北海道キャンプ場見聞録
尻別川(2017/07/02)
実り多い流水練習会
カヌークラブでの流水練習会として企画された今回の尻別川夏ラフトコースダウンリバー。
前日は支笏湖での静水練習会も行われていた。
この日集まったのは総勢25名。
クラブに入会したばかりで初めて参加する人、会員の同僚、会員の女子大生の娘さん、流水初体験のファルトボートのご夫婦など、何時もの例会とは違ったメンバーが多く、如何にも練習会らしい雰囲気である。
初めての流水に緊張気味のH山さんご夫婦
私がここを下るのは今シーズン3回目。
その中でも今日が一番水量が少ない。
練習会とは言いながら気軽に下れそうなところである。
しかし、私には重大なミッションがあった。
それは、ファルトボートのタンデムで流水初挑戦するH山ご夫婦に無事に尻別川を下ってもらうことである。
前回の美笛キャンプで声をかけられた縁から、今回の練習会に誘ったものだから、それなりの責任を感じていたのだ。
沈して流されるだけならご愛敬だけれど、何せファルトボートである。
岩に張り付いて折れてしまうことだって考えられる。
ご主人の方もそれを心配しているようだった。
Y田さんにお願いして、スタート場所で簡単に流水でのカヌーの操作についてレクチャーしてもらう。
しかし、今日は水が少ないこともあってスタート地点の流れはほとんど無い。
しょうがないので、発電所の放水口のところまで行って簡単にストリームイン、ストリームアウトの要領を教えて、そのまま下り始める。
そしていきなり始まるパチンコ岩の瀬。
今日は水が少ないので、これまで以上に岩避けに忙しくなる。
ここでは私が先導して、その後から付いてきてもらうことにする。
下る方向を指示しながら付いてきてもらうことにしたが・・・
途中で足の速いファルトに追い越されそうになる
しかし、ちょっとした誤算があった。
カナディアンよりもファルトの方が足が速いので、私達が追い越されそうになるのである。
慌てて漕ぐスピードを上げるが、その間にH山さんの舟はどんどん左岸へと寄っていく。
私達は流れの中で後ろ向きになって下りながらルートを指示する。
しかし、とうとうH山さんは左岸近くの岩に乗り上げてしまった。
と思った瞬間、私達まで岩に乗り上げてしまった。
と言うか、張り付きである。
H山さん達がこうなることを一番恐れていたのに、張り付いたのは私達だった。
ファルトは岸に乗り上げ、私達は岩に張り付く
まあ、私達は張り付きには慣れているので、何とかその岩から脱出し、H山さん達も周りの人達に助けられ、無事に下まで下ってきた。
どうも、どちらを漕げばカヌーがどちらに曲がるかをまだ理解できていないようだ。
それなので、私達が後ろから付いていって「左漕いで!」と声をかけることにする。
しかし、やっぱりファルトの方が早いので、何時の間にか引き離される。
慌てて追いかけると、H山さんが隠れ岩に座礁している間に追い越してしまう。
なかなか上手くいかないが、それでも何とか下っていた。
そうして最後の波の大きな瀬。
ここはもう波に負けない様に力強いフォワードストロークで漕ぎ抜けるしかない。
私達の後ろから付いてきてもらう。
瀬の中に入ると、皆から「漕げ!漕げ!」の声が飛ぶ。
邪魔な岩さえなければ、ファルトでも気持ち良く下れる瀬である。
後ろを振り返ると、そこには楽しそうに笑いながら瀬を漕ぎ抜けるH山さんご夫婦の姿があった。
瀬の中を漕ぎ抜けるH山さん艇
ロールに失敗して脱艇した聖帝さん
今日は流水練習会でもある。
そこの瀬で遊ぶ人達を待っている間に、マイキーさんの奥様である聖帝さんがロール練習に励むが、なかなか上手くいかない。
S澤さんがガンちゃんから「ここの流れの中でフルロールやったら100%起きれるよ」と言われる。
静水ではロールできるようになったS澤さんだけれど、流れの中ではまだロールができずにいるのだ。
ガンちゃんの言葉を真に受けたS澤さんは、見事に流れの中でのロールを成功させて、皆から拍手をもらう。
一方、アドバイスをした方のガンちゃんは、昨日の支笏湖での静水練習でも、最後までロール練習はやらないまま。
パドリングジャケットを一度も濡らさないままで焼肉を始めてしまったのだ。
それがS澤さんに目の前でロールを決められると、さすがにガンちゃんも後には引けなくなる。
皆の声援を受けながら、流れの中に漕ぎ出していったまでは良かったけれど、何もしないままUターンして戻って来たのだった。
今回は逃げずに瀬を攻めるS澤さん
そこから暫くは穏やかな流れが続く。
そんなところでもN島会長はしっかりと沈して、皆からホイッスルを吹かれまくっていた。
護岸のテトラブロックの横に小さな落ち込みになっているポイントがある。
1週間前にはそこを避けて下っていたH池・M木ペア、S澤さんも、今回はニコニコ笑いながらその落ち込みを下っていた。
その先のザラ瀬では岩に乗り上げる心配もないので、先に下って撮影係に専念する。
H山さん夫婦も独力でその瀬を下っていく。
バウの奥さんがニコニコ笑っているのに、後ろの旦那さんの表情が引き攣って見えるのは、以前のH池・M木ペアと通じるものがある。
この程度の瀬ならば安心して下ることができる
途中の川原で昼の休憩。
今日も羊蹄山は雲の中だ。
3回もここを下っているのに、一度も羊蹄山の姿を見られないとは、余程見放されているのだろう。
昼の休憩を終えて出発準備、空はどんよりと曇ったまま
そこから先、H山さん夫婦にはまだまだ難所が続く。
自分の行きたい方向にカヌーを向けることさえできれば、難所と言うほどのものでも無いのだが、慣れてきたとは言ってもまだまだ不安が残る。
そしてとうとう、一番心配していた事態になってしまった。
川の中に飛び出していた岩に横向きに張り付いてしまったのである。
タンデム艇がカヌーの真ん中で岩に張り付くと、どうしようもできない。
カヌーが傾いていないのでまだ良かった。
これで上流側に傾きでもしたら、水圧をまともに受けてファルトボートが折れ曲がってしまうところだ。
奥さんの元まで無事にご主人を届けることができた
私は既に下流まで下ってきてしまったので、他のメンバーがレスキューしてくれている様子を見守るしかない。
こんな時は、ベテランメンバーが沢山いるので心強い。
結局、旦那さんが岩の上に乗り移ったところでファルトは岩から離れ、奥さん一人が乗った状態で他のカヤックに守られながら下流の安全なエディまで下ってきた。
岩の上に一人残された旦那さんの方は、ロープを使って川岸へ引き上げられる。
私達はそこまで漕ぎ上がり、旦那さんを私達の舟に乗せて、奥さんが待つ下流の舟まで送り届ける。
それで一段落となったけれど、次は水門を過ぎた先で落ち込みのある瀬が待ち受けている。
ここを下らせるかどうかで、ちょっと迷っていた。
まずは私達が先に下ってみる。
操作を誤ると落ち込みの先でまともに岩にぶつかりそうなので、ポーテージしてもらった方が良いかもしれない。
瀬の下流では人や舟のボートレスキューで大忙し
そう思って、伝えようとしたらH山さんの艇は既に後戻りできない場所まで下ってきていたのである。
こうなれば後は見守っているしかない。
前を下っていたカヤックがひっくり返っている中、H山さん艇はそこを無事にクリア。
しかし、その後ろでN島さんが沈。
それを避けようとした後ろのカヤックもひっくり返る。
H山さん艇の周りでは沈脱祭りが繰り広げられていたのである。
その後にも沈脱する人がいて、瀬の下ではボートレスキューで大忙しである。
ここで沈脱した聖帝さんは、その結果が納得できないと、カヤックを抱えて上まで戻り再チャレンジ。
しかし2度目のチャレンジでも沈脱して再びボートレスキューされる。
その頑張りに皆から暖かな拍手が送られた。
聖帝とは、ご主人のマイキーさんが勝手に付けたハンドル名で、ご本人はそんなハンドル名とは懸け離れた可愛らしい女性なのである。
果敢に2度目のチャレンジの聖帝さんだったが・・・
いよいよ二股の瀬まで下ってきた。
前回はヒーローコースを狙ったつもりが、結果的にややチキンコースになってしまった。
二股の瀬は見かけほど難しくないことが分かってきたので、最近はカナディアンのバウをできるだけ跳ね上がるように下るのを狙いにしていた。
今回は水量が少なかった割に、まずまずの跳ね上がり具合だった気がする。
今回は二股の瀬を上手く下れた気がする
お父さんは瀬をクリアしたけれど娘さんは沈
瀬を下り終えて、早速撮影ポジションにつく。
E藤さんの娘さんがここで沈脱。
レスキューされるのを見届けてから、上流で待っているグループにGOサインを送る。
次に下ってきたのはH山さん夫婦だった。
普通の初心者は、こんなところでは大体が最後の方に回ってしまうものだが、その積極さにビックリした。
しかし、瀬に入って直ぐのところの岩に乗り上げてしまう。
そこを何とか抜けて、途中の岩にもぶつかってバランスを崩しながらも、ようやく瀬の中心部まで下ってきた。
カヌーの操作もできないので、流れのままに波のど真ん中へと突っ込んでいく。
そして豪快な水しぶきを上げながら、見事に瀬をクリアしたのである。
H山さんご夫婦、見事に二股の瀬をクリア
バウの跳ね上がり具合ではH池・M木ペアに負けたかも
ロールであげれないガンちゃんも、沈さえしなければ問題なし。
颯爽と漕ぎ下っていく。
私達と同じくここを下るのが今シーズン3回目となるH池・M木ペアは、ベテランの風格さえ漂わせながら、バウを思いっきり跳ね上げて瀬を乗り越えていった。
新入会員のN手さんが二人目の沈脱。
ここで沈脱した二人は、身体は直ぐにレスキューされたけれど、舟の方は下流まで流されてしまっていた。
ベテランが沈脱すると、直ぐにカヤックを起こしパドルをその中に入れロープに掴まって舟と一緒にレスキューされるのだが、経験が浅いとなかなかそこまではできない。
パドルだけ流さないようにしてロープに掴まるのが精一杯である。
残された舟をカヤックのボートレスキューで岸まで寄せてくるのは難しいのだ。
カナディアンが丁度2艇いたので、H池さんの舟に小柄な女性を乗せて下まで下ってもらう。
もう一人のN手さんは体重110キロの巨漢である。
それでも、シーソラプチ川で体重100キロ近いmasaチャンを真ん中に乗せて下ったこともあるので、何とかなる。
娘さんとN島さんの2艇が流される
ずしりと重たくなった舟で瀬の中を下っていく。
真ん中に乗っていたN手さんは、かみさんの力強い漕ぎを目の前にして、相当驚いていたみたいだ。
これで難所を全てクリアしたかと思ったが、まだ少し瀬が残っていた。
そこで再び女子大生の娘さんが沈。
それに釣られるように、横を下っていたN島さんも沈。
娘さんの方は直ぐに手厚くレスキューされたが、N島さんの方は皆で笑いながら「頑張ってくださ~い」と声をかけるだけである。
娘さんのカヤックが流されていたので、今度は私達の舟に乗せて送り届ける。
N手さんを乗せた時と違って、重たさを全く感じない。
今回は私達とH池さん達とで、延べ4人の沈脱者を舟まで搬送。
大勢での川下りではカナディアンはなかなか役に立つものだと、何となく嬉しかった。
一人寂しく岸に這い上がったN島さん
皆から手厚くお世話される娘さん
これでもうゴールまでのんびりと下れると思ったが、想定外の場所にちょっとした難所があった。
本流が砂岩が露出した岸にまともにぶつかっているところである。
過去に何度も下っていて、特に気にしたことも無かったのだが、今回はちょっと違っていた。
水量によっては意外な難所となる場所である
水量が減って細く速い流れとなっている本流の中を下っていくと、そこから抜け出せないままに岸にぶつかってしまう。
私達も最後はパドルで岸を押しながらそこを抜けだした。
ファルトだと正面衝突してしまうかもしれない。
O橋さんもそう感じたようで、慌てて岸に上がってロープを用意する。
私も直ぐに舟から下りようとしたが、思ったよりも水深があって危うく降り沈するところだった。
私達のそんな心配をよそに、H山さん夫婦のファルトはあっさりとそこをクリアしていた。
もっと水量が少ない時期に下った方の話しでは、この岩の下はアンダーカットになっているようで、水量によっては注意して下る必要がありそうだ。
皆でお喋りしながらゴールまで流されていく
そしてようやく全ての難所を終えて、後は緩やかな流れの中を今日の川下りの余韻を楽しみながらのんびりと流されていく。
何も無い川下りよりも、こうして色々なトラブルがあっても皆で協力し合いながら下る川下りの方がずーっと楽しい。
良い練習会となったのである。
(当日12:00尻別川水位 倶知安観測所 167.28m)