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トナシベツ川

(流星橋〜名前の分からない橋下流)

最近は、週末の川下りが終わるとその場で「来週は何処へ行こう?」なんて話しが必ず出てくる。
北海道の限られたカヌーシーズンで中に40回も川を下ろうなんて人は、週末は必ず何処かの川を下っていなければならないのだ。

トナシベツ川航空写真とてもそのペースには付いていけず、8月の長流川以来、ミニ例会の企画には参加していなかった。
ところが、今回の「紅葉のトナシベツ川を下ろう」の企画には直ぐに乗ってしまった。
トナシベツ川の渓谷は、隠れた紅葉の名所でもあり、次の週末は天気も良さそうで、快適な川下りを楽しめそうだ。

ちょっと心配なのが、I山さんが「何時も下っている橋よりも、もう一つ上流の橋から下ってみたいですね」と言っていたことである。

そこで、事前にGoogleマップの航空写真で川の様子をつぶさに調べたところ、特に危険そうな場所もなく、大型カナディアンでも何とか下れそうだった。

三段滝そうして朝から快晴の空が広がる土曜日、集合場所に向かう途中で増水した芦別川三段滝の様子を見ていたりしたので、到着は時間ぎりぎりになってしまった。

既に殆んどのメンバーが集まっていて、車から降りて挨拶をしようとしたら、突然O橋さんが私の顔色を窺う様な様子で話しかけてきた。
「トナシベツ川の水、少ないんですよね〜。それで、青巖峡を下ろうって話しになってるんですが。」

まるで、既に全員の合意が成立していて、後はカナディアンで参加している我が家が承諾しさえすれば、直ぐに変更になるような雰囲気である。

思いがけない展開だった。
今年の春にはロールで起きれただけで大喜びしていたO橋さんが、水が少ないトナシベツ川じゃ退屈だからエキスパートしか下らないあの赤岩青巖峡へ行こうと言うのである。
冠雪した芦別岳シーズンに40回近くも川を下っていれば、誰でもエキスパートになれるのかもしれない。

トナシベツ川は去年、I垣さんの愛犬ハチを乗せて下ってもいたので、かなり気楽な気分で今日は参加していた。
それが赤岩青巖峡となれば、緩んでいた気持ちを引き締めなければならないが、褌と違って一度緩んだ心は簡単には締まらないものだ。

一るの望みは、まだ到着していないI山さんがトナシベツ川に固執してくれることだった。
そして、そのI山さんが到着しO橋さんの提案を聞いて「今日は一つ上の橋からくだってみようと考えていたんですよ。新しい川を開拓する時は水が少ない時じゃないと無理ですし。」との返事。
それでようやくO橋さんも、予定通りトナシベツ川を下る事で納得。
I山さんのナイスリカバリーである。

ゴール地点の様子スタート地点が上流に移動した分、ゴール地点も何時もより上流に変更。
どちらも、先週の例会の後にI山さんが下見をして、見つけておいてくれた場所である。

ゴール地点は、それ程広くはないものの川原の横まで車を乗り入れられる。
付近の木々も色鮮やかに紅葉し、なかなか良い場所だった。
「I山さん、良い仕事するわ〜」とO橋さんからお褒めの言葉が出る。

スタート地点は、これまでの羽衣橋から更に林道を奥へと進む。
路肩が崩れそうな林道で、運転を誤れば遥か下に見えているトナシベツ川まで、一気に転がり落ちてしまいそうだ。
スタート地点の流星橋までやって来ると川までの高低差も小さくなり、少しだけホッとした。
車を停められる場所が少なく、通行の邪魔にならないように5台の車を分散して路肩に停める。

流星橋から見たトナシベツ川笹薮をかき分けて川原までカヌーを下ろす。
澄んだ水と美しい紅葉。
そこに太陽の陽射しが降り注ぎ、素晴らしい美しさである。
O橋さんから再び「I山さん、良い仕事するわ〜」との声が出た。

皆が川原まで降りてくるのも待たずに、I上さんがカヤックに乗り込み川の上へと出て行く。
冬山に登って真っ白なパウダー斜面を目の前にすると、我慢できなくて真っ先に滑り降りていくのがI上さん。
その時とまるで一緒である。


流星橋の下
スタート地点の美しさに皆も感激

渓谷とは違った開けた風景のトナシベツ川これまで、羽衣橋の上から眺めた印象で、上流部は深い渓谷になっているイメージを持っていたが、スタートして暫くは開けた風景が広がっていた。
細い林道を山奥まで入ってきた川とはとても思えない。

川そのものも、ゴツゴツした岩場は少なく、玉石の川底に所々岩が絡む感じである。
水が少ないので岩避けは忙しいが、下るのには問題ない水量である。
そして、瀬を下った先は瀞場になっているのもありがたい。

この区間をカヌーで下った情報は全く無く、流れの先で何が待ち受けているかは、誰にも分からない。
かなりリスキーな川下りではあるけれど、助かったのは川の見通しが良いことである。
先日下った阿寒川は、川も蛇行し河畔林も茂っているので、流れの先の様子が殆んど分からないのだ。
それと比べると、安心して下る事ができる。


紅葉のトナシベツ川を下る
崩れた山肌と紅葉の風景が美しい

トナシベツ川を下るそれにやっぱり、水量の少ないのが一番だった。
もしも水が多ければ、岩避けに苦労しながら下っている瀬が大波が荒れ狂う瀬に姿を変え、その下の瀞場も留まっているのに苦労するような早い流れに変わっているはずだ。
そんなところで沈脱して、先に何があるかもわからない川を流されていく事態は、考えただけでゾッとする。

十日ほど前には台風23号による暴風が吹き荒れ、数日前には雪も積もった富良野地方。
紅葉は殆んど散ってしまっただろうと諦めていたが、予想に反してまだ十分に美しい紅葉の風景が広がっていた。
その紅葉が快晴の空を背景に、太陽の陽射しをたっぷりと受けて、更に鮮やかさを増すのである。
下っているメンバーの顔には笑みが絶えない。


トナシベツグリーン
上流部ではこの岩壁がベストビューポイントかも
岩壁の頂上   トナシベツ川の紅葉
見上げるような岩壁   まだまだ美しい紅葉が残っていた

川を塞ぐ流木瀬を下っていくと、流れが岩壁にぶつかり、その右側に大きな流木が引っ掛かっていた。
本流はそこで左に向きを変えているのだろうと思ってそのまま左に曲がったが、そこは大きなエディになっているだけで、本流はその流木のある方へと流れていたのである。
同じような勘違いをした人は他にもいたようだ。

ここから急に、トナシベツ川は岩壁に囲まれたゴルジュの中へと入っていき、先の様子も見えなくなるのだ。
川を横断して岩に引っ掛かっていた流木は、その下にかろうじてカヌーに乗ったままで通り抜けられるスペースがあった。
川がもっと増水していたとしたら、ここで進退窮まっていたかもしれない。

流木をくぐり抜けた先も見通しが利かず、一旦上陸して先の様子を確かめる。
特に危険箇所は無い様子なので、前を下るメンバーに続いて私達も岩を避けながらゴルジュの中を下っていく。
この辺りは渓谷らしい風景が広がるして、瀬を通り過ぎた先の瀞場に入ってホッと一息ついたら、頭上には見覚えのある橋が架かっていた。
緊張して下り始めたトナシベツ川の未知の区間は、意外と簡単に下りきることができたのである。

こうしてみると、トナシベツ川ではこの付近が一番のビューポイントとなるのだろう。
漠然とトナシベツ渓谷と名前が付いているけれど、それはピンポイントでこの部分を指しているに違いない。
林道を走ってきて渓谷美を眺められるのはこの羽衣橋だけで、その他の渓谷部はカヌーで川を下らなければ見られないのである。

羽衣橋のやや上流では、これも深い渓谷を作っているポントナシベツ川が合流している。
それらの渓谷が紅葉した木々で彩られ、その美しさにため息をつきながら、緩やかな川の流れに乗って下っていく。


トナシベツ渓谷
羽衣橋を頭上に眺めるトナシベツ渓谷

そしてまた瀬が始まる。
増水時に下るのもなかなかスリリングだが、今日の水量の方が岩避けが忙しくてテクニカルかもしれない。
川原で休憩それでも、水が澄んでいるので岩も見やすく、何とか上手く避けながら下る事ができる。

途中の川原で休憩。
川原の前の流れは淵になっている。
ヌビナイ川ならば、こんな淵はエメラルドグリーンに染まって見えるのに、トナシベツ川の淵は透明な水を通して川底が見えるけれど、水は染まっていない。

ただ、春先の笹濁りの水は青く染まり、勝手にトナシベツブルーと名付けたりしていた。
川の水がグリーンやブルーに染まって見えるメカニズムを誰かに教えてもらたいものだ。


トナシベツ川の美しい流れ
この独立岩付近の風景も好きだ

瀬を下っていると、前方に見覚えのある岩場が見えてきた。
この区間で一番の難所とも言える場所だったはずだ。

倒木の絡む大岩前を下っているメンバーは、下見をすることも無く次々に下っていく。
しかも、大きな岩を左から回り込むようにである。確か、その岩の裏側には何時も倒木が絡んでいるはずだ。

でも、皆が下っていくので、しょうがなく私もその後に付いていく。
案の定、倒木が絡んでいたが、その脇をすり抜けられた。そして、その先の岩を避けながら小さな落ち込みへと入る。

そこを上手く下れたことでホッとして、次の動作がワンテンポ遅れた。
直ぐに向きを変えなければならなかったのに、それができないまま真っ直ぐに正面の岩に乗り上げてしまった。
以前にもここで同じ失敗をしていたのに、相変わらず進歩していないようだ。

一号橋を過ぎると風景が変わってくる一号橋を過ぎると、次第に周りの風景も開けてくる。
気分的には核心部を抜け出した感じだが、相変わらず同じような流れが続く。

古めかしい橋脚の橋をくぐる。
地形図で確かめると、川を渡った先にある牧草地へ行くための橋なのだろう。

その先の分流は、左の山側の方へ下っていく。
紅葉した木々の下を抜けていくと、川原に停めてあった車が目に入った。

楽しい川下りが、何だかあっさりと終わってしまったような感じで、ちょっと物足りない気がした。
ここは、これまでの上陸場所にしていた緑橋より4キロ近く上流に位置しているのだ。

川下り終了この先にもまだ、私の好きなビューポイントが幾つか残ってもいる。
でも、今日はもう十分に紅葉のトナシベツ川を満喫していたので、ここで上がっても不満は無かった。

紅葉の季節に下りたい川がまた一つ増えてしまって、来シーズンは今の季節に何処の川を下るかで頭を悩ませる事になりそうだ

2015年10月17日 晴れ

トナシベツ川川下りの動画 
流星橋〜羽衣橋(羽沢橋) 
羽衣橋(羽沢橋)から下流 


名前の分からない古い橋
この古い橋を過ぎるとゴール地点は近い

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