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糠平川

(幌見橋〜堰堤)

日の出朝目覚めて寝室のカーテンを開けると、夜空ではオリオン座が冷たい光を放っていた。

今日の天気予報は、曇りで夕方から雨の予報になっていたはずである。
昨日までは、今シーズン最後の川下りだと言うのに今一気合が入らずにいたのだが、その空を見て急にやる気が湧いてきた。

朝5時過ぎに自宅を出発。
日高自動車道を東へと向かっている時、真正面から朝日が昇ってきた。
相変わらず空には雲ひとつ浮かんでいない。
ますますやる気が湧いてくる。

朝の額平川目的地は額平川。
今年はまだ下っていないけれど、平取ダムの工事が進んでいるらしく、もしかしたらここを下れるのは今年が最後になるかもしれない。
そんなこともあって、シーズン最後の川下り納めとして額平川を下ることとなったのである。

もっとも、昨日も余市川を下っていて、多くのメンバーはそちらが川下り納め。
今日下るのは、昨日の余市川には来られなかったkenjiさん夫婦とビンバさん、サカタツさん。
それに、昨日も余市川を下っているのに今日もまた川を下ろうと言う私たち夫婦とマリオさんと言うメンバーだ。

河原キャンプに合流kenjiさん夫婦は前日から額平川入りして、川原でキャンプ中。
待ち合わせの時間はそこに午前8時に集合。
早すぎると思ったけれど、朝に走るときと同じ時間に起きて家を出てきたら、午前7時過ぎに着いてしまった。

気温はマイナス2度。
kenjiさん達が朝から燃やしていた焚き火を引き継いで、川原から小さな流木を拾ってきてその焚き火にくべる。
でも、風も無く太陽の陽射しもあるので、昨日の余市川の時よりも体感温度は暖かい気がする。

間もなくして朝寝坊のはずのビンバさんが到着。
朝9時にスタート地点で集合となっていたマリオさんとサカタツさんも、8時前にはこちらのキャンプ地に到着。
今日の空を見れば、皆も気合が入って早く家を出てきたのだろう。

今日はカヌーナビのりょうさん夫婦などカナディアン3艇によるツアーも企画されていたようだ。
出発地点もゴール地点も同じ。
別々には下るけれど、同じツアーのようなものだ。

額平川の川下りスタートゴール地点に回送用の車を置いてからスタート地点へと移動。
スタート地点に着く頃には、何処から湧いてきたのか、空全面が雲に覆われてしまっていた。
これは天気予報どおりの展開なので諦めるしかなさそうだ。

先にカヌーナビのツアーを見送ってから、私たちもスタートする。
カヌーナビの皆さんは、途中の川原で豚汁を作ったりするので、最初は休まずに一気に下るみたいだ。

マリオさんは水が少ないと言っていたけれど、私には過去に下った時と同じ程度に思えた。
下流の橋の上から見た時は水もかなり濁っていたけれど、この辺りまで来るとまずまずの透明度である。

流れは意外と速い。
これまでに3回額平川を下って、瀬はほとんど無い川だとのイメージを持っていた。
しかし、流れは速いし、時々現れる瀬の中の隠れ岩も避けなければならない。
先を下っているカヌーナビのメンバーの中にはカヌーを始めて間もない人もいると聞いていたので、ここを皆無事に下ったのだろうかと心配になってくる。

額平川の瀬一般的な基準では初級レベルの瀬と言うことになるのだろう。
でも、私にとっては赤岩青巌峡を下っている時とそれ程違っているようには感じられないのだ。
流れの中で岩を避ける動作は同じ。
違いは、岩を避ける動作が多いか少ないかだけの話である。
つまり、この糠平川を下れるのならば赤岩青巌峡も下れると言うことである。
その証拠に、私がカヌーを始めて○年目で始めて挑戦した赤岩青巌峡を、ビンバさんは2年目にして下っているのだ。
要は、本人にチャレンジする気があるかどうかだけの問題。
極論だろうか?


額平川を下る   額平川を下る
唯一の岩が絡んだ瀬   快適に下っていく

橋の工事が進んでいた前方に巨大な橋が現れた。
道路の付け替えに伴って新しい橋が作られているのだ。
それを見るのは去年の10月以来だったが、既に橋桁も渡され、橋は完成に近づいているようだ。
ここに新たに橋が架かるということは、ここから先はダムが完成した時にはダム湖の底に沈んでしまう場所となるのだ。

少人数で下っていると、後続メンバーを待つ必要もない。
何時でも全員の姿を一目で確認できるので、後は自分のペースで下るだけ。
誰が先頭と言う決めもなく、たまたま一番前に出た人がそのまま先頭で下っていく。

カヌーナビのグループを追い越す今の季節は暗くなるのも早く、額平川は車の回送や川下りそのものにも時間がかかるので、集合時間も午前8時と早くしていたのである。
それもあるので、ほとんどノンストップで下っていると、途中で休んでいたカヌーナビのグループも追い越してしまった。

いつの間にか空を覆っていた雲は、現れた時と同じようにいつの間にか消えつつあった。
流れてきた雲ではなく、上空の気温の変化で発生した雲だったのかもしれない。
気温が上がって霧が消えるように、その雲も消えてきたのだろう。

倒木の絡んだ大きな岩が、目の前に現れた。
川の流れはその岩に向かっているけれど、あらかじめ右岸によれば簡単に避けられる。

ビンバさんも上手くかわしたかと思ったが、ギリギリのところで岩にぶつかり横転。
日高山脈からの雪解け水も混ざり、肌を刺すような冷たい水の中に頭から飛び込んだ。
チノミシリの前で髪をふくビンバさんkenjiさんから「赤岩青巌峡を下った男がこんなところで沈をして」とからかわれながら、タオルで濡れた髪の毛を拭くビンバさんであった。

その辺りがちょうど額平渓谷の入り口となる。
目の前には見事な岩峰が聳えていた。
何度見てもその風景には圧倒される。

アイヌ民族の信仰の対象となるチノミシリが、この渓谷の中に幾つか存在すると聞いていたが、多分この岩峰もその一つなのかもしれない。
ダムの建設により水没するのはこの岩峰の下部だけとはいっても、川原から一気に200mの高さまで立ち上がっている今の姿と、湖の湖面の上に立ち上がる姿は、根本的に違っているような気がするのは私だけではあるまい。

今の姿を少しでも心に留めておこうと、その真下の川原に上陸して小休止する。
私がその神々しい岩峰の姿を撮影していると、その真下で岩峰に向かって放尿している二人の姿が写ってしまった。
罰当たりな行為だけれど、ダム建設に比べれば可愛いものだ。
せいぜいオチンチンの先っぽが赤く腫れるくらいの罰で済ませてもらえるだろう。


額平川のチノミシリ
チノミシリの前で立ちションをする二人

カヌーナビの皆さんが、私たちを追い越して下っていった。
空はもう、完全な青空に変わっていた。
私たちも、その後を追いかけるように下り始める。

その後も素晴らしい渓谷美が続く。
いずれはダムで消えてしまう流れを下り、ダムができてしまえばもう2度と今のアングルからは見ることができなくなる渓谷美を、その川の上から楽しむ。


額平渓谷
この風景がダムに沈んでしまう

額平渓谷   額平渓谷
渓谷の風景に感動   青空も美しい

平取ダム建設予定地宿主別川との合流部まで下ってきて、そこで一旦川原に上陸する。
そこからは、平取ダムの本体が建設される場所が目の前に見える。
以前は岩壁に挟まれた狭い場所だったが、左岸側の崖が大きく削り取られて、様子が大きく変わっていた。
その先に見えている青空の部分に無粋なコンクリートの壁が立ちはだかることになるのだろう。

大型土嚢で仕切られた川の中を下っていく。
削り取られた岩壁には、作業用のトンネルにでもなるのだろう、黒い二つの穴が開いている。
来年にはダムの本体工事も更に本格的に始まるだろうし、その中で今までどおり川を下ることができるのかが気になるところだ。
川の流れそのものが塞き止められるのはまだ先になるだろうが、それまでの間、トンネルのような仮設水路になってしまうのでは、もう下る気にはなれない。
と言うか、下らせてはもらえないだろう。
いや、そもそも川の上をカヌーが下ってくることなんて想定外なので、何の予告もなく人工ストレーナーが待ち受けているかもしれない。
そう考えると、ここを下れるのは今年が最後になってしまいそうな気がするのだ。


宿主別川   平取ダム建設現場
宿主別川の合流部   ダム建設が着々と進められている

額平川の川下りダム建設地を過ぎても、まだまだ美しい風景が続いている。
ダムができても、この先の区間は川下りフィールドとして残るかもしれない。
しかし、額平川は川へアプローチできる場所がほとんど無いのが問題である。

そしてそれ以上に、沙流川の二風谷ダムを見れば分かるように、ダムからは濁った水しか出てこないので、そこを下ろうと言う気持ちが湧いてこない気がする。
現に、スタート地点では澄んでいた川の水が、雨が降っている訳でもないのに、工事現場から下流は濁ってしまっているのだ。

前方にまた、崩れた山肌が見えてきた。
その手前に大きな川原が広がっていたので、ちょっと上陸してみる。
風もなく、太陽の陽射しが暖かく感じられる。
小砂利に覆われた川原に、そのまま大の字に寝転びたくなってくる。

河原に上陸「あぁ〜、気持ち良いな〜!」
「うわ〜、最高!」
昼にはまだ早かったけれど、ここで休憩することにした。

周りには手ごろな大きさの流木が沢山転がっている。
マリオさんが、がんび(シラカバの皮)を拾ってきた。
「焚き火しようか?」
誰かが発したその言葉を合図に、皆が一斉に散らばり、それぞれが流木を拾い集めて戻ってくる。

ライターの火でがんびは直ぐに燃え上がり、その火はよく乾いた流木に簡単に燃え移り、大きな炎へと変わっていく。
その焚き火を囲んで皆で昼食を食べる。
kenjiの姫さんがアルミホイルで包まれたままの焼き芋を焚き火の中に放り込む。
キャンプで余したものを、たまたま持ってきていたのだ。

河原で焚き火それにしても、皆とても楽しそうだ。
このままここでキャンプができたら最高である。
カヌーナビのグループも川原の反対側に上陸していた。
予定通り、そこで豚汁を作っているのだろう。

額平川にはこんな川原が沢山ある。
次に下る機会があるとすれば、その時こそ川原キャンプを楽しみたいものである。

ここで何時までも焚き火をしているわけにもいかないので、適当なところで焚き火を消して再び下り始める。
あくせくと漕がず、ほとんど川の流れに任せるように下っていく。

河畔の木々寄生するヤドリギがやたらに目立つ。
今まではあまり気にしなかったけれど、木々が葉を落とすとこのヤドリギが良く見えるようになるのだ。

額平川のヤドリギ巨大な土壁に、積もった落ち葉が模様を描く。
河畔林の中で一際立派に枝を伸ばす巨木があった。
晩秋の季節ならではの風景が楽しめる。
崖に生えた樹木の上からオジロワシがゆったりと飛び立った。

川の両側から迫る岩壁、広々とした河原、遠くに見える日高山脈の山並み。
これだけ次々と風景が移り変わっていく川も珍しい。

かみさんが突然「ちょっと待って」と声を上げた。
その意味が直ぐに分かった。
川原に落ちているエゾシカの角を見つけたのだ。
「良く見つけたね」と感心されたが、かみさんは下っている間ずーっと、角が落ちていないか探し続けていたのである。
我が家が川下り中に拾ったエゾシカの角はこれが3本目。
今回のが一番大きくて、かみさんも満足そうである。


巨木とヤドリギ   額平川の川下り
巨木の先端にもヤドリギが   ゴールが近付いてきた

額平川の風景
こんな風景が次々に現れる

ゴール地点に到着 午後1時前にゴール地点に到着。
途中で焚き火をしていたにも関わらず、約4時間で下ってくることができた。
明るいうちに家まで帰れる時間である。

今回のゴール地点は、何時ものゴールよりやや下流。
車を停めるスペースは狭いけれど、少人数で下る時にはちょうど良い場所だった。

こうして、とても快適で楽しいシーズン最後の川下りを終えたのである。

2014年11月9日 曇りのち晴れ 


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