北海道キャンプ場見聞録
沙流川(2019/10/12)
最低水位の沙流川
カヌークラブ10月例会初日は紅葉に彩られた沙流川を下る。
しかし、紅葉の進み具合は今一で、水量もかなり少ない。
それも、過去に下った中では一番少ないんじゃないかと思えるくらいのレベルである。
今回はソロで下るので、こんな水量でも少々緊張している自分だった。
それでも、今シーズン初のソロでのダウンリバーなので楽しみでもある。
足を痛めているよしひろさんから「バウに空席があれば搭乗させて欲しい」と申し出があったけれど、丁重にお断りさせていただいた。
それにしても水が少ない。
カヌーの底をゴリゴリと擦りながら下っていく。
コースを間違えると座礁するし、油断して岩沈する人もいる。
何時も他のメンバーの写真を撮っている瀬も、全然迫力が無いので、カメラを構える気にもならない。
渓谷の入り口まで下ってきた。
その入り口は、両岸から岩が張り出し、私はそこを岩の門と呼んでいる。
岩の門越しに見える紅葉の風景は、最初の感動ポイントなのだけれど、まだ緑の葉の木々も多くてあまりパッとしない。
おまけに曇り空で光も当たらないので、余計に霞んで見えてしまう。
岩の門から見える紅葉
その先に岩が絡んだちょっとした瀬がある。
狭くなっているので他の舟と間隔を開けて下ろうとしていると、そこへコージさんのカヤックが入ってきてしまった。
コージさんを轢きそうになる
ソロで下っていて困るのがバックストロークで止まれないことである。
タンデムだと、かなり流れが速い所でも二人で息を合わせてバックストロークを入れると、その場で止まることもできる。
しかし、ソロの場合は、片側だけしか漕げないので、カヌーが横を向いてしまうのだ。
上手な人ならば、カヌーを真っ直ぐに向けたままでバックストロークができるのだろうが、私にはそこまでのテクニックはない。
2艇並んだまま岩に挟まれた瀬を下っていく。
ようやく離れることができてホッとしていると、カヌーが少し横を向いてしまった。
方向を修正しようとしていると、そのタイミングで後ろから来たカヤックが私の舟の横腹にぶつかってきたのである。
不意を突かれて、あっさりとひっくり返ってしまう。
横腹にぶつけられるとどうしようもない
川底にお尻をぶつけながら流される
今時期の川下りではあまり濡れたくはないのだけれど、こうして一度ずぶ濡れになれば、この先の三岡の瀬でも沈を恐れずにチャレンジできそうだ。
私の後に付いてきたばっかりに
その先の二股の分流は何時も右側の流れを下っている。
しかし、ただでさえ岩の多い流れなので、今日の水量ならば下るのにかなり苦労しそうだ。
左の分流は、いわゆるチキンコースなのだけれど、岩避けも面倒なのでたまに左の流れを下ることにした。
倒木が1本あったけれどその脇を下ることができて、2度ほど座礁したものの、問題なく右の分流と合流。
ところが、私の後ろに付いてきたY田さんペアのカナディアンが、合流部手前で横向きに座礁。
その弾みで横向きにひっくり返って、ちょっと責任を感じてしまう。
右の分流は岩避けが大変そう
再び渓谷の中を下っていくが、何処の瀬も全く迫力がない。
でも、今回初めてカヤックで川を下るヨッシーの娘さんには丁度良かったかもしれない。
前回のヌビナイ川では中学生の息子さんがカヤックデビューし、今日は小学生の娘さんがカヤックデビュー。
事前に千歳川で練習はしてきたのだろうけれど、それでも初めての川下りとは思えない堂々とした漕ぎっぷりである。
とてもカヤックでの川下りが初めての小学生とは思えない
三岡の瀬まで下ってきた。
何時もは瀬の手前で上陸して下見するのだけれど、今日の水量ならば最後の落ち込みの手前まで下って行けそうだ。
三岡の瀬、上流部
しかし、その途中で熊五郎さんが私の目の前に出てきてしまった。
何時も瀬の中でストレーナーを作ることで皆から恐れられている熊五郎艇である。
「うわ~、最悪!」と覚悟を決めたが、何とか座礁することなく熊五郎艇は横に逸れてくれたので、無事に落ち込みの手前で上陸することができた。
水深が浅いので目の前で座礁されないかとヒヤヒヤだった
皆で下見をするが、水が少ない時の方が落差が大きくなる。
おまけに左岸側の水中に流木が入っているのが見えている。
過去に一度、これくらいの水量の時に下ったことがあるけれど、その時は岩にぶつかり、カヌーを壊して肩も擦りむいていた。
悪いイメージしか浮かんでこないので、今回はポーテージすることに決める。
他のメンバーが下るのを見ていると、沈して右岸側の岩にぶつかる人が多い。
私が怪我をしたのもそのパターンである。
E田さんとY谷さんは、見事なバク転を披露してくれた。
このままバク転
岩に頭をぶつけそうで怖い
やっぱり、ポーテージで正解だったと思っていたら、Y田さんが1人でカナディアンを漕いで落ち込みをクリアしてしまう。
Y田さんも当然ポーテージするだろうと思っていたので、これはちょっとショックだった。
女性SUP乗りのN本さんまで落ち込みにチャレンジ。
N本さんも水中に隠れている倒木に気が付いたようだ。
「手前で沈して倒木にリーシュコードが絡むのが怖いですよね、引っ掛かったらクイックリリースベルトを使わなくちゃ」
ベテランパドラーでも何も考えずに下っている人が多いのに、そこまで観察してリスクを想定しながら下るとは、内心舌を巻いた。
チャレンジの結果は、ほぼの皆が期待していた通り、落ち込みに入った瞬間にSUPから転げ落ちてしまった。
本来はそのまま水中に没するはずなのに、水中の岩か流木にぶつかったのか、没する前に一瞬身体が止まって見えた。
怪我をしなかったのが幸いである。
ここで何かに身体をぶつけた様に見えた
皆のチャレンジが終わって、そのままそこで昼食となる。
自分もチャレンジしていたならば、たとえその結果が沈であっても、清々しい気持ちで昼食を食べられたはずなのに、何だか全然美味しく感じない昼食だった。
水が多い時ならば、この先もまだ迫力のある瀬が現れるのだけれど、今日ならばもう何も無いに等しい流れが続くだけだ。
楽しみは沙流川渓谷の紅葉風景だけだ。
しかし、遅れ気味の紅葉と生憎の曇り空で、その楽しみも半減。
ただ、そう感じるのは私がもっと美しい時の沙流川渓谷を知っているからなので、この風景を初めて見る人にとっては感動的な風景に見えることだろう。
渓谷の所々で、岩壁から滝が流れ落ちている。
誰かが「こんなに沢山の滝があったかしら」と言っているのを聞いて、気が付いた滝の写真を全部写してみる。
改めて数えてみると、全部で5か所の滝があった。
そんな滝を探しているだけで楽しい、沙流川のダウンリバーである。
私にとってソロで川を下る時に一番大変なのは、岩避けでもバックストロークでもない。
カヌーの運搬や車への積み下ろしなのだ。
それが今回は、スタート時や三岡の瀬のポーテージ、ゴール後にもN本さんが手伝ってくれたのである。
何て優しい女性なんだろうと感動しながら、ソロで下るとこんなに良いこともあるんだと1人喜んでいたのだった。
(当日12:00沙流川水位 幌毛志観測所:57.03m)