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歴舟川

(キャンプ場〜大樹町市街地)

増水した歴舟川歴舟川ミニ例会の二日目は、当初予定ではヌビナイ川を下ることになっていた。
しかし、夜中に降った雨の影響で川の水位は一気に40センチも上昇し、水も茶色い濁流に変わってしまった。
この水量でヌビナイ川を下るのは無理なので、検討した結果、歴舟川の本流をキャンプ場から大樹町市街地まで下ることに変更となる。

この区間を下る時は、ゴール地点を大樹橋にするのが普通なのだが、そこでは今日、イベントが開催されるみたいだった。
毎年ここでは、川を横断するように鯉のぼりが取り付けられているので、それに関係したこどもの日のイベントなのだろう。
そんな所に川からぞろぞろと上陸していくわけにもいかず、ゴール地点をもう少し上流に変更。
それに、大樹橋の上流には大きな波の立つ瀬もあるので、そこで沈して濁流の中をイベント会場まで流されでもしたら、流されている本人は平気であっても、周りが大騒ぎになることは確実なのだ。

濁った歴舟川に漕ぎ出す上陸地点に車を回してから、14名13艇で川に漕ぎ出す
朝に見た時よりもキャンプ場前の川原は広がり、水の色もまっ茶色から薄茶色に変わっていた。
それでも水の流れは速く、川に漕ぎ出すとあっという間にカヌーは流されていく。

直ぐに最初の土壁が迫ってきた。
土壁の手前は、何時もちょっとした瀬になっている場所だ。
これだけの増水でそこがどう変わっているか心配していたが、それ程大きな波にはなっていないようだ。
先を下っていた人は、左岸寄りから回り込むように流れの中に入っていったが、私は土壁に真っ直ぐに向かう流れの中を下っていく。
その二つの流れがぶつかる場所に、複雑な波ができていたようだ。
そこでN島さんが沈をするのを見て、直ぐにホイッスルを吹く。

Nさんが流されるスタート前のミーティングで、N島さんから「今日は川幅が広がっているのでロープレスキューは無理です。流されたらボートレスキューしかできません。」と注意されていたが、いきなりN島さんが見本を見せてくれる。
先に下っていたカヤック2艇と協力して、中島さんのOC-1を岸に向かって押していこうとするが、大型のカナディアンを操作してそれをするのは難しい。
N島さんのレスキューはカヤック2艇に任せることにした。

後ろを振り向くと、がんちゃんと228君も同じところで沈して流されてきていた。
朝の増水した川を見て「私は今日は見学」と決めていたがんちゃんを、皆で「大丈夫だから」と言って誘い出していたのだ。
こんな時の他人の「大丈夫だから」の言葉ほど当てにならないものは無いことを、私は十分に知っている。
気の優しいがんちゃんは、その言葉に簡単に騙されてしまったのである。
流れ着いた228君その騙した本人かどうかは分からないが、パムさんがカヤックの後ろをがんちゃんに捕まらせて岸に向かって必死にパドリングしていた。

私達はそれぞれの様子を眺めながらカヌーを漕いでいたが、流れが速いのでその場に留まっていることしかできない。
N島さんとがんちゃんは右岸に誘導されているが、流れに押されて岸に上がれないままどんどん流されていく。
川はその先で大きく右カーブしていた。
沈した場所では岸に上がれるのは右岸側しかなかったので、先の二人はそのまま右岸を目指していたが、ここまで流されてしまっては、結果的に左岸に向かったほ方が正解だったようである。

最後に流れてきた228君は、残りのメンバーと一緒に左岸に誘導して、そのまま川原に上がることができた。
増水した歴舟川を下る右岸に向かった二人も何とか岸に上がれたようだ。
一度に3人が流されるとレスキューも大変である。

岸に上がれてホッとしている228君に向かって、満面の笑みを浮かべたO川さんが声をかけた。
「よし!これで4対4だ!」
昨日で決着が付いたかと思われた二人の沈脱バトルは、なんと今日もまだ続いていたのである。

再び全員が合流できたところで一旦休憩する。
Y田さんが「ここからならまだ引き返せますよ。」と言うが、さすがにそこまで考える人はいない。
でも、気分的には皆「ここから無事に、ゴールまでたどり着けるだろうか?」と言ったところだ。


河原で休憩
一旦上陸して体制を立て直す

「この先は、ひたすらチキンルートを下りましょう」
そんな意思統一の下、再び下り始める。
遠くに少しでも白波が見えたら、直ぐに皆、岸にぴたりとくっついて下っていく。

青空の下の川下り濁った水の中で瀬を避けながら下っていく。
水が澄んでいれば、下るだけでも楽しくなるが、これでは川を下る楽しみが何も無い。
澄んだ青空と、そこに浮かぶ真っ白な雲だけが救いだった。
これで、空までどんよりと曇っていたら、 それこそ何のために川を下っているのか分からなくなってしまう。
下りながら皆の姿を撮影していても、構図の中ではどうしても、濁った川よりも真っ青な空の占める割合が大きくなる。

たまに少しだけ瀬の中に入ってみたい気もするが、もしも沈して流されでもしたら、大型のカナディアンでは誰からも助けてはもらえないのだ。
途中の川原で昼の休憩。
暖かな陽射しが心地良い。


濁った水と青い空
濁った水と青い空

根を洗われた河畔の木   昼の休憩
根が洗われた川岸の樹木   濁った川を眺めながら昼の休憩

そうしてまた、ひたすらチキンルートばかりを攻めながら、街の近くまで下ってきた。
その先で待ち受けているのは、この区間最大の難所のきのこの瀬だ。
ここは一旦、全員で上陸して下見をする。
川幅が一気に狭まり、その中央に巨大な波が立っていた。
でも、ここにもチキンルートはあったので、ポーテージしなくても下ることができそうだ。

きのこの瀬の下見そう思ってカヌーまで戻ろうとすると、既にO川さんが自分のカヤックを担いでポーテージしてくるところだった。
228君との沈脱勝負よりも、自分の命を大切にするのは立派な選択である。

もしもここで沈したら、そのまま一気に流されて、大樹橋上流の瀬でもみくちゃにされ、その後イベント会場の前を通過し、最後は消防のヘリで有無を言わせず吊り上げられることになるのだ。

順番で一人ずつ慎重にチキンルートを下っていく。
最初の川幅が一気に狭まるところで、流れに押されて瀬の中に入ってしまうことさえ避けられれば問題は無い。
最後にサカタツさんが敢えて大波の中に入った以外、忠実にチキンルートを下って全員がきのこの瀬をクリア。
そうして、最初の3人同時沈脱後、誰も沈することなく無事に上陸地点までたどり着けたのである。

歴舟川を横断して泳ぐ鯉のぼりを真似して、皆で横一列に並んで記念撮影。
チキンルートばかり下ってきた皆の姿は、元気に泳ぐ鯉のぼりというよりも川旅に疲れ果てたサケのほっちゃれにしか見えなかったのである。

2015年5月5日 晴れ 
当日12:00歴舟川水位(尾田観測所) 102.95m 


元気に泳ぐ鯉のぼり?
元気に泳ぐ鯉のぼり達?

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