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留辺志部川(2017/09/24)

倒木・隠れ岩との格闘

S田さんを迎えてのミニ例会2日目は石狩川を下る予定だった。
水不足で中止になってしまった8月例会のリベンジである。
夜中に降った雨で増水していないかと心配していたが、上川観測所の水位は全く増えていなくて8月例会時より10センチ多い程度。
それでも、川の様子を見た限りでは何とか下れそうな感じである。

しかし、大方のメンバーにとってはこれでも水が少ないらしく、石狩川を止めて留辺志部川に変更しようとの話しが突然降って湧いてきた。
留辺志部川と言えば、我が家のフリーダムを折ってしまった川であり、あまり良いイメージは無い。
もしも昨日の雨で増水でもしていたら、とても下る気にはならない。


スタート地点の様子

そこで、数人で川の様子を見に行ったところ、水も澄んで水量も下るには丁度良さそう。
それでも私は乗り気ではなかったが、留辺志部川を下ることに渋々同意した。

スタート場所は上川町立中越小学校跡地のパーキング横から。
川へ下りる急な崖を、ロープを使ってカヌーを下ろす。

参加者はメンバーの入れ替えもあるが、昨日より1名増えて11名。
清らかな水の流れる川や赤く色付き始めた木々を、太陽の光が鮮やかに照らし出す。

留辺志部川を下るのは、これが3度目。
一番最初は、増水していて大波の連続。最後には堰堤落ちでカヌーをポキリと折ってしまった。
2度目は、水は少なかったものの沢山の倒木に何度もヒヤリとさせられていた。
スタート地点の美しい風景を見ても、そんな思い出があるので気持ちはあまり盛り上がらない。


葉を落としたナナカマドには赤い実が

スタート直後の瀬を下れば、直ぐに大きな瀞場になる。
ナナカマドは既に葉をほとんど落とし、赤い実だけが目立っていた。
そこで一息入れてから、いよいよ本格的な川下りが始まる。

林道の橋、国道の橋と過ぎていく間に支流が3本流れ込み、川の水量も増えてくる。
川幅が狭まり早瀬となる。
流れの途中に岩が頭を出しているが、そんな岩は余裕をもって避けられる。
嫌なのは、水面下ギリギリに隠れている岩である。
そんな隠れ岩に、この後何度もヒヤリとさせられる。

石北本線の覆道が見えてきた。
2016年の台風で線路の路盤が流出し、石北本線は一ヶ月以上普通になっていたが、その現場が多分ここである。
覆道の下のコンクリート護岸がまだ真新しい。
後ろから汽笛が聞こえ、覆道の中を特急列車が通過していった。


復旧工事を終えた石北本線覆道の横を下っていく


今日は釣り人も結構入っていた。
そんな釣り人の目の前で隠れ岩に引っ掛かってしまった。
カヌーが大きく傾き、一気に水が流れ込んでくる。一瞬、沈を覚悟したが、何とか体制を立て直せた。
釣り人から「気を付けて下さい」と声をかけられる。


紅葉の風景の中を下っていく

去年の台風による大増水後、留辺志部川を下るのは初めてである。
倒木の状況が全く分からないので、I山さんが先頭を下って安全を確認してくれる。
しかし、他のメンバーはカヤックやOC-1。
他の舟が下れたとしても、大型カナディアンが同じ様に下れるとは限らない。
最後は自分で判断しなければならないのだ。

ギリギリで倒木を避けたり、避けきれずに枝にヘルメットをぶつけたりしながら下っていく。

前方に流木が山のように積み重なっているのが見えてきた。
先に下っていたI山さんの姿が、流木の山に隠れて良く見えない。
合図を送ってくれるが、そこを下れるのかダメなのかがハッキリしない。


ここはポーテージすることにした

とりあえず流木の山の直前に上陸する。
どうやら、カヤックならば下れるらしいが、見えない部分がどうなっているか分からないので、私達とサップのS田さんはポーテージすることにした。

流木の山の中を苦労してポーテージすると、その先で今度は倒木が完全に川を塞いでいるようだ。
安全な場所までフェリーグライドで川を渡り、そこからまた苦労してポーテージ。
大型カナディアンはポーテージするだけで体力を消耗してしまう。

そこから間もなくして再び倒木が流れを塞いでいた
今度は瀬の途中にその倒木があったので、その手前の浅瀬にカヤックが団子の様になって引っ掛かっていた。
私達はその団子に突っ込む前に上陸してポーテージ。


倒木をポーテージ


ポーテージの連続で体力を消耗していたので、その先の瀬を下った先で休憩してもらうことにした。
昼食を食べて少しだけ体力回復。


川原で一休み


時々波の高い瀬もあるけれど、今日の水量ならば怖さは感じない。
隠れ岩が嫌なので、もう少し水があればと思うくらいだ。


右カーブならば楽に下れるのだが

ただ、左ターンが苦手な私達なので、瀬が川岸に真っ直ぐぶつかって左へ曲がらなければならない様なところでは苦労させられる。

一度は、岸に生えているササの中にまともに突っ込んでしまった。
こんな時に慌てると反対側に沈してしまうので、逃げずに突っ込むしかないのだ。

暫くの間は倒木もなく、瀬を楽しみながら下っていく。
久しぶりに、川を塞ぐ倒木が現れた。
しかし、左岸側の倒木の根元付近が水面からの間隔が広く、先行していたメンバーはそのまま倒木の下をくぐり抜けていったようだ。

私達も、そこを問題無く抜けられるだろうと思って下っていくと、倒木の下が岩がらみの瀬になっていた。


倒木の下をくぐり抜ける

何処を通るか迷っていると、かみさんが左岸側に舵を取った。
そちらの方が倒木との隙間は広いけれど、岩が多い。
岩に乗り上げることを覚悟したが、何とか無事に通り抜けられた。

そこから暫く下って、いよいよ留辺志部川の核心部となる。
I山さんが「この先が核心部です」と皆に注意を促していたが、去年下った時は、フジモト岩も土砂に埋もれてしまって迫力を失っていた筈である。
そして、その記憶の通り、核心部はごく普通の瀬に変わってしまっていたのである。

核心部の瀬は消滅していても、柱状節理の岩壁が聳える迫力のある風景はそのままだった。


ミニ層雲峡みたいな風景である


そんな風景に見惚れながら下っていくと、またしても川を塞ぐ倒木が現れる。
分流になっていて、その両方ともが見事に倒木に塞がれていた。


この倒木の下にカヤックが吸い込まれそうになっていた

皆が黙々とポーテージしていく。
その途中で倒木の様子を撮影しようと思ってカメラを構えると、最後尾から下ってきていたKさんがカヤックに乗ったままズリズリと倒木に吸い寄せられていくのが遠くに見えた。
そしてそのまま倒木に張り付いてしまう。

比較的に近くにいたジュニアもそれに気づき、声を上げて駆け寄る。
私も直ぐに川の中を走って応援に向かう。
カヤックが半分ほど倒木の下に潜り込み、非常に危険な状況だった。

まずは人間を引きずり出し、次に張り付いたカヤックを倒木から引き剥がす。
そして、倒木の下に挟まっていたパドルを回収して、無事に一件落着。
もしも私やジュニアが気付かずにいたら、その状態から一人で脱出するのはほぼ不可能であり、大変な事態になっていたと思われる。


もう一つの分流も倒木で塞がれていた

スプレースカートを外すヒモを外に出していなかったため、上陸するのに手間取っているうちに流されて、倒木に張り付いてしまったらしい。
川下り中は、ちょっとしたミスが命取りになることもあるのだと改めて思い知らされる。

レスキューを終えて自分の舟まで戻る時、もう一度川を渡るのだが、これが結構深くて流れも速い。
おまけに直ぐ下流には倒木ストレーナーが待ち構えていて、ここで転んで流されると自分が危機に陥りそうなところである。
そこをスタスタと走って渡ったことが自分でも信じられなかった。

他のメンバーはそんな事があったとは露知らず先に下っていたので、その後を追いかけた。
4年前にカヌーを折ってしまった堰堤は左岸側の魚道を下ることができた。


嫌らしいところに倒木がセットされている

堰堤から下流の記憶はあまり残っていなかったが、I山さんの話しでは分流のところが難所だという。
その分流らしきところまで下ってきた。
I山さんは左の分流へと入っていったが、他のメンバーは右へと下っていったので私もそうすることにした。

結構な瀬の中を下っていくと、最後に左の分流と合流する。
その左の分流がかなり早い流れとなって横からぶつかってきていて、おまけにその流れの先に倒木が絡んでいた。
左からの分流にフェリー気味に入っていけば良いけれど、そのまま真っ直ぐに突っ込むと直ぐに倒木まで寄せられてしまう。
自然にできたトラップにしては、あまりにも出来過ぎている。
川を下る奴に意地悪してやろうと、誰かが計算してしかけた罠のように思われた。

後はゴールを目指すだけだと思っていたら、最後にまた川を塞ぐ倒木が現れた。
一体何ヶ所ポーテージさせられたのか、数え切れなくなっていた。


最後までポーテージを強いられた


その倒木を越え、ちょっとした瀬を下って、ようやくゴールが見えてき時には心底ホッとした。
留辺志部川を下る度に、自然河川の恐ろしさを思い知らされる。
今回も生きて帰ってこれたことを、川の神様に感謝するのであった。


川下りの動画 

(参考 当日12:00石狩川上川観測所水位 323.97m)



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