北海道キャンプ場見聞録
沙流川(2017/05/14)
濁流増水の川下り
茶色に染まった沙流川の水
カヌークラブ5月例会初日で鵡川上流部を下り、大量に収穫した山菜を双民館に泊まってたらふく食べて、翌日は予想外の青空が広がる最高の川下り日和。
「今日は久しぶりに三岡の瀬にもチャレンジするぞ~!」とテンションマックスで沙流川までやってきたところ、その川の水を見て一気にテンションが下がってしまった。
上流で行われている災害復旧工事の影響なのか、川の水がまっ茶色に濁っているのだ。
おまけに水量も多い。
車の回送途中に橋の上から三岡の瀬の様子を見ると、茶色い濁流が今までに見たこと無いような勢いで流れていた。
とてもチャレンジするような状況ではない。
昨日の鵡川で頑張ったMさんは、今日の沙流川も下る気満々でいた。
でも、N島会長と私の判断は「無理」だった。
Mさんも素直にその判断に従ってくれた。
カナディアン組が最後に出艇
クラブの過去の例会で、個人のスキルを理由に参加を断ったケースは、一度も無かったような気がする。
しかし、今日の沙流川の状態では一度沈すると何処まで流されるか分からない。
流されたとしてもそれ程危険な場所は無いので、それを理由に断ることはない。
問題なのは、流された人や舟を回収するために何名かのメンバーがそれを追いかけ、結果的にツアー全体がバラバラになってしまうことだ。
他にも沈する舟が出てきたりしたら、もう何処で何が起こっているのか分からなくなる。
水量の増えた川での例会では、過去にも何度か同じような事態に陥っているので、できればそのような状況は避けたいのである。
そうして最終的な参加者は23名20艇となる。
熊五郎ペア、H池・M木ペア、kenjiさんソロ、それに私たちの大型カナディアンは、沈した場合のレスキューが難しいので、後尾から下っていくことにする。
ラフトが次々に下ってくる
スタートして直ぐに、人工的に川原を掘り下げたストレート区間が現れた。
大きなうねりの様な波にカヌーが大きく煽られる。
そこを抜けた先の展望台下の大岩は完全に埋もれてしまって、影も形もない。
以前はここで必ず何艇かが沈するお楽しみポイントだったのに、ちょっと拍子抜けである。
でも、今日はそれが嬉しく感じた。
その次に現れる傾斜の急な瀬は以前と変わりは無く、今日初めて遭遇する本格的な瀬である。
一昨年にここで沈して、かみさんが小指の骨を折る原因となった場所でもある。
そこを無事に通過してやっと一息つけた。
ラフトが次々に下ってくるので、それが通り過ぎるのを待つ。
ガイドの人の話では、今日は56艇で下っているとのこと。
札幌の某高校の生徒らしいが、56名ものラフトガイドを良く集めたものだと感心してしまう。
おそらく、北海道中からガイドをかき集めたのだろう。
岩のゲートを抜けた先の渓谷ではあちらこちらで桜が咲いていた。
しかし、それを楽しんでいる余裕も無い。
岩のゲートを抜けるとあちこちで桜が咲いていた
ウェーブで遊ぶテンコさん
テンコさんが途中のウェーブで技を披露する。
還暦を迎えた女性だと言っても誰も信じないだろう。
それに刺激されたタケちゃんが、失敗したときのレスキューをN島さんにお願いして、ウェーブへと入っていく。
そして予想通りの沈。
N島さんが腰まで川に入った状態でロープを投げたが、その状態でロープにつかまったタケちゃんを支えられるわけがない。
そして予想通り、二人一緒に流されていった。
川はその先で二つに分流するが、今日は水量が増えていたので真ん中にもう一つ分流ができていた。
私達は一番安全に下れそうな真ん中を選んだが、それでもかなりスリリングな流れだった。
岸に上がってカヌーの水抜きをしているとカヤックが2艇流されてきた。
ここで私は、それをカメラで撮影するか、レスキューロープを投げるかの二者択一を迫られた。
この後、カヤックが2艇流されてくる
二人は反対側の岸近くを流れていたので、ロープを投げたとしても届かないのは目に見えていた。
しかし、下流には次の瀬が迫ってきている。
ここで何もしないでカメラを構えていては、人非人だと非難を浴びそうなので、しょうがなくロープを投げた。
方向はピタリと合っていたけれど、流されている二人の遥か手前でロープは着水した。
瀬に向かって流れていく二人と、それを追いかけるカヤックの群れを、ただ見送るしかなかった。
T山さんが、カヤックを流してしまったS澤さん自分の舟に乗せて下っていたら、T山さんも沈。
もう、何処で誰が沈しているのか分からなくなる。
こんな時は何もしないで見ているにかぎる。
無理して下って沈したら、騒ぎが大きくなるだけなのである。
人は流されてるし、ラフトは下ってくるしで、川の上は大賑わいだ
激しい瀬が続く
その後、レスキューを終えて全員が揃ったところで、今回のツアーリーダーのI山さんから改めてレスキュー体制の確認がなされる。
前後をベテラン勢で固め、カナディアンやスキルに不安のあるカヤックは真ん中付近を下ることに。
そんな体制をとったところで、結局は自分の身は自分で守るしかない。
その後も次々に激しい瀬が現れる。
私も、周りのカナディアンの様子には気を配るが、カヤックは対象外。
何処かで誰かが沈していても構っていられない。
自分が沈しないように下るのが精一杯だ。
三岡の瀬の手前で全員が上陸し、下見をする。
何時もは見えている岩がほとんど水没して、これまでに下った中でも水量は一番多そうだ。
三岡の瀬の様子を見に行く途中には美しい桜が
三岡の瀬は三岡橋の下が一番激しい流れになっている。
しかし、そこにたどり着くまでの流れも相当に激しい。
それでも、今回はその中に下れそうなルートが見えていた。
水の濁りもスタート地点より少しは取れてきている。
これならチャレンジできそうだと思ったけれど、かみさんに全くその気は無い。
久しぶりに三岡の瀬にチャレンジ
しかし、ポーテージしていく途中、核心部の瀬の前に大きなエディがあり、そこから舟を出せば核心部だけ下ることができる。
O橋さんも背中を押してくれて、ようやくかみさんも下る気になったようだ。
三岡の瀬は、水の少ない時に一度だけ成功しているけれど、それ以外はポーテージか轟沈。
沈した時は、舟を壊したり身体を擦り剥いたりと、ただ流されるだけでは済まないのが、三岡の瀬の恐ろしいところだ。
そんな悪いイメージを振り払うようにして瀬に突入。
波に刺さった瞬間、ガンネルを超えて水が一気に流れ込む。
カヌーも大きく傾いたが、何とかリカバリーして瀬をクリア。
G藤さんが拍手をしてくれ、思わずガッツポーズ。
豪快に下るタケちゃん
その後は撮影班にまわる。
タケちゃんは手前の瀬で大きくバランスを崩し、数年前の身体一つで三岡の瀬を流されるシーンの再現かと思わせたが、何とか立て直して豪快に波を超えていった。
大型カナディアンではkenjiさんがチャレンジ。
絶妙なコース取りというかチキンルートというか、危なげなく瀬をクリア。
瀬のど真ん中に突っ込むばかりでなく、川を安全に下ることも一つのテクニックなのである。
カヤックが1艇だけ沈脱。
T山さんが投げたロープは空に向かって飛び、N島さんが投げたロープは両手から離れて川の中に落ちていった。
これもクラブの例会では見慣れた風景である。
左岸寄りに下るのが安全なルートだ
カヤックだと波間に沈んでしまう
I山さんが「この後も激しい瀬があるので、リタイアするとしたらここが最後の場所になります」と忠告したが、勿論ここでリタイアする人は誰もいない。
轟橋手前の瀬でとうとう熊五郎さんペアが沈。
幸い、川は轟橋の下で左に曲がっているので、熊五郎さんご夫婦はそれ以上流されること無く、轟橋の下に流れ着いた。
熊五郎さんご夫婦は無事に轟橋の下に流れ着いた
轟橋を過ぎれば、普段の水量であれば後は沙流川の渓谷美を楽しみながらゆったりと下っていける。
しかし今日は、その先にもまだまだ瀬が続いていた。
堂々と瀬を下るH池・M木ペア
途中で上陸してカメラを構えていると、H池・M木ペアが豪快に瀬の中を下っていった。
彼らは今年入会して、例会に参加するのは千歳川に続いてこれが2回目。
千歳川で何度かプロのレッスンを受けているとはいえ、今日の水量の沙流川は千歳川とは別次元のレベルである。
それがここまで一度も沈しないで下ってきているのは大したものである。
と思いながら眺めていると、下流のエディに入れずにそのまま次の瀬まで流されていく。
しかも、後ろ向きになって。
さすがにもう駄目かと思ったが、後ろ向きになったまま瀬をクリアしたようだ。
私も何度か経験があるけれど、慌てさえしなければ何とかなるものである。
最後は景色を眺めながらのんびりと下る
日高大橋が見えてきて、これでようやく難所を全てクリアである。
後はゴール地点まで、春モミジに色づき始めた山を眺めながらのんびりと下っていく。
今日は一度も沈せず、三岡の瀬もクリアして、個人的には充実した川下りとなった。
シーズン初めの川で沈すると、そのシーズンの間、瀬に入るたびに沈のイメージが頭の中に浮かんできてしまう。
今年はそんなことも無く、楽しいカヌーシーズンとなりそうだ。
(沙流川の川下りの動画へ)
(当日12:00沙流川水位 幌毛志:57.44m)