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朱太川

(朱太川橋〜黒松内市街地)

13年前の姿この川を初めて下ったのは13年前。
現在のカヌークラブの例会に始めて参加させてもらった時の話しである。

簡単な川だと聞いて、雨具に長靴、ヘルメットも無し。
それでも、快く(かどうかは分からないが)参加させてもらい、それがきっかけで今日までクラブの会員として、多くの仲間たちと一緒に川を下ってきた。
それなので、我が家のカヌー歴の中では、とても記念すべき川なのである。

その朱太川を、カヌークラブの例会で13年ぶりに下ることとなった。
とても楽しみだったのは言うまでも無い。

黒松内町役場に集合天気も快晴、集合場所の黒松内町役場の駐車場まで、気持ちの良いドライブとなる。
そこに集まったのは16名13艇。
札幌から遠い割には、意外と多い参加者である。

最近の例会で下る川は、参加者は毎回同じようなメンバーで、全体的にスキルも上がっているので、そんな人達でも楽しめるような川ばかりになっていた。
朱太川は、例会としては久々の、のんびりゆったり下れる川なのである。

平凡な川を下ると、退屈だの面白くないなど直ぐに文句を言い始めるメンバーも多く、果たしてこの企画にどれだけの参加者があるのか、心配な部分もあった。
それが、蓋を開けるとこれだけの参加者である。
普段はあまり下ったことのない川を下りたい、山菜が採れそうだ、休みの日に家にいると邪魔にされる、家に帰りたくない。
ぞれぞれの事情を抱えた人達が集まってきて、同じ川を下り、それぞれの思いを実らせる。
これが川で繋がる縁なのだろう。

朱太川橋からスタートスタート地点は国道5号線の朱太川橋。
河川敷に降りる道路際が畑になっていたので、今回はツアーリーダーのT津さんが手土産を持って、近くの農家に挨拶しておいた。
大人数で行動していると、地元の方とトラブルになることもあるので、こんな配慮も必要なのだ。

集合写真を撮ってから下り始める。
川についての13年前の記憶は殆んど残っていない。
当時の写真や川下り日記を読み返すと、川の水はかなり少なかったようだ。
今回は多分、その時よりは多そうである。

いきなり川を完全に塞いでいる倒木が現れたが、ポーテージも楽なものだ。


倒木でポーテージ   落ち込み?
川を塞ぐ倒木   落ち込み?

瀬?を下る水の透明度もまずまず。
太陽の光が川底の石を照らし出す。

瀬の様な流れでは、水がキラキラと光り輝く。

河畔の木々も緑の濃さを増し、その中からカッコウの鳴き声がきこえてくる。

「たまにはこんな川下りも良いな〜」
誰かが気持ち良さそうに声を上げる。

「そう言ってられるのも30分程度だろうね」
笑ってそう言ったが、最後は自分も緩やか過ぎる川の流れに苦労することとなった。


朱太川を下る
穏やかな流れの朱太川

ウドを狙って早くもmarioさんがウドを見つけたようだ。
marioさんとI山さんが、如何にも滑りやすそうな斜面を、必死になって登っていく。

5月も末になっているので、道南に近いこの付近ならばウドも大きくなりすぎているだろう。
そう思っていたが、まだまだ採り頃のウドが沢山生えていた。

N島さんは、ウドよりもフキの方が奥様に喜ばれるらしく、今回はフキも目当てにしているようだ。
それを知った皆から「N島さん、ここのフキ美味しそうですよ」、「いや、こっちの方が美味しいかも」と声をかけられるが、ウドと違ってフキならば何処にでも生えている。
満面の笑みのN島さんウド狙いの時と違って、がつがつしていない。

marioさんは相変わらず「ネギ、ネギ」とつぶやきながら下っている。
歴舟川では、育ちすぎたネギには見向きもしなかったのに、再びネギ熱が出てきたらしい。

少し下ったところで、再びウド畑を発見。
足場の良い場所に生えていたので、今度はN島さんも余裕で収穫。

朱太川は本当にウドが多い。
ウド狙いでこの例会に参加した人は、既に目的を達成してしまった。
その後は、ウドを見つけても「あそこにも生えているね〜」と言いながら通り過ぎるだけとなる。

もちろん、純粋に朱太川の風景を楽しみに参加しているメンバーも存在する。
そんな人の目的も、朱太川は十分に叶えてくれている。


朱太川の風景
澄んだ水に住んだ青空、気持ちの良い川下りだ

朱太川の風景
緑に染まる朱太川である

昼の休憩小さな川原があったのでそこで昼の休憩となる。
早速、N島さんがフキ畑の中に入っていた。
かみさんも、そこでフキを収穫。
川に生えているフキは本当に水々しく、切った途端に切り口から水が流れ出てくる。

「フキなんか何処で採っても同じ」って気がするが、朱太川でとったフキは、他で採ったものよりも確実に美味しかった。

足寄のラワンブキ並みに大きく育っているのもある。
そのフキの葉を、日傘代わりに頭に被ってみる。
日陰に入りたくなるくらいの強い日差しが照りつけているので、それだけで涼しく感じてしまう。

フキの帽子   フキとウドが満載のカヌー
フキの葉を頭に乗せると涼しいのだ   N島さんの舟はウドとフキが満載

休憩を終わり再び下り始める。
川は次第に自然河川の様相を呈してきた。

土壁の風景手付かずの自然が残っている代わりに障害物も多くなってくる。
川を完全に塞ぐ倒木でポーテージを強いられたり、完全なストレーナーとなっている流木の山の横をすり抜けたりしながら下っていく。
それでも、流れが緩やかなので、危険性は少ない。

ふと横を見ると、白っぽい樹肌の木々が斜面に広がっていた。
ブナが自生する北限地、朱太川は歌才ブナ林の直ぐ横を流れていることを思い出した。

途中の土壁を良く見ると、貝殻が層を成して埋まっているのが良く分かる。
様々な種類の貝殻があり、それを上手く取り出そうとするが、脆いので簡単に割れてしまう。
後で調べたところ、この辺りの地層は瀬棚層と呼ばれ、170万年〜80万年前(更新前世紀)に海底でできた地層で、貝化石が大量に採れる所で有名らしい。
事前にもう少し詳しく調べておけば、珍しい化石もゲットできたかもしれない。


貝化石   ブナの森
露頭は貝の化石だらけだ   川から眺めるブナ林

川を下る時の楽しみは色々あるけれど、ウドを採りすぎて、化石にも興味無く、瀬だけが楽しみと言う人には、次第に朱太川の川下りが苦痛に感じられてくる。
流木の山疲れてくると皆無口になり、ゴールを目指してひたすら漕ぎ続けるだけになってしまうのは何時ものパターンである。
さすがに私も皆と同じ気分になっていた。

黒松内の市街地が近づいてくると岩避けも忙しくなる。
小さな岩ばかりだけれど、それで座礁したくなければ、一生懸命避けなければならない。

一週間前に沙流川で流されて小指の骨にひびが入ったかみさん。
普通の人ならば、その一週間後に川を下ろう何て考えもしないと思うが、「全然何ともない」と言って例会に参加してしまうかみさん。
「何もしなくて前に乗っているだけで良いから」とは言っておいたけれど、さすがにここではそうはいかなかった。
包帯で固定した指の上からゴム手袋をしてパドルを握り、懸命にドローを入れる。
また一つの伝説を作ることになりそうだ。

ここではN島さんが岩沈をし、カヌーの前後に小さな娘さんを二人乗せて漕いでいたT山さんも、危うく娘さんを川に落とすところだったらしい。

ゴールに到着そうしてようやくゴール地点に到着。
イタドリの藪の中から駐車場所まで、一気にカヌーを引き上げる。
13年ぶりに下った朱太川。
ある人の感想は「この先20年、朱太川を下ることはないと思う」だった。
そこまではいかないと思うが、時の経過が人々の記憶を薄れさせ、何年か後にはまた「たまにのんびり川下りでもやりたいね」と言い始める人が現れるかもしれない。

2015年5月23日 晴れ 
当日12:00朱太川水位(黒松内観測所) 20.98m 


朱太川を下る
自然河川の色合いが強い朱太川

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