北海道キャンプ場見聞録
庶路川(2018/04/30)
疲れていても20キロ
釧路川100キロカヌーマラソンの翌日、体はボロボロになっていても、そのまま道東を去ってしまわないのが私たちのクラブである。
折角だから何処かの川を下ろうとの話になり、目を付けたのが庶路川。
この付近では、私は以前から茶路川を下ってみたいと思っていた。
なので、最初に庶路川の話が出てきた時は、私は茶路川と勘違いして話をしていたくらいである。
庶路川の情報は全くなし。
I上さん達が釧路川へ来る途中に庶路川を横切り、その時に何となく良さそうに見えたと、たったそれだけの理由で下ることになったのである。
川下りスタート地点
道東道の庶路インターで降りて、そこからスタート地点を探しながら川の上流へと向かう。
道路から見える川の様子は、水量も程々でなかなか良い感じだ。
途中から林道へ入ったところの橋の手前に丁度良い駐車スペースを見つけ、そこから出艇することにした。
そこには地元の釣り人の方がいて、突然カヌーを積んだ車がぞろぞろと入って来たのでビックリしていた。
この川をカヌーで下る人など見たことが無いのだろう。
釣り人の方の話しでは、一週間前まではかなり増水していたとのこと。
夏場は水が少なくてカヌーで下れるような川ではないので、庶路川は今時期限定のカヌーフィールドと言えるだろう。
ゴール地点は、事前にI上さんがGoogleマップの航空写真で目星を付けてあった。
しかし、その場所まで行ってみると、道路を走っただけで20キロもあったので、もっと上流で適当な場所を探す。
丁度良い場所が見つかったけれど、それでもスタート地点までは14キロもあった。
庶路川沿いは牧場が多く、川へアプローチできるようなところは殆どが放牧地で柵が回されているのだ。
スタート地点へ戻ってくると、かみさんが早くもコゴミとアイヌネギを収穫していた。
車で走っていても、山菜採りと思われる車が道路沿いに沢山停まっていて、この付近は山菜の宝庫でもあるようだ。
スタートして直ぐの小さな落ち込み
スタート地点の橋が後ろに見える
車の回送に時間がかかって、下り始めた時は既に午前11時半近くになっていた。
そうして下り始めて直ぐに、I上さんが岸に上陸する。
目的は勿論アイヌネギである。
どうやら今日の川下りは、最初からこれが目的だったようである。
直ぐにアイヌネギの収穫が始まる
大きな群落はないけれど、小さな群落ならばそこら中にある感じだ。
そんな群落を見つける度に誰かが上陸するものだから、なかなか先に進まない。
でも、今日はこれで良かった。
昨日はただひたすら漕ぎ続けるだけの川下りだったので、今日はのんびりと川を下りたかったのである。
のんびりと下っていく
気温はかなり上がっていて、車の温度計は27度を表示していた。
ドライスーツを着て下るのには気温が高すぎるものの、昨日苦しめられた風が今日は涼しさを感じさせてくれる。
川は山の際を流れていく。
山の斜面の表土が剥がれ落ちた下には、斜めに傾いた岩の地層が見えている。
ザラ瀬が続くが、カヌーの底を擦ることもなく、気持ち良く下っていける。
風景を楽しみながらザラ瀬を下る
カヌーを見て興奮する牛たち
川を殆ど塞ぐように倒れている倒木があったのでポーテージ。
丁度そこが牧場の直ぐ横だったので、放牧されていた牛たちが何事かと集まってきた。
彼らは、カヌーなんてものは初めて見るのだろう。
興奮して牧場の中を走り回り始めたのでこちらも焦ってしまった。
興奮しすぎて怪我でもされたら大変である。
慌ててその場を後にする。
その先で丸々と太ったアイヌネギの畑を発見。
牧場の直ぐ脇に生えているので栄養十分なのだろう。
すかさず収穫を始めるI上さんとF本さん。
それに誘われてかみさんも収穫を始める。
12時を過ぎていたので、他のメンバーはその下流の河原に上陸して昼の休憩。
間もなくしてI上さん達も、カヤックに積みきれないくらい収穫できたと、ニコニコしながら下ってきた。
牧場を過ぎたところでお昼の休憩
太いネギが沢山採れた
休憩を終えて再び下り始める。
川を塞ぐ倒木が頻繁に現れるが、流れも緩やかなので危険なことはない。
ポーテージも、倒木のギリギリまでカヌーを寄せて、その横の河原をちょっと運べば済むので苦労はしない。
こんな倒木が頻繁に現れる
ポーテージに苦労はしない
川は大きく蛇行を繰り返し、そのたびに風景ががらりと変わる。
次は何が現れるのか。
初めて下る川のこのドキドキ感が、私は堪らなく好きなのである。
ダイナミックに風景が変わっていく
これが、流れの早い激流を初めて下るような時だったら緊張感に押しつぶされそうになるのだが、庶路川の穏やかな流れだと余裕をもってドキドキ感を楽しめるのだ。
たまに現れる瀬も邪悪さは無く、川下りの丁度良いアクセントになる。
倒木が絡んでいるけれど余裕をもって避けられる
F本さんがアイヌネギを見つけて、また舟を下りた。
カヤックの中にまだ積み込むスペースが残っているようだ。
美しく層をなす露頭に感動し、100m近くはありそうな崖に圧倒される。
見事な地層が見られる
私たちの姿に驚いたキタキツネが、その崖を駆け上がって逃げていく。
この後、下まで降りてこられるのか心配してしまう。
オジロワシが河畔の木から飛び立った。
見上げる程の崖が前方に見えてきた
途中の河原で2度目の休憩。
時間は午後2時20分。
GPSで確認すると、まだまだ先は長い。
壊れたつり橋
川の流れも適度にあって順調に下ってきている気がしていたけれど、川が蛇行しているので思ったよりも時間がかかっていた。
早々に休憩を終えて下り始める。
時間はかかっているけれど、気持ちの良い瀬があったり、壊れたつり橋がぶら下がっていたりと、退屈しないで下っていける。
家に帰ってから庶路川のことを調べている時に、このつり橋の画像を見つけた。
3年前は、人は渡れないもののまだつり橋の形を保っていた。
ワイヤーがこれ以上緩むと、思わぬ障害物となりそうである。
川の中に張られたロープ(強調してあります)
オニヨップ大橋を過ぎた先で、先頭を下っていたY田さんが突然、「ロープがあります!」と大きな声を上げた。
「えっ?ロープ?」
最初は何を言っているのか分からなかったが、前方に注意していると、1本のロープが川を横切るように張られているのに気が付いた。
慌ててカヌーの向きを変え、フェリーグライドしながら岸に逃げる。
ロープの手前ギリギリで岸に上がることができた。
木杭に1本のロープを結んだ簡易な柵が牧場の方から伸びてきていて、そのまま川の中を横断していたのである。
放牧している牛が川を越えて逃げ出さないようにでもしているのだろうか。
ワイヤーロープのような危険性はないけれど、気が付かずに下っていくと首を引っ掛けてしまいそうだ。
高速道路が見えてきた。
ゴール地点は高速道路の橋を越えたまだ先だけれど、終わりが見えたので少しは気が楽になる。
単調な風景に変わってきた中で、オジロワシとカラスの喧嘩する様子が楽しめた。
下流域に入ると風景も単調になる
そうして午後3時40分車を回してあった場所までたどり着いた。
結局、下った距離は19.8キロ。
釧路川100キロカヌーマラソンを下った翌日にこれだけの距離を下るなんて、この人達はやっぱり普通じゃない。
車を回収し庶路川を後にする時は既に午後4時半を過ぎていた。
それでも、三日間たっぷりと遊んだ充実感に包まれ、札幌に向かって気持ち良く車を走らせたのである。
(当日12:00庶路川水位 庶路川観測所:3.03m)