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沙流川

(キャンプ場〜三岩橋下流)

青少年自然の家の朝礼カヌークラブ例会二日目。
宿泊場所の日高青少年自然の家で行われる朝の集会では、参加団体代表がそれぞれ挨拶するのがルールだ。
今回は各地の高専の学生が泊まっていたので、朝の挨拶では各校の代表が一発芸を披露するという何時もとは違った流れになってきていた。

その中で最後に挨拶に立った我がクラブのK岡会長。
分別のある大人としてそつの無い挨拶が終わった後に「それでは僕も一発芸をやります」と言って披露したのが「コマネチ!」
クラブのメンバーの爆笑と、若者たちの唖然とした表情を残して、本日の川下り場所へと向かった。

沙流川キャンプ場前の河原から出艇この日は朝から雲一つない快晴。
朝の最低気温は0度まで下がり、周辺の山の紅葉も更に一層美しさを増していた。
ただ、川の水は昨日の鵡川と同じく、極端に少ない。
スタート地点の広い川原の端の方に、かろうじて水がちょろちょろと流れている感じなのが沙流川本流である。

しかし、そこを流れる水は、これまでに見た沙流川の中でも今日が一番と言っても良いくらいに透き通っていた
過去に何度か国土交通省で発表する清流日本一になっている沙流川だが、この日の透明度を見ればその結果を信じてやっても良いような気がする。

沙流川の澄んだ水参加者は26名。
今日の天気と周りの山々の紅葉を見れば、素晴らしい川下りは約束されたようなものである。
参加メンバーは皆とても嬉しそうだ。

ただ、川の水は強烈に冷たかった。
スタートして間もないところの瀬で、IW田さんがその冷たい水の中で早々と沈脱。

この日の夜の動画上映会でもIW田さんの沈脱の速さが皆の笑いを誘っていたが、沈してからカヤックを抜け出すまではコンマ数秒の早業。
脱出イリュージョンとして引田天功と張り合えるかもしれない。

沙流川大岩の瀬大岩の瀬では、水が少ない分、流れの真ん中の大岩が何時も以上にその存在を誇示していた。
それだけ存在を見せ付けられると、さすがにその岩に衝突する人はいなく、全員が岩を避けて左岸寄りを下ってくる。

その下で待ち構えている岩も、隠れ岩とならずに水面に顔を出しているので、そこに乗り上げて沈する人もいなく、全員が無事にここをクリアしていた。

岩の門を通って渓谷状の地形の中へと入っていく。
紅葉した木々が川を包み込む。
どちらを向いても美しい紅葉の風景ばかり。



沙流川岩の門   沙流川岩の門
岩の門の向こうには紅葉のパノラマが   岩の門を反対側から

沙流川の紅葉
左側の分流は最高の紅葉に包まれる

水の少ない沙流川でも、油断していると直ぐにカヌーは座礁してしまう。
何となく今日のかみさんのパドリングは、景色に見惚れているのか、ドローもクロスも力が入っていない気がした。
そのままでは隠れ岩にカヌーの底を擦ってしまうので、スターンの私が力一杯のパドリングでコースを修正しなければならない。

何せ、我が家のカヌーの底には穴が開いてきているので、なるべく底を擦らないようにくだらなければならないのだ。
岩避けに失敗してカヌーの下から「ギギギーッ」と音が聞こえてくると、まるで自分のみを削られているような気がする。
後ろから大声で「ドローッ」って叫べば、もう少し機敏なパドリングをしてくれそうだが、この美しいシチュエーションの中ではそれも憚られるので、一人必死にパドリングを続けるしかなかった。

昼の休憩私達が下り始めてから、ダム放流のアナウンスが何度も聞こえてきた。
水が少ないので、「良いから早く放流してくれ」と皆はその放流が待ち遠しそうだ。

日当たりの良い川原で昼の休憩。
暖かな日差し。
澄んだ水の中を真っ赤に色づいたモミジが流されていく。
カワガラスが時々、直ぐ目の前まで飛んできて水の中へと潜っている。
私達が休憩している間に、明らかに川の水位が上がってきたのが分かった。
でも、それでもまだ快適な川下りをするために、水は足りなかった。


沙流川の澄んだ水   休憩終わり
今までで一番澄んでいた沙流川の水   休憩を終えて下り始める

休憩を終えて再び漕ぎ出した先では、最大の難関の三岡の瀬が待ち受けている。
まずはその手前の大きな落ち込み。
その落ち込みへは、右から回り込むように入らなければならないのに、先を下っていたメンバーは全員がそのまま真っ直ぐに行ってしまった。
そちらの方が下り易くなっているのかと思って付いていったら、やっぱり間違いだった。
岩だらけで下るルートが全く見えない。
瀬で座礁して悪戦苦闘それでも瞬時に判断しながら「右だっ」、「ドローッ」とかみさんに指示を出す。
しかし、かみさんの反応が鈍く、岩に乗り上げてしまった。

私だけカヌーから降りて岩からカヌーを引き離す。
しかし、その後の再乗艇がなかなか上手くいかない。
かみさん一人を乗せたままカヌーを流そうかとも考えたが、それでは後から何を言われるか分からないので、必死になって飛び乗って何とか無事に下ることができた。

ついつい「何で反応しないんだ」と文句を言ってしまう。
すると直ぐに「だって、下れる場所なんて無かったじゃない!」とムッとした様子の答えが返ってきた。
タンデムでの川下りにおいては、穏やかな風景の中でも常にこのような小競り合いが続いているのである。

三岡の落ち込みを下見そして三岡の落ち込み。
下見の結果、私の出した結論は今回はポーテージ。
水が少ないので、落ち込みの下の岩がはっきりと見えていて、悪いイメージばかり浮かんでくるのだ。
2回連続でここで沈をして、カヌーを壊したり身体を擦り剥いたりしていることと、現在のボロボロのカヌーの状態がそうさせるのだろう。

Y須賀さんも今回はポーテージ。
以前に、例会ではここは下らないと禁止令を出していたG藤さんが、今回は下るという。
前回、遥か上流で沈して身体一つで落ち込みの中を流されたたけちゃん、今回満を辞してのリベンジ。
最後まで迷っていためぐちゃんも、一番最後にチャレンジすることを決めた。

それぞれが自分自身の判断でどうするかを決定する。
そんな様子が、私にはとても清々しいものに感じられるのである。
普段の社会生活においては、自分だけの判断で決められる事って、そうは無いのだ。

結果はN島さんがやられた以外は全員がクリア。
たけちゃんの落ち込みを下りた瞬間のどや顔は、この日の夜の動画上映会で大受けとなった。
めぐちゃんのガッツポーズも本当に嬉しそうだった。



三岡の瀬   三岡の瀬
どや顔のたけちゃん   豪快に下るめぐちゃん

三岡橋を過ぎると、一旦渓谷を抜けて、広々とした風景が広がる。
めぐちゃんは仕事の都合でここで上陸。

轟橋が渓谷への入口そして前方に轟橋が見えてくると、いよいよそこからが本当の沙流川渓谷の始まりとなる。
圧倒的な迫力で、紅葉に染まった山が目の前に迫ってくる。
そんな風景に気を取られていると、川幅一杯に広がった落ち込みが突然現れて驚かされる。
そこを過ぎれば緊張するような瀬も無くなり、周りの景色だけを楽しみながらのんびりと下ることができる。

川の両側には20mほどの高さの切り立った崖が続く。
赤や黄色、橙色に茶色と様々な色に染まった木々が、その崖を彩る。

所々で、岩肌や倒木に赤いペンキで印や数字が書き込まれていた。
何かの測量の跡であることは間違いなさそうだ。
それにしても、こんな場所を何の目的で測量しているのだろう。
まさか、更なるダム建設を計画しているわけではないだろうが、気になるところである。


沙流川渓谷
この付近、地形図では轟淵と名前がついている

沙流川渓谷
紅葉の川下り!

巨大な岩門右にカーブするちょっとした瀬を下ると、その先は大きな淵になっている。
そしてここでは、それまで50m程度は開いていた両岸の崖の間隔が、ここで一気に約15mまで狭まる。
まるで巨大な岩門のように見える
その門の先では、水面からほぼ垂直に、150mを遥かに超える高さまで山が聳えたっている。
沙流川渓谷を下っている時の一番のビューポイントが、この辺りになるだろう。
道路からも離れているので、この景色を楽しめるのはパドラーだけの特権である。

岩門のこちら側は日陰になってしまったが、門の向こうに見えている山肌は、太陽の光を受けてまるで燃えるような紅葉に染まっていた。
そんな風景に皆はただ圧倒されるだけだった。


紅葉の沙流川渓谷
沙流川渓谷一番のビューポイント


日高大橋しばらく下ると三弦トラス橋の日高大橋が見えてくる。
川の流れは、橋の下辺りで左岸側に集まり、瀬のようになっている。

Y賀さんがそこでバランスを崩し、川岸の岩に手を付いた拍子に親指を切ってしまった。
救急セットを積んでいる私たちが、そこまで漕ぎあがり応急手当をする。
去年まではほとんど使う機会も無かった救急セットが、今年は何度も活躍していた。
どれも軽い傷で済んでいるのが幸いだが、できれば救急セットは使わずに済ませたいところだ。

日高大橋からその下流の三岩橋にかけても、この区間のビューポイントである。
ただ、ここを下るのは何時も午後の時間帯となってしまう。
そうすると、川の西側に高さ200mを越える崖のような急斜面が迫るので、この付近は確実に日陰に入ってしまうのである。

紅葉の沙流川渓谷
日陰に入っても紅葉は美しい

紅葉の沙流川渓谷   紅葉の沙流川渓谷
川の水も赤く染まる   三岩橋を過ぎると再び日が当たる

紅葉の沙流川そして三岩橋を過ぎると、再び眩しいくらいの紅葉の風景が再開される。
その先、ゴール地点の川原まで、そんな風景を楽しみながらゆったりと流れ下って例会二日目を終えたのである。

2014年10月12日 晴れ 
当日11:00〜14:00沙流川水位
(幌毛志橋観測所)
  56.72〜56.90m
※ダム下流の観測所なので参考程度


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