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忠別川(2018/07/29)

実のあるレスキュー講習(志比内橋下流~東橋下流堰堤)

7年ぶりに企画されたカヌークラブでのレスキュー講習会。
前日はキトウシ森林公園家族旅行村のふるさと生活体験の家を会場にして座学編が行われた。
今日は忠別川を下りながらの実技編である。

講師は、レスキュー3ジャパン元インストラクターでクラブの先輩でもあるBBさんである。
参加者はBBさんも含めて34名。

レスキュー講習会だと言うのに、何と私はゴール地点に回送した車の中にヘルメットを忘れてくる大失態を演じてしまった。
さすがにヘルメット無しでは、レスキュー講習を受講する資格はない。
N島さんが予備のヘルメットを持っていたので、それを貸してもらって何とかレスキュー講習を受講できたのである。

何時もの志比内橋よりやや下流からスタートする。
そして、そこから直ぐの河原に上陸して、講習会の実技編が始まる。

まずは、ディフェンシブスイミングとアグレッシブスイミング。
この日は朝から気温が上がり、日中には東川町でこの夏の道内の最高気温となる35.8度を記録していた。
ドライスーツを着込んでいた人達は、我先にと川の中へと入っていく。


この二人、ただ気持ち良さそうに浮かんでいるだけに見えるんだけど


今回のレスキュー講習会を企画したのは、去年まで会長だったN島さん。
「最近は自分で泳ごうとしない会員が多い」と言って、講師のBBさんにも「ガンガン泳がせてやって」とお願いしていた。

確かに私も、沈した時には誰かがロープを投げてくれるのを待っているだけだったりする。
それがN島さんの場合は、ロープ何て必要ないとばかりに自分で泳いで岸に上がってくるのである。

プールでの水難訓練等では「浮きながら待て」と教えられることもあるみたいだが、川ではそんなことはやってられない。

岸に向かって泳ぐ時も、フェリーアングルの体勢をとるようにBBさんから指導される。
カヌークラブの会員でも、こうして川で泳ぐような機会は殆どないので、結構新鮮だったようだ。

次にロープレスキューの訓練。
全員で川岸に並んで、それぞれロープを投げる。
レスキューロープを持っていても、それを実際に使うことは一部の会員を除けば、これも殆どないのが実態である。


ロープを投げる訓練


最近はクラブの会員数も急に増えてきて、例会の参加人数が30人を超えることも珍しくなくない。
そうなると、どうしてもお客様気分で参加している会員も出てくる。


正しいポジションでロープに掴まっている

私は今年、イベントとしての川下りであるダウンザテッシに初めて参加した。
こうれはもう、スタッフが何から何まで面倒を見てくれるので、完全にお客様気分で川を下っていられるのだ。
勿論、何かトラブルがあれば自分でもレスキューに参加する心構えだけは持っていた。

ウィルダネスカヌークラブの例会は、皆で楽しく川を下ることが目的と言っても良いだろう。
技術の未熟な会員がいれば、皆でサポートするのは当然だけれど、それはお客様としてではなく、皆で楽しく下るために早く上達してもらいたいからである。

そうして少しでも下れるようになれば、次はレスキューへの参加である。
そうなってもらわなければ、大人数での例会の実施は難しくなる。


なかなかロープが届かないと流されている方も不安になってくる

次は、ロープを投げる人、流される人に分かれて訓練が続く。
ロープレスキューのされ方について、本等で知識があっても、実際の場面ではなかなかその通りにはできないものである。
この程度のことならば、普段の例会の途中でもやっておいた方が良さそうだ。

かみさんの着ているものは、本格的なウェットスーツではなっかったので、川で泳いでいる間に体が冷えてしまったようだ。
気温が30度を超えていても、北海道の川には長い時間入っていられないのである。

ひとまず講習を終えて再び川を下る。
今回の川下りには、クラブに入会したばかりのK野さんご夫妻が初参加していた。
ダウンザテッシに7年連続で参加して、今年のダウンザテッシでは私もその漕ぎを見ていたので、今日の忠別川も何とか下れるだろうと思っていた。

しかし、それは全くの間違いだったのである。
前に進むだけならば、私も追いつけないほどパワフルな漕ぎを見せるお二人なのだけれど、舟を全くコントロールできないのである。


漕ぐ力はあるので、グイグイと前へ進んでいくK野さんご夫婦


瀬を下っていくと、必ずと言って良いほど、その先では倒木が待ち構えている。
それを避けるには、あらかじめカーブの内側に入らなければならない。

大声で「もっとこっちに寄って」と呼びかけるが、緊張のためにそれが聞こえないのか、聞こえていても舟をコントロールできないのか、ただひたすらフォワードストロークを続けるだけなのだ。


同時に倒木に突っ込んでいく2艇


熊五郎さんの奥さんとK野さん艇が絡み合うようにが倒木の中に突っ込んでいく。
K野さん艇は難を逃れられたけれど、熊五郎さんの奥さんはまともに倒木の中に突っ込んでしまった。
何とか奥さんは倒木ストレーナーの中から救出されたが、その後何度も同じようなシーンが繰り返される。


ストレーナーの中から熊五郎さんの奥さんを救い出す



全員が岸に付けた状態で休んでいて、BBさんとI山さんが先に出ていく。
私もその後に続いて流れに出ようとしていると、上流の方からK野さん艇が一艇だけで下ってきた。
「えっ?何してるの?」
どう見ても、その状態から岸に付けて止まれる様子はない。

しょうがないから私たちが先に出て、後ろから付いて来てもらうようにしようと思った。
しかし、二人でただひたすらフォワードストロークを続けるものだから、私たちをあっと言う間に追い抜いてしまう。
もうどうしようもない。
何とか無事にどこかの岸に付けてくれ。
そう願ったが、忠別川はそんなに優しい川ではない。

とうとう岸から張り出した倒木に張り付いてしまった。
スターンのご主人の腹に倒木が引っ掛かってカヌーが止まっている。
かなり危険な状況である。
写真や動画が無いので、この後どうしたのか詳しく思い出せないが、ご主人はロープでレスキューされ、奥さんはカヌーに乗ったまま下流へと流されていく。
奥さんはその状態でも十分に漕げていたので、周りの舟に誘導されながら何とか対岸に上がれたようだ。

私たちの舟にご主人を乗せて送り届けようと考えていたら、よしひろさんがK野艇のスターンに乗って舟を持って来てくれた。
K野さんは他の会員から「どうして一人で先に行ったのですか!」とかなり厳しい口調で問い詰められていたが、何かの拍子で流れに出てしまってそのまま止まることもできずに下ってしまったのだろう。
でも、怒られるのはしょうがない。
それだけ危険な状況だったのである。

そんなトラブルを挟みながらも川下りは続いていく。


普通に川下りを楽しむのならば最高のコンディションだった


ここまで、レスキュー講習と言うよりもレスキューの実践が繰り返されてきたが、下っている途中で改めて講習第2ラウンドが行われた。
今度は隊列を組んでの渡渉訓練である。
対岸で要救助者が動けなくなっているとの想定で、皆で流れの中を渡っていく。


見た目以上にきつい渡渉訓練


川でのレスキュー訓練では定番だけれど、「えっ?本当にここを渡るの?」って言うくらいに流れの早い場所だった。
BBさんは川底が見えているとの理由でここを訓練場所に選んだみたいだが、かなり厳しそうだ。

10人でチャレンジしたけれど、途中で流されそうになってそのまま引き返す。
場所を変えて再チャレンジし、今度は上手く渡れ、戻ってくる時には歩けない要救助者を隊列の上に乗せて運んでくる。


渡渉訓練で消耗し尽くしたジュニア

さすがにこれは全員が体験するまでの時間は取れずに、10名だけで終わってしまう。
この方法は先頭の人にかかる負荷が一番大きくなる。
体重があると言う理由だけで先頭にされたジュニアは、これで相当体力を消耗したようで、途中で上陸した岸辺でトドの様に転がっていた。

忠別川は岩盤の露出した瀬が特徴でもある。
眺めも良いし、下っていてもなかなか楽しい瀬でもある。

しかし、ここを初心者がカナディアンで下るのは結構難しい。
途中で上がれる場所が無いので、ここは頑張って下ってもらうしかない。


忠別川らしい岩盤の瀬が続く




N島さんがK野艇を先導しながら下ってきたが、後ろを気にしすぎて沈してしまった。
私が岩の上から下るコースを指示する。
他のメンバーは先に下ってしまったので、その先には誰の姿もない。
慌てて自分の舟に戻ってその後を追いかける。
カーブを曲がった先で他のメンバーが待っていてくれて、そこで何とか上陸させることができたようだ。


ロープで対岸に渡す

その先の瀬は確実に沈しそうなので、ポーテージしてもらうことにした。

しかし、最後に川を渡る必要があり、レスキューロープを使って、カヌー、人間の順に対岸に渡す。
これはもうレスキュー訓練ではなく、レスキューの本番の繰り返しである。

この先の堰堤まで下れば、車でアプローチできる場所なのでそこでエスケープ可能である。
しかし、そのすぐ手前にも難所があった。
中洲を挟んで左右に分流しているけれど、そのどちらもコンクリート塊や倒木が入っていて、ポーテージするしかなさそうだ。

中洲に上陸して待っていると、その上流でちいこちゃんのカヤックが沈、続いてK野さん艇が沈。
それでも浅い流れなので、慌てる必要もない。
流れてきたカヤックを手を伸ばして確保。
そこで足を滑らせて、私が流されかける。
数メートル先からロープを投げてもらって、岸に這い上がった


ちいこちゃんとK野さんが相次いで沈


そんなことをしている間に、K野さん達が沈したまま右岸の倒木に向かって流されていた。
「な、何で、そっちに流れていってるの?」
そしてまともに人と舟が倒木に張り付いてしまった。

川を下っていて一番見たくないのが、人が倒木に張り付くシーンである。
そんなシーンを見たのは過去に数回程度だったのに、今日だけでこれが3回目である。
人間は何とか助けられたけれど、舟がなかなか倒木から剥がせなくてパムさんが手こずっていた。


カヌーを倒木から剥がそうとするパムさんだがロープが絡まって難儀している


ペインターロープが何処かに絡まっているらしい。
「切るしかないね」
「切っちゃって!」
皆が声をかけるが、パムさんはなかなかロープを切ろうとしない。

更に「ロープを切って!」と声をかけていると、たまりかねた様にパムさんの言った言葉が「ナイフ持ってないんだ!」。
これが漫画ならば、全員一斉に川に流れていくところである。


この堰堤で5人がリタイア

ウッチーさんが助けに入って、ようやく舟を回収。
その先の堰堤でK野さんご夫婦はリタイア。
熊五郎さん夫婦も、ストレーナ事件のショックもあって一緒にリタイア。
そこに、渡渉訓練で体力を使い果たしたジュニアも加わった。

ここまでにかかった時間はおよそ5時間。
まだ全行程の半分も下っていないのである。
正にレスキューの連続で、こんなに時間がかかってしまったのだ。

堰堤から先は、ほとんど休みなく瀬の中を一気に下っていく。
ここでちいこちゃんが再び沈したが、直ぐにロープでレスキューされる。
レスキューする方もされる方も、すっかり板についていた。
レスキュー講習の効果がはっきりと表れているのが分かる。


これが本日のレスキュー講習会の成果である


そうして6時間以上かかって、ゴール地点である東川町のパークゴルフ場に到着。
片付けを終えて解散するころには午後5時を過ぎていた。

たっぷりと泳いで漕いで、暑さにもやられて、疲れはピークに達していたけれど、皆にとっても大変充実したレスキュー講習となったのである。

(当日12:00忠別ダム放水量:24.1t)



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