北海道キャンプ場見聞録
シーソラプチ川(2018/05/27)
沈脱祭りの日曜日
今日はシーソラプチ川ミニ例会。落合までやってきて、まずは国体コースの様子を確認する。
先週の沙流川のように、雪解けによる増水が続いていないかが心配だったのだ。
そんな心配は全く無用だった。澄んだ水を通して、川底の石がはっきりと見えている。
水量も、渡月橋の落ち込み中央にある岩が丁度隠れるくらい。多過ぎもせず、少な過ぎもせず、一番下りやすい水量である。
出発前のミーティングでOはしさんの口から信じられない言葉が
しかし、スタート前のミーティングでのOはしさんのお言葉は「残念ながら期待していた春の増水は、すっかり治まってしまいました。シーソラプチ川はもう夏と同じ状況です。」
それを聞いて、「えっ?何言っているの?濁った沙流川のような状態を期待していた人なんて誰かいるの?」と唖然としてしまった。
最近のOはしさんを見ていると、人が変わってしまったのじゃないかと思えることが時々ある。
昔は増水した川を前にして、二人で小便ちびりそうになったこともあると言うのに、その時とは川を見る目が全然違っているような気がするのだ。
まるで、そこに自分の死に場所を探しているような人間の目をしているのだ。
きっと、日常生活に私たちの推し量ることができない様な色々な問題を抱えているのだろう。
シーソラプチ川の川下りがスタート
私はまだ、川では死にたくない。
だから、Oはしさんの企画するミニ例会への参加については必要以上に慎重になって「弱気のヒデさん」と言われてしまうのである。
O橋さんの期待もむなしく、澄みきったシーソラプチの流れには人の命を奪うような邪悪さの陰りもない。
天気もこれ以上は無いくらいの川下り日和。
皆はニコニコしながら川へと漕ぎだしていく。
先週の鵡川に続いて、今日も私はソロでの川下りである。
シーソラプチをソロで漕ぐのは初めてで、ちょっと不安な気持ちもあった。
しかし、考えてみるとカナディアンに乗り始めて間もない人や女性でも大型カナディアンを一人で漕いでシーソラプチを下っているのだから、全く問題はない。
むしろ、ここで沈したら恥ずかしいくらいの話しである。
五竜の瀬で最初の沈をする熊さん
スタートして直ぐに倒木があったけれど、流れも緩く、その脇を簡単に通り抜ける。
最初の難所である五竜の瀬も、今日の水量ならばカヌーの底を擦らずに下ることができる。
何処からでも行けそうだったけれど、ここは安全策をとって定石通り左岸寄りから落ち込みに入る。
今日は何時もビデオを撮ってくれるI山さんがいないので、下り終えたら急いでカヌーから降りて撮影ポジションへと向かう。
まだ準備が整っていないうちにY川さんが流れされてきた。
せっかくの沈シーンを撮り逃すとは勿体ない。
後続メンバーが誰も沈しない中で、熊五郎さんだけが私の気持ちを察してくれたかのように、律儀な沈を披露してくれた。
河畔林は新緑に染まり、それを映し込む川の水面も同じ色に染まる。
瀬の水しぶきが太陽の光を受けてキラキラと輝く。
そんな風景の中を気持ち良く下っていく。
緑に包まれるシーソラプチ川
途中の瀬で撮影ポジションにつくと、小さなウェーブなのに派手に水しぶきの上がる場所があった。
そこを下る皆の姿を撮影していると、その上流で沈したIカドさんが流されてきて、その小さなウェーブで派手な水しぶきを浴びていた。
気持ち良く水しぶきを浴びるN島さん
気持ち良さそうに泳ぐiカドさん
ソロで漕いでいると、瀬の中に入っても波に合わせて舟をコントロールできるので、水を汲むことが少なくなる。
タンデムの時は、大きな波を目の前にするとかみさんが逃げてしまうのだけれど、今日は積極的に大波の中に向かっていける。
楽しい瀬が続く
ただ、エディに入る時などは、流れに押されて素早く入れないし、ソロの非力さを感じてしまう。
流れの中に留まっていられなくて、後ろ向きのまま瀬の中に入ってしまうこともあった。
クランクの瀬は恒例の撮影ポイントなのだけれど、その下のエディに入れず、撮影を諦めるしかなかった。
クランクの瀬はここから写すのが精一杯だった
トラウマの瀬でも同じことになりそうなので、瀬を下る前に上流側から皆の写真を撮ることにする。
何時もとは違う角度で写せるので、これはこれで面白い。
トラウマの瀬
普段はOCに乗っているよしひろさん、今日はカヤックで沈したけれど見事にロールで起き上がった。
初めて下るY川さんが「左側から入った方が良いのですか?」と聞いてきたので、「右側から入った方が良いよ」とアドバイスする。
私のアドバイスに従って慎重に右岸寄りを下ってきたY川さん、右に寄り過ぎて、右の分流に吸い込まれてしまう。
最後は後ろ向きになってしまったものの、無事にトラウマの瀬をクリア。
結局、トラウマの瀬で沈したのは熊五郎さんだけ。
最近乗り始めたばかりの新しいOC-1に、まだ慣れていないようである。
後ろ向きになってしまったY川さん
2度目の沈の熊五郎さん
王子橋手前のちょっとした瀬を下った先の河原で昼の休憩をとることにした。
何時もの休憩ポイントはもう少し下流なのだけれど、日当たりの良い暖かな河原は、お尻を患っているO橋さんには丁度良いらしい。
王子橋手前で3度目の沈の熊さん
しかし、熊五郎さんがまだ下ってきてない。
「熊五郎さんはここできっと沈するから、レスキューできなかったらそのまま下まで流されちゃうので、何時もの河原で休憩することになるかも」と私は心配していた。
本流が川岸にまともにぶつかっていて、その直前がちょっとだけ瀬になっているのだ。
油断していると沈しやすいポイントである。
そして私の予想したとおりに、そこで熊五郎さんが沈。
何とか岸に引き上げられたので、予定通りそこの河原で昼の休憩をとることができたのである。
休憩を終えて国体コースの三段の瀬まで下ってきた。
ここは先に下って岩の上の何時もの撮影ポジションに陣取る。
H池・baubauペアが、瀬に入る手前の岩に乗り上げ、そこで横向きになったまま三段の瀬に入ってきた。
カナディアンが横向きになってここを下るのは初めて見たけれど、それでも沈しないH池・baubauペア。
しぶといと言うか、往生際が悪いと言うか、何時も皆の期待を裏切ってくれる二人なのである。
横向きになった三段の瀬を下ろうとするH池・baubauペア
三段の瀬で沈する人は滅多にいなくて、カメラマンとしても如何にして皆の格好いい瞬間を切り取るかに気を使う。
ここでもまた熊五郎さんだけが、こちらが頼んでもいないのにわざわざ沈を見せてくれる。
沈したまま三段の瀬を流される熊さん
それも三段の瀬の一段目で早くもひっくり返るのである。
一段目でひっくり返った人を見るのも初めてだった。
熊五郎さんの場合、ライフジャケットの浮力がその体重に合っていないような気がする。
殆ど水中に没した状態で流されるのである。
いつも最後に「今日も沢山水を飲んだ」と言ってるのだけれど、確かにこれでは水を飲むわけである。
そしてレスキューのされ方も、あまり上手とは言えない。
飛んでくるレスキューロープを全く見ていないし、ロープにしがみついても、うつぶせの体勢でしがみつくものだから、顔にまともに水を浴びてしまう。
流れている時に水を飲んで、レスキューされる時も水を飲んで、沈するたびにお腹一杯になるのである。
Y川さんが川に飛び込んで身を呈して受け止めてくれたけれど、それが無ければそのまま渡月橋まで流れていたところだ。
パチンコ岩まで流されそうになった熊さんを身を呈してレスキューするY川さん
その渡月橋の撮影ポジションまで移動する。
ここでもトラウマの瀬と同じく、下る前に皆の写真を撮ることにしたのである。
パムさん、N島さん、ウッチーさんが先に下って、まずはレスキュー体制を整える。
N島さんも撮影係をするようで、これで1カメ、2カメの撮影準備が整った。
最後にここで投身自殺を図ったOはしさん
そこへOはしさんがパチンコ岩を回り込んで下ってきた。
そして私の近くで一旦息を整えて、渡月橋の落ち込みへ向かおうとした時、何もないところでバランスを崩して沈、しかも直ぐに沈脱。
カヌーだけが先に流れていってしまった。
何とか岸に上がろうとするOはしさんだったが、強い流れに押され、最後は渡月橋の落ち込みに体一つで身を投げたのである。
しかし、Oはしさんの望んだ死に場所となるには、ここの落ち込みは少し小さ過ぎたようで、死に損なってしまった。
カヤックのメンバーが一通り下っていった後にやって来たOC-1のY川さん、パチンコ岩の手前で沈してしまう。
沈したまま、パチンコ岩を回り込んで私の目の前まで流れてきた。
私の目の前を流されていくY川さん
一瞬「あっ、ロープ投げなくちゃ」と思ったけれど、この後のシーンを楽しみにしている自分の心には逆らえず、そのまま動画の撮影を続けてしまった。
Y川さんは苦労しながらも何とか岸に上がれたけれど、舟だけが流れていってしまう。
乗り手のいなくなったカヌーは、そのまま落ち込みの下に掴まってしまうかと思ったが、何とかそこを抜けだして下流へと流れていった。
パチンコ岩を上手く回り込むマイキーさんだが
次に下ってきたH池・baubauペア。パチンコ岩は見事に回り込んだけれど、落ち込みの中でついに沈。
続いてカヤックのマイキーさん沈脱、同じく奥さん沈脱、Iカドさんも沈脱。
私の場所からは落ち込みの下流の様子が良く見えない。
レスキューが一段落したところでN島さんが合図してくれるので、それを受けて私が上流で待っているメンバーにゴーサインを出しているのだが、これだけ続けて沈脱するとレスキューも大変だろう。
そこに下ってきたのが熊五郎さんである。
ますます忙しくなりそうだ。
パチンコ岩は回り込まずに真っすぐに抜けてきたので、もしかしたら最後にクリアできるかもと思ったが、そんなことがあるわけなかった。
2度あることは3度も4度も5度もあるのだ。
舟と一緒に顔面から水の中へと突っ込んでいった。
H池・baubauペアとうとう沈
熊さん5回目の沈
めぐちゃんが連続沈に区切りをつけたところで、最後に私の番である。
既に全員が下ってしまって、パチンコ岩を回り込んでも誰にも褒めてもらえないので、そのまま真っすぐにパチンコ岩の横を抜けていく。
先に下っていた皆の様子を見ていると、左岸寄りから入るのが落ち込みの下で巻かれることもなく、安全なルートであることは分かっていた。
でも、それでは面白くない。
今日は全然沈する気がしなかったので、敢えて一番落差の大きそうな場所を選んで、しかも万歳しながら落ちてみた。
バウが水に刺さってそのまま沈
そんな慢心を川の女神が許してくれる訳がない。
バウが水中に没し、そのまま横転。
あっと言う間にカヌーだけが流されていってしまう。
何時もならば落ち込みの下で舟も一緒に巻かれるのだけれど、そのまま左岸側へ流されていくのだ。
これが今日のレスキューを難しくしていたようである。
一番最後に下っていったので、沈しても皆の手厚いレスキューを受けられるだろう。
そう思って安心して沈したのに、ロープが直ぐに飛んでこない。
遠くからOはしさんがおざなりにパドルを差し出してくれるが、それに届くわけがなく、自分で下流の右岸側エディへと泳いでいく。
しかし、そこにも人があまりいなくて、ロープが飛んでこない。必死になって泳いでいるとH池さんがロープを投げてくれて、ようやく岸へ上がることができた。
しかし、私の舟は対岸に流れ着いたまま。
H池さんが「自分のカヌーで送りますよ」と言ってくれたけれど、浮力体がびっしりと入ったカヌーで3人乗る余裕はないので、別の手段を考える。
実はこの時、baubauさんは一人下流へ流されてしまったので、私が乗る余裕はあったのである。
手薄なレスキュー体制
そこに残っているメンバーの中で一番頼りになりそうなK島さんにお願いし、カヤックの後ろに掴まらせてもらって対岸まで泳いで渡ることにする。
流れが速いので、念のため少し上流側から漕ぎだす。後ろに掴まった私は必死にバタ足をする。
「えっ?、ええ~っ?、フェリーグライドしないの?」
K島さんは対岸に向かって真っすぐに漕ぎ始めたのだ。
なかなか前に進まないカヤックは、そのままどんどん下流へと流されていく。
スキルのあるK島さんだけれど、人を引っ張って漕いだ経験はなかったみたいで、真っすぐに漕いでも余裕で対岸へ行けると思っていたのだろう。
何とか足の立つ場所まではたどり着けたけれど、流れが強くて岸には上がれない。
結局そのまま、瀬の中をゴール地点まで流されることとなってしまった。
ようやく岸に上がれた時は、泳ぎ疲れと流され疲れでヨレヨレになっていた。
私の舟は上流から流されてきて、ゴール地点でようやく回収される。
最終的に渡月橋で沈脱したのは私を含めて8艇、17艇の参加だったのでおよそ半数が流されたことになる。
流された舟を追いかけて行ったりと、レスキュー要員も足りなくなって大変だったようだ。
何度も下って川の様子も分かっているところなので問題はなかったけれど、レスキュー体制としては少し課題が残ってしまった。
でも、こんな沈脱祭りがあるから川下りは面白いのである。
清流シーソラプチ川と思いっきり戯れた日曜日だったのである。
(当日12:00空知川水位 幾寅観測所:354.06m)
1カメから撮影した沈脱祭り
2カメから撮影した沈脱祭り