北海道キャンプ場見聞録
忠別川(2022/07/16)
レスキュー講習会
カヌークラブの7月例会は忠別川でのレスキュー講習会。
2週間前にクラブの会員が川での事故で亡くなられていたので、今年のレスキュー講習会は特別なものとなった。
東川町の忠別川親水河川公園に30人近くが集まった。
RESCUE3の資格を持つBBさんに講師になってもらい、午前10時から2時間の座学。
そして午後からは忠別川を下りながらの実技講習。
まずは講師のBBさんが下っていく
あくまでも講習がメインなので下る距離は3キロ程度。
堤防の上をそのまま上流に向かうのだけれど、その途中にBBさんの家がある。
川好きの人間には本当に羨ましい環境である。
講習会場の河原まで下っていく
川を下り初めて直ぐに、最初の講習会場に到着。
BBさんにとって忠別川は自分の庭のような川なので、講習内容に合わせて適当な場所を選んでくれていたのだ。
ここではロープレスキューの練習。
川でのレスキューでは基本中の基本である。
ただ、何時もの例会ではレスキュー役は大体決まっているので、ロープを投げるのは年に一度のレスキュー講習会の時だけという会員も多い。
最初の河原では基本であるロープレスキューの訓練
初めて講習会に参加してロープを投げた時は、自分も含めて、その下手さに唖然としてしまった。
全然届かなかったり、真上に放り上げたりと、酷いものである。
「これでは駄目だから、普段の川下りでもロープを投げる練習をしよう」
講習会の後で必ずそんな話が出るのだけれど、まともにやった試しがない。
1投目はストライクで投げられた
私は、先に瀬を下っても、そのままカメラマンに徹することが多いので、実践でロープを投げる機会は少ない。
勘を取り戻すためにまずはロープを投げる方をやってみる。
一投目も、一投目を投げた後に素早くロープを束ねてから投げる二投目も上手くいったので、次は流される役に回る。
ちなみに投げたロープを束ねる時は、ぐるぐる巻にしないでスパゲティロールにするのが基本だ。
2投目はロープの束ね方がキーポイント
レスキュー講習会では流される役の方が面白い。
そして実際の川下りの時にも流されることが多いので、これは良い練習にもなるのだ。
ただ、クラブ員の技量は大体見当がつくので、流されながらも一抹の不安があった。
その不安は的中し、ロープが私のところまで全然飛んでこない。
「あ~あ、後二人しかいない、この二人に外されたら・・・」
と思っていたところに、ようやく熊五郎さんのローブが飛んできて一安心である。
無事にレスキューされた
それで止めておけば良かったのに、まだまだ泳ぎ足りなくて「3人で一緒に流されたらどうなるだろうね」とか言いながら、ヤマさんとNもとさんの3人で同時に川に飛び込む。
Nもとさんは直ぐにレスキューされたけれど私とヤマさんは流され続ける。
これはやばいかなと思っているところに、ヤマさんの方にロープが届いた。
その後2本のロープが投げられたが、私のところには届かず。
それで全てのロープが尽きてしまったようで、他の人達は流されていく私を呆然と見送っているだけ。
このまま流されていくのだろうかと不安になってくる
「マジか!」
一応は足の立つ場所だけれど、流れの中で無理に立つのは怪我の原因にもなる。
お尻を川底の石にぶつけながらも、基本通りに足を下流に向けて流されていく。
時々流れの中に留まれそうな浅瀬も有ったけれど、水流に押されてズルズルと流されてしまう。
「これは安全な場所まで一人で流されるしかないな~」と覚悟を決めたところに、追いかけてきてくれたNもとさんがロープを投げてくれたが後10センチで届かず。
Nもとさんが投げてくれたロープは真っ直ぐに飛んできたけれど掴めず
万事休すと覚悟を決めたところで、レスキューされたばかりのヤマさんが川原を直ぐ近くまで走ってきてロープを投げてくれた。
その距離なら外れることはない。
下流の瀬まで流される寸前にようやく助けてもらうことができた。
最後に投げられたロープ2本は、一緒に流されていたNもとさんとヤマさんが投げてくれたもの。
レスキューで一番大切なものは仲間を思いやる気持ちじゃないのかと、つくづく思ったのである。
こんな足場の悪い川原を追いかけてきてくれた方には感謝しかない
そこからまた少し下り、瀬を一つ超えたところで上陸。
流れが岸にぶつかっているところに流木が入っていて、ちょっと嫌らしい場所だ。
2箇所目のレスキュー講習の会場に到着
その流木にカヌーが張り付いたり、対岸に人が取り残されたりしたと想定して、それにテザーレスキューで対応する講習である。
ロープを投げるのではなく、PDFにロープを付けた人間が川に飛び込んで要救助者やカヌーを確保するレスキュー法である。
ロープのもう一方を他の人が保持するのだけれど、その様子は鵜匠と鵜の関係にしか見えない。
どう見ても鵜飼にしか見えない
私のPDFにも、こんなレスキューの時に使うクイックリリースハーネスが付いているのだけれど、一度も使ったことがない。
試してみるには良い機会だった。
一組目のグループが訓練している間に、私もPDFにロープを付けてもらって準備をする。
そんな時、要救助者のパドルが流されてしまった。
普通ならばカヤックに乗っている人に追いかけてもらってパドルを確保するのだけれど、舟に乗っている人は誰もいない。
パドルが流れているのは川の対岸近く。
「マジか!」
シチュエーション的に、私が川に飛び込むしかない。
これは訓練ではない、本番である。
ヌルヌルした川底の浅瀬をパドルを追いかけて疾走。
何とかパドルに追いつけそうな場所まで来たところで川に飛び込み、パドルを確保。
PDFに付けたロープは支持してもらっているので、後はそのまま岸へと寄せられる。
足の立つ場所まで寄ってきたので、そこで立ち上がろうとするが身動きができない。
ロープにテンションがかかったままでは、後ろに引っ張られているので立ち上がりようがないのだ。
ロープを持っている方は、私がもがいている理由がわからずにロープを引っ張り続ける。
飛び込む方も指示する方も、実際にやってみないとこんなことも分からないのだ。
実際の訓練の様子
自分で危険を感じれば、クイックリリースハーネスを開放して脱出することも可能。
色々と応用のできそうなレスキュー法だった。
第2ラウンドを終えて再び下り始める。
今度は少しだけ、下る距離も長い。
ちょっと波の大きい瀬も有って、久しぶりに他のメンバーが下る様子の写真を撮ってみた。
カナディアンからC-1に乗り換えた熊五郎さん
第3ラウンドはこの瀬を降った先が講習会場となる。
ここでの課題は、怪我人が中洲に取り残され、それをどうやって安全にレスキューするか。
二つのチームに分かれて、それぞれでレスキュー方法を考え、お互いにその方法を評価するというもの。
最初のチームは中洲からロープを斜めに張って、そのロープにカラビナでOC-1を取り付け、そこに要救助者を乗せて渡すという手段を選択。
今回はSUPやミニラフトがあるので、それを使えばより安全に渡せたと思うが、敢えて普段利用できる舟を選択したのだろう。
しかし、ただでさえ不安定なOC-1に要救助者を乗せるのには無理があった。
斜めに張ったロープは途中で弛んでしまい、波を受けたOC-1はひっくり返ってしまう。
ちょっと知識があればやってみたくなるレスキュー法だけれど、中途半端な知識でやってしまうと逆に要救助者を危険に晒すことになってしまいそうだ。
最初のチームはこのOC-1に要救助者を乗せて川を渡そうというもの
私達のチームは、先程のテザーレスキューの方法でチャレンジ。
その場の川の流れなどの状況からこれがベストだったと思われるが、流れがもう少し早かったら要救助者を抱えたままで渡れるかの保証もなく、その場その場で正解も変わってくるのだろう。
私達のチームはテザーレスキューで対応、失敗した時のために下流でも準備
今年のレスキュー講習は、自分にとってもなかなか役に立つ内容だった気がする。
新しい経験はなかなか刺激的だ。
これならばRESCUE3の講習会を受講するのも面白いかもしれない。
予定していた講習をすべて終えて、後はゴールまでのんびりと下っていくだけ。
4年ぶりに下る忠別川だけれど、何時のものなのか流木もずいぶん増えたようだ。
自然の中で遊ぶ時は常に何処かにリスクが潜んでいる。
今回の講習で学んだことも頭に入れながら、これからも安全に川を楽しみたいものである。
ロープレスキュー訓練の動画
(当日12:00忠別ダム放水量 21.48t)