で上陸していたけれど、今回のゴール地はその先の堰堤手前の右岸。
今日の川下りの余韻に浸りながら、これまでよりも600mほど余計に下ることができたのである
 

(当日12:00湧別川水位 湧別川観測所:173.75m)



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