北海道キャンプ場見聞録
後志利別川(花石橋~住吉頭首工)
(2021/10/24)
紅葉と露頭に癒やされる
初めて下る川を下見するのは、私の密かな楽しみである。
出艇場所、上陸場所、途中の橋の上から見る川の様子、そんな場所を事前に確認していると、既に川下りが始まっている気分になるのだ。
ここから出艇することに決めた
新しい川を下る時に参考にするのは、かわうそくらぶの「北海道ののんびり下れる川の本」、そして、Googleマップの航空写真とストリートビュー。
これらがあれば川の様子は殆ど分かってしまうので、後は現地で確認するだけだ。
ゴール地点の住吉頭首工
今回下る後志利別川は16年前に一度下っているけれど、春の増水時期だったので下るのに精一杯で、どんな川だったかも殆ど覚えていない。
その時は美利河ダムの下から出艇して、花石橋まで下っていた。
しかし、今回は水が少なくて、美利河ダムから次のめのう橋までは、とても下れるような状態ではない。
めのう橋の先にダムの放水口があるので、水量は回復する。
下見の結果、今回は花石橋からスタートして、住吉橋手前の頭首工で上がることにした。
一緒に下るのはSUPのNモトさん。
本当はRさん夫婦もいっしょに下るはずだったけれど、前日のキャンプ中に膝を痛めてしまって、無念のリタイア。
車の回送を手伝ってもらって、二人の見送りを受けながら、川へと漕ぎ出した。
Rさんの奥様が見送ってくれる
下り始めて直ぐに、表面が白く光る露頭が現れた。
湿った部分が太陽の光を受けて輝いているのだけれど、なかなか印象的な風景である。
白く光る露頭
後志利別川の今回下る区間は、大きく蛇行を繰り返しながら流れていて、流れが変わる部分は大体が露頭になっている。
露頭の岩の種類も様々で、場所によってその表情が大きく変わる。
今回の川下りでは、その風景を見るのが一番の楽しみとなった。
次々に露頭が現れる
荒々しい露頭の回りを紅葉した木々が彩る。
この風景もまた素晴らしい。
素晴らしい風景だ
そんな風景に見惚れながら下っていると、川を塞ぐ倒木が現れた。
新しい川を下る時は注意を怠れない。
スカウティングの結果、舟に乗ったままそのギリギリ横を通過する。
こんな倒木が突然現れるので油断はできない
倒木の手前で一旦上陸しスカウティング
木々の紅葉が川面に映り込む。
札幌以北では紅葉も終わりに近づいているけれど、道南の紅葉はこれからが見頃。
そして日曜日は天気が良くて、気温も今時期にしてはかなり高くなりそう。
これはもう川に行くしか無いと思って、Nモトさんを誘ったのが火曜日の夜。
最近、体調を崩しているNモトさんなのだが、それにも関わらずそんな私の思い付きの企画に付き合ってくれるのが有り難い。
川面も紅葉に染まる
9月に「夕陽を目指して尻別川を下ろう」なんて川下りを思いついて誘った時も、既に体調を崩していたのだが、そんな様子は少しも見せずに付き合ってくれたのだ。
他にも釧路川や歴舟川、今シーズンはNモトさんのおかげで、色々な川を下ることができた。
川に対する考え方が私と似ているような気がして、一緒に下ると心強くそして楽しいので、迷惑なのも顧みずに良い企画を思いついたら誘わずにはいられないのである。
Nモトさんは頼りになる相棒でもある
更に下っていくと、不思議な縞模様の描かれた露頭が現れた。
川下りをしていると色々な露頭を目にすることが多いけれど、こんな露頭は初めて見た気がする。
これが瀬棚層の斜交層理らしい
後で調べてみたところ、これは瀬棚層の斜交層理と言われるものらしい。
その解説を読んでも何のことか良く分からないが、川の流れや潮の満ち引きによって砂礫が層状に堆積して、こんな模様となるらしい。
不思議な地層に見入ってしまう
この辺りの地層には、黒松内層と呼ばれるものもあり、シルト岩・砂岩・凝灰岩で構成される。
後志利別川の露頭は、多くがこの黒松内層の露頭のような気がする。
川を下っていると、なんとなく朱太川に似ている気がしていたけれど、朱太川の露頭は大部分が黒松内層なので、似ているのは当然なのだろう。
それに露頭の周囲に生えている樹木はブナが多く、貝の化石が混じっている地層があるのも、朱太川と同じである。
露頭とブナの風景は朱太川に似ている
中里橋が見えてきた。
スタートしてからここまで50分、距離にして4.5キロ、まずまずのペースで下ってきている。
ここ数日雨模様の日が続き、川の水位も一週間前より25センチほど増えていて、流れも結構早いのだ。
中里橋を過ぎると道道が近くを通っていて、無粋な護岸ブロックが両岸を固めている。
その先に少しだけ波の高い瀬があった。
一緒に尻別川を下ってから一ヶ月半ぶりの川下りとなるNモトさん。
体力もかなり落ちていて、最初のうちは何となく不安そうに川を下っていたが、ここの瀬では力強いパドリングを取り戻していた。
この瀬が一番、瀬らしい瀬だった
その後も紅葉や露頭の風景を眺めながら下っていく。
「北海道ののんびり下れる川の本」では、ここをのどかな里川と表現している。
水を被るような瀬も殆どなく、蛇行しながら穏やかに流れていく。
癒やされる風景だ
川の上からでは分からないが、回りには農地も広がっている。
時々、露頭の上からホースが下がっていて驚かされるが、灌水用に川の水を汲み上げているのだろう。
この感じは、厚田川にも似ている気がする。
鮮やかなモミジの紅葉に目を惹かれる
志文内橋を過ぎると岩石の露頭も現れてくる。
この岩の露頭も層状になっていて節理も見られる。
露頭の層状の節理はそのまま川底まで繋がっていて、洗濯板のような瀬になっていた。
奥沢橋を過ぎた先で支流のサックルベツ川が流れ込んでいるが、そこも階段状の岩盤になっていて面白い。
川底が階段状になっているサックルベツ川の流れ込み部分
その先の中里頭首工は左岸ポーテージと書かれていたが、堰部分が無くなっていてそのまま通過できた。
取水時期ならばポーテージも苦労しそうな感じだったので、これは助かった。
中里頭首工はそのまま通過できた
丁度良い川原があったので、そこで昼の休憩。
川の本では焚き火キャンプのできる川原が多いと書かれていたが、そんな川原はここが初めてで、焚き火用の流木も全く落ちていない。
もしもそんな川原があれば、川原キャンプしながら海を目指すのも楽しそうだ。
休憩するのに丁度良い川原だった
相変わらず川は蛇行を繰り返す。
この日は天気が良かったけれど、風が少し強かった。
風が吹き抜けるようなところでは、舟の向きを維持するのも難しいくらいの風に翻弄される。
しかし、そんな風も大体は周りの露頭に遮られ、蛇行を繰り返すうちに何時の間にか追い風に変わっていたりして、下るのにそれほど障害にはならない。
風は強くても穏やかな川下りが続く
住中橋を過ぎてゴールまで後少しというところで、変わった露頭が目を引いた。
茶色と黒の露頭が接していて、色ばかりではなく岩の種類も全く違う。
どうやったらこんなことになるのか、地学に詳しい人に解説してもらいたくなる。
この川を下る時にそんな人が一緒だったら、更に楽しい川下りになりそうだ。
不思議な露頭だった
黒い方の岩は、流れがぶつかる部分に洞窟のような穴が空いていた。
太陽の光が水面に反射して洞窟の天井部分を照らし、その照らされた部分がゆらゆらと動いて見えるのが何とも面白い。
写真では分からないけれど洞窟の天井で光が踊っていた
そうして、ゴールの住吉橋手前の頭首工が見えてきた。
ここから更に下り続けるには、頭首工の左岸をポーテージとなっているが、ここの魚道を下れそうである。
昔の千歳川の魚道みたいに途中で返し波が立っていて、なかなか面白そうだ。
ただ、その先に落差のある瀬が待ち構えているので、スリリングなチャレンジとなるだろう。
ここの魚道は下ってみたくなる
私達は頭首工手前の川原で上陸。
スタート地点からここまでの距離は16キロ。
景色を眺めながらのんびりと下ってきたけれど、かかった時間は丁度3時間。
水が少ないと、もっと時間がかかっていたかもしれない。
ここの川原で上陸
後志利別川の川下り、天気にも恵まれ、期待以上の楽しい川下りとなったのである。
(当日12:00後志利別川水位 花石観測所:61.16m)